第31回ホセ・マリア・フォルケ賞2025*結果発表 ― 2026年01月07日 13:31
作品賞はアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」が受賞

★ホセ・マリア・フォルケ賞の授賞式は年明け早々でしたが、第27回から前倒しの12月の半ばに変更され、2021年には1月と12月の2回開催されました。第31回は2025年11月6日にノミネート発表があり、12月13日にマドリードのパラシオ・ムニシパルで開催されました。年内にアップが間にあいませんでしたので、簡単に結果だけアップしておきます。1996年、EGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)の初代会長を務めた、製作者兼監督のホセ・マリア・フォルケの偉業を讃えて創設された賞、縁の下の力持ちである製作者に与える賞としてスタートを切りました。常に光が当てられる監督賞がないのが特徴ですが、昨今では監督が製作を兼ねることが多くなり垣根が低くなりました。選考母体はEGEDAを中心にマドリード共同体、RTVEが主催、モビスター・プラス+ 他、多くの企業がコラボしています。

(総合司会者のカジェタナ・ギジェン・クエルボとダニエル・グスマン)
★映画部門はカンヌ映画祭の受賞歴を持つオリベル・ラシェの「Sirat」(オスカー賞2026のスペイン代表作品)をおさえて、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」が受賞、TVシリーズはハビエル・セルカスのノンフィクション小説をベースに、アルベルト・ロドリゲス&パコ・R・バニョスの「Anatomía de un instante」に軍配が上がりました。かつてはゴヤ賞の前哨戦と称されたフォルケ賞も、カテゴリーが少ないので目安になるかどうか分かりませんが、以下に受賞結果をアップしておきます(*印は当ブログ紹介記事あり)。
*第31回ホセ・マリア・フォルケ賞2025受賞結果*
◎作品賞(フィクション)副賞30.000ユーロ
*プレゼンターは、女優のベレン・クエスタと監督で脚本家のマルセル・バレナ、彼は前年「El 47」で作品賞と映画と価値観教育賞の2冠を制しました。作品賞ノミネートは以下の4作。
「Maspalomas」 監督ホセ・マリ・ゴエナガ&アイトル・アレギ *

「Sirat」 監督オリベル・ラシェ *

「Sorda」 監督エバ・リベルタード *

「Los domingos」 同アラウダ・ルイス・デ・アスア *
製作者:マヌエル・カルボ、マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、サンドラ・エルミダ、他
*受賞作「Los domingos」の作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月27日

(製作者マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス)

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督は「批判的な意見に敬意をはらい、
思想の教化やドグマに直面している視聴者の自主性を守りたい」とスピーチした)

(キャスト、監督、製作者たち)

◎長編アニメーション賞 副賞30.000ユーロ
*プレゼンターは、エンリケ・アルセとカルラ・ソフィア・ガスコン
「Bella」 監督マヌエル・H・マルティン、アンパロ・マルティネス・バルコ
「El tesoro de Barracuda」 同アドリアン・ガルシア
「La luz de Aisha」 同シャディ・アディブ Shadi Adib
「Decorado」 同アルベルト・バスケス
製作:Unico / Abano / Glow Animation / Sardinha em Lata
チェロ・ロウレイロ、ヌーノ・ベアト、ホセ・マリア・フェルナンデス・デ・ベガ、他

(熟年夫婦の危機が語られるとスピーチした製作者チェロ・ロウレイロ)

(ネズミに託して現代社会の自由を描いたとスピーチしたバスケス監督)

◎長編ドキュメンタリー賞 副賞6.000ユーロ
*プレゼンターは、パトリシア・ロペス・アルナイスと俳優のカルロス・サントス
「2025. Todos somos Gaza」 監督エルナン・シン
「Eloy de la Iglesia. Adicto al cine」 同ガイスカ・ウレスティ
「Tardes de soledad」 同アルベルト・セラ
「Flores para Antonio」 同エレナ・モリナ、イサキ・ラクエスタ
製作者:アルバ・フローレス、アナ・ビリャ、ブルナ・エルナンド、サラ・モントリウ、
エドゥアルド・ビリャヌエバ、チャーリー・ブホサ・コルテス

(俳優、ミュージシャンの故アントニオ・フローレスの一人娘アルバがスピーチ)


(監督、製作者たち、レッドカーペットにて)

◎男優賞 副賞3.000ユーロ
*プレゼンターは、タマル・ノバスとキラ・ミロー
アルベルト・サン・フアン 「La cena」
アルバロ・セルバンテス 「Sorda」 *
マリオ・カサス 「Muy lejos」
ホセ・ラモン・ソロイス 「Maspalomas」 *
*「Maspalomas」の紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日


◎女優賞 副賞3.000ユーロ
*プレゼンターは男優賞と同じ、タマル・ノバス、キラ・ミロー
アンヘラ・セルバンテス 「La furia」 *
ミリアム・カルロ 「Sorda」 *
ノラ・ナバス 「Mi amiga Eva」
パトリシア・ロペス・アルナイス 「Los domingos」 *



(パトリシア・ロペス・アルナイス)
◎短編賞 副賞3.000ユーロ
*プレゼンターは、女優兼モデルのクララ・ガジェと俳優のマヌ・ベガ
「El Cuento de una Noche de Verano」 監督マリア・エレーラ
「Una cabeza en la pared」 同マヌエル・マンリケ
「Angulo muerto」 同クリスティアン・ベテタ
製作:La Dalia Films / Robot Productions / ホセ・ルイス・ランカーニョ、パブロ・ロペス


◎ラテンアメリカ映画賞 副賞6.000ユーロ
*プレゼンターは、ラウラ・ラモス、アグスティン・デリャ・コルテ、アナ・リタ・クララ
「La misteriosa mirada del flamenco」(チリ) 監督ディエゴ・セスペデス *
「La ola」(チリ) 同セバスティアン・レリオ *
「Papeles」(パナマ) 同アルトゥーロ・モンテネグロ
「Belén」(アルゼンチン) 同ドロレス・フォンシ
製作:K&S Films(レティシア・クリスティ、マティアス・モステイリン、ウーゴ・シグマン)

(本作出演のフリエタ・カルディナリがトロフィーを受け取った)

◎映画と価値観教育賞
*プレゼンターは、女優兼監督のアントニア・サン・フアンとマルタ・ニエト
「Sorda」 監督エバ・リベルタード *
製作:ヌリア・ムニョス(Nexus CreaFilms)、ミリアム・ポルテ(Distinto Films)他
*受賞作「Sorda」の紹介記事は、コチラ⇒2025年04月14日


(ミリアム・ガルロ、監督エバ・リベルタード、アルバロ・セルバンテス)
◎観客賞
「El cautivo」 監督アレハンドロ・アメナバル
*プレゼンターは、マリア・ソレダード・サンスとマルコス・リックブール
製作:フェルナンド・ボバイラ、シモン・デ・サンティアゴ、アメナバル、他
『ドン・キホーテ』の著者セルバンテスの若き日を描いた歴史劇、東京国際映画祭で『囚われ人』の邦題で上映されている。


◎TVシリーズ賞(フィクション)副賞6.000ユーロ
*プレゼンターは、ハビエル・カルボ、アナ・ルハス
「Pubertat」 監督レティシア・ドレラ
「Animal」 同ビクトル・ガルシア・レオン
「Poquita Fe」(シーズン2) 同ぺポン・モンテロ、フアン・マイダガン
「Anatomía de un instante」 同アルベルト・ロドリゲス、パコ・R・バニョス *
製作者:ホセ・マヌエル・ロレンソ、フラン・アラウホ、マヌエラ・オコン
*受賞作「Anatomia de un instante」の紹介記事は、コチラ⇒2025年08月01日

(クリエーターのホセ・マヌエル・ロレンソ)

(ロドリゲス監督、脚本家ラファエル・コボスなど)
◎TVシリーズ賞男優賞 副賞3.000ユーロ
*プレゼンターは、バラバラ・レニーとミキ・エスパルベ
アルバロ・モルテ 「Anatomia de un instante」
ルイス・サエラ 「Animal」
ラウル・シマス 「Poquita Fe」(シーズン2)
ハビエル・カマラ 「Yakarta」


