マラガ才能賞にオリベル・ラシェ*マラガ映画祭2021 ③ ― 2021年05月01日 17:41
『ファイアー・ウィル・カム』のオリベル・ラシェにマラガ才能賞
(オリベル・ラシェ監督)
★4月29日、マラガ映画祭の特別賞の一つマラガ才能賞―マラガ・オピニオンにオリベル・ラシェ受賞の発表がありました。本賞は日刊紙La Opinión de Málagaマラガ・オピニオンとのコラボレーション、既に受賞歴がある若いシネアストのキャリアをさらに後押しすることを目的とした賞、2019年は初監督作品『物静かな男の復讐』のラウル・アレバロ、昨年はマラガFFの作品賞受賞作「10,000km」でデビューしたカルロス・マルケス=マルセが受賞しています。
*ラウル・アレバロのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2019年03月22日
*カルロス・マルケス=マルセのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、
★オリベル・ラシェOliver Laxe は、1982年パリ生れ、監督、脚本家。授賞理由は「世界についてのユニークな視点と芸術的表現としての映画への強いコミットメント」が際立っていることが評価された。6歳で母親の故郷ガリシアに移住、フランス、スペイン、モロッコで暮らすガジェゴgallego。2010年のカンヌ映画祭併催の「監督週間」に出品したデビュー作「Todos vós sodes capitáns」(「Todos vosotros sois capitanes」カラー&モノクロ、78分、スペイン語/アラビア語/フランス語)が、国際映画批評家連盟賞 FIPRESCIを受賞している。スペイン映画アカデミーが翌年のゴヤ賞新人監督賞にノミネーションしなかったことで一部から批判された。6年ぶりに撮った第2作「Mimosas」(2016「批評家週間」アラビア語、93分)が見事グランプリを受賞、セビーリャ映画際でも審査員特別賞を受賞している。
★2019年、ガリシア語で撮った第3作「O que arde」邦題『ファイアー・ウィル・カム』がカンヌ映画祭2019「ある視点」で審査員賞とセクションの音響賞を受賞した。カンヌ映画祭に出品した作品全てが受賞したのは、ビクトル・エリセも果たせなかったことでした( エリセは1992年の第3作『マルメロの陽光』で審査員賞と国際映画批評家連盟賞を受賞している)。ゴヤ賞2020の4部門ノミネート、作品・監督・撮影(マウロ・エルセ受賞)・新人女優賞(ベネディクタ・サンチェス受賞)、2部門受賞した。ガウディ賞ヨーロッパ映画賞、サン・ジョルディ賞他を受賞している。彼の作品はカンヌ以外でも権威のある国際映画祭、モスクワ、カイロ、サンセバスチャン、トロント、カルロヴィ・ヴァリ、マル・デ・プラタ、ニューヨーク、東京などで上映されている。第16回ラテンビート映画祭2019で上映された折り来日、寡黙ながらQ&Aでは会場からの質問に真摯に応じていた。
*「Mimosas」の作品&監督紹介は、コチラ⇒2016年05月22日
*『ファイアー・ウィル・カム』の作品紹介、カンヌ映画祭の記事は、
*ラテンビート2019のQ&Aの記事は、コチラ⇒2019年11月21日
(ガリシア語のポスター)
★最近、地元のア・カルケイサ協同組合(ホセ・アントニオ・ディアス組合長)とタッグを組んで、ガリシア牛肉の普及に務めている。オンライン視聴者向けの宣伝ビデオを製作、オンラインストアで注文すると配送されるようです。ガリシア牛のハモンセラーノは超高級品、その美味しさはつとに有名です。カンヌで「映画から少し距離をおきたい、ここガリシアに腰を落ち着けて、ここのコミュニティのためにしたいことがある」と語っていましたが、じゃあ第4作目はどうなるのでしょうか。
リカルド・フランコ賞にフリア・フアニス*マラガ映画祭2021 ④ ― 2021年05月07日 17:29
フィルム編集者フリア・フアニスがリカルド・フランコ賞を受賞
(フリア・フアニス)
★去る5月4日、リカルド・フランコ賞にフィルム編集者フリア・フアニスの発表がありました。昨年の衣装デザイナーのタチアナ・エルナンデスに続いて女性シネアストが選ばれました。リカルド・フランコ賞の正式名はマラガ・フェスティバル・リカルド・フランコ賞といい、スペイン映画アカデミーとのコラボレーションです。カメラの背後で活躍するシネアストに贈られる賞です。2019年はグティエレス・ロドリゲス映画の脚本家として有名なラファエル・コボスが受賞しています。
*リカルド・フランコ賞の紹介記事は、コチラ⇒2020年09月05日
★フリア・フアニスJulia Juanizは、1956年ナバラ州アレリャーノ生れ、フィルム編集者、写真家、監督として短編を撮っている。アラゴン州のサラゴサ大学で医学を、同市のスペクトラム・ギャラリーの写真コースを学んでいる。1986年以来プロフェッショナルに映画に携わっている。1991年にビルバオのシネビ映画祭で短編「Train Time」がバスク映画グランプリを受賞するなどした。1990年からフィルム編集者として国内外の監督のもとでキャリアを積み始める。例えば、バシリオ・マルティン・パティノ、カルロス・サウラ、ビクトル・エリセ、ラファエル・ゴルドン、アルベルト・モライス、ラモン・バレア、ダニエル・カルパルソロ、パウラ・コンス、ボビー・モレスコ、ブライアン・グッドマン、マーク・スティーヴン・ジョンソンなど、ドキュメンタリーや短編を含めると60作以上になる。若いバスクの監督では、アルベルト・ゴリティベレア、ハビ・エロルテギ、ペドロ・アギレラ、アランツァ・イバラなどが挙げられる。
★特にアラゴン出身のカルロス・サウラとは『タクシー』(96)以来、多くの作品を単独で任されており信頼は厚い。監督と編集者は共にサンセバスチャン映画祭との関りが多く、『タクシー』(コンペティション)、『ブニュエル~ソロモン王の秘宝』(2001オープニング作品)、『ファド』(2007サバルテギ)などがある。サウラ映画では『ゴヤ』(99)と『イベリア 魂のフラメンコ』(05)の2作で、それぞれゴヤ賞の編集賞に2回ノミネートされている。2017年にはサンセバスチャン映画祭の特別栄誉賞の一つシネミラ賞を受賞している。
(ゴヤ賞2000編集賞にノミネートされた『ゴヤ』のポスター)
★フィルム編集のほか、写真家、ビデオアーティストとしてのキャリアも築いており、セル画やコラージュ、ビデオ作品は、パンプローナ、セゴビアなど国内のアートセンターや美術館で展示され、韓国、メキシコ、ロシア、エチオピアのような海外での展示会にも選ばれている。現在は大学や映画学校で編集と脚本分析を教えている。スペイン映画アカデミーのほか、米国映画アカデミー、欧州映画アカデミーのメンバーである。以下に映画賞と短編を除く主なフィルモグラフィーを列挙しておきます。
*受賞&ノミネート歴*
1991「Train Time」(短編)ビルバオ・シネビ映画祭でバスク映画グランプリを受賞
1999「Tango」(98、『タンゴ』カルロス・サウラ)アルゼンチンの銀のコンドル賞にノミネート
2000「Goya en Burdeos」(99、『ゴヤ』カルロス・サウラ)ゴヤ賞編集賞ノミネート
2006「El cielo gira」(04、ドキュメンタリー、共同編集、メルセデス・アルバレス監督)
シネマ・ライターズ・サークル編集賞を4名で受賞
2006「Iberia」(05、『イベリア 魂のフラメンコ』カルロス・サウラ)ゴヤ賞編集賞ノミネート
2017 サンセバスチャン映画祭特別栄誉賞シネミラ賞を受賞
2021「La isla de las mentiras」(20、パウラ・コンス)メストレ・マテオ賞ノミネート
2021 マラガ映画祭にてリカルド・フランコ賞を受賞
(シネミラ受賞スピーチをするフリア・フアニス、サンセバスチャンFF2017)
*主なフィルモグラフィー*
1996「Taxi」(邦題『タクシー』)カルロス・サウラ
1997「Pajarico」(スペイン映画祭1998仮題『パハリーコ~小鳥~』)カルロス・サウラ
1998「Tango」(邦題『タンゴ』)カルロス・サウラ
1998「Pecata minuta」ラモン・バレア
1999「Goya en Burdeos」(『ゴヤ』)カルロス・サウラ
2000「Asfalto」ダニエル・カルパルソロ
2001「Buñuel y la mesa del rey Salomón」(『ブニュエル~ソロモン王の秘宝』)
