サンティアゴ・サンノウ”Alacran enamorado”*ゴヤ賞2014ノミネーション2014年02月02日 14:26

★ラテンビート2009で上映されたなかで際立っていた映画の一つが、サンティアゴ・A・サンノウの第1『クアホ、逆手のトリック』2009)でした。その後、スペイン・サッカー連盟設立100周年のドキュメンタリー、また西アフリカ、ギニア湾岸のベニン共和国出身の父親が37年振りに故国に帰還するドキュメンタリー**を撮っていて、なかなか新作が届かなかった。昨年4月スペイン公開となった第2Alacrán enamoradoオスカー賞2014スペイン代表最終候補4作の一つに残った情報をキャッチ、ゴヤ賞ノミネートを待っておりました。字幕入り上映が期待できますからね。

 


  Alacrán enamoradoScorpion in Love

製作:エル・モンヘ・ラ・ペリクラAIE、モレナ・フィルム

監督:サンティアゴ・サンノウ

脚色:サンティアゴ・サンノウ、カルロス・バルデム(小説と脚色)

撮影:フアン・ミゲル・アスピロス

音楽:ヴォルフランク・サンノウ?(Woulfrank Zannou

美術:リョレンス・ミケル(Llorenç Miquel

データ:スペイン・スペイン語 2013 ドラマ・スリラー ボクシング 人種差別 ナチズム

  2013412日スペイン公開

 

キャスト:アレックス・ゴンサレス(フリアン・ロペス‘アラクラン’)、カルロス・バルデム(カルロモンテ)、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(ルイス)、Judith Diakhate(アリッサ)、ホビック・コイヒケリアン(ペドロ)、ハビエル・バルデム(ソリス)、エリオ・トファナ(フェリペ‘ロコ’)、カルロス・カニオヴィスキー(フリアン父)、マレナ・グティエレス(フリアン母)他

 

プロット:やり場のない憎しみで凝りかたまった青年フリアンの物語。サソリのような毒をもったフリアンと親友ルイスは、ネオナチ主義者のカリスマ「ソリス」がリーダーの暴力グループの一員だ。ボクシング・ジムに通うようになり、そこで引退ボクサーのトレーナー「カルロモンテ」に出会う。彼の誠実さに惹かれていくなかで、ジムで働くアリッサと恋に落ちてしまう。少しずつ人生を変えようとするが、グループは彼の離脱を許さない。血と汗と涙が流れる、闘いと解放の物語。

 

★ゴヤ賞ノミネート:助演男優賞(カルロス・バルデム)、新人男優賞(ホビック・コイヒケリアン)、オリジナル脚色賞(監督、カルロス・バルデム)、美術賞(リョレンス・ミケル)の4部門

オリジナル脚色賞(サンノウ監督、カルロス・バルデム)、カルロス・バルデムの同名小説の映画化。彼は作家として既に数冊の小説を出版しており、Muertes Ejemplaresが、1999年ナダル賞の審査員特別賞(佳作)を受賞しています。

ゴヤ賞以外のノミネート:シネマ・ライターズ・サークル賞(スペイン)に、オリジナル脚色賞、助演男優賞、新人男優賞と、美術賞以外はゴヤ賞と同じセクションにノミネート。

 

 


サンティアゴ・A・サンノウ Santiago A Zannou は、1977年マドリードのバリオ、カラバンチェル生れ。1970年ごろベニンから移民してきた父とアラゴン生れの母の三人兄弟の末っ子として生れた。音楽担当のWoulfrankは長兄で音楽プロデューサーをしており、デビュー作『クアホ、逆手のトリック』で既にゴヤ賞オリジナル歌曲賞を受賞しています。10代後半にマジョルカに移り店員やボーイ、3部リーグのチームでサッカーをしていた。映画を天職にしようとしたきっかけは、兄が担当していた短編のサウンドトラックを手伝ったことだった。その後バルセロナのカタルーニャ映画スタジオ・センターで映画を学んだ。同じ時期に生れ故郷マドリードを訪れた折り、同じカラバンチェル生れの「エル・ランギ」ことフアン・マヌエル・モンティーリャと知り合い、これが『クアホ、逆手のトリック』誕生に繋がっていった。

(写真はゴヤ賞2009授賞式の舞台に上がった監督とフアン・マヌエル・モンティーリャ)

フィルモグラフィー

2004Cara sucia 短編20分、ゴヤ賞短編映画賞ノミネート

2005 Mercancias 短編15

2008 El truco del manco クアホ、逆手のトリックゴヤ賞新人監督・新人男優・歌曲賞受賞、ラテンビート2009上映時の邦題

2009 El alma de La Roja ドキュメンタリー(La Roja赤は選抜チームのユニフォームの色)

2011 La puerta de no retorno **ドキュメンタリー

 

 


カルロス・バルデムCarlos Encinas Bardem 俳優・脚本家・作家。1963年、女優ピラール・バルデムと父ホセ・カルロス・エンシナス(1995没)の長男としてマドリードに生れる。オスカー俳優ハビエルは弟。1955年カンヌで国際批評家連盟賞を受賞した『恐怖の逢びき』の監督フアン・アントニオ・バルデムは伯父(2002没)。マドリード自治大学で歴史学を専攻。ゴヤ賞がらみでは、2010年にダニエル・モンソンの『第211号監房』(2009)のアパッチ役で助演男優賞にノミネートされただけ。同作でスペイン俳優組合賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、他を受賞しています。

今年の助演男優賞の面々はいささか精彩を欠くのではないでしょうか。主演とダブル・ノミネートのデ・ラ・トーレ、ロベルト・アラモ、フアン・ディエゴ・ボトとドングリの背比べの感がします。今回はボクシングのトレーナー役カルロス・バルデムの可能性が高いと予想しています。弟ハビエルのオスカー賞で母ピラールが流した涙が再び見られるかもしれない。

(写真はアレックス・ゴンサレスのヘルメットを調整するバルデム、映画のワンシーンから)

 

 


★新人男優賞のHovik Keuchkerian の正確な読みが分かりませんが、一応ホビック・コイヒケリアンと表記しました。新人男優賞紹介記事の繰り返しになりますが、1972年レバノン共和国の首都ベイルート生れ。父親はドイツ人、母親がナバラのスペイン人、3歳からマドリードの北西に位置するアルペドレテ(エル・エスコリアルがある)で育つ。元ヘビー級チャンピオンのボクサー、KO勝ち15回という記録保持者。2004年引退後は詩人(数冊出版)、コメディアン、俳優として活躍している異色の人物。本作はボクサー物語ですが、本物のボクサーは「僕一人」と言ってます。ボクシングの指導もしたわけです。40歳を過ぎて変身を遂げた≪新人≫です。(写真は本作撮影時のコイヒケリアン)

 

★ストーリーを読んで「観たいなぁ」と思う人は多くないと思う。殆どの人が「これってクリント・イーストウッドの『ミリオンダラーベイビー』のスペイン版?」、はたまた『ロミオとジュリエット』の現代版をイメージするのじゃないか、何しろ≪恋におちたスコルピオン≫なんだから。デビュー作『クアホ、逆手のトリック』を見ていなければ、サンノウ監督の履歴を知らなければ、網に引っ掛けなかったと思う。バルデム兄弟が出ているとはいえ(ハビエルのファナティックな演技は必見)、キャスト陣だけでは魅力に欠けますから。たぶんストーリーで見せる映画ではなく、役者たちの「眠っていた才能」の掘り起こしに成功した演技を楽しむ映画なんだと思う。俳優たちが今までのテクニックを一度ご破算にして生れかわった姿を見る映画なのかもしれない。サトウキビのように彼らを100パーセント絞れるだけ絞った、「私は製糖工場の経営者」と監督。

 

★人種差別や性差別の映画も過去にたくさんある。スタンリー・クレイマーの『招かれざる客』(1967)は、黒人男性と白人女性の結婚をめぐる家族の葛藤を描いてキャサリン・へプバーンがオスカー像を手にした。スペンサー・トレイシーの遺作となった作品。また西ドイツのライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが描いた『不安は魂を食いつくす』(1974、未公開、DVD2011発売)は、白人とアラブ人の結婚がテーマ。監督は「かつてスペインはアラブ人とユダヤ人を追放した歴史を持つ、そして今日ではアフリカ移民を追い出そうとしている国、人種差別もネオナチも過去の問題ではない」と言い切る。