(プレゼンターのバルバラ・レニーからお祝いのキス)

◎TVシリーズ賞女優賞 副賞3.000ユーロ
*プレゼンターは男優賞と同じ、バラバラ・レニーとミキ・エスパルベ
カンデラ・ペーニャ 「Furia」
カロリナ・ジュステ 「La cancion」
イングリッド・ガルシア・ヨンソン 「Superestar」
エスペランサ・ペドレーニョ 「Poquita Fe」(シーズン2)

(受賞者エスペランサ・ペドレーニョ欠席)

◎フォルケ賞金のメダル
エンマ・ルストレス(製作者)
*プレゼンターは、勿論EGEDA会長のエンリケ・セレソ、会長がトロフィを手渡した。家族(共同設立者)が会場から見守るなか、2週間前のインタビューで「きっと泣いてしまう」という予告通り、登壇する前から涙、最後まで止まりませんでした。男性優位の製作現場での苦労を思えば涙も許されるでしょう。「独立系の製作者は、刷新を心がけること、新しい才能に新しいチャンスを与えること」とスピーチした。女性初の受賞者とか。

(「偉大な才能の持主」と賞賛したセレソ会長)

★Vaca Filmsを夫と創設した。代表作品『プリズン211』(ゴヤ賞2010作品賞)、『インベーダー・ミッション』(Invasor 12)、『暴走車ランナウェー・カー』(El desconocido メストレ・マテオ賞2016)、『バンクラッシュ』(Cien años de perdón 16)、『ガン・シティ動乱のバルセロナ』(La sombra de la ley 18)、「Hasta el cielo」(20)、「Quien a hierro mata」(24)など、ダニエル・モンソン、ダニエル・カルパルソロ、ダニ・デ:ラ・トーレ、パコ・プラサなど硬派の作品を手掛けている。




★地味だったフォルケ賞もカテゴリーが増えたりプレゼンターが豪華になったりと、年ごとにショー化して長くなりましたが、視聴率アップは至上命令ですから仕方ありません。TVシリーズ作品賞受賞作「Anatomía de un instante」の製作者ホセ・マヌエル・ロレンソがフランコ時代を知らない若い人たちに、現在手にしている自由をもち続けることの難しさと自由を手放さないための闘いを訴えるために製作したとスピーチしたのが印象的でした。また映画と価値観教育賞のプレゼンターとしてアントニア・サン・フアンが登壇したのに驚かされました。9月初旬に喉頭がんの診断を受け、当日はまだ化学療法を受けていたからです。その後大晦日に自身のインスタグラムで他臓器への転移もなく完治したと公表、「新たな人生を生きたい」という喜びの涙に〈いいね!〉が何万も投稿され、衰えないアントニアの人気の高さを実感したことでした。

(レッドカーペットでインタビューを受けるアントニア・サン・フアン)
★エル・デセオが製作したオリベル・ラシェの「Sirat」は無冠に終わりましたが、プロデューサーのアグスティン・アルモドバルやエステル・ガルシアの二人もレッドカーペットでのインタビューを受けていました。大体インタビューを受けた人が受賞しているので何かの賞に絡むと思っていましたが残念でした。
★今宵会場とお茶の間を楽しませたミュージシャンたち、“Ojos verde” を歌ったルス・ロレンソ、“Más bonita que ninguna” を歌ったシャイラ・ドゥカル、“Nada de nada” を歌ったアマラルとマファルダ・カルデナル、"Toda una vida" をデュエットしたシャネルとニル・モリネル、サウラの『カラスの飼育』でアナ・トレントとコンチ・ぺレスの姉妹がデュエットした "Porque te vas" をクロエ・バードが歌い始めると往年の大歌手ジャネットも登場して二人でデュエット、会場のシニアたちも乗せられて口ずさみ始め大いに盛り上がりました。

(シャネルとルス・ロレンソ)


(ジャネットとクロエ・バード)

(シャネルとニル・モリネル)
ゴヤ賞2026栄誉賞にゴンサロ・スアレス*ゴヤ賞2026 ② ― 2025年12月25日 18:48
「アクション!」&「カット!」を懐かしむゴンサロ・スアレス

(ゴヤ賞2026栄誉賞受賞者ゴンサロ・スアレス)
★前回予告した通り、ゴヤ賞2026栄誉賞受賞者ゴンサロ・スアレスのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。バルセロナ派の先駆者の一人、バルセロナで開催される第40回ゴヤ賞2026ガラで授与されます(2月28日)。貰ったトロフィは「我が家で一番目立つところに置く」そうです。2020年にEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)が選考母体のホセ・マリア・フォルケ賞「金のメダル」を受賞した折に簡単なキャリア&フィルモグラフィーを紹介しております。記事がダブりますが、ゴヤ栄誉賞受賞を機に改めてスペイン映画界でも異色の監督をご紹介します。60年にわたるスペインの映画と文学に貢献してきた功績が授賞理由。受賞の知らせに「映画を作らなくなって郷愁を感じるけれど、受賞はとても嬉しい。『アクション!カット!』と言うのが大好きなんだ。だって映画はアクションだからね」と。「どこに行くか決めずに知らない場所に行くのが好き。どこに辿りつくのか分からないのが冒険」とも語っている。

(フォルケ賞〈金のメダル〉を手にした受賞者、2020年1月18日)
★およそ20作くらいの長編を撮った監督は、2007年のコメディ「Oviedo Express」を最後に引退したかと思ったが、80代半ばで中編「El sueño de Malinche」(19)と短編「Alas de teniebla」(21)というアニメーションを撮っている。「いくつかの例外はあるが、自作を見返すということはしない。もしそんなことをしたら似たものが出来てしまうからね。映画が完成したら、それはそれで終わり、自分はそうやってきた」と。自分にとって時間は常に大きな謎、彼が映画に求めるものは挑戦すること。
*フォルケ賞〈金のメダル〉受賞の記事は、コチラ⇒2020年01月13日
★ゴンサロ・スアレス Gonzalo Suárez Morilla 1934年、アストゥリアス州オビエド生れ、監督、脚本家、製作者、俳優、ジャーナリスト、作家(ペンネームはマルティン・ジラール)と多才。2年後の1936年、スペイン内戦が勃発した。彼はマドリードのインターナショナル・リセ・フランセに入学できた10歳まで学校教育をは受けていない。当時父親ゴンサロ・スアレス・ゴメスは、15世紀半ばのフランス最初の近代詩人と言われるフランソワ・ヴィヨンの専門家でマドリードの大学の特任教授でしたが、社会主義者という理由で追放の身であった。

(受賞の知らせを受けたスアレス、2025年7月18日、マドリード)
★1951年、マドリードで哲学と文学を学び始める。戯曲執筆や舞台俳優としてアメリカのウィリアム・サローヤンの『君が人生の時』、ギリシャ三大悲劇詩人エウリピデスの『メディア』、シェイクスピアの『テンペスト/あらし』などを演じていた。しかしフランコ独裁政権下での勉学は厳しく、故国を捨ててパリに向かい、彼の地では一時しのぎの仕事に甘んじていた。1958年、妻のエレーヌ・ジラールを伴ってバルセロナに到着、マルティン・ジラールのペンネームでジャーナリズム界に入り成功するも、当時流行していた自然主義的なものとは断絶した著作に専念する。1963年 ”De cuerpo presente” を手始めに刊行することができた。そのうち何作かを後に脚色して映画化している。映画デビューは1966年、短編「El horrible ser nunca visto」、撮影を手掛けたカルロス・スアレス(1946~2019)は実弟、彼は兄の1970年代以降のほぼ全作を担当している。こうして映画製作と著作の二足の草鞋を履く人生が始まった。

