第22回フォルケ賞2017*ノミネーション発表 ― 2016年12月30日 22:57
授賞式はセビーリャで1月14日開催――マドリード以外は初めて

★授賞式がマドリードを離れて開催されるのは初めて、地域振興の意味合いがあるのかもしれません。これは今年6月7日、EGEDA*会長エンリケ・セレソ、アンダルシア評議会文化大臣ロサ・アギラル、セビーリャ市助役アントニオ・ムニョス同席のもと発表されておりました。フォルケ賞はゴヤ賞の前哨戦といわれ、正式名は「ホセ・マリア・フォルケ賞Premios Cinematográfico José María Forqué」です。EGEDAの初代会長だったフォルケの栄誉を讃えて創設された賞。縁の下の力持ち的な製作者の功績を讃えるために設けられた賞、というわけで監督賞はありません。

(左から、アントニオ・ムニョス、ロサ・アギラル、エンリケ・セレソ、2016年6月7日)
★最初は作品賞のみで始まり、第9回から「長編ドキュメンタリー」、「アニメーション」部門が加わり、第15回から男優賞・女優賞、2015年から「ラテンアメリカ映画」、2016年から「短編映画」と「Cine y Educacion en Valores」という賞が加わり、カテゴリーは増加する傾向にあります。栄誉賞にあたる金賞も加わりました(該当者なし、あるいは団体のケースもあります)。作品賞には3万ユーロ、長編ドキュメンタリーとアニメーション賞には6000ユーロ、男優・女優賞の賞金3000ユーロはAISGE財団**が拠出し、120名以上の映画関係のジャーナリストが選考しています。第22回は2015年12月1日~2016年11月30日の1年間にスペインで公開された作品が対象。
*Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales の頭文字。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための交渉団体です。1990年創設だが活動は1993年から。現会長はエンリケ・セレソ、副会長はアグスティン・アルモドバル。
**Artistas Intérpretes, Sociedad de Gestión の頭文字。声優を含む俳優、舞踊家、映画監督などの権利を守る非営利団体、2002年設立、現会長は女優ピラール・バルデム。
フォルケ賞ノミネーション
長編映画賞(フィクション、アニメーション)
“El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』
監督アルベルト・ロドリゲス ★
“Julieta” 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★
“Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★
“Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ ★
“Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)
監督フアン・アントニオ・バヨナ ★
“1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ
男優賞
エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス ★
ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone” 監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★
アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira” 監督ラウル・アレバロ ★
アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”)
監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ ★
オスカル・マルティネス“El ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)
監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン ★
女優賞
アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』同上
カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー
バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ ★
アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン ★
インマ・クエスタ“La novia” 監督パウラ・オルティス ★
長編ドキュメンタリー賞
“2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン
“El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)
監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス
“Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス
“Jota de Saura”監督カルロス・サウラ
“La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー
“Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ
短編映画賞
“Timecode”『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス ★
“Graffitti”監督リュイス・キレスLluís Quílez
“Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ
長編ラテンアメリカ映画賞
“Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン ★
“El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)
監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン ★
“Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)
監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス ★
“El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー
“Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ
Cine y Educacion en Valores
“El olivo”監督イシアル・ボリャイン ★
“100 metros”監督マルセル・バレナ ★
“Un monstruo viene a verme” 監督フアン・アントニオ・バヨナ ★
(★は紹介記事をアップしているもの)
栄誉賞
◎アントニオ・P・ペレスAntonio P. Pérez は、独立系のプロデューサー、彼が手掛けた代表作品を列挙すると、ベニト・サンブラノの『ローサのぬくもり』(99)と『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、マテオ・ヒルの『パズル』(99)、最近ではイマノル・ウリベの“Lejos del mar”(15)など。

(アントニオ・P・ペレス)
★作品賞は、約110作の候補から選考され最終的に以上の6作に絞られた。サルバドル・カルボの“1989, Los últimos de Filipinas”が加わっただけで、ゴヤ賞とフェロス賞に同じ、女優賞にフェロス賞2016受賞のインマ・クエスタが選ばれているのは、スペイン公開が12月11日だったせいです。公開が境目にあるとノミネーションが分かれるケースが出てくるのは仕方がありません。短編映画賞はゴヤ賞と同じです。いずれもカンヌ映画祭を始めとして国際短編映画祭での受賞歴多数。
★ドキュメンタリー部門(候補は86作)には、サウラのようなベテランからベルナルド・モル・オットーのような新人、『スモーク・アンド・ミラーズ』の製作者ヘルバシオ・イグレシアス、『マーシュランド』の製作者ホセ・サンチェス=モンテスなど多彩な顔ぶれを揃えたようです。ラテンアメリカ映画部門にキューバとエクアドルがノミネートされたのも久方ぶりのことです。“Sin muertos no hay carnaval”はコルデロの長編6作目、いずれご紹介したい作品です。
★授賞式は年明け早々の2017年1月14日、セビーリャのマエストランサ劇場にて。俳優のイングリッド・ガルシア・ヨンソン、アルバロ・セルバンテス、ハビエル・グティエレスなどが進行を担当する予定。
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