第68回バジャドリード映画祭2023*結果発表 ― 2023年11月25日 19:05
新星ラウラ・フェレスのデビュー作「La imatge permanent」に金の穂
★10月28日、バジャドリード映画祭がバルセロナ出身のラウラ・フェレスの長編デビュー作「La imatge permanent」を金賞(Espiga de Oro)に選んで閉幕しました。スペインが初めて受賞したのは2007年のヘラルド・オリバレス監督の「14 kilómetros」にも驚きますが、今回が68回目という長い歴史のある映画祭で「女性監督の受賞は初めて」の記事に感慨深いものがありました。作品&監督キャリア紹介は後述しますが、1989年にバルセロナのエル・プラット・デ・リョブレガット生れの34歳、監督、脚本家です。その若さにも驚きましたが、予告編を見ただけでもそのエネルギーとユニークさに引きこまれました。キャストはおおむね本作が初出演というからそれも楽しみ、演技賞はさておき少し荒削りの感もありますが、ゴヤ賞新人監督賞ノミネートは間違いないと予想します。
(金の穂賞のトロフィーを手にしたラウラ・フェレス、10月28日ガラ)
★バジャドリード映画祭は、今年で68回目というスペインでも老舗の国際映画祭です。1956年Semana del Cine Religioso de Valladolid(バジャドリード宗教映画週間)としてスタート、その後名称が何回か変わり、1973年Semana Internacional de Cineとなり現在に至っています。バジャドリード映画祭よりSEMINCIの名で親しまれていますが、SeminciでなくSem-In -Ciに拘る人々もいるわけです。本祭のディレクターは今年からセビーリャ映画祭の総ディレクターだったホセ・ルイス・シエンフエゴスに変わり、彼が初めて統率する映画祭でもありました。本祭はレッドカーペットでなくグリーンカーペットの映画祭としても知られています。
(ホセ・ルイス・シエンフエゴス新ディレクターの祝福を受けるラウラ・フェレス)
★国際映画祭ですが、スペイン映画関係の受賞者をピックアップしますと、栄誉賞にブランカ・ポルティリョ、彼女はパウラ・オルティスの「Teresa」でテレサ・デ・ヘススに扮しフォルケ賞2024女優賞にノミネートされており、本祭でもアウト・オブ・コンペティションですが上映されました。同じフォルケ賞でノミネートされているマレナ・アルテリオ主演の「Que nadie duerma」(監督アントニオ・メンデス・エスパルサ)もコンペティション部門で上映されており、フォルケ賞も作品賞以上に混戦が予想されます。
(栄誉賞のトロフィーを手にしたブランカ・ポルティリョ)
「La imatge permanent」
(西題「La imagen permanente」英題「The Permanent Picture」)
製作:Fasten Films(スペイン)/ Le Bureau(フランス)/ ICAA / ICEC / TV3
/ Volta Producción
監督:ラウラ・フェレス
脚本(共同):ラウラ・フェレス、カルロス・ベルムト、ウリセス・ポッラ
撮影:アグネス・ピケ・コルベラ
編集:アイナ・カジェハ
音響:ダニ・フォントロドナ
音楽:フェルナンド・モレシ・ハベルマン、セルヒオ・ベルトラン
製作者:アドリア・モネス・ムルランス、ガブリエル・ドゥモン、ガブリエル・カプラン、他
データ:製作国スペイン=フランス、2023年、スペイン語・カタルーニャ語、ドラマ、94分、長編デビュー作、撮影地エル・プラット・デ・リョブレガット(バルセロナ、監督の生地)、配給La Aventura(スペイン)、公開スペイン11月17日
映画祭・受賞歴:ロカルノ映画祭2023コンペティション部門でプレミア(8月6日)、ケンブリッジ映画祭(10月22日)、テッサロニキ映画祭(11月9日)、第68回バジャドリード映画祭コンペティション部門、作品賞を受賞。
ストーリー:スペイン南部の片田舎で暮らしていた10代の母親アントニアは、赤ん坊を残して真夜中に出奔する。50年後、はるか彼方の北の町では、引っ込み思案のキャスティング・ディレクターのカルメンが、次のプロジェクトのためのヒロイン探しに逡巡していたとき、偶然アントニアと出会います。新しい街に越してきて共通の繋がりを発見するという女性に出会ったとき、その衝動性がカルメンの孤独に侵入してきます。映画は20世紀のアンダルシアで始まり、現在のバルセロナで繰り広げられる。「時間がすべての傷を癒してくれると誰が言いましたか?」これはスペイン内戦後、アンダルシアからカタルーニャに移住してきた人々の歌や物語の一部です。自分の経験を共有してくれる人を探す物語。
アンダルシアからカタルーニャに移住してきた人々のルーツを探る
★長編デビュー作「La imatge permanent」は、アンダルシア出身の監督の母方の祖母にインスパイアされた作品で、ディアスポラの不安を探求している。自身の家族史のなかにフィクションを滑りこませ、キャスティング・ディレクターとしての自身の過去を、スペイン内戦後にアンダルシアの田舎から北の都会に移住してきた家族の伝承として掘り下げる。農村から都市への切り替えの影響を受けている人々への頌歌、それが理解できない世間知らずの為政者への風刺、監督は「憂鬱なコメディ」と称している。内向的なカルメンには監督が投影されている。監督は「この映画の最も重要な要素の一つは時間です」と、時間がテーマの一つのようです。「批評家週間」のネクスト・ステップ・イニシアチブ、トリノ・フィルム・ラボの支援を受け、マラガ映画祭のワーク・イン・プログレスプロジェクトに選ばれていました。
