第32回ゴヤ賞2018ノミネーション・リスト発表 ① ― 2017年12月21日 18:38
総合司会者はホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ
★去る12月13日、第32回ゴヤ賞2018のノミネーション全リストが発表になりました。総合司会者は3年連続のダニ・ロビラから喜劇俳優ホアキン・レイェス(アルバセテ、1976)と同郷のエルネスト・セビーリャ(1978)の二人に引き継がれました。
(総合司会者ホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ)
★ゴヤ栄誉賞は10月半ばにアナウンスされていたように女優マリサ・パレデス(マドリード、1946)です。ゴヤ賞にはノミネーションこそありますが、意外や受賞はゼロでした。アルモドバル・ガールズの一人として、『バチ当たり修道院の最期』(83)以下、フランス映画、ポルトガル映画など合計75作に出演、劇場公開作品も多数。授賞式までにキャリア紹介を予定しています。下の写真は2017年10月14日、フランスのリヨンで開催された「リュミエール・フェスティバル」のオープニングに出席したときのもの。
(マリサ・パレデス)
★例年通りノミネーションは、オスカー賞スペイン代表作品のカルラ・シモンの『夏、1993』など5~6作に集中しています。作品賞5作品のうちオリジナル言語が、スペイン語2、英語、バスク語、カタルーニャ語各1作とバラエティに富んでいます。スペインは多言語国なのだと今更ながら感じたことでした。最多の13カテゴリーがバスク語の「Handia」、12カテゴリーが英語の「La librería」、スペイン語の「El autor」が9個、「Verónica」が7個、カタルーニャ語の『夏、1993』が8個です。ノミネーション数の多寡にはあまり関係ないのが映画賞、今回はドングリの背比べか。初ノミネーションのパコ・プラサのホラー映画「Verónica」は意外でした、作品・監督・脚本賞ですから。共同監督を務めたジャウメ・バラゲロの成功作 [REC] シリーズでさえノミネーションはなかった。プラサ監督は2014年7月、セルバンテス文化センターで開催された「ホラー映画上映会」の折に来日、単独で撮った [REC 3] が上映されました。
(ノミネーションのプレゼンター、ダビ・ベルダゲルとバルバラ・レニー)
★カテゴリーは合計28部門です。中でラテンビートに関係の深い「イベロアメリカ映画賞」部門には、オスカー賞2018外国語映画賞プレセレクション9作に選ばれた、チリのセバスチャン・レリオの『ナチュラルウーマン』、アルゼンチンの『サマ』(ルクレシア・マルテル)、メキシコの「Tempestad」(タティアナ・ウエソ)、コロンビアの「Amazona」(Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)の4作がノミネーションされました。コロンビア以外はそれぞれオスカー賞代表作品でした。チリは受賞歴なしですがパブロ・ララインの『No』(2012)に続いて2度目です。本作は第4回イベロアメリカ・フェニックス賞の最優秀作品賞ほかの受賞作品ですから先頭を走っている印象です。
★以下主なカテゴリーをアップしておきます。(ゴチック体は当ブログ紹介作品)
◎作品賞
「El autor」9個
「Verano 1993」(『夏、1993』)8個
「Handia」13個
「La librería」12個
「Verónica」『エクリプス』7個
(13個の「Handia」)
◎監督賞
マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
イサベル・コイシェ 「La librería」
パコ・プラサ 「Verónica」
◎新人監督賞
セルヒオ・G・サンチェス 「El secreto de Marrowbone」
カルラ・シモン「Verano 1993」『夏、1993』
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』5個
リノ・エスカランテ 「No sé decir adiós」3個
(8個の『夏、1993』)
◎オリジナル脚本賞
パブロ・ベルヘル 「Abracadabra」8個
カルラ・シモン 「Verano 1993」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
フェルナンド・ナバロ&パコ・プラサ 「Verónica」
◎脚色賞
ハビエル・セルカス&アレハンドロ・エルナンデス 「El autor」
コラル・クルス、ジョアン・サレス他 「Incierta gloria」
イサベル・コイシェ 「La librería」
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
◎オリジナル作曲賞
パスカル・ゲーニュ 「Handia」
アルベルト・イグレシアス 「La cordillera」『サミット』(監督サンティアゴ・ミトレ)
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「La librería」
Chucky Namanera(エウヘニオ・ミラ)「Verónica」
◎オリジナル歌曲賞
「Algunas veces」 ホセ・ルイス・ペラレス「El autor」
「Feeling lonely on the Sunday aftermoon」 アルフォンソ・デ・ビラリョンガ「La librería」
「La llamada」 Leiva レイバ「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
「Rap zona hostil」 ロケ・バニョス「Zona hostil」
◎主演男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「Abracadabra」
ハビエル・グティエレス 「El autor」
ハビエル・バルデム 「Loving Pablo」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
アンドレス・ヘルトルディス 「Morir」 監督フェルナンド・フランコ
(9個の「El autor」からアントニオ・デ・ラ・トーレとハビエル・グティエレス)
◎主演女優賞
マリベル・ベルドゥ 「Abracadabra」
