ゴヤ賞「栄誉賞」はアナ・ベレン*ゴヤ賞2017 ① ― 2016年11月04日 14:29
女優、歌手アナ・ベレンの全功績を讃えて栄誉賞

★ゴヤ賞「栄誉賞」のニュースが入ると、もう一年経ってしまったのかと時の速さにがっくりする。今年はスペイン映画アカデミー会長空席にもかかわらず、9月初めに発表がありました。アナ・ベレン受賞は満場一致だったそうです。イボンヌ・ブレイク新会長の最初の大仕事がゴヤ賞2017の授賞式です。

(舞台でメデアを演じたアナ・ベレン、セネカの『メデア』から、2015~16)
★アナ・ベレン(1951、マドリード、65歳)の全業績を紹介するとなると、これはなかなか簡単にはすまない。映画出演40作、舞台は古典から現代劇まで30作、ディスコは35作に及ぶ。1965年14歳で子役としてデビューしたからキャリアは半世紀を超えました。歌手、舞台俳優、TVドラマ、1作ながら監督もしている。TVドラの当り役は、ベニート・ペレス・ガルドスの長編小説『フォルトゥナータとハシンタ』をドラマ化した“Fortunata y Jacinta”(1980)、ベレンはフォルトゥナータに扮した。

(ニューヨークで誕生した初の女性ファッション誌「ハーパーズ・バザー」のために、
モデルのようにポーズをとる少女時代のアナ・ベレン)
★映画は後述するとして、今世紀に入ってからは出演が少ないが、最新作はフェルナンド・トゥルエバの“La reina de España”が、2016年11月25日にスペインで公開される。ペネロペ・クルス主演の『美しき虜』(1998“La niña de tus ojos”)の続編、出番は少なそうです。当ブログでも紹介記事をアップしておりますが、いずれ記事にしたい映画です。というわけで女優というより歌手としての活躍が目立っているかもしれない。ステージはYOUTUBEで簡単に愉しむことができます。2015年にラテン部門のグラミー賞を受賞している。他に2016年5月下旬“Desde mi libertad”を公刊して話題になりました。
*“La reina de España”の紹介記事は、コチラ⇒2016年02月28日
★才色兼備が彼女ほどぴったりくる人は少ないのではないか。彼女の魅力はなんといっても加齢を感じさせない妖しいまでの美声、意志の強い眼光、細身ながらエネルギーあふれるルックスにありますね。スペイン映画にはどうしても欠かせない「顔と声」であり続けています。1972年に作曲家で歌手のビクトル・マヌエルと結婚(1男1女)、その二人三脚ぶりはつとに有名、パパラッチとの攻防にも怯まず、多分金婚式までいくでしょう。祖母として二人の孫との新しい人生を楽しんでいる。「祖父母の役目は孫を甘やかすことに存在意義がある。躾や教育するのは両親の役目、私たち夫婦もそうしてきた」ときっぱり。
★1989年東京で開催された「第2回スペイン映画祭」に夫婦で来日しています。ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの『神の言葉』(1987)がエントリーされたからです。バリェ=インクランの同名戯曲“Divinas palabras”の映画化でした。政治的発言にも躊躇しない。2003年にはイラク戦争反対を表明、雪解けムードで話題になっているキューバ政府の人権問題「私はキューバ政府を告発する」にも署名をしています。これは2010年にあったキューバの反体制政治犯の無条件即時解放を求めてオルランド・サパタが行った断食事件、85日後に死亡したことに対する抗議でした。スペインからもアルモドバル、マヌエル=ベレン夫妻、作家ではフェルナンド・サバテル、エルビラ・リンド、フアン・マルセ、ソエ・バルデス、国籍を取得したバルガス=リョサなどが署名、最終的にはトータルで約6千人が署名した。

(イラク戦争反対の抗議デモに参加したビクトル・マヌエル=アナ・ベレン夫妻、2003年)
★ゴヤ賞授賞式までにシネアスト・キャリアは後述しますが、ゴヤ賞関連では主演女優賞4回、新人監督賞、合計5回ノミネーションされましたが、無冠に終わっていました。というわけで初のゴヤ賞受賞が「栄誉賞」になります。ノミネーションは以下の通り、年代順:
1988“Miss Caribe”監督フェルナンド・コロモ、主演女優賞
1989“El vuelo de la paloma”同ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェス、 主演女優賞
1991“Cómo ser mujer y no morir en el intento” 新人監督賞
1994“La pasión turca”同ビセンテ・アランダ(VHSタイトル『悦楽の果て』) 主演女優賞
2004“Cosas que hacen que la vida valga la pena”同マヌエル・ゴメス・ペレイラ、 主演女優賞
2017「栄誉賞」受賞

(ベリー・ダンスを披露したアナ・ベレン『悦楽の果て』から)
★公開作品は、マリオ・カムスの『ベルナルダ・アルバの家』(87,原作ロルカ)1作だけでしょうか。未公開だがNHK衛星が放映したビセンテ・アランダの『リベルタリアス/自由への道』(96)、マヌエル・ゴメス・ペレイラの『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』(96、VHS、DVD)くらいしかない。以上が代表作というわけではないので、ガラが近づいたらアップする予定です。
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