カンヌ映画祭2014*正式出品アルゼンチン映画 ― 2014年05月01日 21:32
★今年のカンヌはスペイン語映画はかなり寂しい。寂しくなかったことなんて最近ありましたっけ。ここ3~4年は新人監督がエントリーされることが少なく、二匹目のドゼウを狙う大物監督がズラリが傾向としてありますから、1作でも目に入ればいいんじゃないの、ということになります。
★そして目に入ったのがアルゼンチンのDamian Szifron(ダミアン・ジフロン?) のRelatos salvajes (2014、アルゼンチン=西、Wild
Tales) です。この映画は、スピールバーグ製作総指揮のTVシリーズ『世にも不思議なアメージング・ストーリー』(1985~87)が下敷きになっているということです。一話完結のオムニバス・ドラマ、SFあり、サスペンス、ホラー、ファンタジーと多彩でした。こちらアルゼンチン版もコメディ、スリラー、バイオレンスなど6話で構成され、リカルド・ダリン、レオナルド・スバラグリア、ダリオ・グランディネッティ、エリカ・リバス、オスカル・マルティネス、リタ・コルテセ、フリエタ・シルベルベルク(ディエゴ・レルマンの『隠れた瞳』のヒロインを演じた)ほか。監督の読みが分からないが、アルゼンチンは『ワコルダ』に出てきたドイツ人医者のようなナチ逃亡者も反ナチも受け入れたから、他の諸国よりドイツ人といわゆる「ユダヤ」人が多く苗字は頭痛のタネです。
★新人監督エントリーが珍しくなったコンペのなかでピカイチなのが本作の監督。1975年ブエノスアイレス生れ、脚本家、監督、エディター、プロデューサー。最近はテレビの仕事が多かった。長編第3作アクション・コメディTiempo
de valientes(2005、On Probation)が、 ビアリッツ映画祭(ラテンアメリカ部門)で観客賞、マラガ映画祭(同左)では主役2人のうちルイス・ルケがベスト男優賞(銀賞)を受賞し、ペニスコラ・コメディ映画祭では、作品賞、監督賞、もう一人の主役ディエゴ・ペレッティが男優賞を受賞しました。
*他に第2作 El fondo del mar(2003、Bottom
Sea)、テレビのシリーズドラマが多く、映画界復帰が待たれていた。今回はアメリカで活躍中のグスタボ・サンタオラジャが故郷ブエノスアイレスに戻って音楽を担当したことでも話題になっています。彼については説明不要でしょうが、『ブロークバック・マウンテン』と『バベル』で2005年、2006年と連続でアカデミー作曲賞を受賞しています。その他『アモーレス・ペロス』、『21グラム』、『モーターサイクル・ダイアリーズ』、『ビューティフル』エトセトラ。サンタオラジャによれば、ロック、ソウル、アフリカのリズム、ラテンアメリカのポピュラー音楽をミックスさせたとのこと。もう一つの話題は、アルモドバル兄弟の製作会社「エル・デセオ」が共同製作に参画していること。エントリーにはこういう実力者が関係しているかも、なにしろカンヌだからね。(写真は監督とサンタオラジャ)
★今年の審査委員長は、ニュージランドのジェーン・カンピオン監督。1993年『ピアノ・レッスン』がパルムドールを受賞している。この年はチェン・カイコーの『さらば、わが愛 覇王別姫』と賞を分け合いました。時々ありますね。昨年はシネファウンデーション&短編映画部門の審査委員長でした。今年は重みが違うから大変です。審査員にはガエル・ガルシア・ベルナルの名前があり、「光陰矢のごとし」を実感しました。カンヌ2000批評家週間でグランプリを受賞した『アモーレス・ペロス』で電撃デビュー、一夜にして「天と地が引っくり返った」と興奮した青年が、審査員なんですね。委員長を含めて女性5人、男性4人です。
★次回は「ある視点」の紹介から。まだ受賞発表(5月25日)には時間がたっぷりありますからゆるゆると。
カンヌ映画祭2014*「ある視点」ハイメ・ロサーレス ― 2014年05月04日 14:55
★昨年はルシア・プエンソの『ワコルダ』(アルゼンチン)、ディエゴ・ケマダ・ディエスの La jaula de oro(メキシコ)の2作がエントリーされました。前者は「ラテンビート2013」上映に合わせて作品紹介を致しました(10月23日)コチラ。後者は「ある才能賞」(Prix un talent certain)に初出演のキャストたちが受賞しました。第28回ゴヤ賞2014*イベロアメリカ映画賞部門にメキシコ代表作品としてエントリーされた折り、少しご紹介いたしました(1月15日)コチラ。監督と一緒にカメラに収まっている3人が受賞者。
*今年もなんとか2作が踏みとどまりました。ハイメ・ロサーレスの Hermosa juventud(Beautiful
Youth 西)とリサンドロ・アロンソの Jauja(デンマーク=米=アルゼンチン)の2作。
★まずスペインのHermosa juventud はハイメ・ロサーレスの5作目、カンヌ入りは4回目となる。ということは5戦4勝ですから勝率8割という高い確率、スペインではちょっと珍しい監督です。ハイメ・ロサーレスは一部で注目を集める監督、特にカンヌでは確かにそういう印象を受けます。前回は2012年ですから2年振り、寡作な監督としてはガンバっているといえます。
*ストーリー:経済的危機から一向に抜け出せないでいる現代スペインが舞台、恋人カルロス(カルロス・ロドリーゲス)とアマチュアのポルノ映画を撮ろうとするナタリア(イングリッド・ガルシア・ヨンソン)の物語。二人は共に二十歳、美しいが運に見放されたナタリアに特別な野心はないが、生き残るにはお金を稼がねばならない。
(イングリッド・ガルシア・ヨンソン)
*ロサーレスによると、現代のスペインの若者には良くも悪くも未来が描けないという。「勿論、皆ながみんなそうだとは言ってない、たくさんの青春があり、現実がある。そのなかで私たちは将来に行き詰まり状況を変えられずにいる、未来は黒一色に染め上げられている若者たちに焦点を当てた」。今年2月に撮影を終え、3月にミキシングを終えたばかりでカンヌに間に合わせたという。「ほんとに小さな映画、若い人と一緒に仕事をして、自分は教師でもあり生徒でもあった」と語っています。「教えることは学ぶこと」は真理です。日本から見ると20代の失業率60%は想像できない。経験もなくチャンスもなければ、自らアクションを起こす必要があるのかもしれない。
*長編映画の主役は初めてというイングリッド・ガルシア・ヨンソン Ingrid Garcia-Jonsson は、スウェーデンの女優だが幼少時はセビリャで育ち、のちマドリードに居を定めている。2006年から舞台俳優としてデビュー、映画はヘスス・プラサの短編 Manual for Bored Girls(2011)でブロンドの少女役が初出演、代表作はマヌエル・バルトゥアルの長編Todos tus secretos(2014)、アルバロ・ゴンサレスの短編 El jardinero(2013)など。スペイン語の他、英語、仏語、勿論スウェーデン語ができる。(写真右がイングリッド・ガルシア)
*ハイメ・ロサーレス:第1回目の2003年は、デビュー作 Las horas del día が幸運にも「監督週間」にエントリー、国際映画批評家連盟賞を受賞してしまった。次が「ある視点」部門に出品された La soledad(2007)です。イマジカBSの前身シネフィル・イマジカが放映してくれた『ソリチュード:孤独のかけら』(作品紹介、詳しくはコチラ⇒2013年11月08日)、ETAをテーマに無声で撮った Tiro en la cabeza (2008)は、5月のカンヌで蹴られ、9月のサンセバスチャンに持っていくも不発というか物議をかもしただけに終わってしまった。見ればそれも納得なのでしたが。理論先行でしばしば観客を置いてけ堀にしてしまうタイプ。3回目が「監督週間」に出品された Sueño y silencio(2012)、Tiro
