フェルナンド・トゥルエバいよいよ始動*『美しき虜』続編2016年02月28日 14:50

         229日、ブダペストのスタジオでクランクイン

 

★フェルナンド・トゥルエバ『美しき虜』(1998、“La niña de tus ojos”)の続編(第2部)“La Reina de Eapaña”の撮影が始まりまペネロペ・クルスが演じたマカレナ・グラナダの約20年後が語られます。前作の舞台は1938年の第三帝国(ナチス・ドイツ)、ユダヤ人根絶を国是とした国に送り込まれた撮影隊を軸に、トゥルエバが戦争をテーマにして撮った唯一の作品でした。続編は1956年フランコ独裁時代のマドリードです。主要キャストはそのままですが、新たにアナ・ベレン、ハビエル・カマラ、アルベルト・サン・フアン、カルロス・アレセス、ギジェルモ・トレド、アイーダ・フォルチ、チノ・ダリン、ラモン・バレア、更にアルトゥーロ・リプスタインが出演するというのも本当らしい。ブニュエルの助監督としてキャリアを出発させたメキシコの監督、とにかく豪華版です。

 

         

        (ホルヘ・サンス、PP、アントニオ・レシネス ポスター)

 

229日、ブダペストのスタジオでクランクイン、撮影は10週間の予定、最初の4週間をブダペストのスラジオ、残りの6週間はスペインに戻って撮る予定とアナウンスされました。、

 

★本作に限ったことではないが、例えばオスカー作品『ベルエポック』にしろ続編など撮る気は皆無だったから勧められても断ってきたと監督。じゃどうして『美しき虜』の続編を撮る気になったかというと、皆から「フォンティベロスは死んじゃったのかい?」と訊かれるからだと監督。「映画はお話で、つまりお話で映画は作られている。しかし1938年のナチスが一人の映画監督を捕まえて殺してしまうだろうか。刑務所にぶち込むことはあっても、そんなことはしないだろう。それでイメージがどんどん膨らんできて、結局撮ることにした」そうです。フォンティベロス監督役アントニオ・レシネスは、昨年からスペイン映画アカデミー現会長です。しばらくスクリーン上では見られないと思っていたのですが杞憂でした。IMDbでは「2016年」とありますが、まだアップされたばかりで不完全、今年中は日程的に無理でしょう。

 

       

        (ロレス・レオン、PP、ロサ・マリア・サルダ、映画から)

 

解説:マカレナ・グラナダは、まず親友のトリニと一緒にアルゼンチンに渡り、そこからハリウッドを目指す。そこでは多くの監督に起用され、結婚も離婚も体験して、オスカー賞さえ手にしてしまう。女優として全ての映画ポスターに大文字で名前が載るほどの成功をおさめた。一方フォンティベロス監督はドイツで収監され第二次世界大戦を生き延びるが、出所後も帰国せずフランスに亡命、労働者として働いていた。まったく違った運命を辿った二人だが、18年後ハリウッドのスーパープロダクションが格安のスペインのスタジオを使って「カトリック女王イサベル」の伝記映画『スペイン女王』の映画を企画、はからずも二人に白羽の矢が立ち旧友たちとマドリードで邂逅することになる。新しい仲間たちも加わってスペイン米国合作の映画製作が始まることになる。

 

      

    (公開された絵コンテの一部から、背後にHOLLYWOODの巨大看板が見える)

 

★トゥルエバ監督は1955年生れ、日本風に言うと還暦です。続編の時代設定が1956年なのは意図したものでしょうか。1950年代半ばのスペインでは、ハリウッドの大型プロダクションが「第二のハリウッド」西米合作映画を撮っていた。例えば、ロバート・ロッセンの『アレキサンダー大王』(56)、後にエリザベス・テーラーと結婚離婚を繰り返したリチャード・バートンが主演、マドリード郊外のエル・モラルやメンドサ城のあるマンサナレス・エル・レアル、マラガでも撮影した。ロッセン監督はポール・ニューマンを起用して『ハスラー』(61)を撮った監督です。エリザベス・テーラーで思い出したが、テネシー・ウィリアムズの戯曲の映画化、ジョセフ・L・マンキーウィッツが監督した『去年の夏 突然に』(59)もスペインでロケされた。ただし、物語的に「去年の夏突然起こったこと」がスペインだったこともあるが、要するに格安な労働力が目的だった。キャサリン・ヘップバーン、モンゴメリー・クリフトなど当時の大スターが競演した作品。

