第72回ベネチア映画祭2015*ノミネーション発表 ①2015年08月07日 11:58

     アルゼンチンとベネズエラの映画がコンペにノミネーション

 

★今年のベネチアは92日開幕、金獅子を競うコンペティション部門には、イタリア映画4作品を含めて21作がノミネーションされた(729日発表)。スペイン語映画は2作品。スペインはゼロ、アルゼンチンのパブロ・トラペロEl clanにアルモドバル兄弟の「エル・デセオ」が参画しているから、あると言えばあるのかな。もう一つはベネズエラのロレンソ・ビガスDesde alláだけです。 


★サンセバスチャン映画祭と同じ9月に開催されるから、スペイン語映画はどうしても少ない。場所もリド島と足の便が悪いうえに(水上バスを利用、蚊が多くて蚊取り線香が必需品とか)、開催時期はホテル代も高騰、レストランでの食事代も跳ね上がるから、お金のないスペインでは取材記者にも歓迎されない。自国のサンセバスチャンは料理もスペイン一美味しいし、レストランも節度を守って値段が高騰することはない。ホテルが会場近くに取れないのは致し方ない。消費税増税でチケット代が高くなったが、それでも日本ほど非常識ではない()

 

★マルコ・ベロッキオ、イエジー・スコリモフスキ、アモス・ギタイなどの大物から、アトム・エゴヤン、アレクサンドル・ソクーロフなど、カンヌの常連さんも目についた。日本ではソクーロフは35ミリフィルム全16作品の特集が組まれたほどコアなファンが多い。他に『闇の列車、光の旅』の日系アメリカ人キャリー・フクナガの名もあったが、これは英語ですね。

 

★審査委員長は、メキシコのアルフォンソ・キュアロン監督、オスカー受賞の『ゼロ・グラビティ』は、2013年のオープニング作品だったし、『天国の口、終りの楽園』では脚本賞、G.G.ガエルとディエゴ・ルナが新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞するなど、ベネチアとは縁が深い。ほか審査員もキラ星のごとく並んで豪華版、どう折り合いをつけるかキュアロンも大変だ。

 

     El clanThe Clan)アルゼンチン=スペイン 2015

製作Kramer & Sigman Films / Matanza Cine / El Deseo / Telefe / INCAA / ICAA

監督・脚本:パブロ・トラペロ

撮影:フリアン・アペステギア

衣装:フリオ・スアレス

データ:スペイン語、自伝・スリラー、撮影ブエノスアイレス、配給元20世紀フォックス

公開:アルゼンチン813日、ウルグアイ93日、チリ924日、ペルー123

 

キャスト:ギジェルモ・フランセージャ(アルキメデス・プッチオ)、ピーター・ランサニ(息子アレハンドロ)、リリ・ポポビッチ、他

 


解説1980年代に多くの人を営利誘拐、多額の現金を手にした後に殺害していた誘拐団プッチオの実話にインスパイアーされて製作された。プッチオ親子は実在の人物であるが映画はフィクション。プッチオ家の住居はサン・イシドロにあり、階下を水上スポーツ用品の店舗にしていた。人質を監禁していた地下室は外部に物音が漏れないよう密閉されていた。何故プッチオがこのような凶悪な犯罪を繰り返していたかの本当の理由が明らかにされるが、1976年まで時間を遡っていくことになる。


★アルキメデス・プッチオにカンパネラの『瞳の奥の秘密』でリカルド・ダリンの相棒になって洒脱な演技を披露したギジェルモ・フランセージャが扮した。アルゼンチンのお茶の間では知らない人がいないといわれるコメディアン、そのミスマッチも楽しめるか。

 

パブロ・トラペロ監督は、昨年のカンヌ映画祭「ある視点」の審査委員長を務めたときにご紹介しました。そのときの記事に追加訂正して再録します。

1971年ブエノスアイレス州サン・フスト生まれ。製作者、監督、脚本家、エディター、俳優と多彩。2000年に『檻の中』の主演女優マルティナ・グスマンと結婚、出演した赤ん坊は二人の実子。2002年に第2作“El bonaerenseを公開するため製作会社「マタンサ・シネMatanza Cine」をグスマンと設立、自身の『檻の中』『カランチョ』他を手掛けている。カンヌ映画の常連の一人。

 

                                     (第69回ベネチア映画祭で審査員になった。2012年)

  フィルモグラフィー

1999 Mundo grúa 国内映画賞以外の受賞、ヴェネチア映画祭Anicaflash 賞、ロッテルダム映画祭2000タイガー賞、ハバナ映画祭1999特別審査員賞を各受賞、ゴヤ賞2000ノミネートなど多数

2002 El bonaerense (ブエノスアイレス出身者の意味) カンヌ映画祭「ある視点」出品、シカゴ映画祭2002国際映画批評家連盟賞受賞、グアダラハラ映画祭、カルタヘナ映画祭、多数。

2004 Familia rodante コメディ、ロード・ムービー

2006 Nacido y criado ドラマ

2008 Leonera『檻の中』カンヌ映画祭コンペ正式出品、アリエル賞2009受賞、ハバナ映画祭特別審査員賞受賞、他多数。「ラテンビート2009」上映

2010 Carancho『カランチョ』カンヌ映画祭「ある視点」出品、サンセバスチャン映画祭、「ラテンビート2010」などで上映

2012 Elefante blanco『ホワイト・エレファント』カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、「ラテンビート2012」上映

2012 7 días en La Habana 『セブン・デイズ・イン・ハバナ』(7人の監督のオムニバス)

カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、20128月公開 

 

★次回はベネズエラの新進監督ロレンソ・ビガスDesde alláと、オリゾンティ部門のロドリーゴ・プラUn monstruo de mil cabezas(メキシコ)、映画祭と並行して開催される「ベニス・デイ」で上映されるカルロス・サウラ、チリのマティアス・ビゼなどの作品を予定しています。因みにサンセバスチャン映画祭のベロドロモ(大型スクリーン)で上映されるダニ・デ・ラ・トーレのスリラーEl desconocidoがオープニングに選ばれています。サンセバスチャンに先駆けての上映となります。

 

 

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