en la cabezaでトラウマを抱えてしまったのかカンヌに持っていくのを間際まで躊躇していた。
*ロサーレスは1作ごとにスタイルを変えるのが特徴、第4作はモノクロで撮り、キャスト陣はアマチュアを起用した。娘を亡くしたばかりのパリに住む夫婦が、エブロ川のデルタでバカンスを過ごそうとやってくる。彼の映画には「死」が描かれることが多いが、それは「生」を際立たせるためのようです。ラストシーンはモノクロを活かして素晴らしい。2012年はモノクロが流行った年で、フェルナンド・トゥルエバが『ふたりのアトリエ』を、パブロ・ベルヘルが『ブランカニエベス』をモノクロで撮りました。
*ロサーレスのキャリア紹介:1970年バルセロナ生れ、監督、脚本家、製作者。同市のフランス系高校で学ぶ。経営学の学士号取得している。映画はハバナの映画学校サンアントニオ・デ・ロス・バニョスで3年間学ぶ。その後オーストラリアに渡り、シドニーのAFTRSBE(Australian Film Television and Radio School
Broadcasting Enterteinment)で学ぶ。影響を受けた監督としてフランスのロベール・ブレッソンと小津安二郎を上げています。
1997年短編 Virginia no dice mentira を発表、短編多数、長編は以上の通り。
(写真はHermosa juventud を撮影中の監督)
*アルモドバルとかアメナバルのような有名監督は別にして、スペインでは9月に開催されるサンセバスチャンやベネチアに焦点を当てて製作される傾向にあります。そうはいっても相当のヘソ曲がりでもない限りカンヌは無視できません。2012年からはサンセバスチャン関係者もカンヌ映画祭とのコラボを推進すべく路線変更をしています。
カンヌ映画祭2014*「ある視点」リサンドロ・アロンソ ― 2014年05月06日 16:50
リサンドロ・アロンソの「Jauja」
★もう1作がアルゼンチンのリサンドロ・アロンソの長編5作目 Jauja です。ロサーレス同様、もうカンヌでは知られた顔ですね。デビュー作 La livertad(2001)がいきなり「ある視点」にエントリー、2作目 Los muertos(2004)と3作目 Fantasma(2006)が「監督週間」に選ばれています。ロサーレスと同じ5戦4勝ですが、まだカンヌでの受賞はありません。しかし第2作目が、カルロヴィー・ヴァリー映画祭05、リマ・ラテンアメリカ映画祭04、トリノ・ヤング・シネマ映画祭04などで受賞しています。1975年ブエノスアイレス生れの38歳、監督、脚本家、製作者。
★ストーリー:デンマーク人の父と娘は、文明の及ばないパタゴニアの砂漠で暮らす人々がいると聞いて、辺境への船旅を決心する。しかし、娘は随行者の一人と恋に落ち遁走してしまう。父親は娘を探しに出掛けるが、ここでは愛と死についての憧れが語られる。
*父親をヴィゴ・モーテンセン、彼については説明不要でしょうが、本作に関係ある部分について。1958年ニューヨークはマンハッタン生れの55歳、父親がデンマーク人、母親は米国人、少年時代はベネズエラ、アルゼンチン、デンマークで育ったのでスペイン語、デンマーク語ができる。デンマークのパスポートを持っている。スペイン語映画に限るとアグスティン・ディアス・ヤネスの『アラトリステ』(2006)が代表作。
*その娘をデンマークの国民的女優ギタ・ナービュが、若い時代を同じデンマークの女優 Viilbjork Malling が演じるようです。ギタ・ナービュは1935年コペンハーゲン生れだから78歳になります。管理人はベント・ハーメルのコメディ『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007)しか見ていない。出演映画145作ですから、結構公開されています。
★まだIMDbも情報が少なくデータが揃っていないが、以下断片記事をまとめてみる。
製作国:アルゼンチン=デンマーク=米国=メキシコ=オランダ=独=仏
製作(共同):4L、Fortuna Films、Kamoli Films、Mantarraya
脚本(共同):リサンドロ・アロンソ、ファビアン・カサス
言語:スペイン語とデンマーク語
ロケ地:アルゼンチンのパタゴニアが80%、ほかデンマークのコペンハーゲンなど
*4L、Fortuna Filmsはアロンソの過去の映画を製作している。Kamoli Films、Mantarrayaは今回が初めてのようです。Mantarrayaはメキシコの製作会社で、カルロス・レイガーダスのデビュー作『ハポン』(2000)以下最新作『闇の後の光』(2012)全4作を手がけている。『闇の後の光』はカンヌで最優秀監督賞を受賞して拍手喝采とブーイングを同時に浴びた。この年のカンヌの審査員を悩ましたのがレイガーダスに監督賞を与えるかどうかでした。好きな人はスキ、嫌いな人はキライとファンもはっきり分かれるカンヌの常連監督。全作が東京国際映画祭で上映され来日もしております。さらに昨年のカンヌで最優秀監督賞を受賞したアマ・エスカランテの『エリ』以下、『サングレ』(2005)、『よそ者』(2008)も製作している実力派、こちらも全3作がカンヌで上映されています。Mantarraya参加はアロンソにとって朗報でした。
★アロンソによると、ヴィゴとの出会いは2006年のトロント映画祭だった。「僕たちは、サッカーのこと、かつてヴィゴが暮らしたことのあるアルゼンチンのことで意気投合した。それ以来、本作の脚本を共同執筆したファビアン・カサスとヴィゴを主人公にした映画を作ろうと考えていた。最初はデンマーク人ではなくイギリス人だった。しかしヴィゴがデンマークのパスポートを持っていることを思い出し書き直したんだ。ロケはパタゴニア、リフエ・カレル国立公園、ラ・パンパ、ラグナ・アスール、リオ・ガジェゴスなど80%がアルゼンチン、残りは父と娘の原点であるコペンハーゲンのLystrue 城で撮った」。「ヴィゴがシナリオを気に入ってくれ出演をオーケーしてくれた。国際的な俳優とMantarrayaが参加してくれたことは、本当に幸運でした。今までの映画作りで素晴らしいサゼスチョンをしてくれた製作者の一人で感謝にたえない」とも語っています。
(リサンドロ・アロンソとヴィゴ・モーテンセン、トロント映画祭2006にて)
★コンペティションの審査委員長ジェーン・カンピオンにも驚きましたが、「ある視点」審査委員長パブロ・トラペロにはもっと驚きました。コンペ以上に面白いのが「ある視点」部門です。コンペは見なれた顔が揃います。いずれ公開されるから最近ではノミネーションさえチェックしないで済みます。面白いのが「ある視点」部門、コンペに残れなかったのでこちらに廻ってきたという時代もありましたが、ベテラン実力者から新人まで、コンペ以上に審査が難しいセクションです。
★パブロ・トラペロ映画もカンヌ向き、長編映画の代表作:
1999 Mundo
grúa 国内映画賞以外の受賞、ヴェネチア映画祭Anicaflash 賞、ロッテルダム映画祭2000タイガー賞、ハバナ映画祭1999特別審査員賞を各受賞、ゴヤ賞2000ノミネートなど多数
2002
