アイタナ・サンチェス=ヒホンのゴヤ栄誉賞授与式*ゴヤ賞2025 ⑪ ― 2025年02月20日 19:29
プレゼンターはマリベル・ベルドゥ、感動的なキャリア紹介

★ゴヤ栄誉賞授与式が比較的早い時間帯にありました。プレゼンターが誰になるかも楽しみの一つ、2023年の受賞者は、授賞式の前日に旅立ってしまった巨匠カルロス・サウラで、『歌姫カルメーラ』で主演したカルメン・マウラが務めました。会場は激動の時代を死の直前まで走り続けたマエストロを偲ぶ感動の渦が巻き起こりました。今回のプレゼンターは、総合司会者でもあるマリベル・ベルドゥでサウラのときと負けず劣らず会場を泣かせました。
★受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホンのキャリア紹介の途中、感動で言葉を詰まらせて中断する一幕があったのでした。会場からは「マリベル、頑張れ」の温かい応援の拍手が沸き起こり、カメラは会場の涙にくれるクララ・セグラ、2014年、最年少で受賞したアントニオ・バンデラスの姿などを追いました。師匠ともいえるアルモドバルより先に受賞することに拘って固辞した末の受賞が頭をよぎったのか、やはり目は潤んでいました。アイタナは「マリベル、このゴヤをあなたの手から受け取ることが私の夢だったのを知らなかったの?」と。二人は2歳違い、まだゴヤ賞など存在しなかった少女時代から女優を天職と考え、大女優になることを夢見る仲良しだったそうです。

(ハグしあう、アイタナとマリベル)
★プレゼンターは、「光り輝く類いまれな才能の持ち主、素晴らしい信頼のできる共犯者、これは皆が納得のゴヤです。私たちが自分の姿を映す鏡、何故ならあなたは私たちの国や文化が向上するよう努力したからです。40年間ものあいだ闘ったなんて、それは奇跡です」と、受賞者の卓越性に敬意を払った。

(エモーショナルなキャリア紹介をしたマリベル・ベルドゥ)
★受賞者のキャリア&フィルモグラフィーは、既にアップしておりますが、映画とTV出演を中心にした紹介記事で、舞台女優としてのキャリアは割愛しています。スペイン語版ウィキペディアに載っていない事柄なども含めて、今回受賞スピーチから明らかになった事柄をかいつまんで補足します。自分の師として、演劇の師アリシア・エルミダ(マドリード1932~2022)、受賞者にサンセバスチャン映画祭1999銀貝女優賞をもたらした『裸のマハ』の監督ビガス・ルナ(バルセロナ1946~2013)、2023年師走旅立ってしまった女性監督のパイオニアの一人であるパトリシア・フェレイラ(マドリード1958~2023)の3人にオマージュを捧げました。
★アリシア・エルミダ*については、12歳での初舞台がここフェデリコ・ガルシア・ロルカの生れ故郷グラナダの劇団《バラッカ》だったことに触れた。ロルカが1930年初めに設立した劇団です。「彼女と一緒にロルカの生地フエンテバケーロスでロルカの作品を上演したのです。だから私の人生は文字通りここグラナダから始まったわけです」と語った。この瞬間から彼女の学校は仕事場となり、職業として生活できるわずかな数の俳優の一部分になることができた。「だからこのゴヤを逆風に向かって進む仲間たちと分かち合いたい、皆さんとともに!」と。演技の師は舞台にあり、若い人たちに舞台で演技を学んで欲しいとも語った。
★さらに自分にとって学びは尽きない泉のようなものだと語り、今宵この場にいない人々のなかで、どうしても感謝したい師としてビガス・ルナに言及した。また40人以上の監督と仕事をする幸運に恵まれたこと、4人の女性監督に起用されたこと、その一人として脚本家でもあったパトリシア・フェレイラに触れた。まだ女性が足を踏み入れることができなかった時代からのパイオニアの一人でしたが、現在では多くの監督、製作者、脚本家、撮影監督、撮影技師、音響家が活躍している。それは彼女のような先輩たちの努力の成果だと語った。アイタナはフェレイラの『ティ・マイ~希望のベトナム』にカルメン・マチやアドリアナ・オソレスと出演している。(Netflix で配信しています)


