サンティアゴ・サンノウ”Alacran enamorado”*ゴヤ賞2014ノミネーション2014年02月02日 14:26

★ラテンビート2009で上映されたなかで際立っていた映画の一つが、サンティアゴ・A・サンノウの第1『クアホ、逆手のトリック』2009)でした。その後、スペイン・サッカー連盟設立100周年のドキュメンタリー、また西アフリカ、ギニア湾岸のベニン共和国出身の父親が37年振りに故国に帰還するドキュメンタリー**を撮っていて、なかなか新作が届かなかった。昨年4月スペイン公開となった第2Alacrán enamoradoオスカー賞2014スペイン代表最終候補4作の一つに残った情報をキャッチ、ゴヤ賞ノミネートを待っておりました。字幕入り上映が期待できますからね。

 


  Alacrán enamoradoScorpion in Love

製作:エル・モンヘ・ラ・ペリクラAIE、モレナ・フィルム

監督:サンティアゴ・サンノウ

脚色:サンティアゴ・サンノウ、カルロス・バルデム(小説と脚色)

撮影:フアン・ミゲル・アスピロス

音楽:ヴォルフランク・サンノウ?(Woulfrank Zannou

美術:リョレンス・ミケル(Llorenç Miquel

データ:スペイン・スペイン語 2013 ドラマ・スリラー ボクシング 人種差別 ナチズム

  2013412日スペイン公開

 

キャスト:アレックス・ゴンサレス(フリアン・ロペス‘アラクラン’)、カルロス・バルデム(カルロモンテ)、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(ルイス)、Judith Diakhate(アリッサ)、ホビック・コイヒケリアン(ペドロ)、ハビエル・バルデム(ソリス)、エリオ・トファナ(フェリペ‘ロコ’)、カルロス・カニオヴィスキー(フリアン父)、マレナ・グティエレス(フリアン母)他

 

プロット:やり場のない憎しみで凝りかたまった青年フリアンの物語。サソリのような毒をもったフリアンと親友ルイスは、ネオナチ主義者のカリスマ「ソリス」がリーダーの暴力グループの一員だ。ボクシング・ジムに通うようになり、そこで引退ボクサーのトレーナー「カルロモンテ」に出会う。彼の誠実さに惹かれていくなかで、ジムで働くアリッサと恋に落ちてしまう。少しずつ人生を変えようとするが、グループは彼の離脱を許さない。血と汗と涙が流れる、闘いと解放の物語。

 

★ゴヤ賞ノミネート:助演男優賞(カルロス・バルデム)、新人男優賞(ホビック・コイヒケリアン)、オリジナル脚色賞(監督、カルロス・バルデム)、美術賞(リョレンス・ミケル)の4部門

オリジナル脚色賞(サンノウ監督、カルロス・バルデム)、カルロス・バルデムの同名小説の映画化。彼は作家として既に数冊の小説を出版しており、Muertes Ejemplaresが、1999年ナダル賞の審査員特別賞(佳作)を受賞しています。

ゴヤ賞以外のノミネート:シネマ・ライターズ・サークル賞(スペイン)に、オリジナル脚色賞、助演男優賞、新人男優賞と、美術賞以外はゴヤ賞と同じセクションにノミネート。

 

 


サンティアゴ・A・サンノウ Santiago A Zannou は、1977年マドリードのバリオ、カラバンチェル生れ。1970年ごろベニンから移民してきた父とアラゴン生れの母の三人兄弟の末っ子として生れた。音楽担当のWoulfrankは長兄で音楽プロデューサーをしており、デビュー作『クアホ、逆手のトリック』で既にゴヤ賞オリジナル歌曲賞を受賞しています。10代後半にマジョルカに移り店員やボーイ、3部リーグのチームでサッカーをしていた。映画を天職にしようとしたきっかけは、兄が担当していた短編のサウンドトラックを手伝ったことだった。その後バルセロナのカタルーニャ映画スタジオ・センターで映画を学んだ。同じ時期に生れ故郷マドリードを訪れた折り、同じカラバンチェル生れの「エル・ランギ」ことフアン・マヌエル・モンティーリャと知り合い、これが『クアホ、逆手のトリック』誕生に繋がっていった。

(写真はゴヤ賞2009授賞式の舞台に上がった監督とフアン・マヌエル・モンティーリャ)

