オリジナル作曲賞と歌曲賞*ゴヤ賞2016ノミネーション ⑮ ― 2016年02月04日 19:55
ルーカス・ビダル、両カテゴリーにノミネーション―落ち穂拾い
★授賞式も目前、そろそろ別のニュースをと思っていますが、ルーカス・ビダルがオリジナル作曲賞・歌曲賞の両方にノミネーションされていました。日本ではシゲル・ウメバヤシ梅林茂の作曲賞(“La novia”)が話題になっているようです。1951年北九州市生れ、ニューウェーブ・ロック「EX」のリーダー、1984年グループ解散後映画音楽に転身、日本映画以外でもチャン・イーモウの『LOVERS』(04)、『王妃の紋章』(06)、トム・フォードのデビュー作『シングルマン』(09)などを手がけている。コリン・ファースがベネチア映画祭男優賞・英国アカデミーBAFTA主演男優賞を受賞した話題作。東京国際映画祭などで上映後公開された。スペイン映画は初めてでしょうか。

(シゲル・ウメバヤシ梅林茂)
★ルーカス・ビダルは、1984年マドリード生れの31歳、バークリー音楽大学の奨学金を得て米国に渡り、その後ジュリアード音楽院でも学んだ。つまりジャズとクラシックに精通しているということです。2009年頃から映画音楽の世界で活躍しはじめ、主に米国映画が多い。例えば映画が成功した『推理作家ポー 最期の5日間』(12)、『ワイルド・スピード EURO MISSION』が有名、スペイン映画ではジャウマ・バラゲロの『スリーピング・タイト 白肌の美女の異常な夜』(11)、ダニエル・カルパルソロの『インベーダー・ミッション』(12)など。前者はガウディ賞2012にノミネートされた。現在は本拠地をロスアンゼルスに定め、米国とスペインを行ったり来たりしている。2014年の第1回イベロアメリカ・プラチナ賞の授賞式にプレゼンターとしてパナマに赴いている。子供のときからピアノを弾きながら映画を見ていたという、根っからの映画好き、「音楽は数学に似ている。生涯に渡って生きる助けになる。心を高め、感情を豊かにして、辛いことも忘れさせてくれる」と語っている。ボストン・バレエ団のダンス・ミュージックを作曲したり、マテオ・ヒルの最新作“Project Lazarus”(2016、西仏合作)の音楽を担当したりと世界を飛び回っている。これは英語映画ですが興味を唆られる作品、いずれアップしたい。

(ルーカス・ビダル、マドリード王立劇場の1階観客席にて)
★ゴヤ賞ノミネーションは初めて、オリジナル作曲賞にイサベル・コイシェの“Nadie quiere la noche”、オリジナル歌曲賞にフェルナンド・ゴンサレス・モリーナの“Palmeras en la nieve”、こちらにはパブロ・アルボランもノミネーション。ルス・ガバスのベストセラー小説の映画化、マリオ・カサスとアドリアナ・ウガルテが出演している。ゴヤ賞ノミネーションは5個(歌曲・美術・プロダクション・衣装デザイン・メイクアップ)です。2015年12月に公開されたときご紹介するつもりでしたが、今となってはもはや時間切れ、ポスターはこんな感じです。

(マリオ・カサスとアドリアナ・ウガルテを配したポスター)
★また今ではアルモドバルの専属みたいになっているアルベルト・イグレシアスも久しぶりにフリオ・メデムの“Ma Ma”でオリジナル作曲賞にノミネートされています。作曲家と監督はともにサンセバスチャン生れのほぼ同世代のシネアストです。アルベルト・イグレシアスが映画音楽を最初に手がけた作品がフリオ・メデムの『バカス』(92)、翌年の第2作『赤いリス』で初めてゴヤ賞を受賞しました。メデムも新人監督賞を受賞した記念すべき作品です。続いて『ティエラ―大地』(96)、『アナとオットー』(98)、『ルシアとSEX』(01)と受賞、アルモドバル作品などを含めるとゴヤ胸像10個のコレクター、調べたわけではありませんが、2桁は彼以外にいないと思います。控えめではにかみ屋のせいか受賞スピーチが短く、これは主催者だけでなく誰にとっても歓迎でしょう。アカデミー会員が「アルベルト、もう飾る棚がないから、これ以上要らないよね」と思うかどうか。ただアルモドバルの『私が、生きる肌』(11)以来遠ざかっているが。

(イシアル・ボリャイン『雨さえも~ボリビアの熱い一日』で9個目のゴヤ胸像を手に)
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