★ラウラ・フェレスは、1989年生れ、監督、脚本家。バルセロナのESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)卒、最終課程で制作した「A perro flaco」(14)がバジャドリード映画祭スペイン短編の夕べ部門にノミネート、他にモントリオール映画祭2015などで上映された。2017年、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」短編部門にドキュメンタリー「Los desheredados」(18分、The Disinherited)がノミネート、ライカ・シネ・ディスカバリー賞を受賞、後にSeminciでも上映され、翌年のゴヤ賞2018短編ドキュメンタリー映画部門で製作者のバレリー・デルピエールと受賞した。ガウディ賞は短編賞、ポルトガルのビラ・ド・コンデ短編映画祭のヨーロピアン短編賞、アルカラ・デ・エナレス短編映画祭では脚本賞、父親のペレ・フェレスが男優賞を受賞するなどした。本短編はドキュメンタリーとフィクションを行ったり来たりするような手法で父親の会社の倒産を描いている。ゴヤ賞ガラには父親と出席した。金の穂受賞作には俳優として出演している。
(父親ペレ・フェレスと監督、ゴヤ賞2018ガラ)
★第11回フェロス賞2024のノミネーションが発表になっています。2年連続でサラゴサ開催でしたが、マドリードに戻って、1月26日開催です。
第29回ホセ・マリア・フォルケ賞2024*ノミネーション発表 ― 2023年11月18日 10:31
第29回フォルケ賞2024の授賞式は12月16日
★ホセ・マリア・フォルケ賞は、スペイン映画賞の先陣を切って年明け1週目に開催されていました。ところが第27回から前倒しの12月開催となり、2021年は1月(26回)と12月の2回開催されました。まだ2023年なのに2024年と少し違和感がありますが、第29回は12月16日に決定しました。
★フォルケ賞は1996年に創設され、名称はEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)の初代会長だった製作者ホセ・マリア・フォルケに因んで付けられました。EGEDA、マドリード共同体、RTVEなどが主催し、Movistar+、AIE Sociedad、メルセデスベンツ、CINESA、ランコム・パリ、スペイン政府ほかがコラボしています。当初は縁の下の力持ちとして地味な存在だった製作者、技術者、アーティストを讃える賞としてスタートし、常に陽の当たる存在だった監督や演技者は対象外でした。しかし年を重ねるごとにカテゴリーが増え現在に至っています。しかし、現在でも監督賞はありません。昨今では監督が製作者を兼ねることが多く、昨年の『ザ・ビースト』のようにトロフィーを手にするのが監督という例が多くなってきています。今回から長編アニメーションが作品賞(フィクション)から独立しました。
*第28回ホセ・マリア・フォルケ賞2023ガラの記事は、コチラ⇒2022年12月26日
*第29回ホセ・マリア・フォルケ賞2024ノミネート*
◎作品賞(フィクション)副賞30,000ユーロ
「20.000 especies de abejas」(Movistar+)
「Cerrar los ojos」(公開済み)
「La sociedad de la nieve」(12月15日公開、
*Netflix 2024年1月4日配信、邦題『雪山の絆』
「Upon entry (La llegada)」(Filmin)
◎長編アニメーション賞 副賞ユーロ
「Dispararon al pianista」(公開済み)
「El sueño de la sultana」(11月17日公開)
「Momias」(Movistar+)
「Robot dreams」(12月6日公開)
*東京国際映画祭2023アニメーション部門上映、邦題『ロボット・ドリームズ』
◎長編ドキュメンタリー賞 副賞6,000ユーロ
「El caso Padilla」(プライムビデオ)
「Iberia Naturaleza Infinita」(未)
「Juan Mariné. Un siglo de cine」(未)
「Samsara」(12月20日公開)
◎男優賞 副賞3,000ユーロ
アルベルト・アンマン 「Upon entry (La llegada)」(Filmin)
ダビ・ベルダゲル 「Saben aquell」(公開済み)
ホヴィク・ケウチケリアン 「Un amor」(11月10日公開)
*東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映、邦題『ひとつの愛』
マノロ・ソロ 「Cerrar los ojos」(公開済み)
◎女優賞 副賞3,000ユーロ
ブランカ・ポルティリョ 「Teresa」(11月24日公開)
ライア・コスタ 「Un amor」(11月10日公開)
*東京国際映画祭2023ワールド・フォーカス部門上映、邦題『ひとつの愛』
マレナ・アルテリオ 「Que nadie duerma」(11月17日公開)
マリア・バスケス 「Matria」(Movistar+)
◎TVシリーズ賞(フィクション)副賞6,000ユーロ
「30 monedas」(シーズン2)(HOB Max)ホラー・ミステリー
脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア、ホルヘ・ゲリカエチェバリア
「El cuerpo en llamas」(シーズン1)(Netflix『燃えさかる炎』)犯罪ドラマ
発案脚本:ラウラ・サルミエント・パラレス、監督:ホルヘ・トレグロサ & ラウラ・マニャ
「La mesías」(シーズン1)(Movistar+)
発案:ロス・ハビス(ハビエル・アンブロッシ & ハビエル・カルボ)
*作品紹介は、コチラ⇒07月19日
「Poquita fe」(シーズン1)(Movistar+)コメディ
発案:フアン・マイダガン & ペポン・モンテロ
◎TVシリーズ男優賞 副賞3,000ユーロ
アルベルト・プラ 「La mesías」(Movistar+)
ハビエル・カマラ 「Rapa」(Movistar+)
ラウル・シマス 「Poquita fe」(Movistar+)
ロジェール・カザマジョール 「La mesías」(Movistar+)
◎TVシリーズ女優賞 副賞3,000ユーロ