 

★自分が生まれ育ったマドリードのカラバンチェル地区は、貧しく慎ましく希望がもてない人々が多い。「カラバンチェルを訪ねたとき、失業して親の家に戻ってきた友人が多かった」。「悪の温床になっているところから抜け出すには、監督とか、芸術家とか、ネオナチとかになる・・・」とも。長引く不況で20代若者の失業率は高く、大幅な消費税増税とあいまって映画館に足を向けない。「観客はバカじゃないからつまらない映画は観てくれない」のですね。

 

ガウディ賞2014発表2014年02月03日 19:38

★昨日22日、バルセロナのミュージカル劇場で「ガウディ賞2014」の授賞式がありました。ガウディ賞はネウス・バリュスのデビュー作La plagaが受賞、他に監督賞・脚本賞・編集賞を獲得しました。ネウス・バリュスによると、「こんな危機の時代に映画を撮るなんてクレイジー極まりない」と警告を受けた由、わずか30万ユーロの予算で製作、4部門制覇は快挙でしょうね。

(赤絨毯に勢揃いした関係者一同、写真中央の青いドレスがネウス・バリュス監督)

  


★カタルーニャ語以外の作品賞は、やはり下馬評通りアレックス&ダビ・パストール兄弟のLos últimos díasがダントツの強さを見せました(7部門受賞)。舞台は2013年のバルセロナ、奇妙な疫病が蔓延して人々は屋内に閉じ込められてしまう、という一種の密室劇。ハリウッドのような近未来の世界でないところがスペイン風か。(写真は映画のワンシーンから)

 

 


★マル・コルのTots volem el millor per a ellaの主役ノラ・ナバスが『ブラック・ブレッド』に続いて主演女優賞、クララ・セグラが助演女優賞を受賞しました。

(写真左より、ノラ・ナバス、アガタ・ロカ、クララ・セグラ。映画のワンシーンから)

 


★以下は主要ノミネーション作品、ゴチックが受賞作品・受賞者

ガウディ作品賞(カタルーニャ語)

1Barcelona, nit d’EstiuDani de la Orden ダニ・デ・ラ・オルデン(3部門)

2La PlagaNeus Ballus ネウス・バリュス(5部門)

3Fill de CaínJesús Monllao ヘスス・モンリャオ8部門

4Tots volem el millor per a ellaMar Coll マル・コル8部門

 

カタルーニャ語以外の作品賞

1Los últimos días アレックス&ダビ・パストール兄弟(最多の11部門)

2Grand Pianoエウヘニオ・ミラ 邦題『グランドピアノ~狙われた黒鍵』

3El cuerpoオリオル・パウロ 邦題『ロスト・ボディ』

4El muerto y ser felizハビエル・レボージョ

 

監督賞:パストール兄弟、マル・コル、ネウス・バリュスLa porのジョルディ・カデナ

主演女優賞:ノラ・ナバス、カンデラ・ペーニャ、ビッキィ・ペーニャ、イングリッド・ルビオ

主演男優賞:ハビエル・カマラ、エドゥアルド・フェルナンデス、ホセ・サクリスタン

ダビド・ソランス

 

★受賞作は以下の通り:

最優秀作品賞(カタルーニャ語):La plaga.

最優秀作品賞(カタルーニャ語以外):Los últimos días.
最優秀監督賞: ネウス・バリュスNeus Ballús  La plaga.
最優秀脚本賞:ネウス・バリュス、パウ・スビロス
Pau Subirós  La plaga.
最優秀女優賞:
ノラ・ナバス  Tots volem el millor per a ella.
最優秀男優賞: ホセ・サクリスタン  El muerto y ser feliz.
プロダクション賞:
ジョセップ・アモロス  Los últimos días.
最優秀ドキュメンタリー賞: Món Petit, 
マルセル・バレナMarcel Barrena監督
最優秀短編映画賞: Godka Cirka (Un forat al cel),  Àlex LoraA. Tabaldi.監督
最優秀テレビ映画賞: Carta a Eva,  アグスティ・ビリャロンガ監督
最優秀美術賞:バルテル・ガリャルト Balter Gallart  Los últimos días.
最優秀助演女優賞: クララ・セグラ Tots volem el millor per a ella.
最優秀助演男優賞: ラモン・マダウラRamon Madaula  La Por.
編集賞:ネウス・バリュス、ドミ・パラ
  La plaga.
オリジナル作曲賞: ジョアン・ダウサ
Joan Dausà  Barcelona, nit d’Estiu.
撮影賞: ダニエル・アランジョ
Daniel Aranyó  Los últimos días.
衣装賞:ルールデス・ペレス、
Rosa Tharrats  Història de la meva mort.
録音賞:リシオ・マルコス・デ・オリベイラLicio Marcos de Oliveira、オリオル・タラグニョ

Oriol Tarragñó、ダビ・カジェハ Los últimos días.
最優秀特殊効果賞: リュイス・リベラ、ジャウメ・ノガレル、ジョアン・アギーレ、

マヌエル・ラミレス他  Los últimos días.
最優秀メイキャップ&ヘアーデザイン賞: パトリシア・レイジェス  Los últimos días.
ヨーロッパ映画賞:『愛、アムール』Amour (Amor)  ミハエル・ハネケ

 

赤ゴチックがゴヤ賞関連のものです。多分可能性があるのは、新人監督賞ノミネートのネウス・バリュス、ただしフェルナンド・フランコがライバルだから難しいか。そうなると長編ドキュメンタリー賞のマルセル・バレナ“Món Petitぐらいかもしれない。


ゴヤ賞2014*作品賞候補者座談会2014年02月06日 19:28

★ゴヤ賞授賞式が目前になると、テレビ局や新聞社企画の作品賞ノミネート監督を招いての座談会が恒例となっています。ゴヤ賞、票の行方、製作の苦労、DVD海賊版、経済危機、映画界の現実など多義に渡って語りあっています(「エル・パイス」紙企画)。今年は平均年齢がぐっと下がって、グラシア・ケレヘタが≪最高齢≫と若返りました。各人賞の評判にやや神経質になっている時期なので、タテマエ&ホンネ半々の座談会となっています。授賞式前の総括も混ぜて各監督の近況をお伝えいたします。

 


★口を揃えて「映画を撮る環境でなくなった」こと、「有力なテレビのスポンサーがつかないと、仮に撮れても配給元が見つからない」など悲観的な意見が多かった。次回作が決まっていない「休閑中」の監督に顕著だった。長引く不況、脆弱な経済、政治の混迷、破格な消費税増税(チケット代の高騰)が映画界を脅かしている印象でした。しかしスペインの映画界が危機でなかった時代などなかったと思うんですよ。

(写真左より、フランコ、クエンカ、サンチェス・アレバロ、トゥルエバ、ケレヘタ)

 

 


ダビ・トゥルエバ1969年マドリード)Vivir es fácil con los ojos cerrados7部門)

現在は小説の新作を準備中、映画は目下予定がない。映画が産業として成り立たなくなって私たちは苦しんでいるが、映画館に足を運ばなくなった今の状況は1980年代の終わりに似ているという。良質の映画が沢山あったのに観に来なかった。私の世代は既に生活は安定しているはずなのにそうなっていない。以前だったら「今晩の夕食は何処で食べようか」だったが、「今晩はどうやって夕食にありつこうか」になっているという。

 

映画は社会を反映している。中流階級にボディブローが効いてきて、映画界も御多分にもれずとなっている。生き残るにはごく小さなプロジェクトだけでやるか、民間の大規模なテレビ局の援助を受けるかです。その援助を断ると、監督は(資金調達のための)別の戦いを始めなければならない。交渉が嫌だと配給元が見つからない。わたしのケースでは前作のMadrid 19872011)がそうでした(公開が翌年になり、主演の老ジャーナリスト役ホセ・サクリスタンが「フォルケ賞男優賞」を受賞したのが2013年でした。管理人)。 

 