(ゴンサロ & カルロス・スアレス・モリーリャ兄弟)
★以下に主なフィルモグラフィーを列挙するが、話題作に触れておきたい。ベルリナーレ1970にノミネートされたファンタジー「El extraño caso del doctor Fausto」は、ファウスト博士を狂気の世界に堕落させる美しい女性の物語、ファウスト博士にビクトル・プイグを起用、自身はナレーションを担当、他にスアレス映画の常連チャロ・ロペスがクレジットされている。モスクワ映画祭1975にノミネートされた「La Regenta」は、レオポルド・アラス、ペンネーム〈クラリン〉の小説『ラ・レヘンタ』(1988刊行)の映画化、オビエドを舞台に年の離れた元裁判官と結婚した若いアナ・オソレス(エンマ・ペネーリャ)を苦しめる地方の偽善、宗教的抑圧が描かれる。「Parranda」は、ホセ・サクリスタンがサンジョルディ賞男優賞を受賞したドラマで、他にホセ・ルイス・ゴメス、アントニオ・フェランディス、チャロ・ロペス、フェルナンド・フェルナン=ゴメスなど有名どころが共演している。酒とセックス、暴力に溺れる3人の友人が奈落の底に落ちていく奇抜な人生が語られる。

(「El extraño caso del doctor Fausto」のポスター)

(フェルナン=ゴメスと3人の悪友、「Parranda」から)
★カンヌ映画祭1984外国映画部門のユース賞受賞した「Epilogo」は、他にフランシスコ・ラバルがフォトグラマス・デ・プラタ1985主演男優賞を受賞、チャロ・ロペスが女優賞にノミネートされた。ロカブルノ(ラバル)とディティランボ(ホセ・サクリスタン)は、一緒に小説を書き、同じ女性(チャロ・ロペス)に恋をしていましたが二人は別れました。10年後ディティランボは「エピローグ」を共に執筆しようとロカブルノを訪れます。キャストの演技が光った秀作、スアレス自身の小説がもとになっている。


(ラバル、ロペス、サクリスタン、「Epilogo」のフレームから)
★監督にゴヤ賞監督賞をもたらしたミステリーホラー「Remando al viento」(西=英合作)は、英語映画ということもあって『幻の城 バイロンとシェリー』という邦題で初めて劇場公開された映画。バイロン卿にヒュー・グラント、詩人パーシー・シェリーにヴァレンタイン・ペルカ、彼の婚約者メアリー・シェリーにリジー・マキナニー(『フランケンシュタイン』の著者)が扮し、彼女の異母妹クレア・クレアモントにエリザベス・ハーレー、バイロン卿の元恋人で秘書の主治医ポリドリをホセ・ルイス・ゴメスが演じ、衣装デザインを後にスペイン映画アカデミー会長を務めたイヴォンヌ・ブレイクが手掛けた豪華版だった。

★ゴヤ賞オリジナル脚本賞ノミネートの「El detective y la muerte」(西=仏合作)は、シュルレアリスムの雰囲気があるフィルムノワール、キャストは人気上昇中のハビエル・バルデム(サンセバスチャンFF銀貝賞男優賞受賞)、常連カルメロ・ゴメス(フォトグラマス・デ・プラタ主演男優賞受賞)、ポルトガルとフランスの国籍を持つマリア・デ・メデイロス、エクトル・アルテリオ、チャロ・ロペスなどの豪華版。混乱したプロット、捩じれた陰謀、幻想的な事件などで好みが二分された。

(刑事役バルデムを配した「El detective y la muerte」のポスター)
★サンジョルディ賞作品賞を受賞した「Portero」は、スペインのプレミアリーグのゴールキーパー、ラミロ・フォルテサの物語。ラミロ役にまたしてもカルメロ・ゴメスを起用、マリベル・ベルドゥ、治安警備隊員のアントニオ・レシネス、エルビラ・ミンゲス、「マキ」に扮したエドゥアルド・フェルナンデスなど最高のキャスト陣、内戦後のアストゥリアスが舞台。実話に着想を得たサッカーと内戦後のマキを絡ませたドラマ。

(GKを演じたカルメロ・ゴメスを配したポスター)
★長編としては最後となる「Oviedo Express」は、ゴヤ賞7部門ノミネートでしたが無冠に終わり、評価も毀誉褒貶でした。弟の撮影監督カルロスとの二人三脚にも終止符が打たれた。カルメロ・ゴメス、アイタナ・サンチェス=ヒホン、ナイワ・ニムリ、マリベル・ベルドゥ、アルベルト・ヒメネス、ホルヘ・サンス、新人バルバラ・ゴエナガを登場させた。フォルケ賞金のメダル受賞の記事で紹介しています。

(カルメロ・ゴメス、マリベル・ベルドゥ、フレームから)

(左から、アルベルト・ヒメネス、アイタナ・サンチェス=ヒホン、スアレス監督、
バルバラ・ゴエナガ、カルメロ・ゴメス、バジャドリード映画祭、2007年10月28日)
◎主なフィルモグラフィー
1966「El horrible ser nunca visto」(17分、モノクロ、ホラーコメディ)
監督・脚本・製作・出演
1967「Ditirambo vela por nosotros」(26分、モノクロ)監督・脚本・出演
1967「Ditirambo」(103分)監督・脚本・出演(ディティランボ役)
1969「El extraño caso del doctor Fausto」(ファンタジー)監督・脚本・製作、ナレーション
ベルリナーレ1970正式出品
1972「Morbo」(スリラー)監督・脚本 主演アナ・ベレン、ビクトル・マヌエル
1973「Al diablo con el amor」(ミュージカル)監督・脚本・出演
主演アナ・ベレン、ビクトル・マヌエル、ルイス・シヘス
1974「La Regenta」監督、レオポルド・アラス〈クラリン〉の同名小説の映画化
モスクワFF 1975正式出品、ブニュエル賞受賞
1977「Parranda」(ドラマ)監督・脚本
サンジョルディ賞男優賞(ホセ・サクリスタン)
1984「Epilogo」監督・脚本、カンヌFF外国映画部門ユース賞受賞、シカゴFFノミネート
1988「Remando al viento」(ミステリーホラー、英語)『幻の城 バイロンとシェリー』
サンセバスチャンFF監督賞、ゴヤ賞1989監督賞受賞、オリジナル脚本賞ノミネート、
カルロス・スアレス撮影賞受賞、リオデジャネイロFF審査員特別賞受賞
フォトグラマス・デ・プラタ作品賞、サンジョルディ作品賞受賞
1991「Don Juan en los infiernos」シネマ・ライターズ・サークル監督賞受賞
1992「La reina anónima」主演カルメン・マウラ、マリサ・パレデス
1994「El detective y la muerte」ゴヤ賞脚本賞・サンセバスチャンFF作品賞ノミネート
シネマ・ライターズ・サークル撮影賞受賞(カルロス・スアレス)
2000「Portero」ゴヤ賞2001脚色賞ノミネート、サンジョルディ賞2001作品賞受賞
2007「Oviedo Express」(コメディ)ゴヤ賞2008オリジナル脚本賞ノミネート、
ナント・スパニッシュFFジュール・ヴェルヌ、スペシャルメンション
トゥールーズFFスペイン2008作品賞ノミネート、音楽賞・撮影賞受賞、他
2019「El sueño de Malinche」(アニメーション、中編)
(ボイス)マリアン・アルバレス、アナ・アルバレス、カルメロ・ゴメス
2021「Alas de teniebla」(アニメーション、短編)脚本を妻エレーヌ・ジラールと共同執筆
(ボイス)アナ・アルバレス、ホセ・サクリスタン、チャロ・ロペス
◎バルセロナ派の代表作と言われるビセンテ・アランダの「Fata Morgana」(66)は、スアレスの同名小説の映画化、彼もアランダと脚本を共同執筆している。カルロヴィ・ヴァリ映画祭、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」にノミネートされた。スペイン語版ウィキペディアによると、カミロ・ホセ・セラの同名小説をマリオ・カムスが映画化した「La colmena」(82、『蜂の巣』)にも共同脚本家として参画している由。俳優として自作には度々スクリーンに顔を出しているが、自作以外にもアルモドバルの『グロリアの憂鬱』(84)、オスカル・ラドワールの「A contratiempo」(82)などに出演している。