アナ・ルハス 「La mesías」(Movistar+)
エスペランサ・ペドレーニョ 「Poquita fe」(Movistar+)
ロラ・ドゥエニャス 「La mesías」(Movistar+)
ウルスラ・コルベロ 「El cuerpo en llamas」(Netflix)
◎短編賞 副賞3,000ユーロ
「Actos por partes」
「Aunque es de noche」
「París 70」
◎ラテンアメリカ映画賞 副賞6,000ユーロ
「La memoria infinita」(2024年1月12日公開)
「La pecera」(12月1日Filmin)
「Los colonos」チリ(未)監督;フェリペ・ガルベス
*東京国際映画祭2023コンペティション部門上映、邦題『開拓者たち』
「Puan」アルゼンチン(公開済み)
◎Premio al Cine y a la Educación en Valores
「20.000 especies de abejas」(Movistar+)
「Campeonex」(公開済み)
「Chinas」(公開済み)
「Te estoy amando locamente」(Movistar+)
★以上が全ノミネートです。ゴヤ賞の前哨戦という位置づけですが、現在では後発のフェロス賞のほうが近い印象です。当ブログはTVシリーズのアップはサンセバスチャン映画祭などの特別上映だけに絞っておりますので、少々補足しました。映画部門はマラガ映画祭、サンセバスチャン映画祭などで作品紹介をしておりますので割愛しました。
ビクトル・エリセのドノスティア栄誉賞授賞式*サンセバスチャン映画祭2023 ㉕ ― 2023年10月10日 09:44
「映画の学びが終わることは決してない」
★9月29日ビクトリア・エウヘニア劇場、ビクトル・エリセ(ビスカヤ県カランサ1940)のドノスティア栄誉賞授賞式と30年ぶりの4作目「Cerrar los ojos」の上映がありました。今回本賞の受賞者は、ハビエル・バルデム(授与式は来年の予定)、宮崎駿(ビデオ出演)とエリセの3人でしたが、登壇したのはエリセ唯一人でした。プレゼンターは、ちょうど50年前に金貝賞を受賞した『ミツバチのささやき』に主演したアナ・トレント、当時6歳だった女の子も成熟した女性として登場しました。
★エリセ登場前に長編4作を含む主なフィルモグラフィー9作の紹介がありました。初期の短編は割愛され、『ミツバチのささやき』(73)、『エル・スール』(83)、『マルメロの陽光』(92)、オムニバス『ライフライン』(02)、「緋色の死」(06)、『アッバス・キアロスタミとのビデオ往復書簡』(07)、オムニバス『ポルトガル、ここに誕生する~ギマランイス歴史地図』(12)、ドキュメンタリー「石と空」(21)、「Cerrar los ojos」(23)でした。
★長いスタンディングオベーションになかなかスピーチできない受賞者は、生後数ヵ月で引っ越しして以来、17歳まで育ったドノスティア市の名前を冠した栄誉賞を受賞したことに感無量、「いま目を閉じると、決して忘れることのできない映画の数々を客席に座って楽しんでいる男の子が目に浮かぶ」と、クルサールやビクトリア・エウヘニア劇場で観客の一人として映画を楽しんでいたことを語りました。映画の仲間たち、身近な両親、親友たち、そしてサンセバスチャン映画祭に感謝の言葉を述べ、アルベール・カミュ、フェデリコ・フェリーニ、フランコ時代の検閲、息子パブロにまで触れていた。「常に映画は知識を得る一つの方法と考えている。だから私にとって映画を学ぶことに終りはない」と。最後にバスク語で「ありがとう、サンセバスチャン映画祭、どんな時もサン・セバスティアン」と締めくくった。
★レッドカーペットには新作の出演者、ホセ・コロナド、アナ・トレント、マリア・レオン、ペトラ・マルティネス、マリオ・パルド、エレナ・ミケルなどがお祝いに馳せつけ、授賞式では中央2階席で拍手を送っていた。劇中エリセの分身を演じた映画監督役のマノロ・ソロは欠席のようでした。
(レッドカーペットに勢揃いしてフォトコールに応じる出演者たち)
(特別席からエリセを見守る応援団)
★ライトが当てられたもう一人の主賓がアナ・トレントでした。映画祭主催者からのインタビューで「ミツバチと同じこの場所で、今宵ビクトル・エリセのプレゼンターに選ばれたことを大いに名誉に思い、とてもエモーショナルでした」とコメント、「ビクトルは人生と映画をあまりにも交錯させるので、円環を閉じるときには殆どマジックのような何かを感じてしまいます。女の子アナは映画を発見するのですが、現実とフィクションの違いを理解しているわけではありません」と語っていた。監督自身もトレントには他のキャストとは違う思い入れがあり、エル・ムンド紙のインタビューで「脚本を執筆中に彼女なしでは映画は作れない、失踪する俳優の娘役に起用しようと思った」と語っている。トレントとホセ・コロナドが父娘を演じるようです。「ミツバチ」も父と娘の関係が重要なテーマの一つで、小さなアナが「ある人間が他の人間を死に至らしめることができることを発見する」映画でもありました。
(新作撮影中の監督とアナ・トレント)
アンドレス・サンタナにエリアス・ケレヘタ賞*サンセバスチャン映画祭2023 ⑳ ― 2023年09月30日 09:58
第1回受賞者はアンドレス・サンタナ・キンタナに
(受賞者アンドレス・サンタナ・キンタナ、9月25日)
★9月25日、今年のゴヤ賞2023で新設がアナウンスされていたエリアス・ケレヘタ賞の授与式が本日のハイライトの一つでした。第1回の受賞者は予告通り製作者アンドレス・サンタナ・キンタナに贈られました。選考母体はスペイン映画アカデミー、従ってプレゼンターはフェルナンド・メンデス=レイテ会長でした。ケレヘタ没後10周年を記念して設けられた賞です。エリアス・ケレヘタ(1934~2013、享年78歳)は、20世紀の名プロデューサーとして、多くの才能を育てた製作者、脚本家、ドキュメンタリー監督でした。
(エリアス・ケレヘタ)
