マラガ映画祭<落穂ひろい>*マラガ映画祭2021 ㉑ ― 2021年06月20日 15:07
Zonazineセクションのオープニング作品「Lucas」が作品賞
★Zonazine部門というのはコンペティションの次に重要なセクションであるが、今年のオープニング作品のアレックス・モントーヤの「Lucas」がスペイン語映画の作品賞・観客賞、主役のルカスを演じた新人ホルヘ・モトスの男優賞と3冠を制した(全て銀賞です)。2021年、スリラードラマ、92分。
(Zonazine部門の作品賞銀のビスナガを受賞したアレックス・モントーヤ)
(男優賞銀のビスナガを受賞して言葉をつまらせる新人ホルヘ・モトス)
ストーリー:最近父親を失ったばかりの若者ルカスと小児性愛者のアルバロ(ホルヘ・カブレラ)の関係を描いたスリラー仕立てのドラマ。父親の死によって自分の居場所が崩壊した若者に、罪のない写真と引き換えにお金を払うとアルバロが近寄ってくる。アルバロは偽のプロフィールを制作してソーシャルネットで利用したい欲望をもっているが、若い女の子と一緒にお喋りするだけだともちかける。今の状況に苛立っていたルカスは、彼の要求を受け入れる。
(ルカス役のホルヘ・モトス、映画から)
(アルバロ役のホルヘ・カブレラ、映画から)
監督紹介:アレックス・モントーヤは、1973年バレンシア生れの監督、脚本家、製作者、編集者。15歳のときから短編を撮っており10編以上に及ぶ。マラガFFの監督紹介によると、内外の映画祭受賞歴が170賞とある。本作は長編第2作目、2012年に製作した短編「Lucas」(28分)がベースになっている。マラガ映画祭2013で監督賞を受賞、ゴヤ賞2014の短編ドラマ部門にノミネートされた(キャストは別の俳優が演じている)。2021年4月9日にインスティトゥト・セルバンテスのVimeoチャンネルで48時間限定でオンライン上映されている。
(短編「Lucas」のポスター)
★長編デビュー作「Asamblea」(18)は、アリカンテ映画祭2019審査員賞、主演のフランセスク・ガリードが男優賞を受賞、バレンシア・オーディオビジュアル賞の音響賞を受賞したほか、監督賞、撮影賞などにノミネートされた。2020年にスペインでリスナーの多いFilminでオンライン上映、好評につきその後の公開に繋がった。第2作目である本作はオープニング作品に選ばれ6月4日に上映された。以来メディア各社の取材攻勢に追われていたが、銀のビスナガ受賞となって慌ただしさも増したようだ。スペイン公開も間もなくの5月25日に決定した。
(長編デビュー作「Asamblea」のインタビューを受ける監督)
★テーマの今日性、ルカス役の初々しい好青年ぶりもあいまって今後が期待できそう。ホルヘ・モトスは上映後のプレス会見で「台本を読んで直ぐにルカスを演じたいと思った」と語っていた。一方アルバロ役のホルヘ・カブレラは「登場人物を裁かないように、また理性を可能なかぎり避けながら、あるレベルまで彼と繋がれるように彼の人間性に頼ることにした」とコメント、小児性愛者という難役に挑戦した。マラガ入りしてプレス会見にも出席していたイレネ・アヌラは、モントーヤの「Asamblea」や短編「Vampiro」(16)でメデジン映画祭女優賞、サンダンス映画祭出品の「Cómo conocí a tu padre」(08)でイベロアメリカ短編映画祭女優賞をそれぞれ受賞している。
(左から、二人のホルヘ、モントーヤ監督、イレネ・アヌラ、6月4日のプレス会見)
(作品賞受賞後のプレス会見、6月13日)
★今年のマラガは全体像が間際まで見えてこなかった。コンペティション作品でさえ半分もご紹介できなかった。アグスティ・ビリャロンガが大賞を独占、他作品が脇に押しやられてしまった感が否めない。審査委員長のノラ・ナバスとビリャロンガ監督は旧知の仲、大ヒット作『ブラック・ブレッド』(10)主演で、サンセバスチャン映画祭、ゴヤ賞、フォルケ賞とスペイン映画賞の主要な女優賞をゲットしていた。知らんぷりはできず、何かの賞に絡むと予想していましたが、ベテラン監督作品が6回もコールされるとは思いませんでした。というのもマラガは新人の登竜門的役目をもっているからでした。2022年は通常の3月開催がアナウンスされています。いよいよ第69回サンセバスチャン映画祭2021のニュースが聞こえてきました。こちらは通常に戻って9月開催です。
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