El bonaerense (ブエノスアイレス出身者の意味) カンヌ映画祭「ある視点」出品、シカゴ映画祭2002国際映画批評家連盟賞受賞、グアダラハラ映画祭、カルタヘナ映画祭、多数。
2004 Familia rodante コメディ、ロード・ムービー
2006 Nacido
y criado ドラマ
2008 Leonera『檻の中』カンヌ映画祭コンペ正式出品、アリエル賞2009受賞、ハバナ映画祭特別審査員賞受賞、他多数。「ラテンビート2009」上映
2010 Carancho『カランチョ』カンヌ映画祭「ある視点」出品、サンセバスチャン映画祭、「ラテンビート2010」などで上映。(写真:リカルド・ダリンとマルティナ・グスマン)
2012
Elefante blanco『ホワイト・エレファント』カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、「ラテンビート2012」上映
2012 7 días en La Habana 『セブン・デイズ・イン・ハバナ』(7人の監督のオムニバス)カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、2012年8月公開
*1971年ブエノスアイレス州サン・フスト生まれ。製作者、監督、脚本家、エディター、俳優と多彩。委員長に選ばれた理由は「ある視点」の常連の他、この多彩な経歴が理由の一つかもしれない。2000年に『檻の中』の主演女優マルティナ・グスマンと結婚、出演した赤ん坊は二人の実子。2002年に第2作El
bonaerense を公開するために製作会社「マタンサ・シネMatanza Cine」をグスマンと設立、自身の『檻の中』、『カランチョ』他を手掛けている。同国人アロンソにとって追い風になるか逆風になるか微妙です。
(トラペロ=グスマン夫婦と成長してしまった息子、
『カランチョ』上映のリマ映画祭にて)
カンヌ映画祭2014*「批評家週間」コロンビア映画 ― 2014年05月08日 16:01
★「批評家週間」というセクションは公式プログラムではなく、映画祭と同時期に開催されますが、カンヌ本体とは別組織が運営しています。1962年から始まり今年で53回目です。監督デビュー作か2作目ぐらいが対象です。ここで見出されたあとパルムドールを受賞した監督もおり、外郭団体とはいえ目が離せません。ベルナルド・ベルトリッチ、ケン・ローチ、ウォン・カーウァイ、フランソワ・オゾン、ギジェルモ・デル・トロ・・・ああ、数えきれないや。今年は11作品がエントリーされていますが、カメラドールを競うのは7作品、オープニング、クロージング、特別上映作品はコンペ外です。
*スペイン語映画では、アントニオ・メンデス・エスパルサの『ヒア・アンド・ゼア』(2012、Aquí
y allá 西=米国=メキシコ、東京国際映画祭上映)があります。スペインの監督ですが映画はアメリカで学び、そのとき知り合ったメキシコの友人夫婦を主人公にメキシコを舞台にした映画で、カンヌの後サンセバスチャンでも会場に勝手連が押し寄せて満席だった映画。他にアルゼンチンのアレハンドロ・ファデルの『獣たち』(2012、Loa
salvajes アルゼンチン、ラテンビート2012上映)など。概ねワールドプレミアが多く、これからご紹介するフランコ・ロジィのデビュー作 Gente de bien(コロンビア=仏)もワールドプレミアです。
★ラテンアメリカで最近存在感を増してきているのがコロンビア、5~6年前のチリの躍進を思い出させます。「ラテンビート2013」でご紹介したアンドレス・バイス(『暗殺者と呼ばれた男』他)の次の世代です。コロンビア革命軍(FARC)を中心としたゲリラ組織と政府との和平交渉は道半ばですが、以前のような戦争状態からは脱しています。欧米で映画の勉強をしていた若手が帰国して新しい波が寄せてきているのかもしれません。これからご紹介するフランコ・ロジィもその一人です。
*フランコ・ロジィ Franco Lolli :1983年ボゴタ生れ。映画はフランスの映画学校で学ぶ。最初はポール・ヴァレリー大学や新ソルボンヌ大学(Sorbonne Nouvelle)で学んだ後、映画学校 La Fémis Paris の監督学科を専攻、そこでの卒業制作として撮った短編 Como todo el mundo(2007)が、サンセバスチャン、ロスアンゼルス、グアダラハラなど50以上の映画祭に出品され26個の賞を受賞しました。なかでフランスのアンジェ・ヨーロッパ・ファースト・フィルム映画祭、ブリュッセル短編映画祭、フランスの古都クレルモン=フェラン短編映画祭、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭などで受賞。
*短編第2作 Rodri (2012)が、カンヌの「監督週間」にエントリーされた。カルタヘナ映画祭スペシャル・メンション、クレルモン=フェラン短編映画祭ACSE賞他を受賞しています。RodriはRodorigoのことでロドリーゴ・ゴメスが演じた。またカンボジアに渡って、Rithy
Panh とのコラボでドキュメンタリー Memoria e imágenes,
una experiencia camboyano を撮っている。長編第1作はカンヌ映画祭財団の基金を貰って、パリにある Résidence学生寮で脚本を書いたようです。現在はボゴタとパリで生活しており、ボゴタでは2個所の映画学校で教えている。
★ストーリー:少年エリックと父親アリエルの物語。母親に見棄てられた10歳のエリックは、離れて暮らしていた貧しい父親と暮らすことになる。ブルジョア階級のマリア・イサベルの家で大工として働いていたアリエルは、突然現れた息子とどう接していいか分からない。心を痛めていたマリア・イザベルはクリスマスを自分の別荘で過ごすよう父子を招待する。それがどのような波紋を起こすか彼女には思い及ばなかった。貧富の二極化が進む社会を同時に体験するエリックの心は微妙に揺れ動く。
★「批評家週間」を総括するシャルル・テソンによると、エリックはブルジョア家族の子供たちと遊ぶが、同時に自分がその階層に属していないことを感じることになる。「この映画には胸を打たれた。小津安二郎の
Los chicos de Tokio を思い出す」とコメントしている。これは自信はないが内容からして多分サイレントの『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(1932)じゃなかろうか。いずれにしても好い感触なのが嬉しい。
★短・中編セクションにスペインの大物プロデューサーとして有名なヘラルド・エレーロの
Safari(2013)がエントリーされています。16分の短編、言語は英語です。
★審査委員長はイギリスのアンドレア・アーノルド監督(『嵐が丘』『フィッシュタンク』など)、スペインのフェルナンド・ガンソ(雑誌「リュミエールLumiere」の共同編集者)、メキシコのダニエラ・ミチュレ(映画批評家)その他審査員にはジャーナリスト、批評家が多い。
カンヌ映画祭2014*「監督週間」 ディエゴ・レルマン ― 2014年05月11日 16:11
ディエゴ・レルマンの第4作Refugiado
★今年46回目を迎える「監督週間」も「批評家週間」同様カンヌ本体とは別組織が運営しているセクションです。1月に開催されるサンダンス映画祭に上映された作品もありますが、だいたいがワールドプレミアです。今年は長編19作、中短編11作がエントリーされています。