カルロス・サウラ
2002「Salomé」(『サロメ』)カルロス・サウラ
2002「Guerreros」ダニエル・カルパルソロル
2002「Alumbramiento」(英題「Lifeline」『ライフライン』)ビクトル・エリセ
「10ミニッツ・オーダー人生のメビウス」の1編
2004「El coche de pedales」ラモン・バレア
2004「El séptimo día」カルロス・サウラ
2004「El cielo gira」(ドキュメンタリー)メルセデス・アルバレス
2005「Iberia」(『イベリア 魂のフラメンコ』)カルロス・サウラ
2007「Miguel & William」イネス・パリス
2007「Fados」(ドキュメンタリー『ファド』)カルロス・サウラ
2009「IO, Don Giovanni」(『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツアルトの出会い』)同上
2010「Naufragio」ペドロ・アギレラ
2015「Todo mujer」ラファエル・ゴルドン
2016「La madre」アルベルト・モライス
2017「Black Butterfly」(『ブラック・バタフライ』西米伊、英語)ブライアン・グッドマン
2018「Bent」(米西、英語、共同編集)ボビー・モレスコ
2019「Finding Steve Macqueen」(米、英語、共同編集)マーク・スティーヴン・ジョンソン
2019「Trading Paint」(『ワイルド・レース』西米、英語、共同編集)Karzan Kader
2020「La isla de las mentiras」パウラ・コンス
2020「Retrato de mujer blanca con pelo cano y arrugas」イバン・フロレス・ルイス
2020「Cartas mojadas」(ドキュメンタリー、共同編集)パウラ・パラシオス
2021「Las cartas perdidas」(進行中)アンパロ・クリメント
*「La isla de las mentiras」の紹介記事は、コチラ⇒2020年09月16日
*「Las cartas perdidas」の紹介記事は、コチラ⇒2021年04月11日
セクション・オフィシアルの発表始まる*マラガ映画祭2021 ⑤ ― 2021年05月09日 17:32
スペイン映画3作、ラテンアメリカ映画2作がアナウンスされました
★6月3日に開幕する第24回マラガ映画祭のセクション・オフィシアルの5作品が発表になりました。スペイン映画3作、ラテンアメリカ映画2作(ペルー=コロンビア合作、メキシコ)、合計5作品と僅かで全体像は見えませんが、とにかくアナウンスされました。いずれ詳細は個別に紹介するとしてタイトル名、監督名ほかを紹介しておきます。今回はスペイン映画2作の紹介。
*セクション・オフィシアル*
①「El vientre del mar」スペイン
製作:Testamento / La Periferica Produccions / Filmin / Turkana Films /
Link-up Barcelona / Bastera Films
協賛:TV3 / IB3 / ICAA / ICEC / Fundació Mallorca Turisme / Mallorca Film Commission /
Ramón Llull
監督・脚本:アグスティ・ビリャロンガ(パルマ・デ・マジョルカ1953)、代表作『ブラック・ブレッド』(10)、『ザ・キング・オブ・ハバナ』(15)など。
キャスト:ロジェール・カザマジョール、オスカル・カポジャ、ムミヌ・ディアリョ(ディアヨ)
解説:ビリャロンガの新作は、イタリアの作家アレッサンドロ・バリッコ(トリノ1958)が実話に基づいて書いた小説 ”Oceano Mare”(1993刊)に着想を得ており、タイトルはその1章から採られている。1816年7月5日フランス海軍のフリゲート艦メデューズ号がモーリタニア沖で座礁、生き残りを賭けた乗組員147名が急ごしらえの筏で漂流したが、13日後に救出されたのは僅か15名、一大スキャンダルとなった事件。当時の画家テオドール・ジェリコーが描いた、あの有名な「メデューズ号の筏」(1818~19)の油彩画は、ルーブル美術館が所蔵している。
*『ザ・キング・オブ・ハバナ』の監督&作品紹介は、コチラ⇒2015年09月17日/10月24日
(ビリャロンガ監督とテオドール・ジェリコーの油彩画「メデューズ号の筏」から)
(主演のロジェール・カザマジョールとオスカル・カポジャ)
(主演の二人と監督)
②「La casa del caracol」スペイン、ペルー=メキシコ=米国合作
製作:Esto También Pasará / Casita Colora Producciones / Bowfinger Internacional
Pictures / Basque Filmms / Producciones Tondero S.A.C.(ペルー)/
Hippo Entertainment(メキシコ=米国)
協賛:ICAA / アンダルシア同盟 / アマゾンプライムビデオ
監督:マカレナ・アストルガ(マラガ生れ)
製作者:マリア・ルイサ・グティエレス(エグゼクティブ)、アルバロ・アリサ、カルロス・フアレス、ミゲル・バリャダルセ(ペルー)、他
キャスト:ハビエル・レイ(アントニオ)、パス・ベガ(ベルタ)、カルロス・アルコンタラ、ノルマ・マルティネス、ルナ・フルヘンシオ(子役)、アバ・サラサール(子役)、フェルナンド・テヘロ、ビセンテ・ベルガラ、ペドロ・カサブランク、エルビラ・ミンゲス、ヘスス・カロサ、アンパロ・アルカラス、他
(アントニオ役のハビエル・レイ)
解説:マカレナ・アストルガの長編映画デビュー作、サンドラ・ガルシア・ニエトの同名小説の映画化、脚本は作家自身が執筆した。小説家のアントニオ・プリエトは、マラガの山岳地方の村でこの夏を過ごそうと決めていた。次の小説の構想を練るために静けさが必要だったからだ。そこで一目で惹きつけられたベルタという女性と知り合った。アントニオは、この一風変わった雰囲気の女性を登場人物にしようと取材を始めると、この地方には多くの秘密が隠され、神秘的な伝説にとり囲まれていることに気付き始める。村で過ごしていると、時には現実が神話を乗り越えていく感覚を覚えていく。過去と現実の亡霊が浮遊しているサイコスリラー。配給Filmax、スペイン公開2021年6月11日が決定している。
トレビア:2人の子役のうちルナ・フルヘンシオはサンティアゴ・セグラの最新作コメディがヒットして今や有名子役、もう一人アバ・サラサールはパス・ベガの実の娘、母親似だが演技はどうか。本作でデビューした。
(ベルタ役のパス・ベガ)
(左から、ルナ・フルヘンシオ、アバ・サラサール)
(撮影中のパス・ベガ母娘)
★監督紹介:マラガ生れ、監督、脚本家、プロデューサー。マラガ大学で視聴覚コミュニケーションと教育科学を専攻。2004年よりマルベリャのグアダルピン教育センターで映像と音響学の教授。2019年、アンダルシアの優秀な監督に授与されるASFAAN賞を受賞している。フアン・ルイス・モレノの「Last memory」(15)、マチュ・ラトレの「La pérdida」(18)の助監督も務めている。今回の「La casa del caracol」が長編デビュー作となる。
(本作クランクイン当時のマカレナ・アストルガ監督)
(撮影中のハビエル・レイとアストルガ監督)
★1990年代のスペイン女性監督についてのドキュメンタリー「Mujeres que dicen acción」「La memoria dormida」「Voces contra el silencio」などを発表する。2011年の短編ビデオ・ドキュメンタリー「Los ojos de Brahim」(29分)が第15回マラガ映画祭短編ドキュメンタリー部門の銀のビスナガ賞、RTVA賞を受賞した。旧スペイン領サハラ出身の先天性全盲のブラヒム・モハマドの人生を追ったドキュメンタリー。2013年、初となる短編ドラマ「Tránsito」(13分)もマラガFFの銀のビスナガ賞、RTVA賞、アンダルシア最優秀短編賞を受賞、ゴヤ賞2014の短編映画部門にノミネートされた。短編「Marta no viene a senar」はナタリア・デ・モリーナとセリア・デ・モリーナを起用、同じくマラガFF2017に出品された。