フィルモグラフィー

2004Cara sucia 短編20分、ゴヤ賞短編映画賞ノミネート

2005 Mercancias 短編15

2008 El truco del manco クアホ、逆手のトリックゴヤ賞新人監督・新人男優・歌曲賞受賞、ラテンビート2009上映時の邦題

2009 El alma de La Roja ドキュメンタリー(La Roja赤は選抜チームのユニフォームの色)

2011 La puerta de no retorno **ドキュメンタリー

 

 


カルロス・バルデムCarlos Encinas Bardem 俳優・脚本家・作家。1963年、女優ピラール・バルデムと父ホセ・カルロス・エンシナス(1995没)の長男としてマドリードに生れる。オスカー俳優ハビエルは弟。1955年カンヌで国際批評家連盟賞を受賞した『恐怖の逢びき』の監督フアン・アントニオ・バルデムは伯父(2002没)。マドリード自治大学で歴史学を専攻。ゴヤ賞がらみでは、2010年にダニエル・モンソンの『第211号監房』(2009)のアパッチ役で助演男優賞にノミネートされただけ。同作でスペイン俳優組合賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、他を受賞しています。

今年の助演男優賞の面々はいささか精彩を欠くのではないでしょうか。主演とダブル・ノミネートのデ・ラ・トーレ、ロベルト・アラモ、フアン・ディエゴ・ボトとドングリの背比べの感がします。今回はボクシングのトレーナー役カルロス・バルデムの可能性が高いと予想しています。弟ハビエルのオスカー賞で母ピラールが流した涙が再び見られるかもしれない。

(写真はアレックス・ゴンサレスのヘルメットを調整するバルデム、映画のワンシーンから)

 

 


★新人男優賞のHovik Keuchkerian の正確な読みが分かりませんが、一応ホビック・コイヒケリアンと表記しました。新人男優賞紹介記事の繰り返しになりますが、1972年レバノン共和国の首都ベイルート生れ。父親はドイツ人、母親がナバラのスペイン人、3歳からマドリードの北西に位置するアルペドレテ(エル・エスコリアルがある)で育つ。元ヘビー級チャンピオンのボクサー、KO勝ち15回という記録保持者。2004年引退後は詩人(数冊出版)、コメディアン、俳優として活躍している異色の人物。本作はボクサー物語ですが、本物のボクサーは「僕一人」と言ってます。ボクシングの指導もしたわけです。40歳を過ぎて変身を遂げた≪新人≫です。(写真は本作撮影時のコイヒケリアン)

 

★ストーリーを読んで「観たいなぁ」と思う人は多くないと思う。殆どの人が「これってクリント・イーストウッドの『ミリオンダラーベイビー』のスペイン版?」、はたまた『ロミオとジュリエット』の現代版をイメージするのじゃないか、何しろ≪恋におちたスコルピオン≫なんだから。デビュー作『クアホ、逆手のトリック』を見ていなければ、サンノウ監督の履歴を知らなければ、網に引っ掛けなかったと思う。バルデム兄弟が出ているとはいえ(ハビエルのファナティックな演技は必見)、キャスト陣だけでは魅力に欠けますから。たぶんストーリーで見せる映画ではなく、役者たちの「眠っていた才能」の掘り起こしに成功した演技を楽しむ映画なんだと思う。俳優たちが今までのテクニックを一度ご破算にして生れかわった姿を見る映画なのかもしれない。サトウキビのように彼らを100パーセント絞れるだけ絞った、「私は製糖工場の経営者」と監督。

 

★人種差別や性差別の映画も過去にたくさんある。スタンリー・クレイマーの『招かれざる客』(1967)は、黒人男性と白人女性の結婚をめぐる家族の葛藤を描いてキャサリン・へプバーンがオスカー像を手にした。スペンサー・トレイシーの遺作となった作品。また西ドイツのライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが描いた『不安は魂を食いつくす』(1974、未公開、DVD2011発売)は、白人とアラブ人の結婚がテーマ。監督は「かつてスペインはアラブ人とユダヤ人を追放した歴史を持つ、そして今日ではアフリカ移民を追い出そうとしている国、人種差別もネオナチも過去の問題ではない」と言い切る。

 

★自分が生まれ育ったマドリードのカラバンチェル地区は、貧しく慎ましく希望がもてない人々が多い。「カラバンチェルを訪ねたとき、失業して親の家に戻ってきた友人が多かった」。「悪の温床になっているところから抜け出すには、監督とか、芸術家とか、ネオナチとかになる・・・」とも。長引く不況で20代若者の失業率は高く、大幅な消費税増税とあいまって映画館に足を向けない。「観客はバカじゃないからつまらない映画は観てくれない」のですね。

 

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