★今年 Refugiado が選ばれたディエゴ・レルマンは、第3作『隠れた瞳』(アルゼンチン=仏=西)が2010年にエントリーされています。東京国際映画祭2010で上映され、『ある日、突然。』を見て度肝を抜かれたファンを喜ばせました。昨年は御年85歳というアレハンドロ・ホドロフスキーが23年振りに撮った La danza de la realidad(チリ=仏)が登場、『エル・トポ』(1970)で世界を驚かせた監督です。今夏7月に『リアリティのダンス』の邦題で公開がアナウンスされています。これはもうお薦めです。
*他にスペイン語の映画では、パブロ・ララインの『NO』(2012、チリ=米国=メキシコ)、主たる言語は英語でしたが、チリのセバスチャン・シルバの『マジック・マジック』(2013、米国=チリ)などがあります。『NO』は東京国際2012とラテンビート2013で上映され、前者ではラライン兄弟は次回作撮影のため来日できず、ロス在住のアメリカ側の製作者ダニエル・マルク・ドレフュスがQ&Aに来日、撮影秘話を披露、関連記事はコチラ(ラテンビート2013①、9月21日UP)。G・G・ベルナルがお目当てのファンのなかには、お父さん役だったのでがっかりした人もいたでしょうか。一方『マジック・マジック』がラテンビートで上映されたときには監督と女優のカタリーナ・サンディノ・モレノが来日、スペイン語でQ&Aに臨んだときの様子はコチラ(ラテンビート2013、9月27日UP)です。
★ディエゴ・レルマン Diego Lerman :1976年3月24日、ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、製作者、舞台監督。産声を上げた日が軍事クーデタの勃発した運命の日、これ以後7年間という長きに及ぶ軍事独裁時代の幕が揚がった日でした。彼の幼年時代はまさに軍事独裁時代とぴったり重なります。体制側に与し恩恵を満喫してダメージを受けなかった家族も少なからずいたでしょうが、レルマンの家族はそうではなかった。そのことが彼の映画に顕著に現れているのが『隠れた瞳』です。
*ブエノスアイレス大学の映像音響デザイン科に入学、市立演劇芸術学校でドラマツルギーを学ぶ。またキューバのサン・アントニオ・デ・ロス・バーニョスの映画TV学校で編集技術を学んだ。
*長編フィルモグラフィー*
2002 Tan de repente (アルゼンチン)『ある日、突然。』監督・脚本・プロデューサー
モノクロ
2006 Mientras tanto(アルゼンチン)英題 Meanwhile 監督・脚本
2010 La mirada invisible(アルゼンチン=仏=西)『隠れた瞳』監督・脚本・プロデューサー
2014 Refugiado (アルゼンチン=ポーランド=コロンビア=仏)監督・脚本・プロデューサー
*他に短編、TVドキュメンタリーを撮っている。
*第1作 Tan de repente は、「鮮烈デビュー」が大袈裟でなかった証拠にレイトショーとはいえ日本でも公開されました(笑)。国内賞だけでなくロカルノ映画祭銀豹賞、ハバナ映画祭金の珊瑚賞、ウエルバ・ラテンアメリカ映画祭銀のコロン賞、2003年にはニューヨーク・レズ&ゲイ映画祭でも受賞するなど多くの国際舞台で評価されました。まだ20代半ばでしたから、計算されたプロットにはちょっとアメナバルがデビューした頃のことを思い出してしまいました。ユーロに換算すると4万ユーロという低予算で製作された。カンヌにはエントリーされなかったのに、カンヌ映画祭財団が基金を与え寄宿舎で脚本を書く機会を提供するなど好調な滑り出しでした。
*プロット:ランジェリー・ショップで働く田舎出の太めのマルシアは、ある日突然、パンクなレズビアンの二人組マオとレーニンに拉致される。マオがマルシアに一目惚れしたからだという(公式サイトあり)。
*第2作 Mientras tanto は、アルゼンチン映画批評家協会賞にValeria Bertuccelli が主演女優賞(銀のコンドル賞)、クラリン・エンターテインメント賞(映画部門)にもBertuccelli が女優賞、ルイス・シエンブロスキーが助演男優賞を受賞しましたが、レルマン自身はベネチア映画祭のベネチア作家賞にノミネートされただけでした。「アルゼンチンの『アモーレス・ペロス』版」と言われた作品(管理人は未見)。『僕と未来とブエノスアイレス』(2004、公開2006)のダニエル・ブルマンがプロデューサーの一人。新作 El misterio de la felicidad(2014)がなかなか好いという評判が聞こえてきてますが、彼の映画は公開が難しい。
*第3作 La mirada invisible は、「また瞳なの、瞳じゃないでしょ」と溜息をついた『隠れた瞳』は、上記したように東京国際映画祭で上映、監督と主演女優フリエタ・シルベルベルクが来日いたしました。マルティン・コーハンのベストセラー小説“Ciencias Morales”(2007エライデ賞受賞)にインスパイアーされての映画化だから、タイトルも違うし小説の登場人物や内容、特に終わり方が違います。軍事独裁制末期1982年のブエノスアイレス、エリート養成の高等学校が舞台でしたが、国家主義的な熱狂、行方不明者、勿論フォークランド戦争は出てこない。しかしこの学校がアルゼンチン社会のアナロジーと考えると、その「見えない視線」に監視されていた社会の恐怖が伝わってくる。
(東京国際映画祭Q&Aに登場したレルマン監督とフリエタ)
*この映画の一つの主役はカメラ、校内中庭を鳥瞰撮影した幾何学的な美しさ、教師と生徒が靴音を響かせて廊下を歩く遠景描写は軍隊行進のメタファーと感じさせる。ヒロインの突然のクローズアップの多用、構図がくっきりしていて気持ちがいい。それにしてもトイレのシーンが何回となく繰り返し現れるのは、何のメタファーなのだろう。心の中の汚物を吐きだす場所、人に隠れて秘密をもつ場所か。実際ある三つの高等学校で撮影したそうで、かつてブエノスアイレスが「南米のパリ」と言われた頃に建築された建物は、それ自体が絵になっています。撮影監督のアルバロ・グティエレスはスペイン人、数多くの短編映画、なかでHombres
de paja(2005)がストラスブール映画祭2007のベスト撮影監督賞を受賞、長編では、フェリックス・ビスカレットのBajo
las estrellas(2007)がゴヤ賞2008撮影監督賞にノミネートされ、エンマ・スアレス(主演女優賞ノミネート)やアルベルト・サン・フアンが出演したことで映画も話題になりました。
(写真では美しさがよく分からないが、舞台となった高等学校の校舎)
*フリエタ・シルベルベルクは『ニーニャ・サンタ』(2004、ラテンビート2004上映)以来の登場、真面目で繊細、故にアンバランスになっている女教師役にぴったりです。今年のカンヌのコンペに残ったダミアンSzifronの オムニバス映画Relatos salvajes にも出演しています。校長役のオスマル・ヌニェス、忘れられないのが祖母役のマルタ・ルボスの老練さでした。
(フリエタの後方が校長のヌニェス)
★第4作
Refugiado は、3月半ばに撮影が終了したという出来たてほやほやの作品、勿論ワールドプレミアです。まずプロットは、7歳のマティアスと母ラウラに起こったことがマティアスの無垢な驚きの目を通して語られる。父ファビアンのドメスティック・バイオレンスDVを逃れて、身ごもった母とティトを連れた子は安全な避難場所を求めて都会を彷徨い歩く、都会をぐるぐる廻るスリラー仕立てのロード・ムービー。
