ゴヤ賞2016結果発表 ⑰2016年02月07日 23:23

        下馬評通り“Truman”が大賞を独り占めしました

 


   (会長アントニオ・レシネス、副会長グラシア・ケレヘタと同エドモン・ロチ)

 

★今朝6時から授賞式にお付き合い、途中でくたびれたこともあって休息をとっている間に終わってしまいました。最多12個ノミネーションのパウラ・オルティスの“La novia”は、撮影賞・助演女優の2個にとどまり、やはりセスク・ゲイの“Truman”に完敗しました。作品・監督・脚本・主演男・助演男の5個、貰えなかったのは編集賞だけという効率の良さでした。海外勢は帰国するときは手ぶらが恒例でしたが、リカルド・ダリンが覆しました。しかし既にアルゼンチンの俳優という枠を超えていましたから抵抗なかったのでしょう。未だに相思相愛というリカルド夫人と一緒に来た甲斐がありました。

 

 

    (左から監督、マルタ・エステバン、リカルド・ダリン、トマス・アラガイ)

 

★フリオ・メデムの“Ma Ma”のヒロインペネロペ・クルス、アトリエ・ヴェルサーチの豪華なミラノ・ファッションを身にまとって、夫ハビエル・バルデムと赤絨毯を踏みました。残念ながら無冠に終わりました。海外での大成功を羨むスペイン人は、二人が米国暮らしであることも手伝って好意的とは言いがたい。何によらず国際的に活躍する人に対するアレルギー反応が強い。コロンビアのメデジン・カルテルの麻薬王パブロ・エスコバルの伝記映画Amando a Pablo, odiando a Escobarに揃って出ます。エスコバルの80年代の愛人、元ジャーナリストのビルヒニア・バジェッホの同名回想録(2007年刊)の映画化。バルデムがエスコバル、クルスが愛人ビルヒニアになります。“Un día perfecto”で脚色賞を受賞したフェルナンド・レオン・デ・アラノアが監督します。こちらはスペイン語で撮るようですからカテゴリー的にはスペイン映画ですかね。現在は「ポデモスPodemos」党についてのドキュメンタリーを撮っている由、次期アカデミー会長を目指しているとか。

 

 

            (ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム)

 

★主演女優賞はフォルケ賞を受賞したナタリア・デ・モリーナの手に渡りました。「ゴヤ賞が欲しくない人なんていないでしょ」、そうですね。「ビノシュさんにお目にかかれて光栄でした」と興奮気味。ビノシュの出席は若い俳優には刺激になったようです。2014年に新人女優賞、今回主演とナタリアほど強運の人は珍しい。助演ルイサ・ガバサ、新人イレネ・エスコラルとほぼ予想は当たりました。 

     

               (ナタリア・デ・モリーナ)

 

    ノーベル賞作家と4人のオスカー賞受賞者が一堂に会しました

 

★ノーベル賞作家マリオ・バルガス=リョサが脚本賞のプレゼンターとして登場することはアナウンスされていましたが、本当に赤絨毯に現れたのでビックリでした。しっかり手を握っている女性はどなたかしら、もしかしてイサベル・プレイスラー。1951年フィリピンのマニラ生れ、テレビ司会者、ジャーナリスト、モデル。両方の国籍をもっている。二人はそれぞれ前の連れ合いと離婚して昨年結婚したばかり、同じ三婚目です。彼女の最初の夫は歌手のフリオ・イグレシアス、そんな歌手知らないという方、エンリケ・イグレシアスの父親といえば分かるでしょうか。つまりエンリケのお母さんです。とにかく華麗な人生を歩んでいる女性ですね。ノーベル賞の老作家もなかなかやりますね。二人ともアカデミー会員、新会長アントニオ・レシネスも負けず劣らずやりますね。

 

           

            (注目の的となったバルガス=リョサ御夫妻)

 

4人のオスカー賞受賞者の一人ジュリエット・ビノシュも約束通り来てくれました。スペインの映画祭ということでロエベの大胆な衣装で貫禄の登場でした。イサベル・コイシェの“Nadie quiere la noche”が4個受賞したのはちょっと意外、監督もさぞかし面目を施したことでしょう。間際まで来西がペンディングだったもう一人のオスカー俳優ティム・ロビンスもにこやかに登場、受賞はまったく期待していなかったのに律儀な人です。関係者はホッとしたかな。残りの二人はハビエル・バルデムとペネロペ・クルス夫妻です。

 

  

   (談笑するジュリエット・ビノシュ、ティム・ロビンス、ハビエル・カマラの三人)

  

        政治家の出席が多かったのは、どういうわけでしょう?