(スアレス監督と脚本家エレーヌ・ジラール)
◎上記以外の主な受賞歴
1991年、映画国民賞受賞
2003年、ナチョ・マルティネス賞
2011年、シッチェス映画祭マリア栄誉賞
2013年、フォトグラマス・デ・プラタ生涯功労賞
2016年、賢者アルフォンソX世大十字勲章(映画作家では最初の受章者)
2020年、ホセ・マリア・フォルケ賞金のメダル
2021年、第49回ウエスカ映画祭ブニュエル賞受
ヒホン映画祭アイザック・デル・リベロ賞
2024年、アビレス・アクシオン映画祭トリビュート賞
2026年、第40回ゴヤ栄誉賞
公式部門の受賞結果②*SSIFF2025 ⑳ ― 2025年10月05日 17:14
ニューディレクターズ-クチャバンク賞にデンマークのエミリー・タルンド

★クロージングの舞台に登壇できる部門は、セクション・オフィシアル以外では、ニューディレクターズのクチャバンク賞、オリソンテス・ラティノスのオリソンテス賞、バスク映画のイリサル賞、社会派のテーマが多かったというネスト(短編)のネスト賞、他にサンセバスティアン市観客賞などがあります。人気のアウト・オブ・コンペティション、メイド・イン・スペイン、ベロドロモ部門などは賞に絡みません。
★ニューディレクターズ部門のクチャバンク賞には、デンマーク映画「Vaegtloes / Weightless」のエミリー・タルンドが受賞、作品賞なので2人の製作者が登壇した。他にスペシャル・メンションにスペイン映画、オリソンテス・ラティノス部門のオリソンテス賞には、コロンビアのシモン・メサ・ソトの「Un poeta / A Poet」、他スペシャル・メンション2作が選ばれています。ウルグアイのダニエル・エンドレルは、セクション・オフィシアルのオープニング作品にも選ばれ、2部門ノミネートは珍しい。
◎クチャバンク賞(ニューディレクターズ部門)
「Vaegtloes / Weightless」製作国デンマーク
監督エミリー・タルンド(デンマーク)
製作者アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ

(左から、審査員のマルコ・ミューラー、プロデューサーの両人)

(アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ)


◎オリソンテス賞(オリソンテス・ラティノス部門)
「Un poeta / A Poet」製作国コロンビア=ドイツ=スウェーデン
監督シモン・メサ・ソト(コロンビア)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」審査員賞受賞作品
*作品紹介は、コチラ⇒2025年05月14日

(シモン・メサ・ソト)

(背後は審査員のピラール・パロメロ、クリストフ・フリーデル、タティアナ・レイテ)

*スペシャル・メンション(2作品)
「Hiedra / The Ivy」製作国エクアドル=メキシコ=フランス=スペイン
監督アナ・クリスティナ・バラガン(エクアドル)
★ベネチア映画祭2025オリゾンティ部門の脚本賞受賞作品

「Un cabo suelto」製作国ウルグアイ=アルゼンチン=スペイン
監督ダニエル・エンドレル(ウルグアイ)
★ベネチア映画祭2025スポットライト部門で上映、WIP Latam 2024 受賞作品

◎サバルテギ-タバカレラ賞
「La tour de glace / The Ice Tower / La torre de hielo」製作国フランス=ドイツ
監督ルシール・アザリロビック Lucile Hadzihalilovic(フランス)
★ベルリン映画祭2025のコンペティション部門芸術貢献賞(銀熊賞)受賞作品



* ’Flechazo’
「Two Times Joao Liberada」製作国ポルトガル
監督パウラ・トマス・マルケス(ポルトガル)

*スペシャル・メンション
「Blue Heron」製作国カナダ=ハンガリー
監督ソフィー・ロンヴァリ(カナダ)
★ベルリン映画祭2025視点部門上映、ロカルノ映画祭オペラ・プリマ賞、トロント映画祭カナディアン・ディスカバリー賞受賞作品

◎メディアプロ・スタジオ・ネスト賞(短編)
「How To Listen To Fountains」製作国スロバキア
監督エヴァ・サヤノバ Sajanova(スロバキア)

*スペシャル・メンション
「The Old Bull Knows, Or Once Knew」製作国インド
監督ミラン・クマル(インド)

*モビスター・プラス賞
「The Loneliness of Lizards」製作国スペイン=ポルトガル
監督イネス・ヌネス(ポルトガル)

*タバカレラ賞
「Life Is Like That And Not Otherwise」製作国ドイツ
監督レニア・フリードリッヒ(ドイツ)

◎クイナリー・シネマ賞(ガストロノミー映画部門)
「Mam」製作国フランス
監督ナン・フェイクス(フランス)

(ナン・フェイクス、製作者マリーヌ・ガルニエ、プレゼンターのアンナ・カスティーリョ)


◎エウスコ・ラベル Eusko Label賞第1席
「Hatsa / Soul(Alma)」製作国スペイン
監督ホス・オサイタ・アスピロス(スペイン)


*エウスコ・ラベル Eusko Label賞第2席
「Gatz harana / Salt Valley(Valle salado)」製作国スペイン
監督サイオア・ミゲル(スペイン)

◎ロテリアス賞第1席
「Maruja」製作国スペイン
監督アルバロ・G・コンパニー(スペイン)

*ロテリアス賞第2席
「Medusas / Jellyfish」製作国スペイン
監督イニャーキ・サンチェス・エリエタ(スペイン)

◎イリサル賞(バスク映画部門)
「Los domingos / Sundays」製作国スペイン=フランス
監督アラウダ・ルイス・デ・アスア(スペイン)
★金貝賞とFIPRESCI賞に続いてイリサル賞も受賞した。

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)

(FIPRESCI賞も受賞したアラウダ・ルイス・デ・アスア)
*スペシャル・メンション
「El último arrebato / The Last Papture」(スペイン)
監督マルタ・メディナ(スペイン)、エンリケ・ロペス・ラビグネ(スペイン)
★サバルテギ-タバカレラ部門にノミネートされたの2人監督ともデビュー作。
あああ

◎ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「The Voice of Hind Rajab(La voz de Hind)」製作国チュニジア=フランス
監督カウテール・ベン・ハニア Kaouther Ben Hania(チュニジア)
★ドキュメンタリー・ドラマ、ペルラス部門ノミネート、ベネチア映画祭2025審査員大賞(銀獅子)受賞作品

(出演者オデッサ・ラエ、モタズ・マルヒース)


◎ヨーロッパ映画ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「Amélie et la métaphysique des tubes / Little Amélie or The Character of Rain(Little Amélie)」製作国フランス
監督マイリス・ヴァラード(仏)、リアン・チョ・ハン・ジン・クアン(仏)
★カンヌ映画祭2025特別上映作品、アヌシー・アニメーション映画祭観客賞受賞作品

(マイリス・ヴァラード、プレゼンターのキラ・ミロ)


(リアン・チョー・ハン・ジン・クアンとマイリス・ヴァラード)

◎スペイン協同賞
「Historias del buen valle / Good Valley Stories」製作国スペイン=フランス
監督ホセ・ルイス・ゲリン

◎RTVE「ある視点」賞
「Las corrientes」製作国スイス=アルゼンチン
監督ミラグロス・ムメンタラー
★受賞者帰国のため、主演のイサベル・アイメ・ゴンサレスが受け取った。

(イサベル・アイメ・ゴンサレス、背後はプレゼンターの審査員)

(ミラグロス・ムメンタラー監督、9月23日フォトコール)
◎ DAMA ユース賞
「La misteriosa mirada del flamenco」製作国チリ=仏=独=西=ベルギー
監督:ディエゴ・セスペデス(チリ)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」賞、LGBTIQA+作品に与えられるセバスティアン賞受賞作品
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年05月12日/同年09月13日



★最後にクロージング作品「Winter of the Crow」(ポーランド=英=ルクセンブルク)のカシア・アダミク監督、主演のレスリー・マンヴィル、製作者のスタニスワフ・ジエジッチが登壇して挨拶した。

(アダミク監督)


ジェニファー・ローレンスのドノスティア栄誉賞授与式*SSIFF2025 ⑱ ― 2025年10月01日 09:29
最年少の受賞者ジェニファー・ローレンスの栄誉賞授与式

