セビーリャ・ヨーロッパ映画祭*”Mimosas”が審査員特別賞2016年11月25日 10:41

          「金のヒラルダ」賞はフランス映画“Ma Loute

 

★第13回セビーリャ・ヨーロッパ映画祭(114日~12日)は、「金のヒラルダGiraldillo de Oro」賞にブリュノ・デュモンBruno DumontMa Louteを、審査員特別賞にオリヴェル・ラセMimosasを選んで閉幕しました。前者はカンヌ映画祭2016のコンペティション正式出品、後者は同映画祭のパラレル・セクション「批評家週間」のグランプリ受賞作品、大賞は二つともカンヌ絡みでした。年後半の11月に開催される映画祭はどうしても金太郎飴になりがちですが、どの製作会社も春と秋に照準を合わせるから致し方ありません。Ma Loute”は社会階級についての辛辣な寓話、いずれ公開されるのではないか。昨年はホセ・ルイス・ゲリンの『ミューズ・アカデミー』がまさかの「金のヒラルダ」を受賞して驚いたのでした。セビーリャ上映がスペイン・プレミア、東京国際映画祭で上映されたばかりだったから、私たちのほうが先だったのです。

 

 

  

★“Mimosas”の作品紹介はカンヌ映画祭で既にアップしております。オリヴェル・ラセOliver Laxe1982年パリ生れ、ガリシアへ移民してきたガジェゴ(gallego)。カタカナ表記はフランス語読みにしましたが、ガリシア語ならオリベル・ラシェかと思います。カンヌ映画祭2010のパラレル・セクション「監督週間」に出品したデビュー作Todos vós sodes capitáns(“Todos vosotros sois capitanes/You All Are Captains2010,カラー&モノクロ、78分、スペイン語・アラビア語・フランス語)が、国際映画批評家連盟賞FIPRESCIを受賞しています。スペイン映画アカデミーが翌年のゴヤ賞新人監督賞にノミネートしなかったことで一部から批判されるということがありました。

Mimosas”の作品紹介記事は、コチラ⇒2016年522

 

   

 

   

      (撮影中のオリヴェル・ラセ)

 

6年ぶりに撮った第2作“Mimosas”(モロッコ=スペイン=フランス、アラビア語)がカンヌ映画祭「批評家週間」でグランプリを受賞したうえ、今回の審査員特別賞とスペシャル・メンション音響デザイン&編集賞を受賞したことで、来年のゴヤ賞ノミネーションの行方が気になってきました。デビュー作ではないが初ノミネーションとして「新人監督賞」のカテゴリーの可能性があるかもしれません。過去にそういう事例があります。

 

★他にも何作か受賞作品がありますが、なかでパブロ・リョルカ(ジョルカ)Pablo Llorca CasanuevaDías color naranjaが「新しい波」部門のデラックス賞を受賞しました。1963年マドリード生れ、監督、脚本家、製作者。大学では芸術史を専攻、その後映画を学んで80年代後半から短編を発表、代表作品は“La espalda de Dios”(2001、西語)、ドイツで撮影した冷戦時代のスパイ物“La cicatriz”(2005、英語・独語)は、マラガ映画祭ZONA-CINEセクションの作品賞・脚本賞を受賞しています。

 

★こんなお話です。自由を満喫できる夏、手軽な手荷物一つの気ままな列車の旅、新しい体験、列車で知り合った仲間との冒険、芽生えたつかの間の恋、これこそ〈オレンジ色の日々〉というにふさわしい。2010年の夏、アイスランドの火山が爆発したせいで、韓国旅行からの帰途にあったアルバロは、アテネに足留めになってしまう。こうして列車の旅が始まったのだ。スウェーデンのベルタとは、ディケンズの『ピケウィック・クラブ』が縁で親しくなった。

 

     

           (アルバロとベルタ、“Días color naranja”から)