米アカデミー新会員に招待されたイベロアメリカのシネアスト ― 2017年07月03日 11:09
新会員候補者774人のなかで断るシネアストは何人くらい?
★ホワイト男性の牙城ハリウッドも国内外からの批判を浴びて、重い腰を上げたということでしょうか。2016年「♯OscarsSoWhite」の政治的キャンペーン以来、従来のアカデミー会員規則の変更を迫られた。会員の92%以上が白人男性で平均年齢が62歳という具体的な数字を挙げられてみれば、これはやはり異常な「老人クラブ」だと今更ながら驚きます。シェリル・ブーン・アイザック会長によれば、昨年は683人、今年は59か国774人に招待状を送ったということです。新会員のうち非白人が30%、女性が39%、一番若い会員はエル・ファニングの19歳、これで少しは平均年齢が下がるでしょうか(笑)。勿論会員になりたくなければ招待を断ってもいいわけですが、世界で最も選り抜きの映画クラブですから損得を計算する必要がありそうです。90年前に設立者293人で始まった米アカデミーの会員は、約7500を数える大所帯になったわけです(アカデミーはこれまでも正確な構成員数は明らかにしていない)。
★日本からも三池崇史監督、真田広之、昨年母親になった菊地凛子など、米国で比較的認知度のある人の名前が報道されていましたが、スペイン、ラテンアメリカ諸国でも同じ傾向のようです。スペイン映画出演では、エレナ・アナヤ、パス・ベガ、ヴィゴ・モーテンセン、ダニエル・ブリュール、エドガー・ラミレス、ロドリゴ・サントロなどの俳優、当ブログ未紹介のロドリゴ・サントロはブラジルで絶大な人気を誇る大スター、ウォルター・サレスの『ビハインド・ザ・サン』、エクトル・バベンコの『カランジル』や最近ではパトリシア・リヘンの『チリ33人の希望の軌跡』ほか、米国映画にも多く出演している。

★撮影監督では、ホセ・ルイス・アルカイネ、アフォンソ・ベアト、キコ・デ・ラ・リカ、エルネスト・パルドなど。アフォンソ・ベアトは、ブラジル出身ですがアルモドバルの『ライブ・フレッシュ』や『オール・アバウト・マイ・マザー』を手掛けている。メキシコのエルネスト・パルドは主にドキュメンタリーを撮っている撮影監督、最近ではタティアナ・ウエソの "Tempestad" でフェニックス賞ドキュメンタリー部門の撮影賞を受賞、これから発表になるアリエル賞2017でもノミネートされています。

★監督では、アドルフォ・アリスタライン、パトリシア・カルドソ、アレハンドロ・ホドロフスキー、エクトル・オリベラ、アルトゥーロ・リプスタイン、パブロ・トラペロなど、当ブログに登場してもらった名前を挙げておきます。アドルフォ・アリスタラインは2003年にスペイン国籍を取得、アルゼンチンとの二重国籍です。サンセバスチャン映画祭やゴヤ賞のノミネーションでよく目にする監督、オスカーでは1992年の”Un lugar en el mundo” が最終候補に選ばれた。2004年の『ローマ』がラテンビートで上映されている。アルトゥーロ・リプスタインはメキシコ出身だが、アリスタライン同様2003年にスペイン国籍をとり、現在は夫人で脚本家のパス・アリシア・ガルシア・ディエゴとサンセバスチャン在住。『真紅の愛』(96)や『大佐に手紙は来ない』(99)などが公開されている。友人でもあったルイス・ブニュエルの後継者と言われている。

(アルトゥーロ・リプスタインと夫人パス・アリシア・ガルシア・ディエゴ)
★パトリシア・カルドソも当ブログ未紹介の監督(日本表記はカルドーゾ)、コロンビアのボゴタ出身だが、1987年米国に移住している。2002年のサンダンス映画祭で ”Real Women Have Curves” が観客賞・審査員賞を受賞しており、2010年の ”Lies in Plain Sight” が『見えない真実』という邦題で紹介されているようだが未見です。米国での活躍が選定の一つになっている。
メキシコはハリウッドを目指す?
★メキシコは隣国ということもあって、上記のアルトゥーロ・リプスタイン、エルネスト・パルドを含めて6人が招待を受けました。メキシコはますますハリウッドを目指すのでしょうか。ほかの4人は、『エリ』のアマ・エスカランテ監督、カナナ・フィルムの中心的プロデューサー、『選ばれし少女たち』や『ミス・バラ』を企画したパブロ・クルス、ベルタ・ナバロ(日本表記はバーサ・ナヴァッロ)、デル・トロのホラー『クロノス』(93)、『デビルズ・バックボーン』(01)、続いて『パンズ・ラビリンス』などをプロデュースしている。監督・脚本家のナタリア・アルマダは、第40代メキシコ大統領プルタルコ・エリアスの曽孫、ドキュメンタリー作家としてスタートした。代表作は、”Al otro lado”(05)、曾祖父の足跡をたどった“El general”(09)、”El Velador”(11)など。最新作の初フィクション”Todo lo demas”(16)が高評価、ヒロインのアドリアナ・バラッサがアリエル賞女優賞にノミネートされている。2012年にマッカーサー奨学資金を受けている。メキシコの6人は既に招待受諾の意思を表明している。

(パブロ・クルス)


★昨年既に招待されている監督に、カルロス・レイガダスやカルロス・カレラ、パトリシア・リヘンがいる。ブニュエルの『ビリディアナ』や『皆殺しの天使』で知られるシルビア・ピナル(1931)は、まだTVシリーズに出演している現役だが投票の権利を行使しないと表明している。いずれにしてもシネマニアには大して関係ないことですから、ここいらへんで。
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