(短編ドラマ「Tránsito」のポスター)
★当ブログ初登場のシネアスト、長編第1作とはいえかなりのキャリアがある。マラガ映画祭の常連ということもあって若干長い監督紹介になりました。何かの賞に絡むと予想します。
セクション・オフィシアル作品*マラガ映画祭2021 ⑥ ― 2021年05月13日 11:50
★前回に続いてセクション・オフィシアル作品の紹介。5月11日にはマラガ映画祭の最高賞マラガ―スール賞にアレハンドロ・アメナバルの発表があり慌ただしくなってきました。開幕まであと3週間となりましたので作品列挙を優先して、その後時間が許す範囲で作品紹介をいたします。メキシコからはオスカー監督アルフォンソ・キュアロンの実弟カルロス・キュアロンの長編第3作となるブラック・コメディ「Amalgama」がノミネートされています。
*セクション・オフィシアル*
③「Destello bravío」(英題「Mighty Frash」)スペイン 2021年
製作:Tentación Cabiria / Eddie Saeta
協賛:バダホス地方自治体、カセレス地方自治体、エストレマドゥーラ女性協会、
エストレマドゥーラ農村基金、エストレマドゥーラ・チャンネル、他
監督・脚本:アイノア・ロドリゲス(マドリード1982)
製作者:ルイス・ミニャロ、(エグゼクティブ)アイノア・ロドリゲス
撮影:ウィリー・ハウレギ
編集:ホセ・ルイス・ピカド
キャスト:グアダルペ・グティエレス、カルメン・バルベルデ、イサベル・マリア・メンドサ、
(アイノア・ロドリゲス監督)
解説:過疎化の進む南スペインの小さな町の女性たちは、特別なことは何も起こらない日常の無関心と、自分たちは幸せであると信じこんでいる場所から解放されたいと願っている。イサ、シタ、マリアの3人の中年女性を焦点にして、美しさの探求と子供のころの憧れが語られる。悪の根源としての家父長制と押しよせるグローバリゼーション、人々が自分の存在の意味を見つけるための寓話。アマチュアの女優を起用して、ドキュメンタリーの手法を採用している。長編デビュー作。
*ロッテルダム映画祭2021セクション・オフィシアルのタイガー部門上映(2月2日)、メキシコのFicuname映画祭(3月26日)上映、ミステリアス・ドラマ、98分、ティエラ・デ・バロスで撮影。後日作品&監督紹介予定。
(孤独を抱えた女性たちがスイーツを味わいながら恐怖を語る。映画から)
④「Las mejores familias」ペルー=コロンビア合作 2020年
製作:El Caivo Films / Dynamo
監督:ハビエル・フエンテス=レオン
キャスト:タティアナ・アステンゴ(ルスミラ)、ガブリエラ・ベラスケス(ペタ)、グラシア・オラヨ(カルメン)、グラパ・パオラ、ジェリー・レアテギ、ソニア・セミナリオ、ジョバンニ・Ciccia、セサル・リッター、マルコ・スニノ、ロベルト・カノ、バネッサ・サバ、ヒメナ・リンド、他
解説:ルスミラとペタの姉妹は、ペルーの貴族階級のアリシアとカルメンの家で使用人として働いている。彼女たちはファミリーの一員と見なされていた。或る日のこと、町なかでは暴力的な抗議行動が起きているさなかに誕生会が開かれた。ファミリーのメンバー全員がお祝いに集まった。両方のファミリーによって長らく封印されていた秘密が明らかになると、完璧だったはずの貴族階級の世界が泡のように永遠に砕け散った。ペルー社会の構造上の問題、階級主義や人種差別に取り組んだブラック・コメディ。
(誕生会に集まった二つの家族)
監督紹介:ハビエル・フエンテス=レオンは、1968年ペルーのリマ生れ、監督、脚本家、製作者。大学では医学を専攻、映画はロスアンゼルスのカリフォルニア芸術学院で学んだ。デビュー作「Contracorriente」(09)は、サンセバスチャン映画祭2010で新人監督に贈られるセバスティアン賞、サンダンスFF、マイアミ各映画祭観客賞を含む50以上の映画祭で受賞、ゴヤ賞2011ノミネート、オスカー賞2011のペルー代表作品に選ばれている。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『波に流れて』の邦題で上映された。主役を演じたのがタティアナ・アステンゴ、第2作アクション・スリラー「El elefante desaparecido」(14)にもバネッサ・サバと出演している。トロントFFを皮切りに映画祭巡りをした。本作のブラック・コメディが第3作目になる。他にコロンビアを舞台にしたゲリラをテーマにしたTVシリーズ「Distrito salvaje」(18,6話)を手掛けている。
(ローマ映画祭2020でのフォトコール、10月17日)
⑤「Amalgama」メキシコ 2020年
製作:Besos Cosmicos / 11:11 films / LOKAL
監督:カルロス・キュアロン
脚本:カルロス・キュアロン、ルイス・ウサビアガ
撮影:アルフレッド・アルタミラノ
編集:ソニア・サンチェス
製作者:フアンチョ・カルドナ、マノロ・カルドナ、カルロス・キュアロン、(エグゼクティブ)フランシスコ・カルドナ、ホルヘ・ロンバ
キャスト:マノロ・カルドナ(ホセ・マリア・チェマ・ゴメス医師)、ミゲル・ロダルテ(ウーゴ・ベラ医師)、トニー・ダルトン(サウル・ブラボ医師)、スティファニー・カヨ(エレナ・ドゥラン医師)、フランシス・クルス(アベリノ・マガニャ医師)、アレハンドロ・カルバ(オマル)、ヒメナ・エレラ(タマラ)、他
(悩み多き4人の歯科医)
解説:ゴメス、ベラ、ブラボ、ドゥランの4人の歯科医は、メキシコ有数のリゾート地リビエラ・マヤで開催される歯科学会で偶然出会うことになる。彼らは彼女に惹きつけられるが、彼女は胸中に何か問題を抱えているようだった。もっとも全員がそれぞれの痛みから逃れようとしていた。こうしてカリブの小さな島で、嫉妬、妬みなど、理性を失った週末を一緒に過ごした彼らは、それぞれの人生に深い傷あとを残すことになる。
*第18回モレリア映画祭2020正式出品(10月31日上映)
監督紹介:カルロス・キュアロン(クアロン)1966年メキシコシティ生れ、監督、脚本家、製作者。メキシコ国立自治大学で英文学を専攻した。TV、映画、舞台の脚本家としてスタート、実兄アルフォンソの長編デビュー作「Sólo con tu pareja」(91)を共同執筆、アリエル賞脚本賞を揃って受賞した。同じくアルフォンソの『天国の口、終りの楽園』(01「Y tu mamá también」)で脚本をコラボしている。他にホセ・ルイス・ガルシア・アグラスの「El misterio del Trinidad」(03)の脚本、カルロス・マルコヴィッチのドキュメンタリー「¿ Quién diablos es Juliette ?」(97)を監督とコラボしている。監督長編デビュー作『ルド and クルシ』は、『天国の口、終りの楽園』でブレークしたガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナのコンビを起用して大ヒット、アリエル賞8部門ノミネーション、メキシコ映画史上第3位となる興行成績を打ち立てた。
(GG・ベルナルとディエゴ・ルナに挟まれたカルロス・キュアロン監督)
*以下に短編・TVシリーズを除く監督作品を列挙すると、
2008「Rudo y Cursi」(『ルド and クルシ』)監督、脚本、
ニューポートビーチ映画祭2009観客賞受賞、
2013「Besos de Azúcal」監督、脚本(ルイス・ウサビアガとの共同執筆)、
ファンタスポルト2014監督賞受賞
2020「Amalgama」監督、脚本、製作
マラガ―スール賞にアレハンドロ・アメナバル*マラガ映画祭2021 ⑦ ― 2021年05月15日 18:31
マラガ映画祭の最高賞マラガ―スール賞にアレハンドロ・アメナバル
★去る5月11日、「マラガ―スール賞にアレハンドロ・アメナバル」の発表がありました。マラガ映画祭と日刊紙「スール」Diario Sur がコラボレーションした、本映画祭の大賞です。スペインのみならず海外での多数の受賞歴をもつ監督、脚本家、製作者、作曲家。国際的知名度のあるスペインを代表するシネアストの一人。当ブログでは、哲学者ミゲル・ウナムノの最晩年を描いた『戦争のさなかで』(19)をクランクイン当時からご紹介しています。キャリア&フィルモグラフィーについては、英語版を翻訳したと思われる日本語ウイキペディアで読むことができます(ただし2015年の『リグレッション』まで)。