★当然の流れとしてマリサ・パレデスを追悼しました。「彼女はゴヤ賞のガラではっきり述べていました。〈文化を怖れる必要はない。怖れるべきは無知であり、無関心であり、偽物や狂信的行為、暴力です。重要なのは戦争を怖れることです〉」と。「マリサにも納得して貰えると思いますが、怖れるべきことに新たな帝国主義、民族浄化の台頭を付け足したい」と述べた。
★最後に家族、生きる喜びである二人の子供レオとブルナ、ずっと以前に亡くなった父アンヘル、
会場で娘の晴れ姿を見守っていた母フィオレラに感謝を述べた。特に彼女の共犯者で仕事の原動力だった母親に「ママ、あなたの支えや信頼なしには、何事も成し遂げられなかった」と語りかけた。「愛を込めて皆さま有難うございました。映画館でお目にかかりましょう」と締めくくった。(父親は2007年に鬼籍入りしている)
★主な受賞歴:2022年にスペイン映画アカデミー名誉会員、アルハンブラ友好財団の名誉会員。1993年シネマ・ライターズ・サークル賞(「Havanera 1820」)、1995年フォトグラマス・デ・プラタ女優賞(TVシリーズ「Regenta」)、1996年フォトグラマス・デ・プラタ女優賞(演劇『熱いトタン屋根の猫』)、1999年サンセバスチャン映画祭銀貝女優賞(『裸のマハ』)、2004年バルセロナ女優賞、2015年「金のメダル」、同年Max賞主演女優賞(演劇「Medea」)、2022年フェロス賞助演女優賞(『パラレル・マザーズ』)、2024年12月に文化省が付与する芸術功労金のメダル、2025年ゴヤ栄誉賞。
*受賞者の主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2024年12月17日
*スペイン映画アカデミー「金のメダル」受賞記事は、コチラ⇒2015年08月01日/11月20日
*アリシア・エルミダは、舞台女優、映画、TV女優。1950年代半ばに舞台女優としてスタートを切り、シェイクスピア、ロペ・デ・ベガ、あるいは米国のソーントン・ワイルダー、チェーホフの『桜の園』、フェデリコ・ガルシア・ロルカの『ベルナルダ・アルバの家』などに出演した。1981年、ロルカの《バラッカ》劇団の巡業に参加する。その後《アリシア・エルミダ学校》と呼ばれたクラスで後輩に発声法や演技の指導にあたった。古典詩の造詣が深く、ロルカの『ドン・クリストバルの祭壇装飾絵図』、『老嬢ドーニャ・ロシータ』ほか、バリェ=インクランの『聖なる言葉』(Max賞1999受賞)、ミゲル・デ・ウナムノの「El otro」、後にアイタナも演じたテネシー・ウィリアムズの『熱いトタン屋根の猫』などに出演した。2014年スペイン映画アカデミー「金のメダル」受賞。政治的発言も多く、もの言う女優として女性の地位向上に貢献した一人でした。
ラブストーリーが語られた『海を飛ぶ夢』公開20周年を祝う
★第19回ゴヤ賞2005のガラはアレハンドロ・アメナバルの『海を飛ぶ夢』のための授賞式でした。1作品がノミネートできる最大カテゴリー数は18個、うちオリジナル歌曲・編集・衣装デザイン賞を除いた15カテゴリーにノミネートされ、受賞できなかったのは録音賞だけでした。少しばかり白けたのを思い出しました。今回登壇したのは、作品・監督・オリジナル脚本・オリジナル作曲賞のアメナバル、主演男優賞のハビエル・バルデム、主演女優賞のロラ・ドゥエニャス、新人女優賞のベレン・ルエダ、新人男優賞のタマル・ノバスの5名、今回「El 47」で助演女優賞を受賞したクララ・セグラも共演者でしたが登壇しなかった。

(登壇した『海を飛ぶ夢』の監督、主要キャスト)
★この『海を飛ぶ夢』クルーが今回の作品賞のプレゼンターを務めた。昨年はペドロ・アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』の公開25周年で、監督以下まだ元気だったマリサ・パレデス、主演のセシリア・ロス、ペネロペ・クルス、アントニア・サンフアンの豪華版でした。最近のゴヤ賞ガラはプレゼンターも視聴率アップに一役買っているようです。


(左端が受賞者ダニ・デ・ラ・オルデン、読み上げたのはベレン・ルエダでした)
国際ゴヤ賞にリチャード・ギア*ゴヤ賞2025 ⑩ ― 2025年02月16日 10:43
第二の青春を満喫している受賞者リチャード・ギア

(「いじめっ子が米国大統領になっている」とスピーチした受賞者)
★第4回目となる国際ゴヤ賞は、サンセバスチャン映画祭2007のドノスティア栄誉賞受賞者である米国の俳優兼プロデューサーのリチャード・ギアの手に渡りました。プレゼンターはハリウッドでも活躍しているアントニオ・バンデラスでした。1975年ミルトン・カトセラスの犯罪ドラマ「Report to the Commissioner」(未公開)で映画デビューしているので、今年はキャリア50周年記念の節目の年に当たります。会場から温かい数分のスタンディングオベーションを受け、「(この賞を頂くのは)少し時期尚早でした。というのも私は新しい家族のいるスペインで製作する企画をもっているからです。実はガリシアの素晴らしい女性と結婚しているのです」と、会場で見守る実業家で人道活動家の妻アレハンドラ・シルバを紹介しました。因みに第1回の受賞者はケイト・ブランシェット(オーストラリア)、第2回はジュリエット・ビノシュ(フランス)、昨年がシガニー・ウィーバー(米国)と3連発で女優さんが受賞していました。

(プレゼンターのアントニオ・バンデラスとジョルジオ・アルマーニを着た受賞者)
★リチャード・ギアは、1949年フィラデルフィア生れの、俳優、製作者、人権活動家、ダライ・ラマを支援するチベット仏教の熱心な信者である。中国政府によるチベット人民迫害を非難して入国拒否になっている。30年以上前に「ギア財団」を設立して、チベット自治区のための活動を整備するほか、ダライ・ラマ14世が提唱するチベット文化の保護、先住民の権利保護などに賛同、受賞スピーチでも訴えていた。なかでも拍手を受けたのは「難民や我が家を持てない人々に、この賞を捧げたい」とスピーチしたときでした。また、権威主義の新たな台頭を危惧し、米国は「いじめっ子が大統領になって、権力と金が支配する恐ろしい場所になっている」と、警鐘を鳴らした。同じチベット仏教徒の信者であるアレハンドラ・シルバ(ア・コルーニャ1983)は、立ち上がって賛同の拍手を送っていました。