★例えば、29日にドノスティア栄誉賞を受賞するビクトル・エリセ、まだ国立映画研究所の学生だったエリセの才能を見いだし、サンセバスチャン映画祭1969にオムニバス映画『挑戦』で新人監督3人に監督賞をもたらしたプロデューサーです。次いで1973年『ミツバチのささやき』、10年後の『エル・スール』と、寡作な映画作家の名作を世に送り出した。他に1987年スペイン映画国民賞、1998年ゴヤ栄誉賞、2004年ホセ・マリア・フォルケ賞などを受賞している。
(フェルナンド・メンデス≂レイテ、アンドレス・サンタナ・キンタナ)
★また無名に近かったカルロス・サウラとの出会いは象徴的でした。それは『狩り』(65)がベルリン映画祭監督賞受賞作品である以上に、サウラのシンボリックなリアリズムというスタイルを確立した作品でもあったからです。以来サウラの代表作と言われる『ペパ―ミント・フラッペ』、『従妹アンヘリカ』、『カラスの飼育』、『愛しのエリサ』、『ママは百歳』と快進撃を続けたが、ベルリン映画祭1980の『急げ、急げ』を最後に、金熊賞を受賞しながら袂を分かつことになった。路線の違いもあったようですが、主役の青年二人が隠れてヘロインを摂取していたことを監督が黙認していたこともコンビ解消の一つとされています。勿論監督は否定していましたが真相は闇の中ですが、若者たちのその後をみれば一目瞭然でしょう。
(左から、サウラ、ケレヘタ、エリセ)
★その後、モンチョ・アルメンダリス(『タシオ』『27時間』『アロウの手紙』「Historias del Kronen」)、フェルナンド・レオン・デ・アラノア(『カット!(ファミリア)』『バリオBarrio』、ゴヤ作品賞『月曜日にひなたぼっこ』)、一人娘のグラシア・ケレヘタの諸作品(「Una estación de paso」「Siete mesas de biller francés」、リカルド・フランコの『パスクアル・ドゥアルテ』、マヌエル・グティエレス・アラゴンの『激しい』などの話題作を手掛け、監督たちをカンヌやベルリン、ベネチアなどの国際舞台に連れ出すことに貢献した。
(ケレヘタ、ハビエル・バルデム、レオン・デ・アラノア、ゴヤ賞2003ガラ)
★アンドレス・サンタナ・キンタナは、1940年カナリア諸島のグランカナリア生れの製作者、ケレヘタ同様、製作者というのは縁の下の力持ちということもあって、監督や俳優と比較すると知名度は高くない。しかし公開、映画祭、DVDなどで紹介された作品をみればその凄さが納得できます。例えばケレヘタと重なるモンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』(97)、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』(84)、ペドロ・アルモドバルの『セクシリア』(82)、特筆すべきはバスクの監督イマノル・ウリベの「El rey pasmado」(92)、『キャロルの初恋』(02)、ゴヤ作品賞の『時間切れの愛』(94)、「Plenilunio / Full Moon」(99)などです。サンタナは南スペイン出身ですが北の映像作家とのタッグが特徴的です。
(ゴヤ賞1995作品賞『時間切れの愛』のポスター)
★カミロ・ホセ・セラの同名小説『パスクアル・ドゥアルテの家族』を映画化したことで有名なリカルド・フランコのドキュメンタリー「Después de tantos años」(94)、東京国際映画祭1998のコンペティション入りを果たしたカナリア諸島の火山島ランサロテを舞台にしたアントニオ・ベタンコルの『マラリア』、21世紀に入ってからは、マヌエル・グティエレス・アラゴンの「Visionarios」(01)、マテオ・ヒルの『ブッチ・キャシディ 最後のガンマン』(10)、イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」(15)など、字幕入りで鑑賞できた作品を多数手掛けています。
★授賞式には、モンチョ・アルメンダリス、エンリケ・ゴンサレス・マチョ、プイ・オリア、マリアノ・バロッソ、クリスティナ・スマラガ、マルタ・ミロなどが登壇、イマノル・ウリベ、マヌエル・グティエレス・アラゴン、グラシア・ケレヘタ、イサベル・コイシェ、マテオ・ヒル、『マラリア』の主役ゴヤ・トレドなどは、ビデオで祝辞を述べました。
宮崎駿監督にドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2023 ⑮ ― 2023年09月14日 16:47
3人目となるドノスティア栄誉賞に宮崎駿監督
(ドノスティア栄誉賞のトロフィー)
★9月8日、第71回サンセバスチャン映画祭の3人目となるドノスティア栄誉賞に宮崎駿監督が選ばれました。同時に今年のサンセバスチャン映画祭の顔になっていたハビエル・バルデムの現地入りがなくなり、彼のドノスティア栄誉賞も来たる2024年に持ち越しという爆弾発表もあり、映画祭の顔が登場しないという異例の事態になりました。俳優の欠席理由は、5月2日から始まった全米脚本家組合のストライキと、ハリウッドで7月14日から始まった全米俳優組合のストライキに呼応するためです。受賞そのものを辞退するわけでなく、来年に延期するということです。マスメディアへの対応にも応じないし、感謝のビデオテープも録画しないという徹底ぶりです。
(映画祭の顔でなくなったが、今さら変更できない公式ポスター)
★2018年の是枝監督に次いで、アジアで2人目の受賞者となった宮崎駿監督は、長編アニメから引退する意向を表明していたが、新作『君たちはどう生きるか』で復帰した。2013年の『風立ちぬ』から10年ぶりとなる新作は、今回のオープニング作品、期間中6回の上映がアナウンスされている。22日にメイン会場クルサール1で3回、2回目(20:30~)と3回目(21:40~)のインターバルで授与式が予定されているようだが、高齢を理由にガラには出席せずオンラインで受けとると、現地メディアは報道している。スペイン公開は10月27日の予定。バルデムは延期となり、結局のところ出席は29日のビクトル・エリセ一人となり、異例ずくめとなりました。