★9月27日、第73回サンセバスチャン映画祭は、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」(西仏)が金貝賞を受賞して閉幕しました。結果スペインの監督が3年連続で受賞したことになりました。今回は2番目の大賞である審査員特別賞もホセ・ルイス・ゲリンの「Historias del buen valle / Good Valley Stories」(西仏)が受賞、国際映画祭として少し問題かなと思いました。受賞結果は次回に回して、前日にクルサール・ホールで授与式のあったジェニファー・ローレンス(ケンタッキー1990)のドノスティア栄誉賞の記事をアップします。
*ジェニファー・ローレンスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2025年09月18日

(プレゼンターのJ.A. バヨナからトロフィーを受け取る受賞者、9月26日)
★エステル・ガルシアに続いて二人目の受賞者となったローレンスは、受賞したことは「信じられないほど幸運なことで・・・率直に言って畏敬の念を抱きました」と、この〈魅惑的で並外れた栄誉賞〉に感謝し、「人々が映画、ストーリーを語る芸術や作品の魂を心から愛する映画祭に出席できたことは、本当に特別なことです、有難うございます」とスピーチした。

★授与式の司会者はイニェゴ・ガステシ、プレゼンターはセクション・オフィシアルの審査委員長J.A. バヨナ、女優、プロデューサー(2018年制作会社「エクセレント・カダバー」設立)、監督でもあるローレンスは、1986年の開催以来、最年少の受賞者となりました。若干35歳というのは如何にも若い。先の受賞者として挙げた「比類なきメリル・ストリープ(2008)、レジェンドのペドロ・アルモドバル(2024)、象徴的なローレン・バコール(1992)」のようなアーティストの一人に自分が数えられたことが〈信じられない幸運〉だったのである。

(大歓迎を受ける受賞者)
★2019年の受賞者ドナルド・サザーランド(2024年没)が、数年前に「彼女の演技力は偉大な英国俳優と同じくらい優れているから、ジェニファー・ローレンス・オリヴィエに変更することを提案したこと」をプレゼンターは思い出した。「オリヴィエと同じように自然な流れをもち、鋭く、明快で、カリスマ性がある」。彼女の多様性、冷静で情熱的、大胆で繊細さをあげ、「ローレン・バコールにもジーナ・ローランズにも、同じ映画のなかで両方を同時に演じることさえできる。自分が望むものに何でもなれる」と称賛を惜しまなかった。

(プレゼンターのJ.A. バヨナ)
★授与式の後、リン・ラムジーの最新作「Die, May Love」(25)が上映された。本作について受賞者は「ストーリーはとても生々しく、ユニークで、生の感情、複雑さ、そして抑えのきかないパンクを巧みに織り交ぜています」と、産後鬱でアイデンティティの危機に瀕したヒロインを分析した。本作は配給元も決まり、公開が予定されています。


(共演者のロバート・パティンソンと、カンヌ映画祭2025のフォトコール)
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞授与式*SSIFF2025 ⑰ ― 2025年09月26日 18:00
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025授与式

(エドゥアルド・フェルナンデス、サンセバスチャン映画祭、9月20日)
★9月20日、エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025の授与式がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、映画だけでなく文学、音楽、スポーツなど各分野ごとに選ばれます(発表は6月30日でした)。映画部門は演技者だけでなく、製作者、監督、脚本家、技術部門など幅広く、授与式はサンセバスチャン映画祭開催中と決まっています。プレゼンターは文化大臣で、今年はエルネスト・ウルタスン(バルセロナ1982)、彼は2023年11月から現職を務めています。フェルナンデスの授賞理由、キャリア&フィルモグラフィー紹介は既にアップしております。
*フェルナンデス映画国民賞2025受賞の記事は、コチラ⇒2025年07月13日

(プレゼンターのエルネスト・ウルタスン文化大臣と)

(パレスチナ連帯のスカーフを手に)
★今回選ばれたのは、マルセル・バレナの「El 47」のマノロ・ビタル役、とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」のエンリック・マルコ役の演技が認められたからでした。写真で分かるようにパレスチナ連帯のスカーフを肩にかけて登壇しています。賛否両論あると思いますが・・・「ガザで起きていることは野蛮な行為である」と、ガザでのジェノサイドは人間の本質から外れた解決すべき問題という立場を明らかにしました。

(マル・コル、受賞者、ジョン・ガラーニョ)
★お祝いに馳せ参じたのは、文化大臣のほか、第2副首相兼労働社会経済大臣ヨランダ・ディアス、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、ジョン・ガラーニョ監督は、「この賞は彼のような豊かな才能の持主には小さい。共同監督した同僚(アイトル・アレギ)や私が賞賛の言葉を述べるのは恐れ多い」と述べた。デビュー作『家族との3日間』の監督マル・コルは、「最初の作品は複雑だったけれど、私の父親を演じてくれた。私を振り回すような手法を採らず、まだ25歳だった小娘を助けてくれた」と感謝の言葉を述べた。

(ウルタスン文化大臣、受賞者、背後にヨランダ・ディアス第2副首相、20日)

(ハグしあうマル・コルと受賞者)

(勢揃いした出席者たち)
ウォルター・サレスに大賞FIPRESCI賞*SSIFF2025 ⑯ ― 2025年09月25日 18:21
大賞FIPRESCIは『アイム・スティル・ヒア』のウォルター・サレスの手に

★ドノスティア栄誉賞授与式の他、国際映画批評家連盟が選考母体の大賞、FIPRESCI賞に「Ainda estou aqui / I'm Still Here / Aúun estoy aquí」のブラジルの監督ウォルター・サレス(リオデジャネイロ1956)が選ばれました。8月に『アイム・スティル・ヒア』の邦題で劇場公開されました。ジャーナリストで映画プログラマー、評論家のカルメン・グレイからトロフィーを受け取りました。サレス監督は本作を「記憶と抵抗についての」映画と定義しました。「特に忘却との闘いやデモクラシーの擁護に尽力している」FIPRESCIのメンバーに感謝のスピーチをした。サレスとサンセバスチャン映画祭との関係は深く、『セントラル・ステーション』や『モーターサイクル・ダイヤリーズ』も、「ここブニュエルの国で」上映された。「マリサ・パレデスのことは忘れることができない」とスピーチを締めくくった。
*『アイム・スティル・ヒア』関連記事は、コチラ⇒2025年03月02日/2024年09月06日


★開幕当日には、女優ジュリエット・ビノシュ(パリ1964)が初めて監督するドキュメンタリー「In-I in Motion」(156分、仏語・英語、アウト・オブ・コンペティション)の特別上映で登場、パレデスが果たした功績やパレスチナで起きている虐殺にも言及した。また映画祭前半に上映される監督、キャスト、スタッフがレッドカーペットでファンの歓迎を受けていた。セクション・オフィシアルの審査員メンバー全員が登壇しての紹介があった。
*ジュリエット・ビノシュ関連記事は、コチラ⇒2022年09月17日/同年09月20日

(第70回2022のドノスティア栄誉賞受賞者でもあったジュリエット・ビノシュ)

(9月20日)
★締めくくりはセクション・オフィシアルのオープニング作品「27 noches / 27 Nights」のダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)監督・出演、共演者のカルラ・ペターソン、製作者のサンティアゴ・ミトレ、アグスティナ・ジャンビなどが現地入りした。本作は Netflix で10月17日からの配信が決定しており、いずれアップの予定。

(第73回のオープニング作品「27 noches / 27 Nights」)

(ダニエル・エンドレル、19日、プレス会見にて)

(カルラ・ペテルソン、同上)

(左から、アグスティナ・ジャンビ、カルラ・ペテルソン、エンドレル監督、
サンティアゴ・ミトレ、20日)
第73回サンセバスチャン映画祭開幕*SSIFF2025 ⑮ ― 2025年09月23日 16:41
マリサ・パレデスに捧げられた第73回サンセバスチャン映画祭開幕

