サルバドル・ダリと妹の確執を描いた"Miss Dali"*ベントゥラ・ポンス新作 ― 2017年06月29日 11:52
画家サルバドル、妻ガラ、妹アンナ・マリアの確執を描いた現代版「ギリシャ悲劇」
★ダリの「娘」を主張するピラル・アベルさんの申立てにより、「マドリード裁判所、DNA鑑定のためサルバドル・ダリの遺体掘り起しを命令」(6月26日)には、さすがのダリも彼の世でびっくりしていることでしょう。当然、ダリ財団が掘り起し阻止を上訴する意向ですから、泥仕合が続きますね。これとは全く関係ありませんが、ベントゥラ・ポンスの新作 “Miss Dali”(2017、90分)がクランクアップ、秋にはスペイン公開がアナウンスされました。ダリの4歳下の妹アンナ・マリア(1908~89)を主人公に画家との長年にわたる確執を描いた現代版「ギリシャ悲劇」です。今年の3月27日に、ダリ家の別荘があるカダケスでクランクイン、本格的には5月29日から6月にかけて撮影された。画家が滞在したニューヨークは、雰囲気が似ているジローナ県で行われたようです。物語は1920年代から兄妹が亡くなる1989年までが語られる。
★サルバドル・ダリ(1904~89、フィゲラス)自身についての著作や映画は、既に幾つも存在していますが、その妹についてはそれほど知られていません。主人公ミス・ダリを演じる英国女優シアン・フィリップス(1933、ウェールズ、『デューン砂の惑星』)でさえ「脚本が届くまでダリに妹がいるなんて知りませんでした。しかしカダケスに来てみて、それとなく疑問が解けたように感じました」。構想4年、本作執筆のため自伝を含め23冊のダリ関連本を読んだというポンス監督も、同じ小さな町に40年間も住みながら口を利かず他人同然だったという兄妹の壮絶な関係に現代版「ギリシャ悲劇」を感じたようです。クレア・ブルーム(1931、ロンドン、『英国王のスピーチ』)が演じたアンナ・マリアの親友マギーだけが実在の人物ではなくフィクションだそうです。アンナ・マリアが一時期英国に留学していたとき知り合った友人に想定したようです。ということで英国のベテラン女優二人が主役に起用されました。
(アンナ・マリア役のシアン・フィリップスとマギー役のクレア・ブルーム)
(ダリ家が夏の別荘として所有していたジローナ県カダケスで撮影中の二人)
★アンナ・マリアは画家、その友人たちロルカやブニュエルの最初のミューズであり親友だったという。もともと夢見がちな少女だったというアンナ・マリアの幸せな青春時代は市民戦争でもろくも終わりを告げました。フランコ軍のスパイという容疑をかけられ誤って逮捕、収監、拷問を受けたトラウマが尾を引いていたこと、ポール・エリュアールと妻ガラがカダケスに現れ、ダリとガラの距離が急速に狭まったこと、ガラが夫を捨て画家のもとに走ったことなどが重なって拍車がかかったようです。謎に包まれた義姉ガラへの根深い嫉妬心は広く知られたことであるが、彼女の出現で兄の寵愛を失った打撃は大きかったようです。映画ではどのように描かれるのでしょうか。40年間フィゲラスで暮らしながら絶交状態だったという兄妹、アンナ・マリアは兄が1989年鬼籍入りした数か月後に後を追うように旅立った。
(芸術家たちのミューズだった頃の画家とアンナ・マリア、1920年代)
★詳しいキャストの全体像が見えてきていませんが、若い頃のアンナ・マリアをミランダ・ガスが、少女時代をベルタ・カスタニェ、エミリア・ポメスをポンス映画の常連メルセ・ポンスなど、過去にポンス映画の出演者が占めています。本作の言語はカタルーニャ語と英語ということで、バルセロナ派がキャストの大方を占めています。エミリア・ポメスは、アンナ・マリアの世話をしていた女性で生存しています。ダリの芸術作品やカダケスにあるEs Llané Granの別荘を相続しています。この夏の別荘にはロルカが1925年から3年間続けて訪れていました。当時の詩人のミューズがアンナ・マリアだったと言われています。
(ロルカとダリ、カダケスの夏の別荘、1927年夏)
(左から、エミリア・ポメス役のメルセ・ポンス、シアン・フィリップス、映画から)
★他にアナウンスされている男性キャストのうち、サルバドル・ダリを演じるエクトル・ビダレス、ガルシア・ロルカ(キム・アビラ)やルイス・ブニュエル(アルベルト・フェレイロ)、ポール・エリュアール(ティモシー・コーデュクス)など、妻ガラを誰が演じるのか気になりますが、まだIMDbにはアップされておりません。今回はアウトラインだけのご紹介です。
(クレア・ブルーム、監督、シアン・フィリップス)
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