*ティトとはマティアスのプラスチック製の恐竜玩具ディノザウルスのこと。夫婦関係についての、暴力の本質についての映画だが、傷つくことのない関係の不可能性や無力さが語られている。だから道徳的に裁いたりしないのだ。第1作『ある日、突然。』同様、社会的文化的なありようとしてのジェンダーの話であり、単なる遁走でなく、前に進むための彷徨なのでしょう。エモーショナルななかにもユーモアのセンスが光る、スリラーの要素が込められた都会を巡る一種のロード・ムービー。
*アルゼンチンは他のラテンアメリカ諸国より、夫やパートナーによる家庭内暴力死亡事例が高く、年々増加の傾向にある。子供たちはそういう両親の葛藤と対立の中に置かれている。マティアスの場合は幼くて自分たちの彷徨の意味をよく理解しているわけではない。身体的なDV だけでなく精神的なものも含むから、その複雑さは理解できなくて当然です。
*キャスト陣:ラウラにフリエタ・ディアス(Julieta Diaz)、マティアスにセバスチャン・モリナロ(Sebastian Molinaro)、他いわゆる駆け込み寺に暮らす女性たちが出演する。マルタ・ルボス、シルビア・パロミノ、サンドラ・ビジャニ、パウラ・イトゥリサ、カルロスWeberほか。撮影はマティアス役の年齢(当時8歳)を考えて最長6時間に限り、ブエノスアイレスと近郊都市で7週間、ティグレTigreで2週間半かけてクランク・アップした。
(本当の母と子のように似ているディアスとセバスチャン)
*話題になっているのが撮影監督のヴォイテク・スタロン Wojtek (Wojciech) Staron です。1973年生れのポーランド人ですが、国際的に活躍している主にドキュメンタリーを撮っている監督です(ヴォイテクは男子名ボイチェフの愛称)。なかでパウラ・マルコヴィッチの El premio が第61回ベルリン映画祭2011にエントリーされ、彼は銀熊賞(芸術貢献賞の撮影賞)を受賞しました。これはアルゼンチンの脚本家パウラ・マルコビッチの長編デビュー作で自伝的要素の強い映画です。フェルナンド・エインビッケの『レイク・タホ』や『ダック・シーズン』の脚本を監督と共同執筆して、もっぱらメキシコで仕事をしているのでメキシコ人と思われていますが、アルゼンチン人です。監督の生れ育ったサン・クレメンテ・デル・トゥジュという湯治場を舞台に軍事独裁時代を女の子の目線から撮った映画、製作国は主にメキシコですが、フランス=ポーランド=ドイツの合作です。アリエル賞も受賞した。
(銀熊賞のトロフィーを手にしたマルコヴィッチ監督と撮影監督スタロン)
*イギリスとポーランド合作のドキュメンタリー Wojtek : The Bear That Went to War(2011)がNHK教育テレビの「地球ドラマチック」において『戦争に行ったクマ~ヴォイテクとポーランド兵たちの物語』として放映されました(2012年8月11日)。これを撮影した監督です。
*プロダクションは、アルゼンチン(CAMPO CINE、RioRoja他)、ポーランド(Staron Films)、コロンビア(Burning
Blue)、フランス(Bellota Films)。アルゼンチン9月公開が決定している。今後の賞の行方によって変わるかもしれない。
エミリオ・マルティネス=ラサロの新作が記録更新中 ― 2014年05月13日 15:36
★新作というのはコメディ“Ocho apellidos vascos”(2014)です。既に監督、ストーリー、キャスト陣など結構詳しくご紹介しています(3月27日UP)。まだスペイン国内しか公開されていないので英語題も決まっていません。多分スペインの南(アンダルシア)と北(バスク)の文化の相違が分からないと面白くないのかもしれません。
★そもそもスペインには4つの言語が公用語として話されています。いわゆるスペイン語という共通語としてのカスティーリャ語、バルセロナを中心にカタルーニャ地方で話されているカタルーニャ語、ポルトガルと国境を接しているガリシア地方のガリシア語、それにバスク州のバスク語の4つ。バイリンガルの人が多い。北スペインでは隣国のフランス語を話せる人が多いようです。なかで他の3つとは似ても似つかない、ルーツ不明の(ケルト語説あり)バスク語は特異な存在です。フランコ時代には使用が禁じられていたので末期には話せる人も老人だけの言語と言われました。しかしフランコ没後の1978年憲法で公用語として認められてから次第にバスク語人口は増加しています。フランス側にも3つの町でバスク語が話され、スペインの1とフランスの3を足して一つの国家を作ろうという運動が、いわゆる「1+3=1運動」です。ビスカヤ湾を臨むサンセバスチャンの東方20キロにあるフエンテラビア(バスク語でオンダリビア)からはフランスに渡る定期の船便があり、両国民は自由に行き来しています。このブログに時々登場するビアリッツ映画祭の開催される都市ビアリッツは、ここから北東約25キロ先、日本なら通勤距離ですね。
★本作は3月14日、320館で封切られてからほぼ満席状態で記録を塗り替えています。封切り当時はフアン・アントニオ・バヨナの『インポッシブル』は到底抜けないだろうと予想されましたが、なんと5週間目にあっさり抜いてしまいました。
*劇場公開された主な作品の記録は以下の通り(Rentrak España 調べ):
2014“Ocho apellidos vascos” 観客数6,525,919人 興行収入38,154,471ユーロ
2001『アザーズ』 同 6,410,561人 同
27,254,163ユーロ
2012『インポッシブル』 同 6,124,698人 同
42,386,171ユーロ
2003『モルタデロとフィレモン』 同 4,985,983人
2007『永遠のこどもたち』 同 4,420,636人
*このデータはあくまで海外を含めないスペイン国内に限った数字です。海外の興行収入を含めればアメナバルの『アザーズ』の209,947,037米ドル、『インポッシブル』の172,477,293米ドルには追いつけないでしょう。興行収入は消費税や入場料の違いで観客数と一致しません。それに第4回を迎えた「映画の日」(今年は3月31日~4月2日)が間に挟まったことも後押ししたかもしれない。これは3日間に限りスペインの映画館350館(3038スクリーン)が約三分の一の2ユーロ90セントで見られるという画期的な企画です。日本も消費税増税で入場料が上がりましたが(大人1800円は据置き)、ホントに高いですよね。ちょっとサンダル履きで近くの映画館にぶらり、という気にはなりません。
(写真は初日にマドリードの映画館に集まった観客)
★いつ50,000,000ユーロを超えるかが話題でしたが、依然勢いは止まらず、とうとう封切りから2ヵ月めに突破してしまいました(円換算だと70億ぐらいになる?)。消費税は20%を超えるから約1050万ユーロが国家の懐に転げこんだ計算になるそうです。それでエル・パイスのコラムニストでもあるダビ・トゥルエバ(ゴヤ賞2014の監督賞受賞)が「さぞかし収税官は濡れての粟で大金をがっぽがっぽ手に入れて、シャンパンでお祝いしてることだろう。しかるに現政権がここ3年間、我々シネアストに対してやってくれたことと言ったら予算削減だけじゃないか」という怒りのコメントを書くことになりました。3年前(2011年5月)に文化事業に理解のあった社会労働党PSOEから文化軽視のシブチン国民党PPに変わったことを指しているのだと思います。まあ、EUの重病人と腐され、国家存亡の危機にあるのだからPPとしても仕方がないのかもしれません。
*それで“Ocho
apellidos vascos”の最終数字はどのくらいになる?
