ダニ・デ・ラ・トーレの冒険映画「Live is Life」*マラガ映画祭2021 ⑰2021年06月11日 11:56

      監督の原点、1980年代映画のオマージュ、5人の少年の冒険映画

    

      

 

★特別賞の授賞式に追われて、肝心の作品紹介が後手になっていました。映画祭4日めに第1回上映があったダニ・デ・ラ・トーレの長編3Live is Lifeの紹介です。デビュー作『暴走車ランナウェイ・カー』、第2『ガン・シティ~動乱のバルセロナ』で本邦でも比較的知名度のある監督です。第3作は夏休みに再会した5人の少年の冒険と、その家族に目を注ぎます。監督は「私の原点である80年代の映画へのオマージュです」と語っています。少し大人っぽくなった5人の少年たちと現地入り、上映日のプレス会見にも揃って登壇しました。

『暴走車ランナウェイ・カー』作品&監督キャリア紹介は、コチラ20160122

 

      

 (プレス会見に登壇した監督と出演者たち、マラガ映画祭2021

  

   

        (監督以下主演者の少年たち、マラガFFフォトコール、66日)

 

 

 Live is Life2020

製作:4 Cats Pictures / Atresmedia Cine / Live is Life AIE

監督:ダニ・デ・ラ・トーレ

脚本:アルベルト・エスピノサ

撮影:ホス・インチャウステギ

音楽:マヌエル・リベイロ

編集:フアン・ガリニャネス

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラーノ

メイクアップ:クリスティナ・アセンホ、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ、アントニオ・ナランホ

セット装置:ヌリア・グアルディア

プロダクション・マネージメント:フェデリコ・ロサディリャス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、アドベンチャードラマ、109分、撮影地ガリシアのリベイラ・サクラを中心に、ルゴ県のパントン、ソベル、キロガ、モンフォルテ・デ・レモス、他オウレンセ、エスゴス、バルセロナなど。クランクイン2019年、期間7週間、配給ワーナー・ブラザース・エンターテインメント(スペイン)、販売Film Factory、マラガ映画祭2021プレミア、スペイン公開2021813

 

キャスト:ラウル・デル・ポソ(マサ)、ダビ・ロドリゲス(スソ)、アドリアン・バエナ(ロドリ)、ハビエル・カセリャス(ガリガ)、フアン・デル・ポソ(アルバロ)、マルク・マルティネス、シルビア・ベル(以上初出演)、カルロス・アルベルト・アロンソ(プール付きハウスのオーナー)、ルア・カルテロン(ロドリの姉妹)、他

 

ストーリー1985年の夏、ロドリはカタルーニャを離れて、いつものように両親が住んでいるガリシアの町に、仲間と再会するために戻ってくる。しかし今年は5人の仲間にとって別の夏休みになりそうだ。現実世界の問題が彼らを襲い、揺るぎないと思われていた彼らの関係が脅威にさらされようとしている。5人はそれぞれ友情にしがみつき、仲間の連帯を守るため、ある冒険を計画する。土地の伝説によると、山の頂上に生え、願いを叶えてくれる魔法の花があるという。聖ヨハネの夜、5人は夜陰に紛れて魔法の花探索に出発する。何故なら彼らの唯一の願いは、苦しんでいる友人の問題を解決し、一緒にいられることだけなのだ。Live is Life」が歌われた夏の思い出は永遠だ。自分探しの少年たちの旅、子供が大人を、子供であることを止めようとしない大人を発見する感動と希望に満ちたロードムービー。

 

      

             (主演の 5 人の少年たち、映画から)

   

 

      初めて映画に連れて行ってくれた、敬愛する母親へのオマージュ

 