海賊版の横行には、DVD関係者にも責任の一端があります。新聞を3カ月契約するとDVDが貰えた、と述べていました。

ゴヤ賞については、アスコナがよく言ってたことだが、疲労困憊のすえにご褒美なしで終わるのが普通なんだ、これは今でも同じことが言えると。予想は難しい、5人とも中堅だから。仮に75歳の監督がいれば間違いなくその人にいく。引退の花道になるからね。その年までは貰えなくてもいいんだよ。70ぐらいから意識しはじめて少し経って貰い引退すればちょうどいい。(ダニエル・サンチェス・アレバロから「じゃ、あなたもそうするの?」と聞かれて、「引退しないよ。ダニ、つまり私たちには挫折が必要だという意味だよ。特に君にはね。より良き人間、映画人になるためには辛い挫折の積み重ねが必要なんだ。まじめな話、幸運からさえ身を守るべきなんだ」と答えていました。受賞して欲しいのは「自分より≪戦友)ハビエル・カマラに」と言いきっています。過去に10回ノミネートされ成果はゼロだそうです(新人監督賞、脚本賞、その他を含めた数)。

アスコナRafael Azcona19262008):スペインを代表する脚本家。ゴヤ賞受賞は『ベルエポック』『にぎやかな森』『歌姫カルメーラ』『蝶の舌』、ホセ・ルイス・クエルダのLos girasoles ciegos”(2008)の脚色が遺作となった。翌年のゴヤ賞は16部門ノミネート、脚色賞を受賞した。半世紀以上に渡る彼の偉業を讃える受賞でもあった。脚本家としてのトゥルエバの才能を早くから注目して、トゥルエバのお師匠さんでもあった。

 


グラシア・ケレヘタ1962年マドリード)15 años y un día7部門)

本作が7作目になる。昨年は映画の先輩でもあった父エリアスの死去にともない数多くのセレモニーに出席して忙しかった。自分の映画人生も長くなりベテランの仲間入りになった。脚本を書いては撮り、書いては撮りして歩んできたが、今は執筆しても何時撮れるのだろうか分からない。映画を撮り続けられるかどうか不安になる。前なら良い物語に出会えば、その物語に相応しい方法を探したが、今は最初から如何に小規模に出来るか考えてしまう。いくつかシークエンスを描いて撮ることができたが、今は「シークエンスは1つ」です。若いプロデューサーに言われたことだが、「映画は既にローコストでなく、ノーコストだ」と。

 

トゥルエバの「世間では映画関係者は社会の周辺の人々だとは考えず、金持ちでいい暮らしをしていると誤解している。スペインでは、基本的に芸術を疑いの目で見ているのが大勢、こういう根本的な不一致がアート、文化、社会にはびこっていると思う。ジル・デ・ビエドマのような例が、最も悲惨な例なんだ」という意見に対して、「世間がインテレクチュアルな特質を持っている人々を理解するのは難しい」と応じていました。

Jaime Gil de Biedma 192990):スペイン≪50年世代≫のシュールリアリズムの重要な詩人の一人。同性愛者だったことで差別されペシミスティックな詩が多い。ジークフリード・モンレオンがEl cónsul de Sodoma2009)のタイトルで彼の伝記映画を撮った。主役のジョルディ・モリャが2010年のガウディ賞、ゴヤ主演男優賞にノミネートされた作品。

 

DVDの海賊版については、海賊版でタダ同然で観ることができるならそれで観るようになる。DVD市場はもはや死に体、トップ・マンタの人々を気の毒には思うが、どうしようもないと。

top manta というのは、違法コピーのCDDVDを繁華街で路上販売すること。警察が通報を受けて駆けつけると、急いでmanta(毛布)にくるんでドロンすることから付けられたようです。警官がいなくなるとまたショウバイを始める。

 

ゴヤ賞については、息子から「永遠に二番手だと」言われたらしく、「一つもないかも」と悲観的、それでも出来たら作品賞、だってスタッフ全員で頑張ったから。でもどんな賞でも嬉しい、次のプロジェクトを立ち上げる力になるから。エミリアノ・ピエドラが「どんな小さな賞でも貰うべきだよ。家に帰ったとき君がどんな賞を貰ってきたか誰も分からなくてもだよ」と教えてくれたそうです。

Emiliano Piedra193191):プロデューサー、代表作はカルロス・サウラのフラメンコ三部作(『血の婚礼』『カルメン』『恋は魔術師』)など。

 

 


マヌエル・マルティン・クエンカ1964年アルメリア)Caníbal (8部門)

次回作の予定がなく、目下休閑ちゅう。スペイン映画については、産業的に不確かだから常に不安定で、今は不確実の時代、何がモデルで、どうやるのがベターか分からない。すべてがあまりに細分化されて、どうやってプロデュースしているのかも不明です。変化が速くて、それぞれ一人で何作も掛け持ちしている。それは良くないですよ。だから突然、同時に3作ぐらいが完成している。おかしくないですか。(確かに最近の映画はプロデューサーの数が多くて誰が何を担当しているのか分からないし、俳優もじっくり一つの作品に取り組んでいる余裕はない。管理人)

 

映画を作る情熱も流行に左右される。ジャーナリズムとかコストのかからない方法の採用。これでは後退してるようなもので危険です。自分はそういうパッションとかモードを利用する気はない。配給元のチャンネルとか仲介者と交渉するのが不愉快なんです。「君はこうやって作りなさい、そうしたら私たちが配給してあげます」的なのが嫌なんです。それを飲めば大金が動きます。この世界はタダ働きになるケースが多い、例えばプジョーの工場でタダで働いたら「素晴らしい」なんて思いますか、誰も思いませんよね。

トップ・マンタについては、Caníbalを自分用に買ってしまった。トゥルエバから「消去するためにかい?」と聞かれて、「違うよ、思い出にとっとくためさ」と答えていました。

ゴヤ賞について、「決まっているよ、オリジナル作曲賞さ」と応じて皆を大笑いさせていました。何故ならノミネートされておりません!

 

 


ダニエル・サンチェス・アレバロ1970年マドリード)La gran familia española11部門)

次回作の脚本の執筆を始めており、「スリラー仕立て」のようです。キャスト陣も彼の黄金トリオ、キム・グティエレス、ラウル・アレバロ、彼の全作に出演しているアントニオ・デ・ラ・トーレに決定している。

データから判断すれば、毎年それなりに良い映画が作られていると楽観的。私たちは映画界を取りまく雑音にさらされているから、脚本は自宅で書こうとする。一方で現在生じていることを頭に叩き込むべきだし、スクリーンのなかで語るべきなんだ。また一方ですべてが悪い方向に向かっていることが僕をがんじがらめにしている。「いくつもシークエンスを書くな、どうせ撮れないのは分かってるだろ」と。

 

映画を作りつづけるのは悪いことばかりじゃない。これ以上の危機は来ない。想像力は危機を乗り越える強力な武器となるが、明らかに支配的なモデルではないかもしれない。映画祭の長い行列をみれば、この傾向が消えない限り、みんなが映画を見たがっているんだと思える。映画館に行くのは高いという考えが社会のなかに植えつけられている。(トゥルエバが「まったく馬鹿げている」と相槌をうっている。)

 

ゴヤ賞について、トゥルエバから「リラックスしてる?」と聞かれて、「僕はテニスにだって負けるのは嫌だよ」と返事して、「ゴヤ賞とテニスを比較するなんて」と呆れられていました。

La gran familia españolaがオスカー賞2014のスペイン代表作品の一つに選ばれたら、近所の人からまるで受賞したかのようにお祝いを言われた。「まだ候補者にもなっていないのにィ!」

 

 


フェルナンド・フラン1976年セビリャ)La herida6部門)

本作が長編デビュー作となるフランコは、第2作が進行中、現在次の脚本を書いている由。デビュー作がいきなりノミネートされたわけで、過去の映画界のことが分からないせいか、「自分には良くなっているのか悪くなっているのか分からないが、創造力豊かなもの、前とは異質なものが撮られている」と答えています。

 

この映画は90万ユーロしか資金がなく、プロダクションからは無理だと言われた。ストーリーが面白かったので実現できると思った。この仕事が好きだから仲間と一緒に常に映画を作ってきた。フィルム編集の仕事で生活していた。(テレビ局の援助を受けノーコストで映画を作ることには躊躇しているようだが、実績を積み上げている先輩のようにはいかない印象。)