★9月19日、第73回サンセバスチャン映画祭がクルサール・ホールで開催されました。今年の映画祭は、公式ポスターで分かるように昨年12月に急逝したマリシータことマリサ・パレデス(1946~2024)に捧げられています。ファンならずとも彼女の存在はスペイン映画界にとって大きなものがありました。総合司会者は、シルビア・アブリル、トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョの3女優でした。
*マリサ・パレデス紹介記事は、コチラ⇒2025年02月25日


(トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョ、シルビア・アブリル)
★オープニングのハイライトは、ドノスティア栄誉賞を受賞したスペインの女性製作者のパイオニアの一人、エステル・ガルシア(セゴビア1956)でした。1986年アルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」に入社以来、アルモドバル映画の全作を手掛けています。2018年に映画国民賞を受賞した折に同じ舞台で授与式が行われていますから、2回目の大賞となりました。プレゼンターはアルモドバル兄弟、監督からトロフィーを手渡されました。

★司会者イツィアル・イトゥーニョは、「現在のスペインでは多くの監督やプロデューサーが活躍しておりますが、これも偏に彼女のような先達のお蔭です」と紹介、「40年間も本当にありがとう」とプレゼンターのラ・マンチャの監督、同僚というだけでなく、友達であり、エル・デセオというファミリーの〈マードレ〉のような存在だと感謝のスピーチをした。
*エステル・ガルシアの紹介記事は、コチラ⇒2025年08月05日/2018年09月17日




(シルビア・アブリルのお祝いのキス)
★ガルシアのスピーチ、「人生に大きな影響を与えた」両親に言及したのち、この製作者という男性中心の職業が、女性にとって如何に難しかったかに触れた。道筋をつけてくれた今は亡きピラール・ミロ、ホセフィナ・モリーナ、パトリシア・フェレイラ、クリスティナ・ウエテなどの先輩に感謝した。「私たち女性は本当に僅かしかいませんでした。しかしこの愛すべき職業の自分たちのスペースを喧嘩しながらも求め続けました」と、きっぱり述べました。

★多くの犠牲者を出しているウクライナやガザの現状にも触れ、「私たちは壊れやすい存在です。文化の力を信じています。多分映画は、夢を見る憩いの場所であり、権利を主張できる拡声器でもあります。映画は素晴らしい世界を作るための私たちの道具、なかでも、最高のものです」と締めくくった。

★アレックス・デ・ラ・イグレシア、イサベル・コイシェ、ダニエル・カルパルソロ、モニカ・ラグナ、ドゥニア・アヤソ、フェリックス・サブロソ、ベレン・マシアス、オリベル・ラシェのようなスペインの監督だけでなく、ギレルモ・デル・トロ、ルクレシア・マルテル、ダミアン・シフロン、パブロ・トラペロ、ルイス・オルテガ、アンドレス・ウッドなどラテンアメリカの監督、ポルトガルのミゲル・ゴンサルヴェス・メンデスのドキュメンタリーも手掛けている。
ジェニファー・ローレンスにドノスティア栄誉賞*SSIFF2025 ⑬ ― 2025年09月18日 14:31
オスカー女優ジェニファー・ローレンスにドノスティア栄誉賞

★第73回サンセバスチャン映画祭の二人目のドノスティア栄誉賞の受賞者にアメリカの女優、プロデューサー、活動家のジェニファー・ローレンスが選ばれました。2013年『世界にひとつのプレイブック』でオスカー像を手にしているとはいえ、1990年ケンタッキーのルイビル生れ、35歳になったばかりです。スクリーン、TV放映など主要作品の多くが字幕入りで鑑賞できます。おそらく最新作リン・ラムジー(グラスゴー1969、監督・脚本家・撮影監督)の「Die May Love」での産後鬱の演技が受賞の決定打だったのではないでしょうか。カンヌ映画祭2025コンペティション部門ノミネート作品、日本での配給権はクロックワークスが取得したようです。授賞式は9月26日、クルサール・ホールにて行われ、「Die May Love」(製作国カナダ)が上映される。

(ジェニファー・ローレンス、「Die May Love」から)

(ロバート・パティンソン、ラムジー監督、ローレンス、カンヌFF2025フォトコール)
★ジェニファー・ローレンスといえば、ギジェルモ・アリアガのオペラ・プリマ『あの日、欲望の大地で』に触れねばならない。既に『アモーレス・ぺロス』(00)、『21グラム』(03)、『バベル』(06)などの脚本で世界的に知られていたアリアガが長年温めてきた映画。監督はオーディションを受けに来たローレンスを一目で気に入り、即採用となった。彼女も期待通りの演技で応え、17歳にしてベネチア映画祭2008で新人賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。その後の活躍をみれば、アカデミー賞に史上最年少で4度もノミネートされたことも納得がいく。新作「Die May Love」の公開が待たれる。
*受賞歴のある出演作は多すぎて書ききれないが主なものは以下の通り(年号は受賞年):
2008『あの日、欲望の大地で』上記
2011『ウィンターズ・ボーン』ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞、アカデミー賞ノミネート
2013『世界にひとつのプレイブック』アカデミー賞・ゴールデングローブ賞(ミュージカル)・
ロサンゼルス映画批評家協会賞などの主演女優賞を受賞、ほか多数
2014『アメリカン・ハッスル』ゴールデングローブ賞・英国アカデミー賞助演女優賞受賞、
トロント・サンフランシスコ・バンクーバー・セントラルオハイオ・セントルイス、
各映画批評家協会賞(2013)を受賞
2016『ジョイ』ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞、アカデミー賞ノミネート

(ベストドレッサーでもあるローレンス、アカデミー賞2013授賞式にて)
エドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025のニュース ― 2025年07月13日 18:28
「Marco」と「El 47」のエドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025

(「Marco」でゴヤ賞2025主演男優賞を受賞したフェルナンデス、右は娘グレタ)
★6月30日、今年の映画国民賞受賞者の発表がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、副賞は30.000ユーロ、主に前年に映画界で活躍、貢献した人が選ばれます。授与式は秋開催のサンセバスチャン映画祭期間中(2025年は9月19日~27日)と大枠は変わっておりません。エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、マルセル・バレナの「El 47」とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」の演技が評価され受賞しました。昨年12月から今年にかけてスペインで開催される映画賞、前者でガウディ賞、ディアス・デ・シネ賞、後者でフォルケ賞を皮切りに、ゴヤ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、文化省が授与する金のメダル芸術功労賞と貰える賞のほとんどを制覇しておりましたので、発表を待たずとも受賞は確実視されておりました。ゴヤ胸像4個保持者はカルメン・マウラと故ベロニカ・フォルケに続く3人目とか。

(実在の詐欺師を演じた「Marco」のポスター)
★細切れにキャリア&フィルモグラフィーを紹介しておりますが、国民賞受賞を機会に公開作品もかなりありますので、代表作、受賞作を中心に紹介しておきます。1964年8月バルセロナ生れ、映画・舞台・TV俳優、2024年、短編「El otro」で監督デビュー、バジャドリード映画祭でプレミア上映されました。舞台俳優としてスタートをきる。シェイクスピアの『ハムレット』(マックス賞2013)、『テンペスト』、『ジョン王』、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』(観客賞)などに出演している。1990年作家のエスメラルダ・ベルベルと結婚、1995年グレタ・フェルナンデス誕生、2015年離婚、現在のパートナーはアイノア・アルダノンド。

(パートナー、アイノア・アルダノンドとフェルナンデス)

(シェイクスピアの『ハムレット』から、今は亡きマリサ・パレデスと)
★TVシリーズに出演した後、1994年ロサ・ベルヘスの「Souvenir」で長編映画デビュー、マリアノ・バロッソのスリラー「Los lobos de Washington」(99)でハビエル・バルデムと共演、翌年ゴヤ新人賞にノミネート、サンジョルディ賞、オンダス賞を受賞した。マヌエル・ビセントの同名小説を映画化したビガス・ルナの「Son de mar」(01)は『マルティナは海』の邦題で公開された。本作はフェルナンデス日本初登場となった作品。アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、カルロス・パドリサ、演劇集団ラ・フラ・デルス・バウスのホラー・ファンタジー「Faust 5.0」で現代のメフィストフェレス役でゴヤ賞2002主演男優賞受賞の他、シッチェスFF、サンジョルディ賞などを受賞した。ファウスト博士にミゲル・アンヘル・ソラが扮した。セスク・ゲイのアンサンブルドラマ「En la ciudad」でゴヤ賞2004助演男優賞を受賞、本作は『イン・ザ・シティ』の邦題でミニ映画祭で上映された。