(見つめあう幸せなカップル、レッドカーペットにて)
★私生活に触れると、二人の出遭いは2014年頃で、チベット仏教徒の権利保護の活動が縁ということです。アレハンドラの前夫との離婚が正式に成立した2018年に、ギアにとっては3度目となる結婚をした。33歳の年齢差をはねのけての結婚、「父親と娘みたい」という陰口を聞き流し、翌年第1子、2020年第2子が誕生、アレハンドラの前夫とのあいだの男児合わせて3人兄弟、ギアは再婚相手キャリー・ローウェル(2002~16)との間に既に成人している息子(ホーマー・ジェームズ・ジグメ・ギア、歌手、2000生)がおり、4人の父親になっている。ベネチア映画祭2024に妻、長男と連れだって参加していた。昨年コネチカット州の自宅を売却、シルバの両親が暮らしているガリシアに移住している。ロスにあるもう1軒の家には長男が住んでおり、当分行ったり来たりになる由。
★キャリア&フィルモグラフィー:スクリーン以外のことに字数を取りすぎましたが、ほとんどの映画が公開され、TVでも放映されているので詳細は不要でしょうか。日本語ウィキペディアも充実しています。親日家で何回も訪日しているうえ、『HACHI 約束の犬』の製作を手掛け出演もしているのでファンは多い。しかしこれだけ主役を演じているのにオスカー像には縁遠く、ノミネートさえ一度もありません。犯罪コメディ・ミュージカル『シカゴ』(02)で受賞していると思っていたが勘違いで、受賞したのは第60回ゴールデングローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)の主演男優賞でした。共演のレネー・ゼルウィガーと受賞した。キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、アカデミー賞で助演女優賞を受賞した。

(タップダンスを披露した『シカゴ』のポスター)
他に1982年テイラー・ハックフォードの『愛と青春の旅だち』(ドラマ部門)、1990年ゲイリー・マーシャルの『プリティ・ウーマン』(コメディ/ミュージカル部門)、2012年ニコラス・ジャレッキーの『キング・オブ・マンハッタン』(ドラマ部門)の3作にノミネートされているだけでした。ポール・シュレーダーのサスペンス『アメリカン・ジゴロ』(80)やフランシス・フォード・コッポラの『コットン・クラブ』(84)など80年代の良作にオファーされているが、賞には結びつかなかった。ヨセフ・シダーの『嘘はフィクサーのはじまり』(16)のノーマン役で新境地を開いたと称賛されている。

(ゴヤ栄誉賞を受賞したアイタナ・サンチェス=ヒホンと、レッドカーペットにて)
★次回は、アイタナ・サンチェス=ヒホンのゴヤ栄誉賞を予定しています。
第12回フェロス賞2025授賞式*結果発表 ― 2025年02月02日 14:06
映画ドラマ部門は「Salve María」、コメディ部門は「Casa en flames」

★1月25日、第12回フェロス賞2025の授賞式がポンテベドラの文化会館 Pazo da Culturaで開催され、全カテゴリー21の結果発表がありました。選考母体はスペイン映画ジャーナリスト協会AICAです。映画部門11、TVシリーズ部門7、フェロス感動賞2、今年の受賞者がハイメ・チャバリだったフェロス栄誉賞の合計21カテゴリーです。総合司会者は、昨年アレハンドロ・マリンの「Te estoy amando locamente」出演で助演男優賞を受賞したラ・ダニが務めました。登壇して降壇するまで涙の止まらない受賞スピーチをしたのでした。

(左から3人め、AICA会長マリア・ゲーラ)


(総合司会者ラ・ダニ)
★ゴヤ賞の前哨戦という位置づけが少し怪しくなってきた印象です。マル・コルの作品賞受賞作「Salve María」など、ゴヤ賞では脚色賞と新人女優賞(ラウラ・ヴァイスマール)の2個、カテゴリーの数を勘案すると少なすぎ、イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスの「Segundo premio」においてはゼロ、ゴヤ賞は3番目に多い11個です。重なるのはダニ・デ・ラ・オルデンのコメディ「Casa en llamas」(原題「Casa en flames」)、監督賞はペドロ・アルモドバルの手に渡りましたが、受賞は5回(予告編・脚本・監督)、フェロス栄誉賞2023につづいて2回めの監督賞を受賞しました。

★マル・コル(バルセロナ1981)は、バルセロナのカタルーニャ映画視聴覚上級学校で映画を学ぶ。イサベル・コイシェにつづく世代を代表する監督。デビュー作「Tres dias con la familia」がマラガ映画祭2009でプレミアされ、翌年のガウディ賞を総なめにして、ゴヤ賞では新人監督賞を受賞している。第23回東京国際女性映画祭2010のオープニング作品に選ばれ、『家族との3日間』の邦題で上映された。新作「Salve María」は、母性をテーマにしたサイコスリラー仕立て、カティシャ・アギーレの小説 ”Las madres no” の映画化です。ロカルノ映画祭でプレミアされ、国際映画部門のスペシャルメンション他を受賞、ガウディ賞2025の脚色賞を受賞している。
★TVシリーズ部門作品賞の「Querer」(4話)は、ホセ・マリア・フォルケ賞2024でも作品・主演男優(ペドロ・カサブランク)・主演女優(ナゴレ・アランブル)を受賞していて、予想通りの受賞でした。サンセバスチャン映画祭2024のアウト・オブ・コンペティション作品として特別上映されている。