ゴヤ賞については、「一つは欲しい。もし(主役の)マリアン・アルバレスが主演女優賞をもらえたら」と発言して、ケレヘタとサンチェス・アレバロから同時に「やめてよ、もう」と言われていました。結構みんな神経がピリピリしているようです。

 

★トゥルエバがノミネートの数を果物屋から「ゴヤ賞は1つですか」と聞かれたので、「いいや、7つだよ」と答えたら、「えっ、7つも映画つくったの?」と聞き返されてギャフンとなった話で締めくくりました。映画ファンは「ゴヤ賞、ゴヤ賞」と大騒ぎするが、関係ない人にはこんなものです。 


「あなたが選ぶゴヤの中のゴヤは?」アンケート2014年02月09日 17:47

★「エル・パイス」紙が過去のゴヤ賞作品賞受賞の中から「あなたが選ぶゴヤの中のゴヤ」というアンケートをおこなった(251500開始~71200終了)。前もってエル・パイスの3人の映画評論家が「我がベストワン」を公表、その理由を掲載した。

1)第17回『月曜日にひなたぼっこ』(2002フェルナンド・レオン)グレゴリオ・ベリンチョン

2)第11回『テシス 次に私が殺される』(1996アメナバル)ボルハ・エルモソ

3)第14回『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999アルモドバル)ジョルディ・コスタ

 

  アンケート結果

1『オール・アバウト・マイ・マザー』 36.97

2位『テシス 次に私が殺される』    34.98

3位『月曜日にひなたぼっこ』      28.06

  


★個人的には『テシス』でしたが、やはり総合的に考えると『マイ・マザー』だろうと思っていました。アルモドバル嫌い、ホモ嫌いには残念な結果になりましたが()。スペイン映画に果たしている彼のバツグンの貢献度(ブニュエルとかエリセとかサウラでは? まさか!)、やはり映画が大衆のものだと再認識させた興行成績、スペイン語の多様性を示したセリフ、決して自分を卑下しない女たちの存在(男から女に性転換したラ・アグラードも含む)、完璧な≪メロドラマ≫でしたね。勿論、プロットは荒唐無稽ですよ、でも問題だったでしょうか。

 

★ゴヤ賞7部門、オスカー賞、ゴールデン・グローブ賞、セザール賞(フランスのアカデミー賞)、カンヌ映画祭でも監督賞を受賞した映画でした。これに先立つ3作『キカ』(1993)『私の秘密の花』(1995)『ライブ・フレッシュ』(1997)の集大成のような印象を受けたファンも多かったのではないか。

 

★こんなストーリーで泣くもんかと思っていたのに、アントニア・サン・フアン扮するラ・アグラードの告白には泣いてしまった。このフィルム構成のなかの隠れた中心人物こそラ・アグラードでした。アルモドバルが一番訴えたかったことを言葉にした。監督によれば、これにはモデルがいるそうですが、カリスマ的で活力にあふれたアントニアの演技には脱帽です。ドラッグ中毒の新進女優ニナ役のカンデラ・ペーニャでなく彼女が助演女優賞にノミネートされていたら受賞したのに、と思ったのでした。

 

★アルモドバル映画については既に多くの方が語っているので、今のところ当ブログでは予定していません。以下は評判のイマイチだった(確かによくない)『抱擁のかけら』(邦題もよくない)の楽しみ方についてCabinaさんブログに書いたダイエット版です。(劇場公開前の2010119にコメント)

  


フィルム・ノワール風のメロドラマ+ブラック・コメディは、ハリウッド向きではない。もともとアルモドバルはプロットで観客を魅了するタイプの監督ではありません。手法は新しくても本質はメロドラマ、ブラック・コメディ作家です。巨匠ガルシア・ベルランガの優等生です。アルモドバルのファンには二つの流れがあって、『グロリアの憂鬱』(1984)または『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1988)あたりまでが好きな人と、『オール・アバウト・マイ・マザー』でオスカー監督になってからの作品を好む人に分かれる、大勢は後者です。前者のファンの中には最近の作品を全然評価しないアルモドバル・ファンも結構います。個人的には前者に属しますが両方楽しみます。

 

お薦めの鑑賞法は、プロットを追っていると少し退屈すると思うから、本作では過去の作品や先輩監督へのオマージュが殊のほか満載されているので、そこらへんを楽しんでみるのもお薦めです。ロッセリーニの『イタリア旅行』とか、ビリー・ワイルダーの『七年目の浮気』のマリリン、『ティファニーで朝食を』のオードリーなど、既にあちこちで指摘されていますけど。

 

ハリウッドを代表するメロドラマ監督ダグラス・サーク、『死刑台のエレベーター』のルイ・マル、『血を吸うカメラ』の鬼才マイケル・パウエル、ベルイマン、フェリーニ、なにがしかプロットに絡んでいて、ただのオマージュではないようで、例えば失明とか交通事故とかね。交友関係にあったランサロテ出身の芸術家セサル・マンリケは、199273歳で交通事故で亡くなった。その悲劇の場所が映画と重なる。映画の中にはマンリケの美しいオブジェが見事映像化されて繰り返し挿入されます。撮影監督にメキシコのロドリゴ・プリエトを招んだ甲斐があったということです。

 

オビエド出身の芸術家パトリシア・ウルキオラの作品も登場します。日本でも人気のモローゾ・ブランドの椅子がヒント、オンラインで購入できるので日本でもファンが多い。そちらに興味のある人にはすぐ分かりますが、本来そのシーンにあるはずのない椅子が置いてある。監督の遊び心というかイタズラ心ですね。

 

『海を飛ぶ夢』でバルデムの甥になったタマル・ノバスが、盲目になった主人公のラサリーリョ兼秘書役になるのも、『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』へのオマージュでしょう。バイセクシュアルな難しい役を演じわけたルベーン・オチャンディアーノ、権力的な父親への復讐、これこそアルモドバル映画の重要テーマです。アルモドバルの主人公たちは、巷で言われているような女性たちではなく男性なんですね。『ボルベール』のように父親はいっさいスクリーンに出てこなくてもです。監督が描きたいのは古いスペインの「負の父親像」だと思います。いささか時代遅れのプロットでもベッドシーンが泥臭くても、アルモドバル映画の楽しみ方は沢山あるということです。 

 

★いよいよガラ本番が近づいてきました。アカデミー会員1300名(年々増加の傾向、半分は俳優)は、どれに、誰に投票したのでしょうか。現地時間29日の午後9時開幕です。


ゴヤ賞2014授賞式2014年02月10日 13:06

★例年、こんな順序で受賞者が決まっていきます。栄誉賞を除くと28部門です。夕べの集いにして

は長すぎますね。今頃やけ酒飲んで飲みつぶれているか、まだ祝杯を上げているかどちらかでしょ

う。グラシア・ケレヘタの無冠、Las brujas de Zugarramurdi 貰いすぎ、ダビ・トゥルエバは

やっと宿願を果たしました。ハビエル・カマラもサンティアゴ・セグラから「今度は貰えるよ」と

言われていたとか、でも誰も知らないはずなんですよ。昨年大外れだったイベロアメリカ映画賞、

今年は当りました。大方の人は『ワコルダ』を予想していたのではないか。


1 新人男優賞:ハビエル・ペレイラ  Stockholm.

2 美術賞:アルトゥロ・ガルシア  Las brujas de Zugarramurdi

3 衣装デザイン賞:フランシスコ・デルガド・ロペスLas brujas de Zugarramurdi 

4 編集賞: パブロ・ブランコ Las brujas de Zugarramurdi.