映画国民賞2023の受賞者はカルラ・シモン ― 2023年06月12日 15:58
『悲しみに、こんにちは』の監督、カルラ・シモンが映画国民賞を受賞
★去る6月1日、2023年度の映画国民賞の発表がありました。2017年のデビュー作『悲しみに、こんにちは』(「Verano 1993」カタルーニャ語)と、昨年の金熊賞受賞作「Alcarràs」(カタルーニャ語)のたった2作しか長編は撮っていないカルラ・シモン(バルセロナ1986)が受賞することになりました。いやはや驚きました。映画国民賞史上2番目の36歳という若さでの受賞、最年少は1995年度のカルメロ・ゴメス、前年のイマノル・ウリベの『時間切れの愛』の凄みのある演技が認められました。3番目が2013年のフアン・アントニオ・バヨナ監督の38歳、前年の『インポッシブル』の爆発的な興行成績や国際的な活躍が評価され、文句なしの受賞でした。傾向として受賞対象は前年度の活躍に焦点が当てられることが多い。因みに2022年ペネロペ・クルス、2021年ホセ・サクリスタン、2020年イサベル・コイシェ、2019年アントニオ・バンデラス、2018年ホセ・ルイス・ガルシ・・の順。
(デビュー作『悲しみに、こんにちは』オリジナルポスター)
★本賞は毎年文化スポーツ省が授与するため、フェルナンド・トゥルエバのように国からのご褒美はいっさい受け取りたくないと辞退する人が出て、恥をかきたくない政府は、それ以来発表前に一応打診してから発表することにしている(結果的にはトゥルエバも説得されてもらっている)。過去には2人のこともありましたが、原則1年1人、副賞は30.000ユーロと決して高額ではありませんが、ゴヤ賞より格上です。審査員は、今回は委員長ICAA総ディレクターのベアトリス・ナバス・バルデス、副委員長ICAAプロモーション、国際関係局次長カミロ・バスケス、委員にスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス・レイテ、CIMA女性映画製作者・視聴覚メディア協会パトリシア・ロダ、ミリアム・ロレンソ、グレゴリオ・ベリンチョン、コルド・スアスア、などの映画監督、映画コラムニストが大勢で審査する。
★審査員は「世界で最もレベルの高い映画祭の一つベルリン映画祭金熊受賞により、スペイン映画を国際舞台に位置づけた」と評価した。文化省は「この賞は、物語と登場人物の構成における自然さと正確さが、社会問題を視点にしたリアリズムとフィクションを知的かつ厳密に調和させたことで、私たちの映画史のある道標となった。さらに私たちの社会と文化を特徴づけ豊かにする言語の多様性を調和の取れたかたちで組み入れている」という声明をだした。
★受賞の報を受けて「驚いた」というシモン監督、というのも「Alcarràs」の金熊賞受賞、オスカー賞スペイン代表作品など受賞歴を誇っていたにもかかわらずゴヤ賞は無冠だったからです。ゴヤ賞には作品・監督を含む11部門にノミネートされていた。各国ともアカデミー賞はアカデミー会員の投票で決定する。審査員はなく完全に民主的なはずです。会員はロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』に投票した経緯があった。このゴヤ賞の件が国民賞に影響したどうか、やはり気になるところです。本賞の審査員が「どんな議論をしたか知る立場にないので、ゴヤのことが関係したかどうか分からない。いずれにせよ、私はそれが民主的なもと考えているし、それが映画を変えるものではない」とシモンはコメントしている。ゴヤ賞無冠の埋め合わせでないと信じたい。
(「Alcarràs」金熊賞のトロフィを手にした監督、ベルリン映画祭2022、2月16日)
★シモンが6歳のとき両親はエイズで亡くなり、新しい家族である叔父夫婦に引き取られる。デビュー作『悲しみに、こんにちは』(ゴヤ賞2018監督賞受賞)は、彼らとの生活に適応せざるをえなかった「1993年の夏」を描いた作品である。第2作「Alcarràs」も自伝的な要素が含まれた作品、ベネチア映画祭2022に出品された短編「Carta a mi madre para mi hijo」(25分、スペイン語)もマネルという小さい息子のいる母親への映画的なラブレターである。
(短編「Carta a mi madre para mi hijo」のポスター)
★ベネチアFF当時2ヵ月になった我が子マネルを妊娠中にスーパー8ミリで撮影された。監督自身も出演しているが、監督の非常に個人的な回想や映像、アンヘラ・モリーナ、セシリア・ゴメスが出演する架空のシーンで構成されたフィクションです。モリーナがマネルの祖母になるのだが、「私の母は自分が祖母になっていたことを知ることはないし、マネルもその祖母を決して知ることはない」とシモン。ベネチアには父親の腕に抱かれたマネルも一緒だった。彼女の尊敬するアンヘラ・モリーナが出演を受けてくれたことでスタートした。彼女がイメージする母親像に雰囲気が似ているということらしい。
(短編出演のアンヘラ・モリーナ)
★彼女の映画の中心軸は家族に絞られる。「両親について知ってることは殆どありません。叔父や祖父母を介しての話、写真、ビデオの断片、自宅の引き出しに保管している両親の私物から記憶のパズルを嵌めていく。エイズで亡くなったということで、事実を隠したり、それぞれが主観的な非常に異なったバージョンで情報を私に伝えた。それが私にフラストレーションを起こさせました。人生を通じて私が取りくんできたことは、いくつかの断片を搔き集めて何かを発明しなければならなかったのです」と語っている。
★次作「Romería」のテーマも家族が中心、「家族の思い出と、それにアクセスできなくなったときに何が起こるかについて少し語ります。これで私の家族三部作を完結させたい。新作の舞台は田舎ではないでしょう」ということです。また独立系の映画製作者について「新しい世代には共通点があって、非常に少ない資金で作り始めたということです。それが私たちに、何かを探したり、試したりする感覚を与えました。俳優の演技については、以前のスペイン映画を少し打破したものになっています」と。