 

★ゴヤ賞は19873月17日、当時の国王フアン・カルロス1世御夫妻を招いて、マドリードのロペ・デ・ベガ劇場で開催されました。当時173人だったアカデミー会員も1400人にふくれ上がり一大イベントとなりました。現在は王室関係者の姿はありませんが、代わりに政治家の出席が目立ちました。混迷を深めている政治状況が背景にあるようです。国民党PPの教育文化スポーツ大臣のメンデス・デ・ビゴ、社会労働党PSOEの書記長ペドロ・サンチェス、ポデモス党首パブロ・イグレシアス、市民党シウダダノス党首アルベール・リベラ、つまりスペインの現在の4政党が招待されました。現政権のPPは別として、他の政党も招待したのは異例なのか、去年はPP だけだったというのは管理人の記憶違いかな。下の写真ではにこやかですが、実際は膝を蹴り合っています。三人の共通点はイケメンで若いことだけでしょうか。映画のフィエスタとはいえ、映画界も政治と無縁では成り立たない。

 

   

    (左から、パブロ・イグレシアス、ペドロ・サンチェス、アルベール・リベラ)

 

ゴヤ賞2016受賞者一覧

作品賞  “Truman”マルタ・エステバン(製作)

監督賞     セスク・ゲイ “Truman

新人監督賞  ダニエル・グスマン “A cambio de nada

脚本賞  セスク・ゲイ、トマス・アラガイ “Truman

脚色賞  フェルナンド・レオン・デ・アラノア “Un día perfecto

 

主演男優賞  リカルド・ダリン “Truman

主演女優賞  ナタリア・デ・モリーナ “Techo y comida

助演男優賞  ハビエル・カマラ “Truman

助演女優賞  ルイサ・ガバサ  La novia

新人男優賞  ミゲル・エラン “A cambio de nada

新人女優賞  イレネ・エスコラル  Un otoño sin Berlín

 

オリジナル作曲賞  ルーカス・ビダル “Nadie quiere la noche

オリジナル歌曲賞  ルーカス・ビダル、パブロ・アルボラン “Palmeras en la nieve

プロダクション賞  アンドレス・サンタナ、アルタ・ミロ “Nadie quiere la noche

撮影賞  ミゲル・アンヘル・アモエド  La novia

編集賞  ホルヘ・コイラ “El desconocido”『暴走車 ランナウェイ・カー』

美術賞  アントン・ラグナ “Palmeras en la nieve

 

衣装デザイン賞  クララ・ビルバオ Nadie quiere la noche

メイクアップ&ヘアー賞  パブロ・ペロナ、パコ・ロドリゲス“Nadie quiere la noche

録音賞  ダビ・マチャード、ハイメ・フェルナンデス、ナチョ・アレナス“El desconocido

特殊効果賞  リュイス・カステル、リュイス・リベラ“Anacleto, agente secreto

       『SPY TIME スパイ・タイム』

 

アニメーション賞  “Atrapa la bandera”エンリケ・ガト 

ドキュメンタリー賞  “Sueños de sal”アレフレッド・ナバロ 

イベロアメリカ映画賞  El clan”(アルゼンチン)パブロ・トラペロ 

ヨーロッパ映画賞  “Mustang”(トルコ=仏=独)Deniz Gamze Erguven

 

短編映画賞  “El corredor ホセ・ルイス・モンテシノス

短編アニメーション賞  “Alike D・マルティネス・ララ、R・カノ・メンデス

短編ドキュメンタリー賞  “Hijos de la Tierra アレックス・オミル・ツバウ

 

   

                 (栄誉賞受賞のマリアノ・オソレス

 

  

       (オリジナル歌曲賞のルーカス・ビダルとパブロ・アルボラン)

 

          

           (新人監督賞のダニエル・グスマン)

 

           

            (新人男優賞のミゲル・エラン)

    

 20141月に結党したスペインの政党(左翼大衆主義、反体制主義)、英語の「We can」に当たる。党首はパブロ・イグレシアス、ガラにも出席していました。市民党シウダダノスはカタルーニャ州を中心に活動している中道左派の政党、20056月結党。党首はアルベール・リベラ。