5 短編ドキュメンタリー賞:Minerita ラウル・デ・ラ・フエンテ 

6 短編アニメーション:Cuerdas  ペドロ・ソリス・ガルシア 

7 短編映画賞: Abstenerse agencias Gaizka Urresti

8 栄誉賞: ハイメ・デ・アルミニャン

9 オリジナル歌曲賞 Do You Really Want To Be In love?  La gran familia española

10 オリジナル作曲賞:パット・メセニー Vivir es fácil con los ojos cerrados

11 録音賞:Charly Schmukler  Las brujas de Zugarramurdi

12 プロダクション賞: カルロス・ベルナセスLas brujas de Zugarramurdi

13 新人女優賞:ナタリア・デ・モリーナ  Vivir es fácil con los ojos cerrados


14 オリジナル脚本賞:ダビ・トゥルエバ  Vivir es fácil con los ojos cerrados 

15 脚色賞:アレハンドロ・エルナンデスマリアノ・バロッソ Todas las mujeres

16 主演女優賞マリアン・アルバレス  La herida

17 撮影賞:パウ・エステベ   Caníbal

18 特殊効果賞: フアン・ラモン・マリナ他 Las brujas de Zugarramurdi

19 新人監督賞フェルナンド・フランコ  La herida

20 助演男優賞:ロベルト・アラモ  La gran familia española


21
 助演女優賞:テレレ・パベス Las brujas de Zugarramurdi

22 メイク&ヘアメイク賞:マリア・ドロレス・ゴメス Las brujas de Zugarramurdi

23 ヨーロッパ映画賞:『愛、アムール』ミハエル・ハネケ

24 イベロアメリカ映画賞: Azul y no tan rosa ミゲル・フェラーリ(ベネズエラ)

25 長編アニメーション賞: Futbolín  フアン・ホセ・カンパネラ

26 長編ドキュメンタリー賞: Las maestras de la República ピラール・ペレス・ソラノ

27 主演男優賞 ハビエル・カマラ  Vivir es fácil con los ojos cerrados 

28 監督賞ダビ・トゥルエバ  Vivir es fácil con los ojos cerrados

29 作品賞: Vivir es fácil con los ojos cerrados

フォームの始まり

フォームの終わり

ゴヤ賞2014*あれやこれやの雑談2014年02月13日 14:08

 

  「ゴヤ授賞式はまるで反PPキャンペーン大会だ」とオカンムリ

 

: 雨が降って赤絨毯もそぼ濡れてぬかるんで、そのうえ気温も懐も冷え冷え、それでも無事イベントは終了しました。結構感動ドラマもあったようでそれはまた後ほど。

: 入口玄関前に「コカ・コーラ閉鎖反対」のゼッケンを付けた200名ほどの解雇者が陣取っていて、いつもと違う異様な雰囲気でした。「消費税増税反対」に蔽われた政治ショーでもありましたが、いつまでもお祭り気分に浸ってもいられません。

 

: もともと映画関係者は文化政策にお金を出さないPPPartido Popular国民党・与党)嫌いが多い。そこへ入場料に大幅な消費税(IVA)をかけてきた。ただでさえ入館者の減少に苦しんでいるところへね。8年間つづいた前政権の社会労働党(PSOE)が比較的文化事業に予算を回してくれた反動もあるようです。

: 国家破産の瀬戸際にいるわけだから仕方ないのかもしれない。政府としては「EUの重病人」から早く脱却を図りたい。昨年もかなり政治的な発言が目立ちましたが、今年はそれ以上です。

 

: 昨年は消費税増税の移行期間にあってまだ据え置かれていた。スペインの消費税は複雑で細かく分かれている。食品も牛乳やパンは比率が低く贅沢品と区別している。入場料は以前は確か8%だったが、現在は21%です。5%から8%になるのとは次元の違う話です。

: あまりの反発に下げる方向にあるようですが。

 

: 現政権の教育文化スポーツ省のホセ・イグナシオ・ベルテ(Wert)大臣は評判がよくない。ゴヤ賞授賞式に招待されているが、わざわざブーイングされに行く気はなく、それで欠席の正当な理由づけにマドリードにいられないスケジュールを組んだ。「私の体は一つ、同時に二つの場所には居られない」と()

: 敵前逃亡ではないと。癌治療のため勇退したマドリード前市長エスペランサ・アギーレ氏(PP)が「賢明な判断、尊敬に値する。野次られるために反PPキャンペーン大会に行く必要はない。文化相がやるべき最重要な案件ではないし、政府にとっても文化省にとっても益にならない」とエールを送っていました。

 

: 前市長が口出すことではないでしょう。お茶の間で多くの人が生放送を楽しむテレビショーなんですよ。ただベルテ氏は巷で言われているような人ではなく、聡明で、辛辣な議論好き、知的な教養人なんだそうです。映画関係者すべてがPSOE支持者じゃないわけで、当日インタビューを受けた俳優のなかには理解を示す人もいましたね。

: 最近‘ivazo’イバッソ という新語を目にしますが、「IVAイバでノック・ダウンされてしまった」という意味でしょうか。20代から30代前半では失業率50%を超える、二人に一人は職がない、働いた経験がないと失業保険もない、若者の『月曜日にひなたぼっこ』が日常化している。

 

   ダビ・トゥルエバ「永遠に二番手」の世評を葬った

 

: ゴヤ賞レースは「トゥルエバ丸」乗員の大勝利、7個ノミネートで6個獲得ですから効率がいい。ダビ・トゥルエバの監督&脚本賞受賞、「永遠に二番手」と囁かれていましたが、もう敗者ではありません。義姉クリスティナ・ウエテの作品賞、ハビエル・カマラ主演男優賞、ナタリア・デ・モリーナ新人女優賞、パット・メセニー作曲賞、大賞6個ですから満足でしょう。ダビ・トゥルエバ11回ノミネート、ハビエル・カマラ6回、合計17回にしてやっとゴヤを抱きしめました



: 二人の合言葉「僕たち、1個もゴヤを持ってない」でした。「受賞はせめてハビエル・カマラだけでも」と先日の座談会で話していましたが、やはり自分が一番欲しかった()。英語教師アントニオのモデル、フアン・カリオン氏も89歳ながら御健在。

(写真は喜びの記者会見に臨む「トゥルエバ丸」船長以下乗員一同)

 

: 10個ノミネートで8個受賞のLas brujas de Zugarramurdiについてはどうですか。

: テレレ・パベス助演女優賞受賞は、ハイライトのひとつでしょう。登壇するときから泣いてましたよ。周囲も涙、涙の大洪水、涙声でスピーチがよく分からなかった。

: 「今まで生きてきて、こんな嬉しいことはない」じゃないですか。12歳でデビュー、現在74歳の初受賞には驚きます。半世紀以上に及ぶ役者人生ですから。もっともゴヤ賞は1987年から、活躍していた時代がそれ以前だと珍しくないことです。5回目のノミネートで宿願を果たしました。ガルシア・ベルランガ(19212010)の第3Novio a la vista1953「一見、恋人」仮題)がデビュー作です。


 


: 監督アレックス・デ・ラ・イグレシアと同じビルバオ生れ、彼がゴヤ監督賞を受賞した『ビースト、獣の日』(1995)にも出演しています。

: 生れはビルバオでも育ったのはマドリードです。彼女の一族も有名な芸術家一家、いずれ御紹介する機会をつくりたい。今月のセルバンテス土曜映画上映会は、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』1984、字幕英語)ですが、これに主人公の妻レグラ役で出演しています。ミゲル・デリーベスの同名小説の映画化、1960年代のスペイン農民のレクイエムです。これは20世紀スペイン映画史に残る名画、パベスの最高傑作と言ってもいい。残念ながらまだゴヤ賞は始まっていませんでした。(写真はゴヤ胸像を手に涙、涙のテレレ・パベスとプレゼンターのハビエル・バルデム)

 

: 前回「8個は貰いすぎ」と言ってましたが・・・

: まず10個のなかに監督賞・作品賞が含まれていない。10個もノミネートしながら指揮官たる船長が無視されるなんて変だと思いませんか。彼のゴヤ賞は、『ビースト、獣の日』一作だけと聞いたら「まさかぁ」と思うでしょ。

: なるほど、まず候補者の選択が気に入らないのですね。

: 「興行成績が好調なら名画だ」とはいくらなんでも言いません。以下は授賞式前の大雑把な数字ですが、La gran familia española300万ユーロ、これ1作で他の4作を超えています。Vivir es fácil con los ojos cerrados70万ユーロ、La herida12.2万ユーロなど。候補作にならなかった次の3作品『アイム・ソー・エキサイテッド』、Tres bodas de másLas brujas de Zugarramurdi が各400万ユーロです。勿論Vivir es fácil con los ojos cerradosのような大賞受賞作品はこれから再上映されますから上方修正されるはずです。

 