*第12回フェロス賞2025結果発表*(*印は紹介作品)
★映画部門
◎作品賞(ドラマ)
「Salve María」監督マル・コル、脚本マル・コル、バレンティナ・ビソ、
原作カティシャ・アギーレ、製作マリア・サモラ、Sergi Casamitjana
ノミネート:
「La estrellas azul」(ハビエル・マシぺ) *
「La habitación de al lado」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(ペドロ・アルモドバル) *
「La virgen roja」『レッド・バージン』(パウラ・オルティス)
「Los destellos」(ピラール・パロメロ) *

(右から2人め、マル・コル監督)

(受賞スピーチをする製作者マリア・サモラ)

(興奮がおさまらないキャスト&スタッフ)
◎作品賞(コメディ)
「Casa en llamas」監督ダニ・デ・ラ・オルデン、
製作アルベルト・アランダ、キケ・マイジョ他 *
ノミネート作品:
「Bodegón con fantasmas」(監督エンリケ・ブレオ)
「Buscando a Coque」(同テレサ・ベリョン&セサル・F・カルビーリョ)
「Escape」(同ロドリゴ・コルテス) *
「Volveréis」(同ホナス・トゥルエバ) *

(スピーチするダニ・デ・ラ・オルデン)

◎監督賞
ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』) *
ノミネート:アランチャ・エチェバリア、ダニ・デ・ラ・オルデン、パウラ・オルティス、
ピラール・パロメロ



◎主演女優賞
エンマ・ビララサウ(「Casa en llamas」)
ノミネート:パトリシア・ロペス・アルナイス、ナイワ・ニムリ、ラウラ・ヴァイスマール、
カロリナ・ジュステ


◎主演男優賞
エドゥアルド・フェルナンデス(「Marco」監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ) *
ノミネート:ペペ・ロレンテ、ウルコ・オラサバル、アントニオ・デ・ラ・トーレ、
ダビ・ベルダゲル


◎助演女優賞
クララ・セグラ(「El 47」監督マルセル・バレナ) *
ノミネート:アンナ・カステーリョ、マリナ・ゲロラ、マリア・ロドリゲス・ソト、
アイシャ・ビリャグラン

(受賞者欠席で、バレナ監督がスピーチを代読した)
◎助演男優賞
オスカル・デ・ラ・フエンテ(「La casa」監督アレックス・モントーヤ) *
ノミネート:エンリク・アウケル、フリアン・ロペス、ホセ・サクリスタン、
アルベルト・サン・フアン


◎脚本賞 DAMA
エドゥアルド・ソラ(「Casa en llamas」)
ノミネート:
マルセル・バレナ&ベト・マリニ(「El 47」)
ハビエル・マシぺ(La estrellas azul)
ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)
エドゥアルド・ソラ&クララ・ロケ(『レッド・バージン』)


(TVシリーズ部門でも受賞して2個ゲットした)
◎オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)
ノミネート:
アルナウ・バタリェル(「El 47」)
フェルナンド・ベラスケス(「La casa」)
マリア・アルナル(「Polvo serán」監督カルロス・マルケス=マルセ)
セルティア・モンテス(「Salve María」)

◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トゥルド(「Polvo serán」カルロス・マルケス=マルセ)
ノミネート:
アルベルト・レアル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)、
ハビエル・モラレス(「La infiltrada」アランチャ・エチェバリア) *
オマール・ベルムデス&カルロス・ベロト(「Marco」)
マルタ・ロンガス&ヘスス・フェルナンデス・ガルシア(『レッド・バージン』)

◎ポスター賞
オクタビオ・テロル、リュイス・トゥデラ(「Salve María」)
ノミネート:「Casa en llamas」、「La estrellas azul」、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』、「「Polvo serán」


(ラウラ・ヴァイスマールの乳首露出がSNSで問題になったポスター)
★TVシリーズ部門
◎作品賞(ドラマ)
「Querer」4話(製作:フアン・モレノ、コルド・スアスア、スサナ・エレラス、フラン・アラウホ、監督アラウダ・ルイス・デ・アスア、脚本:アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス、エドゥアルド・ソラ、キャスト:ナゴレ・アランブル、ペドロ・カサブランク、ロレト・マウレオン、ミゲル・ベルナルドー、イバン・ペリセル、他) *

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)


◎作品賞(コメディ)
「Celeste」6話(製作:ディエゴ・サン・ホセ、フラン・アラウホ、ラウラ・フェルナンデス・エスペソ他、監督エレナ・トラぺ、脚本:ディエゴ・サン・ホセ、ダニエル・カストロ、オリオル・プイグ・プラヤ、キャスト:カルメン・マチ、アンドレア・バヤルド、アントニオ・ドゥラン、クララ・サンス、マノロ・ソロ、他多数)




◎主演女優賞
ナゴレ・アランブル(「Querer」)
ノミネート:モニカ・ロペス、カルメン・マチ、カンデラ・ペーニャ、イリア・デル・リオ


◎主演男優賞
オリオル・プラ(「Yo, adicto」)
ノミネート:フランセスコ・カリル、ペドロ・カサブランク、トリスタン・ウジョア、
アルベルト・サン・フアン