エミリー・モーティマー 「La librería」
ペネロペ・クルス 「Loving Pablo」
ナタリエ・ポサ 「No sé decir adiós」
(12個の「La libreria」からエミリー・モーティマー)
◎助演男優賞
ホセ・モタ 「Abracadabra」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「El autor」
ダビ・ベルダゲル 「Verano 1993」
ビル・ナイ 「La librería」
◎助演女優賞
アデルファ・カルボ 「El autor」
アンナ・カスティーリョ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ベレン・クエスタ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ロラ・ドゥエニャス 「No sé decir adiós」
◎新人男優賞
ポル・モネン 「Amar」『禁じられた二人』 監督エステバン・クレスポ
エネコ・サガルドイ 「Handia」
エロイ・コスタ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』 監督エドゥアルド・カサノバ 3個
サンティアゴ・アルベル 「Selfie」 監督ビクトル・ガルシア・レオン
◎新人女優賞
アドリアナ・パス 「El autor」
ブルナ・クシ 「Verano 1993」
イツィアル・カストロ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』
サンドラ・エスカセナ 「Verónica」
(7個の「Verónica」)
◎プロダクション賞
ミレイア・グラエル・ビバンコス 「Verano 1993」
アンデル・システィアガ 「Handia」
アレックス・ボイド&ジョルディ・べレンゲル 「La librería」
ルイス・フェルナンデス・ラゴ 「Oro」 監督アグスティン・ディアス・ヤネス 6個
◎撮影賞
サンティアゴ・ラカRacaj 「Verano 1993」
ハビエル・アギーレ・エラウソ 「Handia」
ジャン・クロード・ラリュー 「La librería」
パコ・フェメニア 「Oro」
◎編集賞
ダビ・Gallart 「Abracadabra」
アナ・Pfaff プファフ& Didac Palou 「Verano 1993」
Laurent Dufreche &ラウル・ロペス 「Handia」
ベルナ・アラゴネス 「La librería」
◎美術賞(アートディレクター)
アライン・バイネー 「Abracadabra」
ミケル・セラーノ 「Handia」
リョレンス・ミケル 「La librería」
ハビエル・フェルナンデス 「Oro」
◎衣装デザイン賞
パコ・デルガド 「Abracadabra」
サイオア・ララ 「Handia」
メルセ・パロマ 「La librería」
タティアナ・エルナンデス 「Oro」
◎メイクアップ&ヘアー賞
シルビエ・インベルト&パコ・ロドリゲス 「Abracadabra」
アイノア・エスキサベル、オルガ・クルス、ゴルカ・アギーレ 「Handia」
エリ・アダネス、セルヒオ・ぺレス・ベルナル、ペドロ・デ・ディエゴ 「Oro」
ロラ・ゴメス、ヘスス・ジル、オスカル・デル・モンテ 「Pieles」『あなたに触らせて』
◎録音賞
ダニエル・デ・サヤス、ペラヨ・グティエレス、アルベルト・オベヘロ 「El autor」
セルヒオ・ブルマン、ダビ・ロドリゲス、ニコラス・デ・ポウルピケ 「El bar」
『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
イニャーキ・ディエス&サンティ・サルバドル 「Handia」
アイトル・ベレンゲル、ガブリエル・グティエレス、ニコラス・ド・ピールピケ 「Verónica」
◎特殊効果賞
ジョン・セラーノ 「Handia」
レイェス・アバデス&イシドロ・ヒメネス 「Oro」
ラウル・ロマニリョス&ダビ・エラス 「Verónica」
レイェス・アバデス&クーロ・ムニョス 「Zona hostil」
◎ドキュメンタリー賞
「Cantábrico」ジョアキン・グティエレス・アチャ
「Dancing Beethoven」アランチャ・アギーレ
「Muchos hijos, un mono y castillo」グスタボ・サルメロン
「Saura(s)」フェリックス・ビスカレット
◎イベロアメリカ映画賞
「Amazona」(ドキュメンタリー)コロンビア、監督Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)
「Tempestad」(ドキュメンタリー)メキシコ、同タティアナ・ウエソ
「Una mujer fantástica」(『ナチュラルウーマン』)チリ、同セバスティアン・レリオ
「Zama」(『サマ』)アルゼンチン、同ルクレシア・マルテル
(セバスティアン・レリオ)
★その他、アニメーション(長編&短編)、短編(フィクション&ドキュメンタリー)、一時ガラに誰も来西しないからとヘソを曲げ中断していたヨーロッパ映画賞の5カテゴリーがあり、合計28部門です。
★ドキュメンタリー賞にカルロス・サウラの7人の子供が父親を語る「Saura(s)」がノミネートされました。以前ご紹介したこともあって目に留まりました。「イベロアメリカ映画賞」部門にドキュメンタリーが2本も選ばれるのはあまり記憶にありません。確かに最近面白いのがドキュメンタリー、そんなことを反映しているのでしょうか。
★作品賞候補のうち未紹介作品は別途アップしたいと考えています。イサベル・コイシェの「La librería」は、第62回 Seminci(バジャドリード映画祭2017)のオープニング作品、イギリス作家ペネロピ・フィッツジェラルドの ”The Bookshop” の映画化です。言語も英語、俳優も英国人ということで躊躇していましたが、コイシェ映画はほとんどが英語映画なのでした。ペネロピ・フィッツジェラルド(2016~2000)は、英国ではノーベル文学賞より話題になるというブッカー賞を『テムズ側の人々』(Offshore)で1979年に受賞している作家です。
(イサベル・コイシェ)
*授賞式は2018年2月3日です。
*追加「La libreria」2018年1月7日、記事をアップしました。
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