エミリオ・アラゴンの新作は残念ながら英語 ― 2014年05月17日 15:28
★エミリオ・アラゴンのデビュー作『ペーパーバード幸せは翼にのって』(2010)は、ラテンビート2010のオープニング上映作品、翌年には公開もされました(2011年8月)。ラテンビートには出演者のカルメン・マチ(女優賞受賞)と一緒に来日してくれました。招待ゲストの少なかった年で、映画祭を盛り上げようと二人で奮闘、偉ぶることなく気軽にファンとの写真撮影にも応じてくれ、好印象を残していきました。
*そして監督以上に素晴らしかったのがスクリーンの最後のほうに現れたピエロの‘Miliki’(監督の父親)、スペインで一番愛されていたピエロでしたが、本作を最後に2012年83歳の誕生日まもなく旅立ちました。サーカスのピエロ、アコーディオン奏者、歌手、エレガントな教養人でもありました。この映画は市民戦争をバックにした「アラゴン家のサガ」のようなものです。監督もこれを撮らないことには前に進めないと話しておりました。‘Miliki’の子供時代を演じたロジェール・プリンセプ(『永遠のこどもたち』)は言うに及ばず、役者がとにかく上手い。こんなに生き生きしたイマノル・アリアスやリュイス(ルイス)・オマールを見るのは初めてだし、ダンスがこんなに上手いなんて知りませんでした。
(在りし日の「ミリキ」ことエミリオ・アラゴン・ベルムデス)
★監督もボードビリアンですからダンスは達者です。ゴヤ賞2011では、アラゴンは新人監督賞とオリジナル歌曲賞にノミネートされました。監督以前に、作曲家、脚本家、俳優、ミュージシャン、司会者、オーディオビジュアルの製作会社グロボメディアGlobomediaの設立者、テレビ局ラ・セクスタLa Sexta の名誉会長でもあった(2006~13)。いったい何が本職なのか分からないマルチ人間です。エミリオ・アラゴンの名で通っていますが、デビュー時(1977)には‘Miliki’の息子ミリキートMilikito の愛称で親しまれていました。父親、叔父、従兄弟の4人組でテレビ界で活躍していた。グロボメディアは新作のスペイン側製作社の一つ、テレドラ・シリーズのヒット作を手掛けており、なかで長寿テレドラ“Aida”は成功作、カルメン・マチが主人公のアイーダを演じ、それが『ペーパーバード』出演にも繋がっている。(写真:カルメン・マチ)
★1959年4月16日、キューバのハバナ生れ。1959年の元旦にキューバで何があったかというとキューバ革命、まだ生れていませんでしたが。ベネズエラ、アルゼンチンなどラテンアメリカ諸国を巡って、フランコ末期の1972年にアラゴン一家は帰国しています。アメリカのサフォーク=ボストン大学の歴史科、芸術科博士課程修了、マドリード高等音楽学校のピアノ科で学び、ボストンのニューイングランド音楽学校の作曲、管弦楽指揮科修了。
★さて、第2作目となる新作のオリジナル・タイトルは“A Night in Old Mexico”(2013)です。先週5月9日にスペイン語題“Una noche en el viejo México”で公開されました。スペイン=米国合作、言語は英語ですから本ブログの範疇外なんですが、エミリオ・アラゴンの第2作を待っていたということでご紹介いたします。
*製作国:スペイン=米国、言語:英語、ウエスタン、製作(共同):VT Films、Globomedia Cine他、製作費:約200万ドル、103分、撮影地:テキサスのブラウンビル
★プロット:牧場と土地を強制的に手放さざるを得なくなったテキサス男レッド・ボビーと、知り合ったばかりの20代の孫ギャリーの物語。祖父ちゃんと孫は二人それぞれの夢を抱いて、馬ではなく車でオールド・メキシコを目指して冒険の旅に出る決心をする。ある夜、メキシコの宿泊所で出会ったスリッパーのパティーに二人はぞっこんになる。バラ色の人生が開けるかもと期待するが、暗い影をもつ用心棒パナマという人物が絡んできて・・・。サイテイの状況から抜け出したい祖父ちゃん、さしあたりプータローをしていた孫の一種のロードムービーだが、生き残ることの価値についての、自分の最期は自分で選ぶ権利についての物語。
(孫を好演したジェレミーと気難しい祖父ちゃんデュヴァル)
★レッドを演じるのがロバート・デュヴァル、ギャリーは『戦火の馬』(2011)のジェレミー・アーヴァイン、パティーに『コレラの時代の愛』(2007)のコロンビア出身のアンジー・セペダ、パナマに『第211号監房』(2009)のルイス・トサルなど、キャストはアメリカとスペインが半々、スタッフも半々だそうです。気難しいオスカー俳優(『テンダー・マーシー』1983未公開)のデュヴァルを起用しての本作の評価は概ねニュートラルです。
(左からトサール、アンジー・セペダ、監督)
★若いアラゴン監督にとって『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』などコッポラの映画に出ているベテランとタッグを組むのは、気骨の折れることだったにちがいない。監督によれば、初顔合わせで「これは相性がよくないな、一緒にやるのは厳しい」と感じたそうで、デュヴァルも同じように思ったらしい。デュヴァルはプロダクションとの日程の行き違いで会う前から不機嫌だったらしい。実際始めてみると不測の事態が起こり、年齢のせいか(1931年1月生れ)、暑さのせいか、疲れのせいか怒りっぽくなり、何日も不機嫌が続いた。例えば「映画の山場の一つレッドがピストルを頭に当てて引き金を引くシーンがある(YouTube予告編で見られる)。デュヴァルがカウボーイ・ハットを脱ぐのを忘れているので、これ以上は丁寧に出来ないというほど穏やかに撮り直しを要求したのに怒ってしまって」と監督。彼のような映画のムシみたいな役者の舵取りは難しい。瞬間湯沸かし器みたいな老人は多いよね。(写真:撮影現場で話し合うデュヴァルと監督)
★撮影はテキサス州の最南端の都市ブラウンビル、国境の町ですね。住民はヒスパニックが大半で白人は北部に固まって住んでいる、いわゆる「英語も通じるアメリカ」の一つだそうです。これも監督には大変だったようです。「見知らぬ他国だし、意思疎通は英語だし、どうやったら上手く機能するのか分からなかった。(前作は自分の家族の歴史だったが)これは私のキャリアの中でも飛躍が必要だった、自分が抱えている恐怖にも向き合わねばならなかった」と、インタビューに答えています。撮影も俳優とのコンタクトもスムーズではなかった印象、こういうギクシャクが作品に現れているのかもしれません。