(受賞者はマドリードでの舞台出演で欠席、共演者ハビエル・ヒネルが代理で受け取った)


◎助演女優賞
ノラ・ナバス(「Yo, adicto」)
ノミネート:タマラ・カセリャス、マリア・レオン、ロレト・マウレオン、クララ。サンス


◎助演男優賞
ポル・ロペス(「Nos vemos en otra vida」)
ノミネート:ミゲル・ベルナルドー、ハビエル・グティエレス、イバン・ペリセル、マノロ・ソロ


◎脚本賞 DAMA
アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス、エドゥアルド・ソラ(「Querer」)

(エドゥアルド・ソラ、アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス)
◎フェロス感動賞(フィクション)
「Polvo serán」(監督カルロス・マルケス=マルセ)
製作国スペイン=スイス=イタリア合作、スペイン語、英語、ミュージカル・ドラマ、106分、ガウディ賞2025作品賞を含む4冠、アンヘラ・モリーナ、アルフレッド・カストロ主演。

(カルロス・マルケス=マルセ監督)

◎フェロス感動賞(ノンフィクション)
「The Human Hibernation」(監督アンナ・コルヌデリャ・カストロ)
製作国スペイン、英語、SF、90分。第74回ベルリン映画祭2024「フォーラム」部門、FIPRESCI賞受賞、マル・デル・プラタFF、トゥールーズ・シネエスパーニャ、他ノミネート多数。スペイン公開2025年1月10日

(左から2人め、アンナ・コルヌデリャ)


◎フェロス栄誉賞
ハイメ・チャバリ、1943年マドリード生れ、監督、脚本家、演出家、また俳優でもあった。プレゼンターは、「Besos para todos」に出演したエンマ・スアレスでした。

(左端がプレゼンターのエンマ・スアレス)


*キャリア&フィルモグラフィー
★マドリードの公立映画学校で学ぶ。1970年「Ginebra en los infiernos」で長編映画デビューする。1976年、「Los viajes escolares」(仮題「修学旅行」)、個人的な複雑な問題を抱えた家族をテーマにしている。製作者エリアス・ケレヘタとのコラボレーションで注目されるようになる。最高のドキュメンタリーと称される「El desencanto」(76、仮題「失望」)を撮っている。有名な詩人レオポルド・パネロ一家のフランコ独裁時代における家族制度を分析している。シネマ・ライターズ・サークル賞1977作品賞、フォトグラマス・デ・プラタのスペイン映画出演者賞を受賞した。40年間という長きにわたって窒息させられてきたドキュメンタリーというジャンルに生命力を吹き込んでいる。
★1977年「A un Dios desconocido」(仮題「見知らぬ神に」)でエクトル・アルテリオとハビエル・エロリアガを起用して同性愛をテーマに取り入れている。サンセバスチャン映画祭サンセバスティアン賞(アルテリオ)、スペイン語映画賞などを受賞した。1980年、ケレヘタと脚本を共同執筆した「Dedicatoria」(「献身」)は、カンヌ映画祭コンペティション部門にノミネートされた。
★80年代には「Bearn o la sala de las munecas」(83,同「ベアルン、または人形の間」)では、フェルナンド・レイ、アンヘラ・モリーナ、アンパロ・ソレル・レアル、イマノル・アリアスなどが共演している。つづく「Las bicicletas son para el verano」(84、『自転車は夏のために』)は、スペイン映画史をひもとけば必ず紹介される秀作、スペイン内戦を背景にした或る家族の感受性豊かな物語が語られ商業的にも成功した作品で、2作とも製作者はアルフレッド・マタス。アンヘラ・モリーナ起用は5作品、その一つが1986年の「El río de oro」、ミュージカル「Las cosas del querer」(89、『歌と踊りと恋のいざこざ』)、その続編(95)などです。
★2000年、コメディ「Besos para todos」にエンマ・スアレスやピラール・ロペス・デ・アヤラ、エロイ・アソリンを起用して、ゴヤ賞監督賞にノミネートされた他、トゥリア賞を受賞した。2005年「Camarón」は、フラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラ(1992年没)のビオピック、カマロンを演じたオスカル・ハエナダにゴヤ賞主演男優賞をもたらし、他にも衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアー賞を受賞した。
★もう監督は引退したのかと思っていたコロナ禍の2022年、約17年振りにマルタ・ニエト、セルジ・ロペスなどのベテラン演技派、若手アドリアン・ラストラを起用したコメディ「La manzana de oro」を撮った。ほかビッキー・ペーニャ、ロベルト・エンリケス、ガルシア・ミラン、アルバロ・スビエスなど豪華キャストを揃えての群像劇、本人も神父役で出演している。フェルナンド・アランブルの小説の映画化、撮影監督キコ・デ・ラ・リカ(『ブランカニエベス』『ルシアとSEX』)、フィルム編集はアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』を手掛けているテレサ・フォントと文句なしの布陣でした。次回作もあるかもしれない。
第17回ガウディ賞2025結果発表*作品賞は「El 47」と「Polvo seran」 ― 2025年01月21日 19:14
予想通りマルセル・バレナの「El 47」が7冠を制す

