「ロス・カボス」映画祭2016*メヒコ・プリメロのグランプリは”X500”2016年11月19日 10:33

         コロンビアのフアン・アンドレス・アランゴの“X500

 

      

 

★第5ロス・カボス映画祭119日~13日)の結果発表があり、フアン・アンドレス・アランゴX500が受賞しました。まだ5回と歴史も浅く知名度も高くありませんが、将来的には重要な映画祭になるのではないかと思います。開催地はバハ・カリフォルニア・スール州のリゾート地カボ・サン・ルーカス。メキシコの映画祭といえば、老舗のグアダラハラ、若いシネアストたちの信望が厚いモレリアは何度かご紹介していますが、本映画祭は初めてのご紹介です。正式名は「Festival Internacional del Cine de los Cabos」(英語略語CIFF)です。

 

★この映画祭の趣旨は、メキシコ、米国、カナダの架け橋となるような映画に贈られる賞、国境に壁ではなく橋を架けることを目的にした映画祭のようです。大きく分けるとメヒコ・プリメロ部門とワールド部門になります。今年のメヒコ・プリメロには、次の6作が選ばれました。サンセバスチャン映画祭でご紹介した“X500”が受賞したこと、今後イベロアメリカ映画の台風の目になるだろうことを予想してアップいたします。副賞としてグランプリには20万ドル、以下他の各賞にもそれぞれ賞金が授与される。

  

 

*メヒコ・プリメロMéxico Primero

1X500(メキシコ=カナダ=コロンビア)監督:フアン・アンドレス・アランゴ

  (コロンビア) 最優秀作品賞受賞、副賞20万ドル

2)“Los Paisajes”(2015フランス=メキシコ=イギリス)同:ロドリゴ・セルバンテス

3Tamara y la Catarina(メキシコ=スペイン)同:ルシア・カレラス

  アート・キングダム賞、FIPRESCI賞を受賞

4)“Carroña”(メキシコ)同:セバスティアン・イリアルト(メキシコ)

5Bellas de noche ドキュメンタリー(メキシコ)同:マリア・ホセ・クエバス 審査員賞

6)“La región salvaje”(メキシコ=デンマーク)同:アマ・エスカランテ(メキシコ)

 

   

       (第5回ロス・カボス映画祭2016の受賞者たち、20161113日)

 

2カ国以上の合作を選考基準にしているようですが、上記からも分かるように必ずしもそうなっていないが、メキシコ以外の製作者がタッチしているケースが多い。昨今では合作が多く、1国単独での映画製作は難しくなっている。Carroñaのセバスティアン・イリアルトは、“A tiro de piedra”(10)で長編デビュー、アリエル賞の作品賞と第1作監督賞を受賞している。“Carroña”をプロデュースしたベレン・カストロなど女性の躍進が珍しくなくなっている。

 

★今年はアメリカ大統領選挙投票日の翌日に開催、「国境に壁を作る」を選挙キャンペーンの一つにしたトランプ氏がまさかまさかの次期アメリカ大統領になり、メキシコに激震が走りました。「豊かな北」を目指すラテンアメリカ諸国民にとっては厳しい冬になりそうです。“La región salvaje”は、今年のベネチア映画祭に初ノミネートされたアマ・エスカランテが監督賞を受賞した作品です。

X500”の作品紹介記事は、コチラ⇒201692

La región salvaje”ベネチア映画祭監督賞受賞の記事は、コチラ⇒2016917

 

   

                     (フアン・アンドレス・アランゴの“X500”)

 

★セクション・オフィシャルのグランプリは、イギリスのアンドレア・アーノルドAmerican Honey16,英=米)が射止めました(副賞20万ドル)。カンヌ映画祭2016の審査員賞&エキュメニカル特別メンション賞受賞作品、カンヌではお馴染みの監督。長編デビュー“Red Road”(06)と第2作『フィッシュ・タンク』(09)がカンヌ映画祭の審査員賞をそれぞれ受賞している。後者はテレビ放映もされたのでご覧になっている方も多いと思います。今年の受賞者で目立つのが女性の活躍でしょうか。

 

    

 (アンドレア・アーノルドの“American Honey”)

 

★生涯功労賞にイタリアの女優モニカ・ベルッチが選ばれ、華を添えました。栄誉賞はメキシコの撮影監督ロドリゴ・プリエト、代表作品はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』(99)以降、『ビューティフル』(10)など多くの作品を手掛けている。アルモドバルが呼び寄せて撮らせた『抱擁のかけら』(09)、スコセッシの『ウォール・ストリート』(13)、アン・リーの『ブロークバック・マウンテン』(05)、『ラスト、コーション』(08)など公開作品も多く、監督からの信頼も高い。

 

   

                     (受賞のスピーチをするモニカ・ベルッチ)

 

   

   (受賞のスピーチをするロドリゴ・プリエト)