★脚本はベテランのウイリアム(ビル)・ウィットリフ。アンソニー・ポプキンスとブラッド・ピットが親子を演じた『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(1994)の共同執筆者。脚本についてはスペイン側の評判はよろしくない。滑り出しはいいのに、終わり三分の一がよくないそうです。じゃつまらないかというと、結構面白いと、どっちなの。エル・パイスのコラムニストのハビエル・オカーニャによると、映画の「流れはよどみなく、時には心地よく楽しめる。しかし心を揺さぶられるというほどじゃない。まるでサム・ペキンパーやドン・シーゲルやロバート・アルドリッチが撮る代わりに、『遥かなる大地へ』を撮ったロン・ハワードが監督した」ウエスタンだ。つまり面白くないということかね。アメリカとスペインでは今にも消え入りそうな黄昏のウエスタン物でも、面白さの感じ方が一味違うのではないか。どうして土地を失ったのか、肥大化している土地開発会社に対する政治的なメッセージがあるのかないのか、ギャングが登場する背景に麻薬密輸が絡んでいるのかなど、やはり見なきゃ分からない。
(用心棒パナマに扮したルイス・トサル)
★スペインでは3月に開催された第17回マラガ映画祭で上映され、アメリカではテキサス州の州都オースティンで開催された「サウス・バイ・サウスウエスト映画祭」がプレミアでした。こちらは観客の受けは良かったようです。賞味期限の切れたカウボーイでも、レッドのようなクレイジーな老人は好ましいキャラクターなのだということでしょうか。この映画祭については、マラガ映画祭作品賞を受賞したカルロス・マルケス=マルセの“10.000 KM”の記事でご紹介しました。コチラ(4月11日)
★第1作から5年近く開いています、エミリオ・アラゴンは映画監督ですか?「まだメダルが充分でないことくらい分かっています。・・・ずっと危機が続いていて今後どうするか考えていましたが、映画と音楽が好きだから、書いて、撮って、作曲したいと映画に戻ってきた、時間はもう無駄にできない」、もし可能なら中国で撮れたらと考えているそうです。そうそう、本作は今年のゴヤ賞のオリジナル作曲賞と同歌曲賞にノミネートされたんですが、やはり受賞したいですね。
第62回サンセバスチャン映画祭2014の大枠 ― 2014年05月20日 10:31
★第62回サンセバスチャン映画祭2014年の大枠が発表になりました。例年カンヌ映画祭との連携もありこの時期に発表になります。気が早いですが今年は、9月19日(金)から27日(土)になりました。昨年はブログ公園デビューで時間を取られ、受賞作品をUPしただけでしたが、今年はニュースが届き次第ご紹介したいと思っております。
★今年のポスターは簡素というか素っ気ないというか、写真でお分かりのようにグレー地に黒文字で上からスペイン語、バスク語、英語の順に「第62回サンセバスチャン映画祭」とあるだけのシンプルなもの。ポスターを紹介したチェマ・ガルシア・アミアノによれば、「映画祭の主役は無条件に上映作品だから、そちらを目立たせてポスターに余計なものは必要ない」ということのようです。ごもっともですがエントリー作品が良ければ問題なしですよ。去年はちょっぴり寂しかった記憶がありますから。2012年のポスターと比較すると、このシンプルさはちょっとしたセンセーションです。
★本映画祭のディレターであるホセ・ルイス・レボルディノスは、「私はとても気に入っている、控えめできっぱりしている。オフィシャル以外の部門は、対照的にそれぞれ素敵で心を捉えるポスターになっている。2014年はスペイン映画とバスク映画にとって素晴らしい年になるだろう」と。主催者側は楽観主義者が多そうです。何作か候補は決まっているのか、「新人監督部門やホライズンズ・ラティノ部門に良い作品を揃えられるし、コンペも既に2作品が確定している」ということです。そのうちアナウンスされるでしょう。
★2013年は、三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)の次を自負するなら、もう少し何とかなったのではという思いがありました。2012年が60周年という節目の年だったせいか頑張りすぎて、その反動があったような印象でした。経済効果もイマイチだったのではないか。米国に近いモントリオールやトロントの映画祭に時期が近いせいか、そちらに出品する傾向があるようです。次の作品を撮るには、やはり米国に売れるかどうかが重要なんだなぁ。
★三大映画祭といってもカンヌが飛びぬけているだけで、一番の老舗ベネチアも不便だからふんぞり返っていると後発のローマ映画祭に抜かれるかも。蚊取り線香が必要だし(笑)、ホテル代もカフェテリアもぼったくり値段になって、スペインの記者は行きたがらない。ベルリンは街中で足の便はよいが、2月と寒いしなぁ。サンセバスチャン映画祭の魅力は、映画以上にバルのタパス「ピンチョス」が、スペイン一美味しいということだね。料理に関する限り、ベネチアのようなぼったくりはないそうです。
カンヌ映画祭2014*アルゼンチン映画の評判 ― 2014年05月22日 17:02
★カンヌも中盤に入りました。評判記も作品より長澤まさみの××がドレスから見えたとか、女優のドレスのスカートに潜りこんだ男は入るスカートを間違えたのではとか、相変わらず男目線のレポートです。それはさておき、今年、スペイン語映画で大当たりなのがアルゼンチン、正式出品のダミアン・ジフロンSzifron の悲喜劇“Relatos salvajes”が上映されました。エル・パイスの批評家カルロス・ボジェロのレポートは、この辛口批評家にしてはかなり好意的でした(2007年から欠かさずカンヌの取材を任されてきたが体調を崩して帰国、現在はハビエル・オカーニャがピンチヒッターとしてカンヌ入りしています)。
(総勢でカンヌ入りした左から4人目が監督、右端がリカルド・ダリン)
(プレス会見を見守るアルモドバル)
★カンヌではスペイン語映画はどうしても脇に置かれてしまうから、時々罪滅ぼしか気前よく賞をくれたりする。例えば、昨年のアマ・エスカランテの『エリ』(第66回)、彼の兄貴分カルロス・レイガダスの“Post Tenebras Lux”(第65回)とメキシコが連続監督賞を受賞している。どちらもかなり審査員同士の丁々発止があったようです、特に後者ではイギリスのアンドレア・アーノルド監督の強い支持がなければ貰えなかった(今月末『闇のあとの光』の邦題で公開)。アーノルド監督は今年の「批評家週間」の審査委員長です。
★やはりアルモドバルのような強力な援護がカンヌでは必要、カンヌ正式出品も多分彼の名前が効いたと思います。リカルド・ダリンのカンヌ入りは初めてだと思いますが、フアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』はオスカー作品、主役に扮して知名度もありますね。監督自身も強力なキャストを揃えられたことを挙げています。テレビ界で活躍とはいえ本作が長編デビュー作ですから当然です(フィルモグラフィーについてはコチラ5月1日)。サンタオラジャの音楽も楽しみの一つです。