★「監督として私がここにいられるのは、1980年代の家族と冒険の映画です」と語るガリシアの監督ダニエル・デ・ラ・トーレ(モンフォルテ・デ・レモス1975)は、前2作とは打って変わって、家族と少年の冒険物語をテーマに選びました。最初、監督に提案された脚本は、「とても気に入ったのですが、長いあいだ決めかねていました。というのも今までの私のコードとは違っていたからです。複雑なのに非常に感傷的な部分があり、それをどういうふうに処理するか迷っていました」。監督の肩を押したのは脚本を読んだ母親が映画化を勧めたからで、それから間もなく母は旅立ちました。「私のなかで何かが起きたのです。それでイエスを出しました。だからこれは母親へのオマージュでもあります。私を最初に映画に連れて行ってくれたのが彼女でした」と映画化の経緯を語っている。

 

          

             (撮影中のダニ・デ・ラ・トーレ監督)

 

★「夏の少年たちの生活、他の都市、例えばバルセロナやマドリードからやってくる子供と、ガリシアの子供という異なった世界の子供が集まる物語を作りたかった。子供から大人への移行、例えば1980年代のスピルバーグやゼメキスの映画に影響を受けています」と監督。『E.T.』(82)とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)を指しているのでしょうか。

 

★プレス会見では「80年代のハリウッド映画『グーニーズ』とインスピレーションを共有しています」と語っている。1985年製作のリチャード・ドナーの作品、伝説の海賊が隠した財宝を探して窮地に陥っている家族を助けようとする4人の少年たちの冒険映画のことです。新作は観客を楽しませ、ノスタルジーを呼び起こそうとする冒険は、成熟への道、友情の大切さ、少年それぞれの個人的な成長を、アクション、伝説を取り込んで、決して忘れることのない夏を描いている。そのために当時のシンボリックな要素を盛り込んだとコメントした。それを担ったのがエスピノサ、「彼がキーパーソンで、彼の創造のプロセスは、エモーショナルで魔法にかけられたようだった」と脚本家を讃えた。 

   

★さまざまなバックグランドをもつ5人の少年は、アクセントや話し方などを考えて、1000人以上の子供たちの中から選んだという。マサ、アルバロ役のラウル&フアン・デル・ポソは双子の兄弟ということです。ロケ地に私の生まれ育ったルゴ県のリベイラ・サクラを選んだのは、自身の少年時代を追体験する必要があったからだと明かしている。1980年代にワープするため、少年たちには今日のテクノロジー機器から切り離したようです。ゲームやスマホなしの生活体験はどうだったのでしょうか。

 

         

                     (クランクイン当時の監督と5人の少年)

   

   

     (マラガ入りした現在の5人、デル・ポソの髪も伸びたようです)     

  

★また会見では「この映画には明らかに楽観的なメッセージがあるのは分かっています。さまざまな障害にもかかわらず目標は達成される。夢のためには希望を捨てずに根気よくポジティブに活動すれば達成できるというメッセージです」。最初簡単で単純な仕事のようにみえたのに「これまでで最も困難な仕事でしたが貴重な体験ができ、人生最高の仕事の一つです」と述べた。最後に監督は「複雑な思春期を過ごしたが、映画の中に自由を見つけ、いわば映画は避難場所、物語に没頭することが好きだった」と告白、「成長して自分に自身がもてるようになった、それを映画で達成したいと思っている」と締めくくった。今日では珍しくなった飾らない人柄が魅力的です。

 

★脚本を執筆したアルベルト・エスピノサは、1973年バルセロナ生れ、劇作家、脚本家、監督、俳優、日刊紙「カタルーニャ新聞」の記者など多才な顔をもつ。1994年の戯曲Los Pelonesが、2003アントニオ・メルセロによってPlanta 4 aのタイトルで映画化され、自身も脚本を手掛けた。マラガ映画祭審査員特別メンション、モントリオール映画祭で観客賞、メルセロが監督賞受賞、ゴヤ賞2004にもノミネートされた。2010年にリリースされ内外の映画祭の受賞歴をもつHéroes以来、10年ぶりに長編映画に戻ってきた。この間はTVシリーズを主に執筆している。両作とも子供のグループが主人公の映画でした。

    

         

                (アルベルト・エスピノサ)