第72回ベネチア映画祭2015*ノミネーション発表 ② ― 2015年08月08日 18:35
ベネズエラ初のコンペティションに選ばれたロレンソ・ビガスの快挙
★初監督作品とはいえビガス監督はベテランです。前回パブロ・トラペロの“El clan”をご紹介いたしましたが、彼と同じ傾向の気難しい社会派監督の印象です。今年のベネチアは世界の巨匠たち、粒揃いの力作が目立ちますが、「アレクサンドル・ソクーロフ、アトム・エゴヤン、それにアモス・ギタイと同じ土俵で競うなんて、本当に凄い。まだノミネーションが信じられない。デビュー作が三大映画祭のコンペティションに選ばれるなんてホントに少ないからね」とビガス監督もかなり興奮しています。まずは作品紹介から。
“Desde allá”ロレンソ・ビガス、ベネズエラ、2015
製作:Factor
RH Producciones / Lucia Films / Malandro Films
監督・脚本・プロデューサー:ロレンソ・ビガス
脚本(共同):ギジェルモ・アリアガ
撮影:セルヒオ・アームストロング
プロデューサー:ギジェルモ・アリアガ、ミシェル・フランコ、ロドルフォ・コバ、エドガー・ラミレス(エグゼクティブ・プロデューサー)、ガブリエル・リプステイン(同)
データ:ベネズエラ=メキシコ、スペイン語、2015、ドラマ、93分
キャスト:アルフレッド・カストロ(アルマンド)、ルイス・シルバ(エルデル)、カテリナ・カルドソ、ホルヘ・ルイス・ボスケ、スカーレット・ハイメス、他初出演者多数
プロット:歯科技工士アルマンドの愛の物語。アルマンドはバス停留所で若い男を求めて待っている。自分の家に連れ込むためにはお金を払う。しかし一風変わっていて、男たちが彼に触れることを受け入れない。二人のあいだにある「エモーショナルな隔たり」からのほのめかしだけを望んでいる。ところが或るとき、彼を殴打で瀕死の状態にした男に出会ったことで、彼の人生は突然破滅に向かっていく。タイトルの“Desde allá”は「遠い場所から」触れることのない関係を意味して付けられた。
トレビア:短編“Los
elefantes nunca olvidan”から十年余の沈黙を破って登場した長編は、プロットからも背景に政治的なメタファーが隠されているのは明らかです。ベネズエラのような極端な階層社会では今日においても起こりうることだと監督。プロデューサーの顔ぶれからも想像できるように、ベネズエラ(エドガー・ラミレス『解放者ボリバル』、ロドルフォ・コバ“Azul y no tanto rosa”)、メキシコ(ギジェルモ・アリアガ『21グラム』『アモーレス・ペロス』、ミシェル・フランコ『父の秘密』“Chronic”)と、ベテランから若手のプロデューサーや監督が関わっている(E・ラミレスはボリバルに扮した)。本作と短編、既にタイトルも決まっている次回作“La caja”の3本を合わせて三部作にしたい由。
*主役のアルフレッド・カストロはチリのベテラン俳優、パブロ・ララインのピノチェト三部作ほか殆ど全作に出演しており、当ブログでも再三登場してもらっています。他のキャストはテレビや脇役で映画出演しているだけのC・カルドソやS・ハイメス以外は、本作が初出演のようです。監督によると、エルデル役のルイス・シルバは映画初出演ながら、ガエル・ガルシア・ベルナルのようなスーパースターになる逸材とか。しかし、かなり厳しい内容なのでベネチアの審査員や観客を説得できるかどうか。(アルフレッド・カストロ、映画から)
*監督キャリア
& フィルモグラフィー紹介*
★ロレンソ・ビガスLorenzo Bigas Castes:1967年ベネズエラのメリダ生れ、監督、脚本家、製作者。クリスチャン・ネームは一応スペイン語表記にしましたが、イタリア語のロレンツォかもしれません。大学では分子生物学を専攻した変わり種。それで「分子生物学と映画製作はどう結びつくの?」という質問を度々受けることになる。後にニューヨークに移住、1995年ニューヨーク大学で映画を学び、実験的な映画製作に専念した。1998年ベネズエラに帰国、ドキュメンタリー“Expedición”を撮る。1999年から2001年にかけてドキュメンタリー、CINESA社のテレビコマーシャルを製作、2003年、初の短編映画“Los elefantes nunca olvidan”(13分、プレミア2004年)を撮り、カンヌ映画祭2004短編部門で上映され、高い評価を受ける。共同製作者としてメキシコのギジェルモ・アリアガ、撮影監督にエクトル・オルテガが参画して撮られた。その後メキシコに渡り長編映画の脚本を執筆、それが今回ベネチア映画祭ノミネーションの“Desde allá”である。
2004“Los elefantes nunca olvidan”短編、監督・脚本・製作、製作国メキシコ、スペイン語。カンヌ映画祭の他、モレリア映画祭、ウィスコンシン映画祭で上映される(写真下)。
2015“Desde allá”長編第1作、監督・脚本・製作
*関連記事・管理人覚え
『解放者ボリバル』の記事は、コチラ⇒2013年9月16日/2014年10月27日
“Azul
y no tanto rosa” ゴヤ賞2014イベロアメリカ部門紹介記事は、コチラ⇒2014年1月15日
『父の秘密』の記事は、コチラ⇒2013年11月20日
“Chronic” カンヌ映画祭2015の記事は、コチラ⇒2015年5月28日
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