: アカデミーと観客の乖離は今に始まったことではありませんが、こういう数字を見ると、映画産業の低迷の一端はアカデミーにもありそうです。

: トゥルエバのは既に60館が再上映を決定、リターンマッチに挑むことになっています。もともと181部コピーを製作していたところ配給元との意見の不一致で50部がお蔵入りになった経緯があったようです。「今更犯人捜しをしても始まらないが、はっきりしていることは私たちには大打撃だった」と語っています。

 

: ゴヤ賞は何の役に立つか、それは次の映画が作れるということに繋がる。トゥルエバは次回作の予定はなく小説を執筆中と話しておりましたが、自作の映画化も期待できるかな。

: 大賞とは関係なく、Las brujas de ZugarramurdiDVDやブルーレイが来月早々発売されます。ラテンビートも期待できるし、年内か来年初めには劇場公開になりますね。現在のスペイン映画界でデ・ラ・イグレシアほど機知に富んだ、並外れた想像力の持主を見つけるのは難しい。あのアタマのなかにぎっしり詰まった才能は枯れることがない。

 



: フランコのLa heridaは、受賞しても観客は期待できないでしょうか。90万ユーロかけても1213万では厳しいですね。見ていて辛くなる映画はなかなか足を運んでもらえない。アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』も辛い内容でしたが、受賞後興行成績を伸ばすことができた。

: ちょっと難しそうですね、テーマも個人的な病気と違いますから。『ブラック・ブレッド』は、スペインの大人なら全員が経験した事柄がテーマでした。カタルーニャ映画がゴヤ賞の作品賞・監督賞を含む9個制覇は、ゴヤ賞始まって以来の快挙でもあった。87万ユーロが、授賞式当日に110万、数字は増え続け最終的には270万になったそうです。

 

: 積み残しは沢山ありますが、一応ゴヤ賞関連記事はこれで打ち止めにしましょうか。

: 「今スペインで映画を撮ることは、英雄的行為です」とアカデミー会長エンリケ・ゴンサレス・マチョが挨拶しましたが、厳しくても難しくてもやはり撮って下さい。

(写真は新人監督賞のフランコ、主演女優賞のマリアン・アルバレス)


『ラ・レクトーラ』 リカルド・ガブリエリ2014年02月19日 23:31

★「コロンビア現代映画上映会」の一つとして、去る213日にセルバンテス文化センターで上映された作品のご紹介。当初は「日本語字幕入り」の予定でしたが、残念ながら当日「英語字幕」に変更になりました。物語構成がちょっと複雑なこと、日本初登場の新人監督の作品であること、何よりも日本語字幕でなかったこと、一回しか見てないことで不消化ぎみですが、混じりっけなしのコロンビア製映画ということで、読み違いのご指摘を期待してアップいたします。

 

★当ブログで扱ったコロンビア映画は、第10回ラテンビート2013上映のアンドレス・バイスの『ある殺人者の記録』(2008Satanás)、『暗殺者と呼ばれた男』(2013Roa)の2本だけでしょうか。最近登場させたガルシア・マルケスの『わが悲しき娼婦たちの思い出』(2011)は、原作者がコロンビア人というだけでした。映画祭や劇場公開作品としては、リサンドロ・ドゥケ・ナランホの『ローマの奇跡』(1988)、今世紀に入ってから『そして、ひと粒のひかり』(2004、コロンビア=米、公開05)、『エメラルド・カウボーイ』(2002、同05)、『ヒドゥン・フェイス』(2011、同12)、『スクワッド 荒野に棲む悪夢』(2011、同12)、東京国際映画祭2009上映の『激情』(2009、西­=コロンビア)ぐらいしか思い浮かびません。

 

★国際的に活躍するコロンビア映画界の重鎮たるセルヒオ・カブレラビクトル・ガビリアの作品さえ未公開という寒々しさです。『ヒドゥン・フェイス』のアンドレス・バイスがその次世代、そしてそれに続くのがリカルド・ガブリエリに代表される新世代ということになります。上映前のコロンビア大使館の方の挨拶の中に、「コロンビアでは質の良い映画が量産されています」とありましたが、それでしたらドンドン紹介して頂きたい。

 

    監督紹介

リカルド・ガブリエリ Riccardo Gabrielli R.:監督・脚本家・製作者・俳優他と多才。1975年、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州生れ。名前の綴りから分かるように父親はイタリア系、母親がコロンビア人である。コロンビアの首都ボゴタにあるアンディノ・ジャーマン・スクールで学んだ後、映画をアメリカで学ぶ。バイス監督も映画をアメリカで学んでおり、ラテンアメリカ諸国の中でコロンビアはアメリカの友好国ナンバーワンです。数本撮った後コロンビアに帰国、テレビと並行しながら短編2本の後、デビュー作Cuando rompen las olas2006)を撮る。第2作目となる本作の成功で脚光を浴びている有望な監督である。

 

    La lectora

製作Riccafilm

監督・脚本・プロデューサー:リカルド・ガブリエリ

撮影:フリアン・トーレス

音楽:マルセロ・トレビーニョ

 


キャスト:カロリーナ・ゴメス(カレン)、ディエゴ・カダビ(カチョロ)、カロリーナ・ゲラ(ラ・レクトーラ)、エルキン・ディアス(リチャード)、エクトル・ガルシア(ウィルソン)、ルイス・エドゥアルド・アランゴ(エル・パトロン)、オスカル・ボルダ(カルモナ署長)、ジョン・アレックス・トロ(ガブリエル)、カトリーヌ・ベレス(ベアトリス、カレンの叔母)、ロベルト・カノ(ボディガード)他

データ:コロンビア、スペイン語、2012、製作予算50万ドル(概算)、アクション・スリラー、97分、

撮影地ボゴタ、コロンビア公開2012817

 

プロット:カチョロとカレンの物語、二人は「謎のスーツケース」を持ったエル・パトロンの息子たちを同乗させたことでマフィアと警察の両方から追われる身となる。ドイツ語を学ぶ女子学生「ラ・レクトーラ」の物語、エル・パトロンの手下リチャードとウイルソンは、ドイツ語で書かれた手書きのノート解読のため女子学生を誘拐する。そのノートにはすべての人が血眼で行方を追っているスーツケース奪還の手掛かりがあるからなのだ。運命のいたずらで事件に巻き込まれてしまった二つの物語が交錯せずに並行して語られる。

 

      製作費50万ドルってホント?

 

: 製作費は概算で50万ドルだそうです。「お金や時間がなくても面白い映画、商業的にもペイする映画が作れることを証明したかった」とガブリエリ監督。

: お金がなくて撮れないと嘆くスペインの監督たちに聞かせたい。

: カチョロとカレンがマフィアと警察の銃撃戦でハチの巣状態になるシーン、車が空中を回転するシーン、証拠の車を爆破するシーンなどは、この予算から判断するに一発勝負だったでしょうね。20122月に17日間で撮影、817日公開ですから、凄いスピード狂です()

 

: このような特殊効果を使った撮影は、ハリウッド映画を見なれているから珍しくありませんが、銃撃戦のシーンは車のボンネットから撮ったようでカメラマンも命がけです()

: さて「ラ・レクトーラ」は≪読む女性≫、ここではドイツ語の手書きのノートの≪朗読者≫です。こういう朗読者が映画の進行役をする前例は結構あります。ミシェル・ドヴィルの『読書する女』(La lectrice1988仏)、魅力的なミュウ・ミュウが朗読者でした。

 

: ニック・カサヴェテスの『きみに読む物語』(2004米)、スティーブン・ダルドリーの『愛を読むひと』(2008米独)、2作とも吹替え版でテレビ放映されたほどの話題作です。ただ朗読者は男性です。

: 両方ともベストセラー小説の映画化、前者は監督の母ジーナ・ローランズがゴールデン・サテライト賞助演女優賞、後者はヒロインを演じたケイト・ウィンスレットが主演女優賞のオスカーを手にしました。本作もセルヒオ・アルバレスの同名小説の映画化です。キャスト陣はテレビ界の大物俳優が多数出演、ギャラはどうやって捻出したのか聞きたいところです。



セルヒオ・アルバレスSergio Alvarez Guarin 1965年ボゴタ生れ、作家・脚本家・ジャーナリスト。バルセロナとボゴタに在住、「エル・パイス」や「ラ・バングアルディア」に寄稿、La lectoraAlfaguara 2004刊)で作家デビュー、コロンビアRCNTVシリーズにドラマ化されたことが今回の映画化に繋がった。(写真は小説の表紙)