★1月19日、バルセロナ国際会議センターで第17回ガウディ賞2025の結果発表がありました。予想通りというか下馬評通りというか、カタルーニャ語部門はマルセル・バレナの「El 47」でした。カタルーニャ語以外では、カルロス・マルケス=マルセのミュージカル・ドラマ「Polvo serán / They Will Be Dust」、新作はスペイン語で撮りましたが、彼はバルセロナ生れのカタルーニャ語の監督です。両カテゴリーともバルセロナ派が受賞したことになった。ガウディ賞の選考母体はカタルーニャ映画アカデミーですから、当然の結果とも言えます。
★「El 47」は、作品賞のほか主演男優・助演女優・プロダクション・衣装デザイン・視覚効果・メイクアップ&ヘアーの7冠、観客特別賞を含めると8冠でした。主演男優賞のエドゥアルド・フェルナンデスは、フォルケ賞をアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」で受賞しています。同じ年に主演と助演にノミネートされることはありますが、2作品で主演受賞は記憶にありません。助演女優賞のクララ・セグラは、昨年エレナ・マルティンの「Creatura」で受賞したばかりでした。今回は出席できず彼女の娘を演じたゾエ・ボナフォンテが代理でトロフィーを受け取りました。

(両手にトロフィーを手にしたマルセル・バレナ監督)
★「Polvo serán / They Will Be Dust」は、脚本はカルロス・マルケス=マルセ監督とクララ・ロケ(『リベルタード』)、コラル・クルス(『エクリプス』)の共同執筆、アンヘラ・モリーナ、スペインに移住したアルゼンチンのアルフレッド・カストロを主演に、人生の終末を描いた重いテーマをミュージカル・ドラマにした作品。トロント映画祭2024プラットフォーム賞、第69回バジャドリード映画祭銀の穂賞、ローマ映画祭ではアンヘラ・モリーナが女優賞を受賞している。作品賞以下、美術・編集・オリジナル音楽賞の4冠でした。

(カルロス・マルケス=マルセ監督)
★「Segundo premio」は、イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスが監督賞、バダホス出身の日系人タクロウ・タケウチTakuro Takeuchiが撮影賞、他に録音賞の3冠を受賞した。
★「Casa en flames」(監督ダニ・デ・ラ・オルデン)は、エンマ・ビララサウの主演女優賞、エンリク・アウケルの助演男優賞、エドゥアルド・ソラのオリジナル脚本賞の3冠でした。今回は未だガラのビデオを観てないのですが、アンダルシアからの移住者である「チャルネゴ charnego」のエドゥアルド・ソラの受賞スピーチが会場を沸かせたようです。チャルネゴというのはスペイン国内の非カタルーニャ語圏から移住した人を指す単語、彼の家族は全員カタルーニャ語が話せず、移住者に手を差し伸べてくれた公共教育のお蔭で今日があると感謝のスピーチをして、会場から拍手喝采を受けたようです。脚本家の受賞スピーチが話題になるのは珍しい。
*第17回ガウディ賞2025結果発表*
◎作品賞(カタルーニャ語部門)
「El 47」(監督マルセル・バレナ、製作者ラウラ・フェルナンデス・エスペソ、
ハビエル・メンデス)

(マルセル・バレナ監督)

◎作品賞(非カタルーニャ語部門)
「Polvo serán / They Will Be Dust」(監督カルロス・マルケス=マルセ、
製作者トノ・フォルゲラ、アリアドナ・ドット、ジョバンニ・ポンピリ、ダビ・エピネイ、他)

(カルロス・マルケス=マルセ監督)

(アンヘラ・モリーナはエンマ・ビララサウに敗れました)
◎監督賞
イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲス(「Segundo premio」)

(登壇したのはポル・ロドリゲス)
◎新人監督賞
セリア・ヒラルド(「Un lugar Común」)

◎主演女優賞
エンマ・ビララサウ(「Casa en flames」)

◎主演男優賞
エドゥアルド・フェルナンデス(「El 47」)

◎助演女優賞
クララ・セグラ(「El 47」)

(受賞者欠席のため代理でトロフィーを受け取ったゾエ・ボナフォンテ)
◎助演男優賞
エンリク・アウケル(「Casa en flames」)

◎新人俳優賞
ラウラ・ヴァイスマールWeissmahr(「Salve Maria」監督マル・コル)

◎オリジナル脚本賞
エドゥアルド・ソラ(「Casa en flames」)

(カタルーニャの手厚い公共教育に感謝の辞を述べた受賞者)
◎脚色賞
マル・コル&バレンティナ・ビソ(「Salve Maria」)

(受賞スピーチをするバレンティナ・ビソ)

(右が監督・脚本家のマル・コル)
◎編集賞
キアラ・ダイネゼ(「Polvo serán」)

◎オリジナル音楽賞
マリア・アルナル(「Polvo serán」)

◎撮影賞
タクロウ・タケウチ(「Segundo premio」)

◎プロダクション賞
カルロス・アポリナリオ「El 47」

◎美術賞
ライア・アテカ(「Polvo serán」)

◎衣装デザイン賞
オルガ・ロダル&イランツェ・オルティス(「El 47」)

(左オルガ・ロダル、イランツェ・オルテス)
◎メイクアップ&ヘアー賞
カロル・トルナリア(「El 47」)