*『戦争のさなかで』の紹介は、コチラ⇒2018年06月01日/2019年09月27日/11月26日
(クランクイン当時の監督とウナムノ役のカラ・エレハルデ、サラマンカ)
★アレハンドロ・アメナバルは、1972年3月チリのサンティアゴ生れ、監督、脚本家、製作者、作曲家。チリとスペインの二重国籍、父親はでチリ人、母親はスペイン人、1969年生れの兄がいる。1973年8月、首都の不穏な政治情勢に不安を感じた両親は、母親の生れ故郷スペインへの移住を決意する。不安は的中、翌月11日チリ陸軍大将アウグスト・ピノチェトによる軍事クーデターが勃発、社会主義政党アジェンデ政権は崩壊した。ラテンアメリカでは「もう一つの9・11」と称される。
★父親はミュンヘンに本部を置くOSRAM に職をえるが、マドリードに到着した当座はキャンピングカー暮らし、最終的にマドリード近郊のパラクエジョス・デ・ハラマに落ち着いた。17世紀に開校したヘタフェのパードレス・エスコラピオス学校に入学、高校2年のときマドリード北部バラハスにあるアラメダ・デ・オスナに編入した。両親は兄弟の教育には熱心で、テレビや映画館は15歳まで許されなかった。入学したマドリード・コンプルテンセ大学情報科学部は中退している。同大学の親友マテオ・ヒルは、後に『テシス 次に私が殺される』や『オープン・ユア・アイズ』、更に『夢を飛ぶ夢』、『アレクサンドリア』の脚本を共同執筆している。
★1991年「La cabeza」で短編デビュー、その後「La extraña obsesión del Doctor Morbius」(92)、「Himenóptero」(92)、「Luna」(94)と合計4本の短編発表後、1996年長編『テシス 次に私が殺される』で鮮烈デビュー、映画界のみならずスペイン社会に衝撃を与える。第2作サイコスリラー『オープン・ユア・アイズ』(97)は、ベルリンや東京国際映画祭で高評価、トム・クルーズがリメイク権を取得、キャメロン・クロウ監督、クルーズ、ペネロペ・クルス主演で『バニラ・スカイ』(01)としてリメイクされた。3作目ホラー・サスペンス『アザーズ』(01)でハリウッド進出、ニコール・キッドマンを起用して初めて英語で撮り、観客と批評家から受け入れられた。本作はベネチア映画祭でプレミアされ、ゴヤ賞15部門ノミネート8冠を制している。作品賞・監督賞を含む8冠はゴヤ賞史上でもイマノル・ウリベの『時間切れの愛』とダニエル・モンソンの『プリズン211』を数えるだけである。
(デビュー作『テシス 次に私が殺される』のスペイン版ポスター)
★スペインに戻った監督は、尊厳死を願うガリシアのラモン・サンペドロの手記をベースにした4作目 『夢を飛ぶ夢』(04)を製作、ベネチア映画祭2004でプレミアされ審査員特別賞ほか受賞、翌年のゴヤ賞15部門ノミネーション14冠、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞、最終的にアカデミー外国語映画賞を受賞してオスカー監督となった。受賞挨拶で「このトロフィーをラモンに捧げる」とスピーチしたが、後にサンペドロの遺族との間に軋轢を残す結果となった。言語はスペイン語、ガリシア語、カタルーニャ語。
(ラモンを演じたハビエル・バルデム、メイクに6時間費やしたことが話題になった)
★レイチェル・ワイズを迎えて撮った5作目『アレクサンドリア』は、カンヌ映画祭2009コンペティション部門に出品された。ゴヤ賞7冠の本作は、スペインでは興行成績年間トップの2100万ユーロ、観客動員数350万人だったが、アメリカでの不発が原因で巨額の資金を投じたテレシンコ・シネマは苦境に立たされた。ローマ帝国末期4世紀にエジプト・アレクサンドリアに実在した女性天文学者の物語は、アメリカの若者には受け入れられなかった。言語は英語。
★6年間の沈黙を破って撮った、イーサン・ホーク、エマ・ワトソン主演の6作目『リグレッション』は、ホラー・サスペンス。サンセバスチャン映画祭2015のオープニング作品としてプレミアされた(コンペティション外作品)。スペイン興行成績900万ユーロ、観客動員数100万人だった。7作目が上述した『戦争のさなかで』(19)は、トロント、サンセバスチャン上映後、本邦でも東京国際映画祭とラテンビートの共催で上映された。スペインでは190万人が映画館に足を運んだ。彼のようにスリラー、ホラー、SF、サスペンスなどを取り入れた映画作家は多くはない。
★影響を受けた監督として、ヒッチコック、フリッツ・ラング、フランス系アメリカ人ジャック・ターナー、キューブリック、ロマン・ポランスキーなどを挙げ、ポランスキー以外は鬼籍入りしている。最新作はTVミニシリーズ「La Fortuna」(6話、21)は、パコ・ロカ&ギジェルモ・コラルのグラフィック小説「El tesoro de cisne negro」に着想を得て製作された。キャストはペドロ・カサブランク、同じ俳優を起用しない方針を変更したのか(TVは別なのか)カラ・エレハルデがクレジットされている。製作はMovistar+、Mod Producciones、秋公開が予定されている。
*主なフィルモグラフィー*
1996-Tasis 『テシス 次に私が殺される』 監督・脚本・音楽
ゴヤ賞(作品賞・新人監督賞・オリジナル脚本賞)、サンジョルディ賞
1997-Abre los ojos 『オープン・ユア・アイズ』 監督・脚本・音楽
2001-Los otros 『アザーズ』 監督・脚本・音楽
ゴヤ賞(監督賞・オリジナル脚本賞)、サンジョルディ賞
2004-Mar adentro 『夢を飛ぶ夢』 監督・脚本・製作・音楽
アカデミー外国語映画賞、ゴールデン・グローブ外国語映画賞賞、
ゴヤ賞(作品・監督・オリジナル脚本・オリジナル作曲)、サンジョルディ賞、トゥリア賞
2009-Ágora 『アレクサンドリア』 監督・脚本
ゴヤ賞(オリジナル脚本賞)
2015-Regresion 『リグレッション』 監督・脚本
2019-Mientras dure la gurra『戦争のさなかで』 監督・脚本・音楽
*短編、TVシリーズ、ミュージックビデオ、テレビコマーシャルを除く。
★他にホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』(99)とマテオ・ヒルの『パズル』(99)の音楽、オスカル・サントスの『命の相続人』(10)の製作を手掛けている。横道にそれるが、2004年カミングアウト、同性婚成立後の2015年7月ダビ・ブランコと結婚したが、2018年初め別居、翌年離婚、新パートナーとは2018年夏から交際、病理解剖学を専門とする医師セサル、22歳年下ということです。
オープニング&クロージング作品の発表*マラガ映画祭2021 ⑧ ― 2021年05月18日 18:34
オープニング作品はセクン・デ・ラ・ロサのミュージカルコメディ
(2021年5月5日公開されたばかりのポスター)
★5月13日、オープニングとクロージング作品が同時に発表されました。前者は俳優セクン・デ・ラ・ロサの監督デビュー作「El cover」、後者はアナ・ムルガレンの長編3作目、コメディ「García y García」です。今回はミュージカルコメディ「El cover」のご紹介。監督のセクン・デ・ラ・ロサは、エミリオ・マルティネス=ラサロのコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』や『クローズド・バル』に出演、映画、TV、舞台出演に監督業が加わった。アナ・ムルガレン(ナバラ1961)の新作は、ハビエル・ガルシアという同姓同名の二人の男性の物語、ムルガレン監督のキャリア&フィルモグラフィーは、前作「La higuera de los bastardos」(17)でご紹介しています。
「El cover」2021 ミュージカルコメディ
製作:Nadie es Perfecto / Universal Music Group / Amazon Prime Video / Entertainment One
監督・脚本:セクン・デ・ラ・ロサ
撮影:サンティアゴ・ラカ、
編集:ハビ・フルトス
製作者:キコ・マルティネス、ホセ・ルイス・ヒメネス、レオネル・ビエイラ
データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、ミュージカルコメディ、撮影地アリカンテのベニドルム、マドリード、2020年2月19日クランクインするもコロナウィルス感染によるパンデミックで6月26日まで中断、7月1日に再開、期間6週間。マラガ映画祭2021オープニング作品(6月3日上映)、スペイン公開7月23日予定