 

     朗読者は「アラビアン・ナイト」のシェヘラザード

 

: さて本題、本作のユニークなところは、朗読者がただ書いてある通りに朗読するのではない点です。自分の生死に関わる恐怖のなかで、誘拐犯の反応を見極めながら巧みにリライトして朗読していく。実際観客も目撃者の一人となってオハナシを作り始めます。

: 1回分を完結させずに時間稼ぎをしながら再創造しているわけです。ドイツ語の原文をそのまま朗読しているのではない。お手本になった≪朗読者≫は、ある批評家が指摘しているように、『千一夜物語』の美しく聡明なシェヘラザード姫でしょう。物語を聞いている誘拐犯、観ている観客を巻き込むような美しく魅力的な女性でなければならない。外見だけでなく内面の美しさも重要だと映画は言っている。そこがお味噌です。

 

: ガルシア・マルケスを夢中にさせた『アラビアン・ナイト』ですね。妻の不貞から女性不信になったシャフリヤール王の毎夜の殺人を止めさせるべく妃になった女性。

: シェヘラザードもラ・レクトーラも物語が完結したら用済みとなって殺害されてしまう運命にある。二人とも冒険談や恋物語で相手を魔法にかけねばならない。特に後者は人質となり鎖で両手を縛られ、常に眼前にピストルという緊張状態で朗読している。誘拐犯が何故スーツケースの在りかを知りたがっているのか推測し、二人を混乱させながら自分の生き残りをかけて再創造していく。だから語られる「カレンとカチョロの物語」は現実と虚構がないまぜになっている。


(写真は手書きのノートを読むラ・レクトーラ)


: 「人の話には気をつけろ、目に見えるものだけ信じるな」です。

: テーマは教訓的で凄くマジメです()。朗読者は創作していくうちに次第にカチョロとカレンの「愛の物語」に偏っていきます。カレンもカチョロもいわば夜の人間、世間的にはいかがわしい職業についている。しかし朗読者にもカレンが夜の女王として君臨していることが分かってくる。

: 人質になっているのを忘れて再創造に夢中になり誘拐犯が不審がる。結構笑えるコミック・マンガそこのけのシーンもありました。てっきり死んだと思われたカチョロがピンピンして活躍する()

 

: カレンの叔母さんの登場などサービスのしすぎ、叔母さんが警察官を呼びに行ってる間にシャワーを浴びて、セックスまでしちゃうなんてハチャメチャ。しかしドンパチの中に隠し味的ユーモアを入れるのも観客を飽きさせないテクニックです。

: 冒頭に現れるカレンのストリップ・ショーなど、男性観客への過剰サービス、もうハリウッド映画で見飽きているシーンですけど。登場人物すべてがどれもこれもフツウじゃないし、あり得ないシチュエーションも多い。オスカル・ボルダという俳優は実力派の俳優らしいのですが、スクリーンに現れるだけで可笑しい。部下の警官が抜けているのも、観客には日ごろの鬱憤晴らしができる。

 

: ラ・レクトーラ役のカロリーナ・ゲラは本作でデビュー、コロンビアは美人国で有名ですが、この女優も美しい。

: テレビ出演で既に顔は知られている。朗読者は美しく聡明でなければならないという条件を満たしています。ウィルソン役のエクトル・ガルシア、エル・パトロン役のルイス・エドゥアルド・アランゴ、それに主役カチョロのディエゴ・カダビなどテレビ界の人気俳優たちが、この若い監督応援に馳せつけたことが成功をもたらした。

 

: 勿論カレン役のカロリーナ・ゴメスは言うまでもありません。橋の欄干から飛び降りさせられたり(これはスタントか人形ね、しかし大型トラックの荷台から飛び下りたのは本人)、ストリップをさせられたり、美しい顔が変形するほど殴られたりと、頑張りました。

 

: 1974年生れとは思えない若さと美貌、カダビと息のあった演技で観客を魅了しました。カロリーナ・ゴメスを起用出来たことは監督にとって幸運でした。テレビのインタビューの印象だと、カレンとゴメスは雰囲気が似ています。1回ごとの物語がちょっとバラバラな印象もありましたが、それは映画というよりテレビの手法に寄りかかりすぎたからかもしれないし、結末があまりにあっけない。「主役は美人でなければ」というオブセッションからも抜け出せていない。しかし一定の水準を保った良質のエンターテイメントが低予算でも撮れることを証明できたのではないでしょうか。

(写真はディエゴ・カダビとカロリーナ・ゴメス)

 

      外国の監督が描くコロンビアの暗部

 

: 脇道に逸れますが、海外の目からコロンビアはどう見られているか。コロンビアで一番有名な人物と言えばガルシア・マルケス、彼の『予告された殺人の記録』をフランチェスコ・ロージが撮った(1987、伊仏=コロンビア、公開1988)。コロンビアのモンポスやカルタヘナに赴いて撮影したが、これはイタリア映画であってコロンビア映画ではない。

: コロンビアでは評判の悪い映画です。前置きで触れた『そして、ひと粒のひかり』の監督はアメリカ人ジョシュア・マーストン、ベルリン映画祭で評価された主役のカタリナ・サンディノ・モレノがオスカーにノミネートされたりとコロンビア人も大騒ぎしましたが、結末が笑えました。

 

: これは米国製映画か、どこまでコロンビア映画かと言えば異論もありそう。『激情』だってセバスチャン・コルデロはエクアドルの監督です。コロンビアとの関わりは、女優マルティナ・ガルシアが出演しているだけ。北スペインの或る町に移民してきたコロンビア人という設定ですが、ラテンアメリカならコロンビアじゃなくてもいい。

: 公開直前にストップが掛かった『暗殺者の聖母』(2000、コロンビア=西)の監督バーベット・シュローダーは、テヘラン生れでフランス国籍のスイス人、ハリウッドで活躍している()

: 死ぬために故郷メデジンに戻ってきた中年男と死にたくないが生きるために暗殺者となっている少年の物語。これはコロンビア映画といえるが、別の機会にきちんとご紹介すべき作品です。

 

: 原作者で脚本も自身で手掛けたフェルナンド・バジェッホについても触れる必要がありますからね。

: 毀誉褒貶の作家ですが、彼を語ることはコロンビアの暗部を語ることに繋がります。暗部と言えば、ミゲル・コルトワというフランスの監督が撮ったOperaciaón E2012)という作品があって、『ある殺人者の記憶』と同じように実話を題材にしたものです。テレビでは報道されないFARC(コロンビア革命軍)の実態を浮き彫りにしています。≪E≫は20022月、FARCによってイングリット・べタンクールと一緒に誘拐されたクララ・ロハスの赤ん坊 Emmanuelの頭文字から取られています。

 

: 母子二人は20087月に解放され、大きくテレビで報道されましたが、日本ではべタンクールのことしか報道されなかった記憶です。

: ルイス・トサールとマルティナ・ガルシアが4人の子持ちの夫婦役、預かったロハスの赤ん坊を守ってFARCや政府軍の双方から逃げ回る農民夫婦に扮しました。母親がバスク生れというコルトワ監督は、過去にETA問題をテーマにしたEl Lobo2004)やGAL2006)を撮っています。「ETAFARCの問題は自分にとって身近なテーマ」と語っています。『暗殺者の聖母』も危険覚悟でメデジンに乗りこんで撮影しましたが、こちらもコロンビアのジャングルに分け入っての撮影でした。2012年から「平和交渉」に入った≪今日のコロンビア≫情勢を知る手掛かりになるでしょう。

 

第1回イベロアメリカ・プラチナ賞2014年02月20日 20:19

★ゴヤ賞が終わったらベルリン映画祭、オスカー賞、マラガ映画祭、カンヌが恒例行事でしたが、今年から新たに「イベロアメリカ・プラチナ賞」が創設され順番が変わりました。ブラジルを含めたラテンアメリカ諸国にポルトガル、スペインを含めて合計22カ国が一堂に会しての映画賞です。参加国の映画アカデミーが団結して全世界に向けてイベロアメリカ映画を発信しよう。映画産業では弱小国が多いラテンアメリカ諸国でも束になれば・・・「三本の矢」ということらしい。

 