★新世代の女性監督の輩出には目覚ましいものがあり、列挙するなら、『ザ・ウォーター』のエレナ・ロペス・リエラ、『リベルタード』のクララ・ロケ、『スクールガールズ』のピラール・パロメロ、『カルメン&ローラ』のアランチャ・エチェバリア、『家族との3日間』のマル・コル、「La novia」のパウラ・オルティス、「La hija de un ladrón」のベレン・フネスなど枚挙に暇がない。なかでもカルラ・シモンは「・・・非常に短期間に質の高い映画を世界中の観客に届けることに成功した新世代の代表でもある。間違いなく、彼女はスペイン映画が今経験している偉大な瞬間の基準となる一人です。同時に新型コロナウイルスのパンデミック後の困難な時期に映画館の開館を促進してくれた」と声明で審査員は強調した。つまりロングランで映画産業にも寄与したことが理由の一つだった。
(新世代シネアルト、エチェバリア、シモン、ロケ、フネス、パロメロ)
★映画国民賞の授与式は、サンセバスチャン映画祭2023(9月16日~27日)の会期中に、文化スポーツ大臣によって手渡されるのが恒例になっています。
*『悲しみに、こんにちは』の作品紹介は、コチラ⇒2017年02月22日
*「Alcarràs」の作品紹介は、コチラ⇒2022年01月27日
カルラ・シモンにマラガ才能賞*マラガ映画祭2023 ⑩ ― 2023年03月19日 15:29
マラガ才能賞のトロフィーはアンヘラ・モリーナから
★3月17日、メイン会場セルバンテス劇場でマラガ才能賞(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)のガラがありました。受賞者カルラ・シモンはベテラン女優アンヘラ・モリーナの手からトロフィーを受け取りました。司会者はセリア・ベルメホでした。サポーターはモリーナの他、デビュー作『悲しみに、こんにちは』主演のブルーナ・クシとダビ・ベルダゲラ、監督のフアン・アントニオ・バヨナなどが登壇しました。モリーナは、シモンが映画監督としてでなく、人間として素晴らしいことを讃え、「善と純粋さですべてを凌駕している彼女が受賞するのはとても価値がある」とスピーチした。
(アンヘラ・モリーナと受賞者)
(ブルーナ・クシとダビ・ベルダゲラ)
★アクションを盛り込んだヒット作を出し続けているフアン・アントニオ・バヨナ監督は、「私の最後の映画がモンスター主演であったことを考えると、私のような監督が登壇するのは場違いに思うでしょう。モンスターを撮るのは非常に複雑なものがあります。なぜなら存在しない生き物を本物に見せようとしなければならないからです。カルラがしていることもまったく同じです。違うのは彼女は現実を並外れたものに変えるのです」とバヨナは、自作と親密で現実的なシモン映画を比較した。
(フアン・アントニオ・バヨナ監督)
★カルラ・シモンは、この特別な日にサポートしてくれた同僚や友人に一人ずつお礼を述べたいと語り、またフェスティバル関係者や家族にも感謝したいとスピーチした。しかし、彼女が最も伝えたかったのはフェミニストとしてのメッセージでした。「私たちの視点は、今までの視点と同じではありません。私たちは女性によって語られる新しいタイプの作品を目指していきたい。今までとは異なる視点、より優しく、母性的な作品です。私たちの世界では光と愛が不足しているのでヒューマニストの映画とアートを保護しなければならない」と語った。
★授賞式に先だってセルバンテス劇場ロッシーニ・ホールで、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルのインタビューが行われた。シモンの『悲しみに、こんにちは』は、2017年の金のビスナガ賞受賞作品、2作目「Alcarràs」は2022年のアウト・オブ・コンペティションに参加していた。「マラガは自宅に帰ってきたような気分でリラックスできる」と語った。第2作はとても厳しい長い道のりだったと明かし、ベルリンで金熊を与えられたとき「撮った甲斐があった」と感じたようです。
(カルラ・シモンとフアン・アントニオ・ビガル、ロッシーニ・ホールにて)
★受賞者曰く「人々が映画監督についてイメージするのは若い女性ではありません。しかしこれは急速に変化しており驚きです。最初はチームがこの映画を完成させられるかどうか理解するのは難しいです。でも自分のやり方でやり通すことです」と。「技術チームが不確実性に慣れていない場合は、彼らの疑念を払拭するよう作業を進める必要があります」とも述べている。やはり「若い女性監督で大丈夫か?」という技術部門の不安を解消するのは大変ということでしょう。監督がどうしたいか、何を模索しているか、を理解してもらうことが必要ということでしょうか。彼女のキャリアが進むにつれて、彼女のやり方を尊重し、理解してくれるようになり、うまく作業できるようになった。今更ですが、若い監督にとって国際映画祭の受賞は大きな前進に繋がるようです。
★次回3作目のタイトルは「Romería」で、シモンの「家族についての三部作」を締めくくりたい、「それは一種のルーツへの旅、家族の記憶がテーマになるだろう」ということでした。
マラガ特別賞ガラのフォト集*マラガ映画祭2023 ⑨ ― 2023年03月17日 09:59
マラガ―スール賞以下特別賞ガラのフォト特集
★3月10日に開幕したマラガ映画もすでに半ばを過ぎ、15日現在の特別賞ガラのフォトが続々配信されています。オープニングにビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞の国民的歌手ラファエル・マルトス、11日にレトロスペクティブ賞―マラガ・オイのアルベルト・ロドリゲス監督、12日にマラガFFの大賞マラガ―スール賞に女優ブランカ・ポルティーリョ、13日にリカルド・フランコ賞にスクリプトのユイ・ベリンゴラ、と4賞のガラが終了しました。受賞者紹介はアップ済みなのでフォト集をお届けします。