キャスト:アレックス・モネール(ダニ)、マリナ・サラス(サンドラ)、カロリナ・ジュステ(エイミー)、ランデル・オタオラ、マリア・エルバス(モニ)、フアン・ディエゴ(ダニの祖父)、カルメン・マチ、スシ・サンチェス、ホルヘ・カルボ、ペペ・オシオ(セバスティアン)、リディア・ミンゲス(マドンナ)、オスカル・デ・ラ・フエンテ(ダニの代父)、他
ストーリー:心に葛藤を抱えた若者ダニの物語。音楽への愛は限りないが、父親のように挫折することを怖れている。また祖父のようにありふれた人にはなりたくないと思っている。いまは両親と同じようにウェイターとして働きながら、夢を捨てて生きねばならないジレンマに苦しんでいる。今年もベニドルムに夏がめぐってきた。成功を求めてバルやホテル、ナイトクラブに歌いに来るミュージシャンで溢れている。やがてサンドラと出会うことになるが、二人は無名の歌手たちの日々の闘いや愛を見つけ、取るに足りない人間とは何か、そうならないためにどうすればいいか学ぶことになる。
(左から、マリナ・サラス、アレックス・モネール、セクン・デ・ラ・ロサ監督、
フアン・ディエゴ、カロリナ・ジュステ、マリア・エルバス)
★監督紹介:セクン・デ・ラ・ロサは、1969年12月23日、バルセロナのCanyellesカニエル工業地帯生稀る(父はマラガ出身、母はカタルーニャ)、映画、TV、舞台俳優、監督、脚本家。20歳のときマドリードに移り、有名な俳優養成学校クリスティナ・ロタで演技を学ぶ。最近20年間の活躍でスペインではコメディ俳優としての揺るぎない位置を得ている。並行して戯曲家、舞台演出家のキャリアも積んでいおり、「Los años rápides」、「El disco de cristal」「Clara Bow」は、観客と批評家から受け入れられた成功作。
(セクン・デ・ラ・ロサ監督)
★俳優としては、大方が脇役だからTVシリーズ、短編を含めると3桁に近づいている。アレックス・デ・ラ・イグレシアの『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』、『スガラムルディの魔女』ほか、オスカー監督マイケル・ラドフォードの「La mula」、エミリオ・マルティネス=ラサロのミュージカルコメディ「El otro lado de la cama」、「El 2 lados de la cama」(ミニ映画祭で『ベッドサイド物語』)、ホアキン・オリストレルの「¡Hay motivo!」ほか、ボルハ・コベアガの実話をベースにしたヒット作「Negociador」ほか、アントニア・サン・フアンの「Del lado del verano」ほか、若手監督のハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシのミュージカル『ホーリー・キャンプ!』、エドゥアルド・カサノバの『スキン あなたに触らせて』、TVシリーズでは長寿TVシリーズ「Aída」、『パキータ・サラス』、ミュージカルコメディ「Paco y Veva」、最近ではファンタジーホラー「30 monedas」(20)と引っ張り凧である。
*ゴチック体は、当ブログで作品紹介をしている映画です。
(『クローズド・バル』の1シーンから)
★受賞歴として、スペイン俳優連盟賞を2004年にダビ・セラーノの「Días de fútbol」と2011年にTVシリーズ部門の「Aída」で受賞している。ほかに1917年の短編サディ・ドゥアルテの「Enchufados」(15分、コメディ)でロスアンゼルス俳優賞を共演のアレバロとデュオ賞、翌年インデペンデント短編賞のゴールド賞、ニューヨーク・フィルム賞、トップ短編映画祭アンサンブル部門February賞、2019年にも同監督の「Cuando la Música Deja de Sonar」(15分)でアンサンブル男優賞、シネマワールドフェス助演男優賞、インデペンデント短編賞アンサンブル部門のオナラブル・メンション、トップ短編映画祭アンサンブル部門December賞、ワールドプレミアフィルム賞の助演男優賞部門審査員賞を受賞している。ノミネーションは多数につき割愛しました。
★上述したように2020年2月19日にクランクインしたが、新型コロナウィルス感染によるパンデミックで6月26日まで中断、なんとか7月1日に再開できた。いろいろ縛りはあったが、とにかく完成できたから「ホントに、ホントに、運がよかった!」と監督。マラガ映画祭終了後の7月23日に劇場公開されたあと、アマゾン・プライム・ビデオでオンライン上映される予定。ザ・キラーズ、エイミー・ワインハウス、レディ・ガガ、シャーリー・バッシー、グロリア・ゲイナー、ラ・マレール、アントニオ・ベガ、ラファエルなどなど、世界の偉大なミュージシャンの楽曲がカバーされるということです。
★若いアレックス・モネールやマリナ・サラス、カロリナ・ジュステを脇から支えるフアン・ディエゴ、カルメン・マチ、スシ・サンチェスなどの豪華キャストに驚かされます。映画、TV、舞台俳優としての長年の実績と信頼の賜物でしょう。舞台となるバレンシアのアリカンテ県コスタブランカの海岸沿いににあるベニドルムという新興リゾート地は、イサベル・コイシェがイギリス俳優ティモシー・スポールを起用して撮ったスリラー仕立てのラブロマンス「Nieva en Benidorm」で紹介しています。海外から押しよせる観光客で賑わうスペインきっての大歓楽街です。本作にはカルメン・マチが警察官として出演している。
*「Nieva en Benidorm」の作品紹介は、コチラ⇒2021年02月11日
(ダニとサンドラ、灯りの消えない街ベニドルム)
(サンドラ役のマリナ・サラス)
(監督とアレックス・モネール、本作の舞台ベニドルムにて)
(左から、カルメン・マチ、監督、アレックス・モネール)
★制作会社「Nadie es Perfecto」のメインプロデューサー、キコ・マルティネスは、アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バングとのコラボで『クローズド・バル』、『トガリネズミの巣』(『ネスト』)、「Perfectos desconocidos」などヒット作を製作しています。
クロージング作品はムルガレンのコメディ*マラガ映画祭2021 ⑨ ― 2021年05月21日 15:32
アナ・ムルガレンの第3作「García y García」はコメディ
★セクション・オフィシアル作品の全体像はまだ見えてきませんが、クロージング作品はアナ・ムルガレンの第3作め「García y García」とアナウンスされました。前回のオープニング作品「El caver」で少し触れましたようにこちらもコメディ、新型コロナウイリス感染拡大による自粛ムードの憂さを晴らしたいようです。ムルガレン監督は、前作「La higuera de los bastardos」でキャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。主演のホセ・モタとペペ・ビジュエラの二人が同姓同名のハビエル・ガルシアに扮します。ホセ・モタはアレックス・デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』とパブロ・ベルヘルの『アブラカダブラ』でお馴染みです。ペペ・ビジュエラはハビエル・フェセルの『モルタデロとフィレモン』のフィレモン・ピ役で既に登場していますが、当ブログは初登場です。
(左から、ペペ・ビジュエラ、ホセ・モタ、二人のハビエル・ガルシア役)
*「La higuera de los bastardos」の監督&作品紹介は、コチラ⇒2017年12月03日
*『アブラカダブラ』の作品&ホセ・モタ紹介は、コチラ⇒2017年07月05日
「García y García」2021年 コメディ
製作:Brogmedia / Claq Films 協賛RTVE / Amazon / EiTB / Aragón TV / ICAA
監督:アナ・ムルガレン
脚本:アナ・ムルガレン、アナ・ガラン
ストーリー:カルロス・ラメラ、ホアキン・トリンカド、(共著)マルコス・マス
音楽:アイツォル・サラチャガ
撮影:アルベルト・パスクアル
編集:アントニオ・フルトス、アナ・ムルガレン
キャスティング:フアナ・マルティネス、ホアキン・トリンカド