 

        

              (フェルナンド・トゥルエバ監督)

 

★スタンリー・クレーマーの『誇りと情熱』(57)、これにはケーリー・グラント、ソフィア・ローレン、フランク・シナトラが出演している。キング・ヴィダーの『ソロモンとシバの女王』(59)、ユル・ブリンナーとジーナ・ロロブリジーダが出ていた。1960年代に入ると、サミュエル・ブロンシテイン(190894)がマドリードに「サミュエル・ブロンストン社」のスタジオを設立、『エル・シド』(61,監督アンソニー・マン)、『北京の55日』(63,同ニコラス・レイ)などが続々製作された。彼はモルドバ生れのユダヤ系ロシア人で、亡命アメリカ人のプロデューサー、スペイン語も学んでおり、「サミュエル・ブロンストン社」はスペインだけで映画製作をした会社だそうです。こんなところが続編の時代背景です。

 

主要キャスト

ペネロペ・クルス(女優マカレナ・グラナダ)

アントニオ・レシネス(監督ブラス・フォンティベロス)

サンチャゴ・セグラ(カスティージョ)

ホルヘ・サンス(フリアン・トラルバ)

ロサ・マリア・サルダ(ロサ・ロサレス)

ロレス・レオン(トリニ・モレノス)

ネウス・アセンシ(ルシア・ガンディア)

ヘスス・ボニージャ(マルコ・ボニージャ)

 

★続編登場の俳優のうち、銀幕から遠ざかっていたアナ・ベレン出演は個人的に嬉しい。トゥルエバ映画は1985年の“Sé infiel y no mires con quién”以来です。ハビエル・カマラは初めての出演だが、弟ダビ・トゥルエバの『Living Is Easy With Eyes Closed』(13、オリジナルVivir es fºácil con los ojos cerrados)で念願のゴヤ賞主演男優賞を受賞しているから、オファーはそのあたりからきたのかもしれない。アイーダ・フォルチは、『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』のモデル役で合格点を貰っている。チノ・ダリンはリカルド・ダリンの息子です。前作は悲喜劇でしたが、新たに参加することになった顔ぶれから、コメディ色が強そうです。

 

    フランコ総統も出てくるの?――「それはチケット買って見に来てね」

 

★ダビ・トゥルエバは前作では脚本の共同執筆者の一人でしたが、目下脚本家としては監督自身しかクレジットされておりません。脚本の主要部分を執筆したラファエル・アスコナも既に鬼籍入りしており、20年の年月は長いと感じます。撮影もハビエル・アギレサロベからホセ・ルイス・アルカイネに、音楽はアントワーヌ・デュアメルからポーランドのズビグニェフ・プレイスネルに、これには驚きます。クシシュトフ・キェシロフスキの『ふたりのベロニカ』や「トリコロール」三部作のスコアを担当した作曲家、どこで繋がったのでしょうか。製作はトゥルエバ夫人のクリスティナ・ウエテがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、こちらは同じです。フリオ・メデムの“Ma Ma”でプロデューサー・デビューしたペネロペ・クルスがこれにも参画しています。

 

★他にアメリカの俳優クレイヴ・レヴィルがクレジットされているのは、監督が映画の神様として愛してやまないビリー・ワイルダーへのオマージュだそうです。ワイルダーの『シャーロック・ホームズの冒険』(70)に出演している。本作ではアルコール中毒の監督を演じるそうです。他に『星の王子さま』の実業家役、『スター・ウォーズエピソード5』の皇帝のボイスなど。ハリウッドの大製作会社のプロデューサー役になるのか、マンディ・パティンキン(『ドクター』『エルモと毛布の大冒険』)もクレジットされている。他にもカメオ出演している俳優がいるとのこと。「じゃ、フランコ総統も出てくるの?」、その質問には答えられません。「チケット買って映画館で確かめてね」ですと。

 

F・トゥルエバ関連記事

映画国民賞2015受賞とキャリア紹介記事は、コチラ⇒2015717

『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』のQ&Aは、コチラ⇒20131031

Vivir es fºácil con los ojos cerradosの主な記事は、コチラ20141301121

クリスティナ・ウエテの記事は、コチラ⇒2014112

 

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