◎録音賞
ディアナ・サグリスタ、アレハンドロ・カスティーリョ、アントニン・ダルマッソ、
エバ・バリニョ(「Segundo premio」)

(3人で登壇したが入手できたディアナ・サグリスタのフォト)

(エバ・バリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ、ディアナ・サグリスタ)
◎視覚効果賞
ラウラ・カナルス&イバン・ロペス・エルナンデス(「El 47」)
◎ドキュメンタリー賞
「Diari de la meva sextorsió」(監督・脚本パトリシア・フランケサ、製作パトリシア・フランケサ、ミレイア・グラエル・ビバンコス)

◎アニメーション賞
「Mariposas negras」(監督ダビ・バウテ、製作エドモン・ロッチ、他多数)

◎短編映画賞
「El príncep」(監督・脚本アレックス・サルダ、
製作カルロタ・コロモ、アドリア・ラウエルタ、マルタ・クルアニャス、ハビ・バラ)

(左側がアレックス・サルダ)
◎ヨーロッパ映画賞
『落下の解剖学』フランス、2023年(監督ジュステーヌ・トリエ、脚本アルチュール・アラリ&トリエ監督、製作マリー・アンジュ・ルシアーニ&ダビド・ティオン)

(受賞者欠席のため映画 WebサイトFilminの創設者ジャウマ・リポルが代理で受け取った)
◎観客特別賞
「El 47」(マルセル・バレナ)

(モデルになったマノロ・ビダルの孫娘ジョアナ・ビダルも登壇した)
★以上です。ざっと見渡すと受賞作にはゴヤ賞にもノミネートされているカテゴリーが多そうですが、果たしてどのくらい重なるでしょうか。
★今回主要メンバーで参加しましたが無冠に終った、ピラール・パロメロの「Los destellos」のチームは、ゴヤ賞でも5カテゴリーにノミネートされています。脚色賞のパロメロ、主演女優賞のパトリシア・ロペス・アルナイス、助演男優賞のアントニオ・デ・ラ・トーレ、新人女優賞のマリナ・ゲロラなどです。

(ロペス・アルナイス、監督、デ・ラ・トーレ、製作者のバレリー・デルピエール)
アイタナ・サンチェス=ヒホンにゴヤ栄誉賞2025*ゴヤ賞2025 ② ― 2024年12月17日 10:34
ゴヤ栄誉賞の女性最年少受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホンの軌跡

(ゴヤ栄誉賞2025受賞が発表された、10月17日フォトコール)
★前回に引き続き、ゴヤ栄誉賞受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホンのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。授賞理由、記者会見での受賞者コメントは前回に譲りますが、折に触れて紹介してきた記事と重なる部分があります。生涯功労賞の意味合いもある賞ですから56歳になったばかりは如何にも若い。それに現役バリバリですからフィルモグラフィーもこれで終わりにはならない。授賞発表が誕生日直前だったので55歳受賞になります。10年前の2015年、54歳という若さで受賞を打診されたアントニオ・バンデラスは最初固辞した経緯がありましたが、今回はすんなりいった。フアン・カルロス・フィッシャー演出の「La madre」の舞台に上がる寸前に、映画アカデミー会長から電話で知らせを受けたと語っている。
★アイタナ・サンチェス=ヒホン・デ・アンジェリス:映画、舞台、TVの女優。1968年11月5日、フランコ独裁を逃れてイタリアに亡命していたスペイン人の歴史学者でスペイン語翻訳家の父アンヘル・サンチェス=ヒホン・マルティネスと、イタリア人の数学教授フィオレラ・デ・アンジェリスの娘としてローマで生まれた。クリスチャンネームは、27年世代を代表する詩人で戯曲家のラファエル・アルベルティが名付け親、彼の娘アイタナ・アルベルティから採られた。イタリアとスペインの二重国籍、2002年造形アーティストのパピン・ルッカダンと結婚したが、2020年に離婚していたことを昨年の誕生会で明らかにした。2人の子供は既に成人している。1998年ホセ・ルイス・ボラウの後を継いで、女性初となるスペイン映画アカデミー会長を短期間だが務めている(~2000)。ローマ在住。

(毎回ベストドレッサーに選ばれるアイタナ、デザインはカロリナ・エレーラ、
宝石はカルティエ、ゴヤ賞2023ガラ、助演男優賞プレゼンターでした)
★フィルモグラフィー:劇場公開、ネット配信、DVD発売など邦題のある作品を中心に、未公開だが受賞歴のある作品、TVシリーズの話題作も含めて年代順にアップします。1986年、TVシリーズ、ペドロ・マソの「Segundo enseñanza」(13話)のうち7話に出演、キャリアをスタートする。続いて同年ホセ・マリア・フォルケの現実とフィクションを取り交ぜた「Romanza final(Gayarre)」で映画デビューした。19世紀のテノール歌手フリアン・ガヤレのビオピック、フリアンにホセ・カレーラスが扮した。アントニオ・ヒメネス=リコ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、そして1989年フェルナンド・コロモのコメディ「Bajarse al moro」でアントニオ・バンデラス、フアン・エチャノベ、ベロニカ・フォルケと共演、その演技が注目された。ペドロ・デ・ラ・ソタの「Viento de cólera」で主演、ムルシア・スペイン映画週間でパコ・ラバル女優賞を受賞した。