(ゴヤ賞主演男優賞を手にした「Faust 5.0」のポスター)

(レオノール・ワトリングと共演した『イン・ザ・シティ』のポスター)
★マル・コルがゴヤ賞2010新人監督賞を受賞した「Tres dies amb la família」に主演、マラガ映画祭2009銀のビスナガ男優賞を受賞した。『家族との3日間』の邦題で東京国際女性映画祭2010で上映された。2010年は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「Biutiful」(『ビューティフル』)、アグスティ・ビリャロンガの「Pa negra」(『ブラック・ブレッド』)と収穫の多い年となった。2011年ペドロ・アルモドバルの「La piel que habito」(『私が、生きる肌』)、2014年ダニエル・モンソンの「El niño」(『エル・ニーニョ』)でゴヤ賞2015助演男優賞にノミネート、2015年のイマノル・ウリベの「Lejos del mar」では、エレナ・アナヤとタッグをくんで ETA の元テロリストを演じた。2016年は、アルベルト・ロドリゲスのスリラー「El hombre de las mil caras」(『スモーク・アンド・ミラーズ』)で実在したスペイン政府の元諜報員フランシスコ・パエサを演じて、サンセバスチャン映画祭2016の銀貝男優賞とガウディ賞は受賞したが、ゴヤ賞は逃した。

(サンセバスチャンFF 2016 銀貝男優賞を受賞した『スモーク・アンド・ミラーズ』)
★2016年、エンリケ・セレソがプロデュースしたサルバドール・カルボの「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』に指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスに扮し、ルイス・トサールやハビエル・グティエレス、カラ・エレハルデなどと共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの群像劇「Perfecta desconocidos」(17)、アスガー・ファルハティ「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(18)、アレハンドロ・アメナバルの「Mientras dere la guerra」(『戦争のさなかで』19)では、哲学者ウナムノを毛嫌いするホセ・ミリャン・アストライ将軍に扮し、2回目のゴヤ賞助演男優賞を受賞した。

(フランコ総統の盟友、隻眼片腕のホセ・ミリャン・アストライ将軍を演じた)
★2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」は、愛娘グレタ・フェルナンデスと初共演、グレタは銀貝女優賞を手にした。親子で銀貝賞を受賞したことになり、自身の受賞よりも何倍も嬉しかったに違いない。スペイン映画賞のノミネートの山を築いたマルセル・バレナの「Mediterráneo」(21)では、受賞こそなかったが監督との絆を固め、次の「El 47」主演に繋がった。オリオル・パウロ「Los lengrones torcidos de Dios」(22)は、邦題『神が描くは曲線で』でネット配信された。上述したアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」、マルセル・バレナの「El 47」の字幕入りを期待したい。2018年、バジャドリード映画祭栄誉スパイク賞を受賞した。
★主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは割愛、太字代表作)
1994「Souvenir」コメディ、ロサ・ベルヘス
1999「Zapping」フアン・マヌエル・チュミリャ
1999「Los lobos de Washington」スリラー、マリアノ・バロッソ、ゴヤ賞新人賞ノミネート
2000「El portero」ゴンサロ・スアレス
2001「La voz de su amo」フィルムノワール、エミリオ・マルティネス=ラサロ
2001「Son de mar」『マルティナは海』ビガス・ルナ、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2001「Faust 5.0」ファンタジー、アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、
カルロス・パドリサ、ゴヤ賞2002主演男優賞、他受賞歴多数
2002「El embrujo de Shanghai」フェルナンド・トゥルエバ
2002「Smoking room」ロヘル・グアル、J.D. Wallovits、マラガFF 銀のビスナガ男優賞
2003「En la ciudad」『イン・ザ・シティ』セスク・ゲイ、ゴヤ賞助演男優賞、
スペイン俳優組合賞
2004「Cosas que hacen que la vida valga la pena」マヌエル・ゴメス・ペレイラ、
ゴヤ賞主演男優賞・スペイン俳優組合賞ノミネート
2005「Hormigas en la boca」マリアノ・バロッソ、マラガFF銀のビスナガ男優賞
2005「Obaba」モンチョ・アルメンダリス
2005「El método」マルセロ・ピニェイロ、スペイン俳優組合賞受賞、
ゴヤ賞主演男優賞ノミネート
2006「Ficción」セスク・ゲイ
2006「Alatriste」『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス
2008「3 días」『アルマゲドン・パニック』フランシスコ・ハビエル・グティエレス
2009「Amores locos」ベダ・ドカンポ・フェイホー
2009「Tres dies amb la família」『家族との3日間』マル・コル、
マラガFF銀のビスナガ男優賞、ブタカ賞受賞、ガウディ賞主演男優賞、
シネマ・ライターズ・サークル賞ノミネート
2009「Luna caliente」『ザ:レイプ 獣欲』ビセンテ・アランダ
2010「Biutiful」『BIUTIFUL ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2010「La mosquitera」コメディ、アグスティ・ビラ、ガウディ賞主演男優賞受賞、
フォルケ賞ノミネート
2010「Pa negra」『ブラック・ブレッド』アグスティン・ビリャロンガ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル
2012「Miel de naranjas」イマノル・ウリベ
2012「Una pistola en cada mano」セスク・ゲイ、ガウディ賞助演男優賞
2013「Todas las mujeres」マリアノ・バロッソ、フォルケ賞・サンジョルディ賞受賞、
ゴヤ賞主演男優賞・シネマ・ライターズ・サークル賞・フェロス賞ノミネート
2014「Marsella」ベレン・マシアス
2014「El niño」『エル・ニーニョ/ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2015「Felices 140」コメディ、グラシア・ケレヘタ
2015「Truman」『しあわせな人生の選択』セスク・ゲイ
2015「Lejos del mar」スリラー、イマノル・ウリベ
2016「La noche que mi madre mató a mi padre」コメディ、イネス・パリス
2016「El hombre de las mil caras」『スモーク・アンド・ミラーズ』
アルベルト・ロドリゲス、サンセバスチャンFF銀貝男優賞、ガウディ賞、
シネマ・ライターズ・サークル賞
2016「1898:Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』
サルバドール・カルボ
2017「Perfecta desconocidos」ブラックコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシア
2018「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハティ
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2019「Mientras dere la guerra」『戦争のさなかで』アレハンドロ・アメナバル、
ゴヤ賞助演男優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞
2019「La hija de un ladrón / A thief’s daughter」ベレン・フネス、
ガウディ主演男優賞ノミネート
2021「Mediterráneo」マルセル・バレナ、ゴヤ賞主演男優賞、フォルケ賞、ガウディ賞、
フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、各男優賞ノミネート
2022「Los renglones torcidos de Dios」『神が描くは曲線で』オリオル・パウロ
ガウディ賞助演男優賞ノミネート
2024「Marco」アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ、ゴヤ賞主演男優賞、
フォルケ賞男優賞、プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、
スペイン俳優組合賞ほか多数
2024「El 47」マルセル・バレナ、ガウディ男優賞、ディアス・デ・シネ賞
★働き者ですね、出演本数の多さ、多彩さにアップして驚きました。このほかに短編、TVシリーズ、例えば最近では、Netflix 配信中の『鉄の手』(8話)、「30 Monedas」(16話、HBO MAX)に主演しており、さらに舞台にも出演しています。
★スペイン映画だけですが、サンセバスチャン映画祭2025のセクション・オフィシアル他ノミネート発表がありましたので、そろそろ作品紹介を予定しています。
◎主な関連記事
*『エル・ニーニョ』紹介は、コチラ⇒2014年09月20日/2015年01月15日
*「Lejos del mar」紹介は、コチラ⇒2014年11月30日
*「Felices 140」紹介は、コチラ⇒2015年01月07日
*「Marsella」紹介は、コチラ⇒2015年02月02日
*『スモーク・アンド・ミラーズ』紹介は、コチラ⇒2016年09月24日
*『1898:スペイン領フィリピン最後の日』紹介は、コチラ⇒2017年01月05日
*「Perfecta desconocidos」紹介は、コチラ⇒2017年02月26日
*『誰もがそれを知っている』紹介は、コチラ⇒2018年05月08日
*「La hija de un ladrón」紹介は、コチラ⇒2019年07月23日
*『戦争のさなかで』紹介は、コチラ⇒2019年11月26日
*「Mediterráneo」紹介は、コチラ⇒2021年12月13日
*「Marco」とキャリア紹介は、コチラ⇒2024年09月03日
*「El 47」紹介は、コチラ⇒2024年12月28日
マラガ―スール賞のカルメン・マチ*マラガ映画祭2025 ⑧ ― 2025年04月06日 15:27
カメレオン女優カルメン・マチの強かな生き方

