ガルシア・マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』の映画化2014年01月23日 14:26

★ゴヤ賞候補主要作品の紹介は、授賞式までに1作ずつ間をおいてアップ、他のニュースがニュースでなくなるので、今回はノーベル賞作家ガルシア・マルケスの今のところ最新小説Memoria de mis putas tristes2004刊)の映画化について。77歳になった作家が久しぶりで書いた恋愛小説、同じノーベル賞作家川端康成の『眠れる美女』に触発されて書かれたということが話題になった。90歳の誕生日を迎えようとする老人と14歳の処女という「普通ではない」組合せも物議をかもした。老人の性愛もテーマの一つであろうが、真のテーマは「死と再生」でしょう。

 

原題:Memoria de mis putas tristes
(『わが悲しき娼婦たちの思い出』は小説の翻訳題による

監督・脚本:ヘニング・カールセンHenning Carlsen

脚本:ジャン=クロード・カリエール 原作:ガブリエル・ガルシア・マルケス

撮影監督:アレハンドロ・マルティネス

 

キャスト:ジュラルディン・チャップリン(ローサ・カバルカス)/エミリオ・エチェバリア(エル・サビオ)/パオラ・メディナ・エスピノサ(デルガディーナ)/アンヘラ&オリビア・モリーナ(カシルダ・アルメンタ)/アレハンドラ・バローサ(フロリーナ・デ・ディオス)/ドミニカ・パレタ(ヒメーナ・オルティス)/エバンヘリナ・ソサ(ダミアーナ)/ロドリーゴ・オビエド(ヒメーナの兄弟)/オフェリア・メディナ他

データ:メキシコ=スペイン=デンマーク=アメリカ 2011 言語スペイン語 90

 

2012年マラガ映画祭で特別若手審査員賞を受賞したので翌年には公開と思っていましたが、監督がデンマーク人がネックになったのか、ようやっとこの1月公開になりました。劇場公開になったのは、ロシア、デンマーク、ポーランド、メキシコ、ドイツ(DVD)、映画祭上映はマラガの他、リオ国際映画祭2011、グアダラハラ国際映画祭2012など。

 

カールセン監督は、1927年デンマークのオールボー市生れ。ガルシア・マルケスと奇しくも同年齢、脚本のカリエールも1931年生れだから「老青年3人組」の作品といえます。監督とラテンアメリカ映画との接点は、既に本作のプロデューサーの一人ラケル・グアハルドとタッグを組んだ経験があった。カリエールは、フェルナンド・トゥルエバの最新作『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』を手掛けている。

 

 

(カールセン監督)

最初語り手のエル・サビオ(小説では博士)にアルゼンチンのフェデリコ・ルッピかエクトル・アルテリオ、少女デルガディーナにキューバ出身のアナ・アルマス(スペイン在住)が予定されていたようですが、紆余曲折があって上記のようになった。具体化は2008年に製作会社も決定、撮影は200911月メキシコのカンペチェでクランクイン、20105月に終了している。

   キャスト陣のトレビア

語り手の主人公エル・サビオ役のエミリオ・エチェバリアは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』(第3部)の主人公エル・チボやアルフォンソ・キュアロンの『天国の口、終りの楽園』でお馴染みの国際派ベテラン俳優。『アモーレス・ペロス』が東京国際映画祭のグランプリを受賞した2000年に、監督と一緒に来日しております。

 


デルガディーナに扮するパオラ・メディナ・エスピノサは、メキシコの名花オフェリア・メディナの姪御さん、既に29歳。小説では14歳ですが、映画は17歳ぐらいに設定されているとはいえ、いささか無理がありますね。オフェリアも特別出演(多分入院中の母親役)して話題作りに貢献している。(写真:エル・サビオのエチェバリアとデルガディーナのパオラ)

 


娼婦カシルダ・アルメンタの若い頃と現在を演じているのが、アンヘラ・モリーナオリビアの母娘。カシルダはエル・サビオが若い頃通っていた人気の娼婦、引退後に中国人と結婚して主婦になる。アンヘラは女優には珍しい5人の子持ち、オリビアはアンヘラの最初の夫との間に、1980年長女として誕生、この撮影後の2012年に長女を出産している。アンヘラは『ブランカニエベス』で白雪姫の祖母役を演じましたが、実際も撮影中に孫が出来たというわけです。アンヘラまたは映画人モリーナ一家についてはじっくりとご紹介したいと考えています。
(写真:エル・サビオとカシルダのアンヘラ)

 

 

 (ローサのジュラルディン)

娼家の女将ローサ・カバルカス役のジュラルディン・チャップリン、彼女が主役でしょうかね。昔は太った大女のローサも73歳になった今では、すっかり痩せて皺くちゃになっている。しかし頭の回転と毒舌は健在、エル・サビオに眠り姫デルガディーナを斡旋する。こういう役は彼女に打ってつけですね。1944年カリフォルニアのサンタ・モニカ生れ、父親の『ライムライト』(1952)のオープニング・シーンに現れる少女から数えると、出演本数130本以上になる。デヴィッド・リーンの『ドクトル・ジバゴ』(1965)から現在に至るキャリアをいずれきちんとご紹介したい。


エル・サビオの婚約者ヒメーナ・オルティス役のドミニカ・パレタは、1972年ポーランド生れ、若い頃メキシコに移住、テレビ界出身。エル・サビオの若くして亡くなる美貌の母親フロリーナ・デ・ディオス役のアレハンドラ・バローサは、1971年メキシコ市生れ、代表作はアレハンドロ・スプリンガルのNo eres tú, soy yo2010)、脚本も手がけている。この母親が主人公が抱えるトラウマの原因になっている。