★表面的には繋がりがない6話で構成されたオムニバス映画だが、最後に実は・・・という仕掛けがあるようです。レシピはイライラで、昔受けた侮辱で、復讐で、理由のある恨みで、それぞれが爆発したとき相手に対してどう出るか、それは無謀な行為でしょ。偶然飛行機に乗り合わせた乗客がフライト中になかの人物とかつて関係があったことを各自発見するというシュールで意表を突くエピソードで始まる。官僚のペテンによって面目をつぶされたとずーっと感じている男、息子がたまたま妊婦を轢き逃げしてしまった百万長者の父親、相手の不誠実を前にして結婚式当日に腹を立ててしまう花嫁などが登場する。
★プレス会見での監督談によると、「12~14話書いたうちから6話を選んだ。登場人物はそれぞれ粗野な人たち、私は争いや対立から面倒が起きる話が好き」だそうです。「カンヌは初めてなので、会場から受けるだろう質問をあれこれ想定して臨んでいる」、名前から出自を訊かれ、自分の祖母はナチから逃れるため列車から飛び降り逃げてきた人だそうです。これも想定内の質問だったでしょうか。リカルド・ダリンや共演者の話を総合すると、監督は細部にいたるまでこだわるタイプで「完璧主義者」の由。
★アグスティン・アルモドバルによれば、彼のような若い監督のデビュー作がカンヌのコンペに持って来られたのは、神の「恩恵」かもしれないと。上映に立ち会った観客のなかにもそう感じた人もいたでしょう。二匹目の泥鰌を狙う大物監督揃いのカンヌのコンペはそれくらい「狭き門」ということです。
カンヌ映画祭2014*ハイメ・ロサーレス新作 ― 2014年05月26日 15:55
★あっという間にカンヌも終わってしまいました。ヌリ・ビルゲ・ジェイランの『ウインター・スリープ』が受賞、星取表上位6作品のなかにあったからサプライズというほどじゃなかった。しかしトルコの作品がパルムドールを受賞するのは、ユマルズ・ギュネイの『路』(1982)以来というから驚きかも。ギュネイ監督については以前ご紹介したことがありますが、2年後に政治的亡命先のパリで癌に倒れた。享年46歳という若さでした。
★決定までに3~4時間要したようで、観客のオベーションなども加味して決まったようです。いずれ映画祭か公開も期待できそうですね。ジェイラン監督はカンヌの常連さん、『スリー・モンキーズ』(2008、東京国際映画祭上映)で監督賞も貰っているし、グランプリも2つ持ってるから、もう要らないね。ゴダールはいっぱい賞を持ってるから(カンヌはゼロ)もう要らないと憎まれ口きいてたけど、『言語よさらば』が審査員賞と愛犬がパルム・ドッグ賞(第2席)を受賞した。審査員賞はグザヴィエ・ドランだけでよかったのではないの。このカナダの青年監督の才能は末恐ろしい。
★ご紹介したアルゼンチンの“Relatos salvajes”は残念ながらかすりもしなかったが、「ある視点」にノミネートされたロサーレスの新作“Hermosa Juventud”(“Beautiful Youth”)が、「エキュメニカル審査員賞」をヴィム・ヴェンダースと分け合った。18日に上映された折りには温かいオベーションを受けたようです。半分はお義理オベーションでも、面白くなければ上映中にブーイングも厭わないのがカンヌの観客、今年もブーイングにショックを受けて記者会見をドタキャンした俳優が出ていました。
★観客にも身近で分かりやすい物語、何十万人に一人の難病に罹って余命1カ月とか、尊属殺人を犯してしまったとか、そんな特別な状況設定ではなく、ごく普通の若者が主人公の話です。本作のストーリー、監督、キャストについてはご紹介しています(コチラ、5月4日)。少し付け足すとナタリアはカルロスの子を身ごもってしまい、二人は娘フリアの親になってしまう。ナタリアの両親は離婚していて、他に二人の姉妹もおり、母親はナタリアに援助できない。失業中のカルロスには体が不自由で世話を必要としている母親がいる。かなり厳しい現実に直面しているが、愛を語れないほど悲惨ではない。
(写真:二人の主人公ナタリアとカルロス)
★「今現在、ここに存在している物語」を語りたいから、「公園や繁華街にいるたくさんの若者にインタビューして取材を重ねていった。まるでダイナミックなパズルを嵌めこむようにして脚本を組み立てた」と監督は語っています。彼らが一様に口にしたのが<お金>と失業のこと、交通費の高さ、賃金の安さ、どうやって節約するか、と話題はすぐお金の話に舞い戻っていく。スペインの若者は出口の見えない袋小路に迷い込んでいて、映画やファッションどころではないという現実だった。「政治的な映画をつくるつもりはなく、ただスペインの若者の現実を語りたいと思っただけ」、これが理解できないと日本の観客は多分登場人物のなかに入れないのではないか。
(写真:生れてしまった娘を抱っこしたナタリア)
★ロサーレスの過去の映画の分かりにくさから抜け出している印象があります。ポンピドゥー・センターから上映を要請されていたが、自分の作品が美術館映画のほうに迷走していたのを軌道修正しようと考えて要請を断ったそうです。「本作は、私を圧迫していた死とか宗教に対するオブセッションをひっくり返した一種の悪魔払いの作品になった。今までのチームをすっかり入れ替えて、若い人たちと撮影をした。私を惹きつけた若者の不確かな世界を通して、私を不安にさせていた何かと繋がろうとした」。ダルデンヌ兄弟、ケン・ローチ、アブデラティフ・ケシシュの映画が頭にあったとも。ケシシュは『アデル、ブルーは熱い色』が昨年のパルムドールを受賞したチュニジア出身の監督、その性描写がネックとなっていたが「R18+」で公開されました。
(写真:細身になった最近のロサーレス監督、マドリードのカフェ・ヒホンにて)
★プロの撮影監督が80%、残り20%の撮影をアマチュアに任せた、ポルノ映画の部分ですね。多分ドキュメンタリーの手法がとられているのだと思います。そのコントラストに興味が湧きます。ロサーレスは1作ごとに冒険するタイプ、その一つがポルノ・ビデオ界の帝王ことトルベの協力を得られたこと。本名イグナシオ・アジェンデ・フェルナンデス(またはナチョ・アジェンデ)、1969年バスクのビスカヤ生れ、サンティアゴ・セグラの『トレンテ』(シリーズ2・3・4)で既に日本に紹介されています。もう一つがオーディションを受けに来て知り合ったイングリッド・ガルシア・ヨンソンのナタリア起用、「磨きをかける必要があったので相当口論した。互いに憎みあいもしたが、結局彼女は私を求め、私も彼女が大好きだったのだ」と。
★資金がなければ映画は作れないが、お金があればいい映画が作れるかと言えばそんなことはない。もしそうならドイツやスイスが量産してるはずです。作家性の強い映画をつくりたいか、映画館に行列ができるような映画をつくりたいかは人さまざま。「他の人の映画についてはよく分からないが、作りづらくなっているのは確か。しかしワインと同じでまずブドウを収穫すること、今年のブドウは出来が良さそうと直感する」そうです。経済的にサイテイの時代でも希望は捨てないことです。
*スペインでは5月30日公開が決定しています。
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