(マラガ―スール賞を受賞したカルメン・マチ、2025年3月15日)
★後回しになっていた今年の特別賞マラガ―スール賞の受賞者カルメン・マチのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。1963年1月7日マドリード生れ、マリア・デル・カルメン・マチ・アロヨ、両親ともスペイン人だが、父方の家系はイタリアのジェノバのアーティスト一家である。1980年、17歳でヘタフェのタオルミナ劇団に入り、初舞台はロルカの「血の婚礼」だった。1994年ホセ・ルイス・ゴメスが主宰する演劇学校ラ・アバディアに入団、バリェ=インクランの「貪欲、欲望と死の祭壇画」、「ベニスの商人」などの舞台に立つ。演劇関係では最高賞Max賞に、2011年「Falstaff」(シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』の登場人物)で助演女優賞、2009年「Platonov」(チェーホフの『プラトーノフ』)助演女優賞、2008年「La tortuga de Darwin」(フアン・マヨルガ作、ダーウィンによってガラパゴス諸島からイギリスに連れてこられた海亀ハリエット役)で主演女優賞を受賞している。ほかソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』(2015~17)やチェーホフの『桜の園』(2019)に出演している。
★映画デビューは遅く、主役に起用されたのはハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」で、カセレス・スペイン映画祭2009の女優賞を受賞した。続くエミリオ・アラゴンのデビュー作「Pájaros de papel」はラテンビート映画祭2010で上映された後、『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の邦題で公開され、監督と来日した。役柄からイメージするのとは違った華奢な体型とその物静かな雰囲気に驚かされた。同年ナチョ・G・ベリリャの「Que se mueran los feos」では、ハビエル・カマラと共演、彼の小姑役を演じた。

(「Pájaros de papel」のフレームから)
★そして観客動員数1000万人、スペイン映画興行成績ナンバーワンとなったエミリオ・マルティネス=ラサロの「Ocho apellidos vascos」出演である。翌年のゴヤ賞ではコメディ作品の受賞はないという大方の予想を覆して、カラ・エレハルデの助演男優賞、ダニ・ロビラの新人賞、マチの助演女優賞の3冠をゲットした。以来引っ張りだことなり、続編「Ocho apellidos catalanes」はネットフリックスで配信された。

(ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたマチ)

(共演者のカラ・エレハルデと)
★主演作が多くなり、なかでアルゼンチンのマリナ・セレセスキーのシリアスドラマ「La puerta abierta」の娼婦役に起用され、ゴヤ賞2017で初めて主演女優賞にノミネートされた。その他フォルケ賞、フェロス賞もノミネートに終わったもののスペイン俳優組合賞を受賞した。テレレ・パベス、アシエル・エチェアンディアなどが共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの「El bar」、「アイーダ」の共演者エドゥアルド・カサノバのデビュー作「Pieles」など、Netflix配信、ミニ映画祭、公開などで日本でも認知度が高くなりファンが増えてきた。作品紹介記事は、当ブログでアップした一覧を添付しているので参考にしてください。ネットフリックスやプライムビデオで配信されたなかで既に配信が終了している作品もあります。

(『クローズド・バル』のフレームから、左端にカルメン・マチ)

(高評価の「La puerta abierta」のポスター)
★私生活は公にしないのでミステリアスな部分も多いが、20年来のパートナー、ミュージシャンのビセンテとは「結婚にも子供をもつことにも怖れがある」そうです。


(20年来のパートナー、ビセンテと仲睦まじく買い物)
受賞歴:2013年メモリアル・マルガリーダ・シルグ賞、2017年マドリード金のメダル受賞、2024年芸術功労賞金のメダルを各受賞している。
◎主なフィルモグラフィー◎
1999「Lisa」短編、カルロス・プジェ
2002「Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役
2003「Descongélate!」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ
「Torremolinos 73」『トレモリーノス73』パブロ・ベルヘル、美容院の客
2004「Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役
2005「Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ
2006「Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ
2009「Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
「La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役、カセレス・スペインFF女優賞受賞
2010「Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、
ラテンビート2010女優賞受賞
「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客
2013「Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル
2014「Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、
ゴヤ賞2015助演女優賞受賞
2015「Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、
ベニ・マリン役
「Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア
2015「Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』
エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ/ カルメ役
2016「Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役
「La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞
2017「El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
アレックス・デ・ラ・イグレシア
「Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ
2018「Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、
主役カルメン・ガラテ
「La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、ビルヒニア母親役
モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞
2019「Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役
「Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ
2020「Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役
「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー
2021「El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役
2022「Amor de madre」『僕とママの”じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役
「Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン
「La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ
「Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役
2024「Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演
「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役
2025「Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役
★TVシリーズ、進行中の出演を含めると80作を超える。従って初期の端役、短編、TVシリーズは割愛しています。今回リストアップしての印象は、映画でのノミネート数に比して受賞が少ないということでした。TVシリーズ「7 vidas」(99~06、204話)では2000年から参加して98話出演、本作のアイーダ・ガルシア・ガルシア役の人気に乗じてスピンオフした「Aída」(05~14、238話)では101話に出演している。両シリーズともシチュエーションコメディ、後者の受賞歴はフォトグラマス・デ・プラタ(2004,2005,2007)、オンダス賞2008、スペイン俳優組合賞2005と多いが、疲れはてて自ら降板を願い出ている。そしてリターン・コールで再登場したのがTVでなくスクリーン、今年公開予定の「Aída y vuelta」である。授与式に駆けつけてくれたパコ・レオンが監督している。彼はルイスマ・ガルシア・ガルシア役で全238話に出演しており、新作でも勿論出演しないわけにいかない。みんな少しずつ老けましたが元気です。

(TV出演メンバーで撮る映画「Aída y vuelta」の出演者たち)
★ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが製作、監督したミュージカル「La mesías」(23、全7話)とディエゴ・サン・ホセ創案、エレナ・トラぺ監督の「Celeste」(24、全6話)、前者はメシアの到来を妄想するファナティックな老母モンセラット・バロ役(6~7話に出演)、後者はラテン音楽のスーパースターのセレステの脱税を証明するというミッションを受けた税務捜査官役、TV部門のフォルケ賞2024女優賞とフェロス賞にノミネートされ、フォトグラマス・デ・プラタを受賞している。

(マルサの女を演じたTVシリーズ「Celeste」から)

(有能な税務捜査官を好演した「Celeste」のポスター)
◎カルメン・マチ関連記事一覧◎
*「Ocho apellidos vascos」キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2015年01月28日
*『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月17日
*「Las furias」の紹介記事は、コチラ⇒2016年02月26日
*「La puerta abierta」の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月12日
*『クローズド・バル~』の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月22日/02月26日/04月04日
*『スキン~あなたに触らせて~』の紹介記事は、2017年08月20日
*「Nieva en Benidorm」の紹介記事は、コチラ⇒2021年02月11日
*「El cover」の紹介記事は、コチラ⇒2021年05月18日
*『PIGGY ピギー』の紹介記事は、コチラ⇒2022年12月19日
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