(オープニングの司会者、エレナ・サンチェスとマルタ・ハザス)
(セクション・オフィシアルの5人の審査員)
◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞(3月10日、メイン会場セルバンテス劇場)
ラファエル・マルトス、愛称ラファエルで親しまれているスペインの国民的歌手にトロフィーを手渡したのは、TVシリーズのヒット作「Velvet」の主役を演じたマルタ・ハザスでした。歌手ディアナ・ナバロも登場、ラファエロの曲をミックスして歌いあげオマージュを捧げました。開幕ということもあって、審査委員長マヌエル・グティエレス・アラゴン以下の審査員4人も紹介されました。オープニングの司会者はジャーナリストのエレナ・サンチェスとマルタ・ハザスでした。
(受賞者とマルタ・ハザス)
(受賞者とディアナ・ナバロ)
◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイの(3月11日、メイン会場セルバンテス劇場)
アルベルト・ロドリゲス監督、プレゼンターは長年脚本を共同で執筆しているラファエル・コボス、彼は2019年のリカルド・フランコ賞受賞者です。他『マーシュランド』主演のハビエル・グティエレス(2019年のマラガ―スール賞受賞者)、製作者で受賞者の妻マヌエラ・オコンなど、一緒にステージに立ちたいサポートが大勢集合しました。「この賞を与えてくれたフェスティバルに感謝いたします。映画は個人的なものではなく、集合的なものです。この賞をチームと友人たちと共有したい。それは彼らが私を今夜このステージに立たせてくれたからです」と締めくくり、どこまでも真面目で控えめなロドリゲスなのでした。
(長年の盟友ラファエル・コボスからトロフィーを受け取った受賞者)
(受賞スピーチをするロドリゲス、後方は司会のノエミ・ルイス)
(大勢のサポーターに囲まれて・・・)
◎マラガ―スール賞(3月12日、メイン会場セルバンテス劇場)
ブランカ・ポルティーリョ、Tシャツにジーパン、スニーカー姿で登壇した受賞者に皆さんびっくり。この豪華衣装には理由があったのです。「贅沢品や仮面を剝ぎ取られた人間」としてトロフィーを受け取りたかった。「考えに考えて決断した、愛を必要としている59歳の女性」ともスピーチしました。サポートしたのはグラシア・ケレヘタ監督、女優パウラ・オルティス、プレゼンターはアシエル・エチェアンディアでした。
(これ以上ラフな恰好はないでしょう)
(アシエル・エチェアンディアからトロフィーを受け取る受賞者)
(大喜びのグラシア・ケレヘタと)
(サポーターに囲まれて)
★授賞式に先立ってマラガ―スール賞受賞者には、海沿いの遊歩道アントニオ・バンデラス通りに手形入りの記念碑が立ててもらえる。マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ以下、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなどが立ち会って除幕式が行われた。
(このときはこんな衣装でした。3月12日)
◎リカルド・フランコ賞(3月15日、メイン会場セルバンテス劇場)
ユイ・ベリンゴラ、 この賞はスペイン映画アカデミーとのコラボレーションで授与され、舞台裏で活躍する映画スペシャリストに与えられる。ユイ・ベリンゴラはアルモドバルの作品を数多く手がけたスクリプトですが、彼女はリカルド・フランコ監督の親友でもあったから一入感慨深いものがあったようです。プレゼンターはスペイン映画アカデミーの会長フェルナンド・メンデス≂レイテでした。進行役はノエミ・ルイス、他ナチョ・ガルシア・ベリーリャ監督、前回の受賞者フィルム編集者のソル・カルニセロなどが登壇しました。ベリンゴラは「家族、友人、とりわけ留守がちな母親に苦しんだ息子にこの賞を捧げる」とスピーチした。
(受賞スピーチをする受賞者)
(メンデス=レイテ会長からトロフィーを受け取る受賞者)
★残るはマラガ才能賞のカルラ・シモンと「金の映画」賞となりました。
ジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞*ゴヤ賞2023 ⑪ ― 2023年02月05日 18:12
「3冠」&オスカー女優のジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞
(ドノスティア栄誉賞のトロフィーを手に、サンセバスチャン映画祭2022)
★去る2月1日、スペイン映画アカデミーから第2回目となる国際ゴヤ賞受賞者は、フランス女優のジュリエット・ビノシュ(パリ1964、59歳)と公式に発表されました。昨年新設された国際ゴヤ賞は、芸術としての映画に国際的に貢献した人物に贈られる重要なスペイン映画賞の一つ、「ビノシュの並外れたキャリアは、ヨーロッパのみならず国際的に賞賛され認められている。リスクのある作家への挑戦は数多くの忘れられないパフォーマンスを生んだ。40年にわたってヨーロッパ映画が目指す指標として不動の地位を築いてきた」ことが評価されました。あと1週間後に迫った2月11日、セビーリャのFIBESで開催される第37回ゴヤ賞ガラでトロフィーを受け取ることになります。
★キャリア&フィルモグラフィーについては第70回サンセバスチャン映画祭2022でドノスティア栄誉賞を受賞した折りにアップしております。タッグを組んだ監督はフランスに止まらず、ジャン=リュック・ゴダール、レオス・カラックス、ルイ・マル、デヴィッド・クローネンバーグ、アッバス・キアロスタミ、クシシュトフ・キェシロフスキ、ミヒャエル・ハネケ、オリヴィエ・アサイヤスなど枚挙に暇がない。しかし彼女の転機は1996年に訪れる。アンソニー・ミンゲラの『イングリッシュ・ペイシェント』でアングロサクソン映画にデビュー、ベルリン映画祭銀熊女優賞、アカデミー助演女優賞、BAFTA助演女優賞ほかを受賞して、ヨーロッパの「3冠」トリプルクラウンの一つを獲得した。