衣装デザイン:ネレア・トリホス
メイクアップ&ヘアー:(メイク&ヘアー主任)オルガ・クルス、(メイク主任)セシリア・エスコット)、ヘノベバ・ゴメス、ルベン・サモス
製作者:リカルド・マルコス・ブデ、カルロス・ラメラ、イグナシオ・サラサール=シンプソン、ホアキン・トリンカド、(エグゼクティブ)アナ・ムルガレン、ほか
データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、アドベンチャー・コメディ、98分、撮影地アラゴン州のテルエル、サラゴサ、マドリード、ビルバオ、2020年7月27日クランクイン、期間8週間。マラガ映画祭上映後アマゾンプライムビデオで上映、スペイン公開8月27日予定
キャスト:ホセ・モタ(顧問ハビエル・ガルシア)、ペペ・ビジュエラ(技術者ハビエル・ガルシア)、エバ・ウガルテ(クロエ)、マルティタ・デ・グラナ(エバ)、カルロス・アレセス(ダリオ)、ナイアラ・アルネド(ニナ)、ミケル・ロサダ(リッキー)、ジョルディ・サンチェス(アルフォンソ)、アントニオ・レシネス(アントニオ)、リカルド・カステーリャ(エクトル)、ヘスス・ビダル(ルベン)、Alexityアレクシティ(ブランカ)、ほかラモン・バレス、アリシア・フェルナンデス、パコ・コジャド、マルコス・マスなど多数
ストーリー:弱小の格安航空会社イスパビアは深刻な問題に直面している。彼らの数はバランスを欠き、飛行機が飛ぶこともありません。会社を救うために必死の博打をうつ。一流の航空会社のコンサルタントとメカニック部門のエキスパートを同時に雇うことにした。どちらもハビエル・ガルシアという名前でした。その偶然と会社の無秩序がもとで、最初から二人のガルシアは混乱に巻き込まれ、役割を交換することになるでしょう。技術者が会社のオーナーによって手配された高級ホテルに宿泊しているあいだ、一流コンサルタントは油じみた作業ズボンを着せられ格納庫に連れていかれます。何が起きているのか分からないまま、二人のガルシアが間違いに気づくまで、互いの難問に対処することになる。
(二人のガルシア、テルエルの高級ホテルにて)
★監督紹介:アナ・ムルガレンAna Murugarrenは、1961年ナバラ州マルシーリャス生れ、監督、脚本家、編集者、製作者。バスク大学で情報科学を専攻、1980年代後半から始まったバスク・ヌーベルバーグの一人。グループにはエンリケ・ウルビス、パブロ・ベルヘル、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ルイス・マリアス、ホアキン・トリンカドなどがいる。編集者としてスタート、エンリケ・ウルビスのコメディ「Tu novia está loca」や「Todo por la pasta」の編集を手掛けている。ホアキン・トリンカドのコメディ「Sálvate si puedes」の編集、ドキュメンター「Esta no es la vida privada de Javier Krahe」を共同で監督しており、今回もストーリーと製作を担っている。ウルビスのコメディ映画は、『貸し金庫507』でご紹介しています。
*エンリケ・ウルビスのコメディの記事は、コチラ⇒2014年03月25日
*フィルモグラフィー*
1988年「Tu novia está loca」編集、監督はエンリケ・ウルビス
1988年「Mama」(短編)編集、監督はパブロ・ベルヘル
1991年「Todo por la pasta」編集、監督はエンリケ・ウルビス
シネマ・ライターズ・サークル賞1991最優秀編集賞を受賞
1995年「Sálvate si puedes」編集、監督はホアキン・トリンカド
2005年「Esta no es la vida privada de Javier Krahe」ドキュメンタリー、監督・編集
(ホアキン・トリンカドとの共同監督、映画の創造性ボセント賞受賞)
2011年「El precio de la libertad」監督・編集(TVミニシリーズ2話)
スペシャル・イリス賞、女性インデペンデントFF2012メリット賞・編集賞
(製作者ホアキン・トリンカドと受賞)
2012年「La dama guerrera」監督・編集(TVムービー)
バスクのEuskal Bobinak 賞を受賞
2014年「Tres mentiras」監督・編集、長編映画デビュー作
2017年「La higuera de los bastardos」監督・脚色・編集
2021年「García y García」本作付き省略
(ホアキン・トリンカドと監督、女性インデペンデントFF2012にて)
★長編受賞歴:
◎「Tres mentiras」は、サモラ県の第15回トゥデラ映画祭 2014で第1回監督賞、フィリピンのワールド・フィルム・フェス2015でグランプリ、他に主役のノラ・ナバスが女優賞を受賞、他にサラゴサ映画祭2015で第1回監督Augusto賞受賞、ほかノミネート多数。
◎「La higuera de los bastardos」は、ハリウッド映画祭2018銀賞・審査員賞・映画アーティスト・エクセレンス賞を受賞、アルバカーキ映画音楽祭監督賞、シアトル・ラティノ特別審査員賞、テキサス州オースティンのファンタスティック・フェスに正式出品、批評家から高く評価されたことが、翌年のアメリカ公開、オンライン上映に繋がった。
(カラ・エレハルデとカルロス・アレセス主演の第2作のポスター)
★新作トレビア:監督によると、プロデューサーのホアキン・トリンカドと本作のそもそものアイデアマンのカルロス・ラメラが「García y García」を携えて訪ねてきた。「これはオリジナルでリメイクじゃない」と言ったとき、「いいね!」と思った。それは「自分の原点である「Tu novia está loca」を思い出したから」。エンリケ・ウルビスのコメディですね。ほかの人が持ち込んできた企画ならクレージーすぎてホンキにならなかったろうと。「私が出会った製作者のなかでも、もっともリスクを怖れない賢明なホアキン・トリンカドと、マドリードのバラハス空港のターミナル4,またはアムステルダムの新スキポール空港の建築家カルロス・ラメラだったから監督することにした。数日後、ホセ・モタとペペ・ビジュエラにガルシアとガルシアを体現してもらうことを提案したのです」と監督。
(撮影中の監督、ホセ・モタとペペ・ビジュエラ)
★カルロス・ラメラが映画という冒険に乗り出すきっかけについて語っている。「2016年、私はカタールにいました。私のルーチンは10日ごとにバラハスに飛ぶことでした。出口には見知らぬ人を迎えに来た、見知らぬ人の名前が書かれた小さなボードを持って待っている一群が必ずいる。あるとき、<ハビエル・ガルシア>と書かれた看板をもっている別々の二人に気づいた。そこでピーンときた、これは映画になると。映画のことはチンプンカンプンだからアントニオ・レシネスに電話をした。するとビルバオのプロデューサーに連絡とれという、そのプロデューサーがトリンカドだったというわけです。私たちも二人のガルシアのように奇妙なカップルというわけですが、真実は、勇気、熱意、忍耐力が私たちを結びつけたのです」。ガルシアという苗字は日本で言うと<山田>さん、一番多いお名前です。ハビエルも多いから結構ありますよね。
★本作で映画デビューする女の子、ブランカ役のAlexityアレクシティはスペインで大人気のTouTuberのインフルエンサーです。可愛くて生意気で小憎らしい、なによりもそのノンストップのお喋りにはびっくりする。本作で一番の人気者になるでしょう。YouTubeで愉しめます。
(アレクシティ)
スタンダップコメディ 『ダニ・ロビラの嫌悪感』*ネットフリックス配信 ― 2021年05月24日 17:44
生れ故郷マラガで「Odio, Dani Rovira」と題してライブ
★ダニ・ロビラがHodgkin(ホジキンリンパ腫)という癌の診断を受けたのは、2020年3月18日、スペイン政府が新型コロナウイリス蔓延のためロックダウンを宣言した4日後だったという。1週間後SNSで告知すると、友人知人はいうに及ばず見知らぬ人々からの励ましを受けて勇気づけられたという。「Ocho apellidos vascos」共演で意気投合、以来パートナーだったクララ・ラゴとの関係は、前年に終わっていた。リピーターを含めると約1000万人が映画館に足を運んだという、スペイン映画史上最高の収益をだした大ヒット作、二人で設立した慈善財団「Fundación Ochotumbao」の活動は続行している。それとこれは別ということです。クララの新恋人は歌手で俳優のホセ・ルセナということです。