★第1回授賞式は45日パナマにて開催されます。まずトロフィーのご紹介、デザインはハビエル・マリスカルF・トゥルエバ監督とのコラボで『チコとリタ』(2010)を撮ったスペインのアーチスト。1992年のバルセロナ・オリンピックのマスコット≪コビー≫ちゃんの生みの親です。写真でお分かりのように、両手を高く差し上げて地球を支えているちょっとセクシーな女性像です。先週の金曜日にマドリードの「カサ・デ・アメリカ」にてご披露されました。国境を越えての映画賞ですから、見通しとしては困難が予想されますね。

 


★作品賞、監督賞、脚本賞、オリジナル作曲賞、男優・女優賞、アニメーション賞、ドキュメンタリー賞の8部門栄誉賞です。ノミネーションは作品賞と男優・女優が5作品、残りは3作品です。第1回は101作品の中から選ばれ、ノミネーション発表は313です。栄誉賞は昨年3月に鬼籍入りしたキューバの名プロデューサー、カミロ・ビベスと既にアナウンスされています。『ルシア』『苺とチョコレート』『グアンタナメラ』『永遠のハバナ』、スペインとの合作『ハバナ・ブルース』など数えきれない名画を製作しましたから個人的にも嬉しい。

(写真はプラチナ賞の宣伝ポスター)

 

    スペイン代表作品

○“Vivir es fácil con los ojos cerrados ダビ・トゥルエバが作品賞・監督&脚本賞

ハビエル・カマラが男優賞

○“Las brujas de Zugarramurdiアレックス・デ・ラ・イグレシアが作品賞

                ジョアン・バレントがオリジナル作曲賞

○“La gran familia española”ダニエル・サンチェス・アレバロが作品賞・監督&脚本賞、

○“Caníbal”(マヌエル・マルティン・クエンカ)アントニオ・デ・ラ・トーレが男優賞

○“La herida”(フェルナンド・フランコ)マリアン・アルバレスが女優賞

○“3 bodas de más”(ハビエル・ルイス・カルデラ) インマ・クエスタが女優賞

○『アイム・ソー・エキサイテッド』(アルモドバル)アルベルト・イグレシアスがオリジナル作曲賞

○“Con la pata quebrandaディエゴ・ガランがドキュメンタリー賞

○“Las maestras de la República ピラール・ペレス・ソラノがドキュメンタリー賞

青ゴチック体がゴヤ賞ノミネート無し。ゴヤ賞総括でデ・ラ・イグレシア丸の船長を評価しなかったことにイチャモンつけたが、今度は選んだことを評価しよう。アルモドバルのお気に入り作曲家イグレシアスはゴヤ胸像のコレクター、もう8個も持っているからゴヤ賞は充分です。後進に道を譲りましょう。国際的にも実績あり、最初に選ばれるべき人ですね。がゴヤ賞受賞者。

 

    審査員&プレゼンター

○現在審査員として決定しているのは、イバン・トルヒーリョ(グアダラハラ映画祭ディレクター)、パス・ラサロ(ベルリン映画祭のプログラム編成者・ヨーロッパ映画アカデミー助言者)の二人だけ、他にラテンアメリカの監督や作家が予定されているが、まだ決定に至っていない。

○プレゼンターはメキシコの女優アレサンドラ・ロサルド、アメリカ在住のコロンビア人ジャーナリスト、フアン・カルロス・アルシニエガ。

○プラチナ賞のディレクター、ミゲル・アンヘル・ベンサルによると、授賞式の模様は各国でテレビ中継され、だいたい100分の予定。

 

 

第64回ベルリン映画祭*ベンハミン・ナイシュタット2014年02月24日 15:15

★ラテンアメリカ諸国と違って、スペインではベルリンに焦点を合わせてくる監督は少数派。そういうわけか今年も出品はゼロでした。スペイン語映画はアルゼンチンから次の2作がコンペに残りました。

 

La tercera orilla 2014 The Third Side of the River)セリナ・ムルガの第3作、アルゼンチン=独=オランダ、20143月アルゼンチン公開、 製作費概算150万ドル

 

Historia del miedo2014 History of Fear)ベンハミン・ナイシュタット、アルゼンチン= ウルグアイ= 独仏、79分、カラー、アルゼンチン公開日時未定

 

クラウディア・リョサAloft2014、西・カナダ・仏)は、言語が英語、出演者もペルーとは関係ない。800万ドルの資金を投じての大作だからいずれ公開されると思う。クラウディア・リョサはベルリンと相性がよく下馬評では賞に絡むということでしたが素通りしました。今度は母娘の物語ではなく、かつて小さい息子を捨ててしまった母親の物語です。

 

セリナ・ムルガは前作Una semana solos2008A Week Aloneアルゼンチン)が、ヒホン、リオデジャネイロ、ミュンヘンなどの国際映画祭で受賞しています。サンセバスチャン映画祭2012のレトロスペクティブ「ラテンアメリカ映画の10年」にも選ばれ再上映されました。マーティン・スコセッシが感銘を受けたということで話題にもなりました。

 

 


ベンハミン・ナイシュタットHistoria del miedoはデビュー作ということと、27歳という若さに惹かれてご案内いたします。プロットを読んでも雰囲気しか分からない映画です

プロット:現代社会が抱える恐怖についての物語。暑い夏、ムシムシした気候、息苦しい雰囲気の中、町から離れた郊外の私有地に閉じこもったまま中産階級の人々が暮らしている。外部の人々をインベーダーのように怖れている。停電によって闇が支配する町、不確かな火花を散らして押し寄せる集団的悪夢はカオスと化す。

 

アルゼンチン社会に根源的にあるファンタズマにX線を通して、他階級への偏見、嫌悪感、社会的脅迫観念に取り組んでいるらしい。恐怖というのは抽象的で不合理なものだから、音、光、闇を使って描写している。だからと言って、これは厳密な意味では「社会派」ドラマではない。もっと感覚的な恐怖についての物語のようです。

 

「映画はジャンルを問わない、1970年、80年代のホラー映画が好き、ジョン・ハワード・カーペンターには限りなく魅せられている。彼の世代ではかなり政治的な監督の一人、アルゼンチンではルクレシア・マルテルの『沼地という名の町』(2001)、映画の構成を考えるとき役に立つ」と。これはマルテルの「サルタ三部作」の最初の作品、二部『ラ・ニーニャ・サンタ』(2004)と三部『頭のない女』(2008)はラテンビートで上映された。リアリズムとファンタジーとアレゴリーが同時に存在していて、好き嫌いがはっきり分かれる監督。さらに「メキシコのカルロス・レイガーダスの詩的なところ、ミハエル・ハネケ的雰囲気も気に入っている。クラウディア・ピニェイロの小説Las viudas de los juevesやロドリーゴ・プラのLa zonaの影響を受けている」ということで、だいたい彼の目指している映画の枠組みが見えてきます。La zonaについては、かなり多くのインタビュアーが指摘しています。

 


クラウディア・ピニェイロの小説は、中産階級の人々が「閉じ込められた空間」に住んでいる、という点でそっくりだが、彼らは自分たち用の堅牢な要塞を建てて外部をシャットアウトして安全を保っている。この小説は2005年のクラリン賞(小説部門)を受賞したベストセラー、2009年にマルセロ・ピニェイロが映画化している。

(写真は左から、主人公役ジョナサン・ダ・ローザとナイシュタット監督)

 

     監督のキャリア紹介

ベンハミン・ナイシュタット Benjamin Naishtat1986年ブエノスアイレス生れ、監督・脚本家・編集者・製作者。2008年、FUCFormado en la Universidad del Cine)で学んだ後、フランスの「ル・フレノワ国立現代アートスタジオ」の奨学金を得て留学。短編Estamos bien2008)、Juegos2010)がカンヌ映画祭やロッテルダム映画祭で評価された。彼によれば、このJuegos3作目Historia del mal2011)は実験映画ということです。特に前者は自分も気に入り、長編デビュー作の資金作りに役立ったという。フレノワは映画だけでなく現代アートについて学べたことが、美学的なセンスを磨くのに役立った、とも語っている。

 

★アルゼンチンから2作コンペに選ぶについては議論もあった由(セリナ・ムルガが先に決定していた)、製作国にドイツも絡んでいたことが幸いしたのだろうか。