★ヨーロッパの「最優秀女優トリプルクラウン」というのは、カンヌ、ベネチア、ベルリン三大映画祭の受賞者を指し、3冠を達成した最初のヨーロッパ女優になりました。クシシュトフ・キェシロフスキの『トリコロール/青の愛』(94)でベネチア映画祭女優賞(ヴォルピ杯)、イランのアッバス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』(10)でカンヌ映画祭女優賞である。
★女優のプロジェクトに参加する決め手は「新しい世界を私に覗かせる未知への旅」と語っています。また「監督の耳を傾ける能力、そして何よりも見る能力」が、「イエス」と言うように自分を駆り立てるとも語っている。イサベル・コイシェ監督が「ぶっ飛んだ女優」と評する所以である。
★片足でインディペンデント映画に、もう片足で『GODZILLA ゴジラ』や『ゴースト・イン・ザ・シェル』などの商業映画にも取り組んでいる。最新作はTVシリーズ「The New Look」(米10話)で、目下ココ・シャネルに命を吹き込んでいます。ベン・メンデルソン扮するクリスチャン・ディオールとわたり合うようです。
★第1回目の受賞者はオーストラリア出身の女優ケイト・ブランシェット、プレゼンターはアルモドバル監督とペネロペ・クルスでしたが、さて今回はどなたでしょうか。彼女が主演した「Nadie quiere la noche」(英題「Nobody Wants the Night」)のコイシェ監督あたりを個人的に予想します。本作でゴヤ賞2016の主演女優賞にノミネートされ、初めてゴヤ賞ガラに出席したフランス女優となりました。今回は国際ゴヤ賞受賞者の最初のフランス人となります。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2022年09月17日
フェロス賞2023ガラに参集したシネアストたち*今年の流行は喪服? ― 2023年02月03日 16:04
目立っていたアルモドバル&ボブ・ポップ
★今年のフェロス賞の夕べは好奇心旺盛な地元ファンの熱気とは裏腹に気温が低く、あいにくの強い北風でした。5時間待ちも厭わなかったファンこそ、今夜のヒーローでした。もし冬のサラゴサを訪れたいという観光客がいたら、それは正にクレイジーでしょう。今回はガラにドレスアップして参集したセレブたちの寒夜の品定め。今年はモノトーン調が主流、例年黒と白は一定数人気がありますが、今年は「喪服」にしては透け透けもありましたが、モノトーンが幅を利かせていました。女性誌が選ぶベストドレッサーも軒並みモノトーンでした。というわけで栄誉賞のアルモドバルののターコイズブルーのスーツとボブ・ポップの紫紅色のブレザーが目立ちました。以下はノミネート候補者、各カテゴリーのプレゼンター中心に纏めたフォト集です。
(ボブ・ポップから「低賃金で不安定な文化ジャーナリストの職業擁護」を求められた、
労働大臣ヨランダ・ディアスと文化教育大臣ミケル・イセタ)
*レッドカーペットでのフォトコールに応じるセレブたち*
★フェロス栄誉賞受賞者のペドロ・アルモドバル、壇上では「私を無知にして無心論者にした」サレジオ会の神学校での地獄のような体験を語ったアルモドバル、変な少年だった頃の逃げ場は「映画館でした」と。健康状態がイマイチらしく何回か座を外していた。
(プロデューサーの弟アグスティン・アルモドバルとのツーショット)
(ボブ・ポップ、黒のスラックスと靴先が金色のスニーカーがマッチしているとか)
★ 3人の総合司会者
(シルビア・アブリル)
(バルバラ・サンタ=クルス)
(バレリーナ風のイングリッド・ガルシア=ヨンソン)
★「アルモドバルのミューズたち」
(アイタナ・サンチェス=ヒホン)
(パルマ・デ・ロッシ)
(ビビアナ・フェルナンデス)
(レオノール・ワトリング、余計な宝石なしが好評でした。
TVシリーズ「No me gusta conducir」助演女優賞候補)
(ミレナ・スミット)
★主演女優賞ノミネート候補者たち
(受賞者ライア・コスタ、「Cinco lobitos」)
(フランスから馳せつけたマリナ・フォイス、『ザ・ビースト』)
(アンナ・カスティーリョ、「Girasoles silvestres」)
(二人分の布が必要なラウラ・ガラン、「Cerdita」)
(履きなれないサンダルのカルラ・キレス、「La maternal」)
★助演女優賞ノミネート候補者たち
(1月22日、癌に倒れたアグスティ・ビリャロンガ監督に思いを馳せるスシ・サンチェス、
初のコメディにして遺作となった「Loli Tormenta」の主役を演じた。「Cinco lobitos」)
(アデルファ・カルボ、「En los márgenes」)
(アンヘラ・セルバンテス、「La maternal」)
(エンマ・スアレス、「La consagración de la primavera」)
(カルメン・マチ、「Cerdita」)
★TVシリーズ部門主演女優賞ノミネート候補者(モニカ・ロペスは欠席?)
(ネレア・バロス、「La novia gitana」)
(イツィアル・イトゥーニョ、『インティミダ』)
(靴がユニークなナタリエ・ポサ、「La unidad」)
(高いヒールが話題になった受賞者クラウディア・サラス、「La ruta」)
★TVシリーズ部門助演女優賞ノミネート候補者
(受賞者パトリシア・ロペス・アルナイス、
ベストと乗馬靴が話題になったディオール、『インティミダ』)
(マリアン・アルバレス、「La unidad」)
(エリザベス・カサノバス、「La ruta」)
★ベストドレッサー、あるいはユニーク・ルックスの女優たち
(帽子は自分のデザイン、監督&女優レティシア・ドレラ)
(ベストドレッサーに選ばれたエレナ・リベラ)
(歩くのが大変そうなクララ・ガジェ)
(パウラ・オルティス、手袋は珍しかった)
(赤と黒の透け透けドレスのミナ・エル・ハマニ)
(細い肩紐のツートンカラー、エバ・イサンタ)
(歌手のラ・テレモト・デ・アルコルコン
黄色の靴下と紫紅色の暖かそうなオーバー)
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