『ダニ・ロビラの嫌悪感』(原題「Odio de Dani Rovira」)
★製作はNetflix、スタンダップコメディ、82分、ライブは2020年11月14日、マラガのソーホー・カイシャバンク劇場 Teatro del Soho CaixaBank、今年のゴヤ賞2021のガラもこの劇場で開催された。2021年2月12日から Netflix で配信が開始されている。
(ソーホー・カイシャバンク劇場のライブ予告から)
★「パンデミックだけでなくがんと闘っている人々へのオマージュ」として企画された。称賛と批判あるいは嫌悪感は背中合わせであるのだが、かなりきわどい発言もあった。2020年11月といえばまだ新型コロナウイルスの真っただ中のはずですが、マスクこそしていましたが会場はほぼ満席に近かったように思え、コロナ禍対応の違いを感じさせた。ロビラが罹患したホジキンリンパ腫という癌は日本では多くないそうですが、治癒が難しいということです。多分本人的には九死に一生を得たということでしょう。40歳で迎えた第二の人生は幕が揚がったばかり、心身のバランスをとって、今後も私たちに笑いを届けてください。
★ダニ・ロビラは1980年11月マラガ生れ、俳優、スタンダップコメディアン、TV司会者、慈善活動家。完全菜食主義者である。18歳で大学進学のためグラナダに移り、グラナダ大学では体育スポーツ科学を専攻した。26歳のとき本格的に俳優の道を目指してマドリードに移住、2004年テレビ界でスタートする。長編映画デビューは、2014年のエミリオ・マルティネス=ラサロのコメディ「Ocho apellidos vascos」の主役に起用され、一躍スターダムにのし上がった。ゴヤ賞2015の総合司会に抜擢され、自身も新人男優賞を受賞した。第2作は、台本を渡されたのはこちらのほうが先だったというマリア・リポルの「Ahora o nunca」(15、邦題『やるなら今しかない!』)。ゴヤ賞ガラは3年連続で総合司会を務めたが、称賛と批判半々に疲労困憊、4回目は引き受けなかった。
(ゴヤ賞2015新人男優賞のトロフィーを手にしたダニ・ロビラ)
*以下に主な活躍を列挙すると(ゴチック体は当ブログ紹介作品)、
2015『オチョ・アペリードス・カタラネス』(「オチョ・アペリードス・バスコス」の続編)
2016『100メートル』マルセル・バレナ監督
2017『ティ・マイ~希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ監督
2018『スーパーロペス』ハビエル・ルイス・カルデラ監督
2018「Miamor perdida」エミリオ・マルティネス=ラサロ監督
2019「Taxi a Gibraltar」アレホ・フラ監督、マラガ映画祭2019のオープニング作品
2019「Los Japón」アルバロ・ディアス・ロレンソ監督、マラガFF2019クロージング作品
2021『ジャングルクルーズ』ジャウム・コレット=セラ監督(ディズニー映画)
★邦題はネットフリックスで配信されたときのもの、『ジャングルクルーズ』の撮影は2018年と癌罹患前であるが、もともとの公開日(2020年7月)が、米国の新型コロナウイルス蔓延のため1年後に延期されていた。日米同時公開は2021年7月の予定。本作にはダニ・ロビラのほか、エドガー・ラミレス、キム・グティエレスなどがクレジットされている。キャリア詳細については、以下の作品で紹介しています。
*「Ocho apellidos vascos」の主な作品紹介は、コチラ⇒2014年03月27日
*『やるなら今しかない!』の作品紹介は、コチラ⇒2015年07月14日
*『オチョ・アペリードス・カタラネス』の作品紹介は、コチラ⇒2015年12月09日
*「Miamor perdida」の作品紹介は、コチラ⇒2018年12月14日
マラガ映画祭の全容が発表されました*マラガ映画祭2021 ⑩ ― 2021年05月25日 17:28
セクション・オフィシアル作品19作、コンペ外4作はオールコメディ
(マラガ映画祭2021の発表会、5月24日、セルバンテス劇場にて)
★開幕を目前にした5月24日、マラガ映画祭総裁(マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ)、映画祭総ディレクター(フアン・アントニオ・ビガル)以下協賛企業、メディア関係者一同が勢揃いして映画祭本部のセルバンテス劇場で、コンペティション部門、アウトコンペティション、審査員、特別栄誉賞、金の映画賞などの発表があり、やっと全体像が見えてきました。スペイン語、ポルトガル語に特化した映画祭ですが、70ヵ国2321本(うち715本が女性監督)の応募の中から厳選したそうです。マラガ市長は文化と映画祭への重要な取組と支援について、すべてのスポンサー、協力者に感謝の言葉を述べました。
★総代表ビガルは、新型コロナウイリスのワクチン接種者の増加で状況は改善されたとはいえ、従来の映画祭に戻ることはできないと考えている。パンデミックによって出来している混乱状況や制限に適応して開催することが宣言された。つまり、昨年通り、セルバンテス劇場正面のレッドカーペットは敷かない、メディアのための大規模なフォトコールは、招待者や関係者が宿泊するミラマル・ホテルの庭園で観客を入れずにする、ソーシャル・ディスタンスを守り、マスク着用などの衛生管理の対策を立てて映画祭に臨むことをアピールした。70ヵ国約2300本以上の応募があったことは、本祭の国際的位置づけを示しているとも語った。
★セクション・オフィシアルの審査員は、委員長にノラ・ナバス(女優、スペイン映画アカデミー副会長)、カルレス・トラス(監督、「Callback」2016金のビスナガ賞)、ラファエル・コボス(脚本家、2019リカルド・フランコ賞)、バレリー・デルピエール(製作者、『悲しみに、こんにちは』2017、「Las niñas」2020の金のビスナガ賞)、エレナ・S・サンチェス(ジャーナリスト、TV司会者)の5名。全てのシネアストを既にご紹介しています。
*カルレス・トラスの「Callback」作品紹介は、コチラ⇒2016年05月03日
*エレナ・S・サンチェスの紹介記事は、コチラ⇒2015年05月14日
★特別賞(6賞)は、ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞以外は既に発表になっておりました。繰り返しますと、
◎マラガ―スール賞(本映画祭とスール紙が与える大賞)アレハンドロ・アメナバル
◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ(マラガ・オイ紙とのコラボ)マリアノ・バロッソ
◎マラガ才能賞―マラガ・オピニオン(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)オリベル・ラシェ
◎リカルド・フランコ賞(映画アカデミーとのコラボ)フリア・フアニス(フィルム編集者)
◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞 ペトラ・マルティネス(女優)
*主演作『マリアの旅』でキャリア紹介、コチラ⇒2020年10月27日/11月29日
(『マリアの旅』主演のペトラ・マルティネス)
◎ビスナガ栄誉賞 ハビエル・フェセル
*昨年の受賞者ですが、パンデミックで授賞式が延期されていました。授与式には最新作である「Historias lamentables」(20)が上映される予定。
(『だれもが愛しいチャンピオン』の監督ハビエル・フェセル)
★金の映画は、1951年にルイス・ガルシア・ベルランガとフアン・アントニオ・バルデムが共同監督した「Esa pareja feliz」(「The Happy Couple」公開は1953年)というクラシックコメディが選ばれました。主演はフェルナンド・フェルナン・ゴメス、皆さん鬼籍入りしています。今年はベルランガ生誕100周年の年で想定内の選択でした。ほかにも開催中にベルランガ映画のオマージュのイベントが多数準備されているようです。
(金の映画「Esa pareja feliz」のポスター)
★既にセクション・オフィシアル(コンペティション&アウトコンペティション部門)は、五月雨式に発表されておりましたが、次回全23作(アウトコンペ4作を含む)を列挙することにします。
