カンヌ映画祭2014*アルゼンチン映画の評判 ― 2014年05月22日 17:02
★カンヌも中盤に入りました。評判記も作品より長澤まさみの××がドレスから見えたとか、女優のドレスのスカートに潜りこんだ男は入るスカートを間違えたのではとか、相変わらず男目線のレポートです。それはさておき、今年、スペイン語映画で大当たりなのがアルゼンチン、正式出品のダミアン・ジフロンSzifron の悲喜劇“Relatos salvajes”が上映されました。エル・パイスの批評家カルロス・ボジェロのレポートは、この辛口批評家にしてはかなり好意的でした(2007年から欠かさずカンヌの取材を任されてきたが体調を崩して帰国、現在はハビエル・オカーニャがピンチヒッターとしてカンヌ入りしています)。
(総勢でカンヌ入りした左から4人目が監督、右端がリカルド・ダリン)
(プレス会見を見守るアルモドバル)
★カンヌではスペイン語映画はどうしても脇に置かれてしまうから、時々罪滅ぼしか気前よく賞をくれたりする。例えば、昨年のアマ・エスカランテの『エリ』(第66回)、彼の兄貴分カルロス・レイガダスの“Post Tenebras Lux”(第65回)とメキシコが連続監督賞を受賞している。どちらもかなり審査員同士の丁々発止があったようです、特に後者ではイギリスのアンドレア・アーノルド監督の強い支持がなければ貰えなかった(今月末『闇のあとの光』の邦題で公開)。アーノルド監督は今年の「批評家週間」の審査委員長です。
★やはりアルモドバルのような強力な援護がカンヌでは必要、カンヌ正式出品も多分彼の名前が効いたと思います。リカルド・ダリンのカンヌ入りは初めてだと思いますが、フアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』はオスカー作品、主役に扮して知名度もありますね。監督自身も強力なキャストを揃えられたことを挙げています。テレビ界で活躍とはいえ本作が長編デビュー作ですから当然です(フィルモグラフィーについてはコチラ5月1日)。サンタオラジャの音楽も楽しみの一つです。
★表面的には繋がりがない6話で構成されたオムニバス映画だが、最後に実は・・・という仕掛けがあるようです。レシピはイライラで、昔受けた侮辱で、復讐で、理由のある恨みで、それぞれが爆発したとき相手に対してどう出るか、それは無謀な行為でしょ。偶然飛行機に乗り合わせた乗客がフライト中になかの人物とかつて関係があったことを各自発見するというシュールで意表を突くエピソードで始まる。官僚のペテンによって面目をつぶされたとずーっと感じている男、息子がたまたま妊婦を轢き逃げしてしまった百万長者の父親、相手の不誠実を前にして結婚式当日に腹を立ててしまう花嫁などが登場する。
★プレス会見での監督談によると、「12~14話書いたうちから6話を選んだ。登場人物はそれぞれ粗野な人たち、私は争いや対立から面倒が起きる話が好き」だそうです。「カンヌは初めてなので、会場から受けるだろう質問をあれこれ想定して臨んでいる」、名前から出自を訊かれ、自分の祖母はナチから逃れるため列車から飛び降り逃げてきた人だそうです。これも想定内の質問だったでしょうか。リカルド・ダリンや共演者の話を総合すると、監督は細部にいたるまでこだわるタイプで「完璧主義者」の由。
★アグスティン・アルモドバルによれば、彼のような若い監督のデビュー作がカンヌのコンペに持って来られたのは、神の「恩恵」かもしれないと。上映に立ち会った観客のなかにもそう感じた人もいたでしょう。二匹目の泥鰌を狙う大物監督揃いのカンヌのコンペはそれくらい「狭き門」ということです。
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