セクション・オフィシアル作品19作*マラガ映画祭2021 ⑪ ― 2021年05月27日 16:50
マドリードでセクション・オフィシアルのプレゼンテーションを開催
(マラガ映画祭2021のプレゼンテーション、5月25日ドマリードのCBAにて)
★5月25日、マラガからマドリードのシルクロ・デ・ベジャス・アルテスCBAに舞台を移して、映画祭代表ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル、選考委員会メンバーであるフェルナンド・メンデス=レイテが出席して、セクション・オフィシアルにノミネートされた23作の監督、製作者などが参加してプレゼンが行われました。移動が制限されているので集まれたのはスペイン側だけでしたが、17名が参加、出席できなかったシネアストはオンラインまたはビデオレターで参加しました。CBAは1880年に設立された非営利団体の民間文化センターです。
★参加者15名のうち、セクン・デ・ラ・ロサ「El cover」の製作者キコ・マルティネス、オスカル・アイバル「El sustituto」の製作者ヘラルド・エレーロ、アウトコンペ上映のビセンテ・ビジャヌエバ「Sevillanas de Brooklyn」の製作者で共同脚本家のナチョ・ラカサの3人以外は監督でした。以下列挙すると、カロル・ロドリゲス、エセキエル・モンテス、マカレナ・アストルガ、アグスティ・ビリャロンガ、アイノア・ロドリゲス、フリア・デ・パス、ウーゴ・マルティン・クエルボ、ダニ・デ・ラ・トーレ、クラウディア・ピント、カルロス・テロン、アナ・ムルガレン、Judith Colell ジュディス・コレルの15名。小さい写真でほとんど識別できませんが・・・
★オンライン参加はルカス・トゥルトゥルTurturro、フアン・パブロ・フェリックス、ハビエル・フエンテス=レオン、ヘンリー・リンコンの4名、ビデオレター参加は、カルロス・キュアロン、Djin Sganzerla、ホアキン・マウアド、ハビエル・フェセルの4名でした。以下にタイトル、国名、監督名、製作年、ジャンル、上映時間などの順で列挙しておきます。
*セクション・オフィシアル19作*
1)「El cover」スペイン=ポルトガル、セクン・デ・ラ・ロサ、2020年、コメディ、90分
*オープニング作品、作品紹介は、コチラ⇒2021年05月18日
2)「15 horas」ドミニカ共和国=スペイン、Judith Colell ジュディス・コレル、2020年、80分
*バルセロナ出身の監督、スペイン映画アカデミー副会長を務めた。(2011~15)、代表作は2010年の「Elisa K」。
3)「Años luz」ウルグアイ、ホアキン・マウアド、2021年、ドラマ、81分
*1990年モンテビデオ生れ、監督、脚本家、製作者。ウルグアイ映画学校、キューバの映画TV学校で学ぶ。2017年「El sereno」でデビュー。本作は離れ離れに暮らしていた3人の姉兄が、亡父の残した古い家を売却するため、子供時代を過ごした故郷で再会する物語。
*作品紹介は、コチラ⇒2021年05月30日
4)「Ama」スペイン、フリア・デ・パス・ソルバス、2020年、ドラマ、90分
*監督、脚本家、バルセロナのカタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCACで学ぶ。母親たちの孤独をフィクションとドキュメンタリーの中間の手法で語る、長編デビュー作。
6)「Cómo mueren las reinas」アルゼンチン、ルカス・トゥルトゥル)、2021年、83分
*長編映画デビュー作、1983年ブエノスアイレス生れ、ドキュメンタリーを多数撮っている
7)「Chavalas」スペイン、カロル・ロドリゲス・コラス、2020年、91分
*長編映画デビュー作、Cornella生れ、バルセロナに移住、写真家としてキャリアをスタートさせる。短編を多数撮っている。離れがたい4人の女の子の友情が語られる。
8)「Con quién viajas」スペイン、ウーゴ・マルティン・クエルボ、2021年、87分
*長編映画デビュー作、1987年マドリード生れ、2005年広告会社で働き始めるが、翌年録音助手として映画界入りする。本作は見知らぬ同士の4人の旅人が1台の車でムルシアに向かう話。面白そうなので作品紹介を予定しています。
10)「El sustituto」スペイン、オスカル・アイバル、2020年、117分
*バルセロナ生れ、監督、脚本家、代表作はサンティアゴ・セグラを起用した「El gran Vázquez」(10)、本作はリカルド・ゴメス主演のアクション・アドベンチャー。
11)「El ventre del mar / El vientre del mar」スペイン、アグスティ・ビリャロンガ、
2021年、78分、カタルーニャ語、スペイン語字幕入り上映。
*作品紹介は、コチラ⇒2021年05月09日
12)「Homble muerto no sabe vivir」スペイン、エゼキエル・モンテス、2021年、105分
*長編映画デビュー作、マラガ生れ、監督、製作者、短編多数、「Este amor es de otro planeta」(19)ほかをプロデュースしている。第2作が進行中。
13)「Karnawal」アルゼンチン=ブラジル=メキシコ=チリ=ノルウェー=ボリビア、
フアン・パブロ・フェリックス、2020年、97分
*アルゼンチン生れ、監督、脚本家、TVシリーズを多数手掛けている。本作はグアダラハラ映画祭2020で監督賞と主演のアルフレッド・カストロが男優賞、カストロはトゥールーズ映画祭でも男優賞を受賞している。
*作品紹介は、コチラ⇒2021年06月13日
15)「La ciudad de las fieras」コロンビア=エクアドル、ヘンリー・リンコン、2021年、93分
*監督、脚本家、製作者。2016年「Pasos de héroe」でデビュー、本作は2作目。
16)「La consecuencias」スペイン=オランダ=ベルギー、
クラウディア・ピント・エンペラドール、2021年、96分、第2作目
*ベネズエラ生れ、監督、脚本家、製作者。デビュー作「La distancia más larga」(13)は、第1回イベロアメリカ・プラチナ賞2015で初監督賞を受賞他、受賞歴多数、TVシリーズも手掛けている。
*デビュー作&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2013年09月05日/2015年02月07日
18)「Live is life」スペイン、ダニ・デ・ラ・トーレ、2020年、109分
*1975年ガリシアのルゴ生れ、監督、脚本家、製作者。代表作「El desconocido」(『暴走車 ランナウェイ・カー』)、「La sombra de la Ley」(『ガン・シティ~動乱のバルセロナ』)など。新作は1985年半ばのガリシアを舞台にした5人の少年の冒険物語。
*作品紹介は、コチラ⇒2021年06月11日
19)「Mulher oceano / Mujer océano」ブラジル、Djin Sganzerla、2020年、99分
*ポルトガル語、スペイン語字幕入り上映。1977年リオデジャネイロ生れ、女優、監督、製作者。本作は東京に移住したブラジルの作家が、日本の経験をベースに新作を書こうとする。
21)「Historias lamentables」スペイン、ハビエル・フェセル、2020年、コメディ、129分
*代表作『だれもが愛しいチャンピオン』『モルタデロとフィレモン』などヒット作多数。今年のビスナガ特別栄誉賞受賞者。
22)「Operación Camarón」スペイン、カルロス・テロン、2020年、コメディ、105分
*1978年サラマンカ生れ、監督、製作者(短編でゴヤ賞受賞)、TVシリーズを多数手掛けている。
23)「Sevillanas de Brooklyn」スペイン、ビセンテ・ビジャヌエバ、2020、コメディ、97分
*2011年長編デビュー、2017年の「TOC TOC」は100万人が観たというヒット作
★以上23作です(うち女性監督が8人)。例年に比べてスペイン映画、コメディが多い印象ですが、これも新型コロナウイルスの影響かもしれません。次回からデビュー作を中心に作品紹介を予定しています。
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