(4人とも若い、ベロニカは既に旅立っている、「Bajarse al moro」から)
★90年代にはいると、主役、準主役に抜擢され、受賞には至らずとも国際映画祭でのノミネートも増えていきました。1993年は特に収穫の年で、アントニ・ベルダゲルの「Havanera 1820」でシネマ・ライターズ・サークル女優賞、ピラール・ミロの「El pájaro de la felicidad」でメルセデス・サンピエトロの義理の娘を好演、メキシコのアルフォンソ・アラウの『雲の中で散歩』でキアヌ・リーヴスと共演、フォトグラマス・デ・プラタ女優賞ノミネート、アドルフォ・アリスタラインの「La ley de la frontera」のジャーナリスト役、マヌエル・ゴメス・ペレイラの『電話でアモーレ』で共演のハビエル・バルデム(ゴヤ賞受賞他多数)と揃ってACEプレミアを受賞した。筆名クラリン(レオポルド・アラス)の同名小説「La Regenta」(『ラ・レヘンタ/裁判官夫人』)をドラマ化したTVミニシリーズ(3話)でカルメロ・ゴメスと共演、共にフォトグラマス・デ・プラタ(TV部門)の女優、男優賞をそれぞれ受賞、さらに彼女はスペイン俳優組合の主演女優賞も受賞した。現在のスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテが監督と脚色を手掛けた話題作で、当時のお茶の間を釘付けにした。

(キアヌ・リーヴスと『雲の中で散歩』から)

(ドラマ「La Regenta」の裁判官夫人に扮したアイタナ)
★ハイメ・チャバリの「Sus ojos se cerraro y el mundo sigue andando」、アルゼンチンのフアン・ホセ・カンパネラのサスペンス『ラブ・ウォーク・イン』(「Ni el tiro del final」)の歌手役、ビセンテ・アランダの「Celos」、ビガス・ルナの「La camarera del Titanic」でトゥリア女優賞、ロルカの戯曲を映画化したメキシコのマリア・ノバロの「Yerma」では主人公イェルマ、夫フアンにフアン・ディエゴが扮した他、ギリシャのイレネ・パパスが老婆役で共演した。特筆すべきはビガス・ルナの『裸のマハ』のアルバ公爵夫人役でサンセバスチャン映画祭1999女優賞を受賞したが、ゴヤ賞にはノミネートさえされなかった。

(ゴヤ役のホルヘ・ぺルゴリアとアルバ公爵夫人のアイタナ)
★今世紀に入ると海外の監督からのオファーも多くなり、イタリアのガブリエレ・サルヴァトレスのミステリー『ぼくは怖くない』(「Io non ho paura」)、妊娠7カ月で撮影に臨んだエドゥアルド・コルテスの「Carta mortal」、アメリカのブラッド・アンダーソンのサイコスリラー『マシニスト』(バルセロナ映画祭主演女優賞)、アルゼンチンのルイス・プエンソの『娼婦と鯨』など、公開あるいは未公開だがDVDが発売され、日本でも字幕入りで見られる映画が増えていった。
★2000年後半、コルド・セラのホラー「Bosque de sombras」、ベントゥラ・ポンスの『密会1723号室』ではホセ・コロナドと共演、ゴンサロ・スアレスの「Oviedo Express」は、かつてTVでドラマ化されたクラリンの「La Regenta」をベースにして、舞台上演のため巡業している役者たちがオビエド急行でアストゥリアスに向かっているというロマンティック・コメディ。アイタナもカルメロ・ゴメスも同じ役で共演した。イタリアのシルヴィオ・ムッチーノ監督が主役も演じた「Parlami d'amore」(イタリア語)ではフランス人の人妻役だった。役柄によってスペイン人、イタリア人、フランス人を演じ分けた。
★2011年、パコ・アランゴのコメディ「Maktub」では、アルゼンチンのディエゴ・ペレッティとタッグを組み、アランゴはゴヤ賞新人監督賞にノミネートされた。イタリア映画だがマッテオ・ロヴェーレのラブコメ「Gli sfiorati」は未公開ながら『妹の誘惑』の邦題でDVD化されている。その後演劇にシフトして銀幕から遠ざかり、2018年のパトリシア・フェレイラの『ティ・マイ~希望のベトナム~』で戻ってきた。主役はカルメン・マチだが、ネットフリックスで配信された。アルモドバルの『パラレル・マザーズ』(ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、フェロス賞とイベロアメリカ・プラチナ賞受賞)、フラン・トーレスの『ラ・ヘファ:支配する者』、アントニオ・メンデス・エスパルサの「Que nadie duerme」(スペイン俳優組合&フェロス賞助演女優賞ノミネート)と受賞やノミネートが続いている。

(「Que nadie duerme」出演で、フェロス賞2024助演女優賞ノミネート)
★他に、サラゴサ映画祭2004サラゴサ市賞、アルメリア映画祭2022アルメリア・ティエラ・デ・シネ賞を受賞している。現在ネットフリックスTVシリーズ『レスピーラ/緊急救命室』(全16話)が8月から配信されている。主人公に『エリート』出演で人気上昇中のマヌ・リオス、アイタナの他ナイワ・ニムリ、ブランカ・スアレス、ボルハ・ルナなどベテラン勢が脇を固めているが、評価は厳しいか。
◎主なフィルモグラフィー(TVシリーズ、短編は除く)
1986「Romanza final(Gayarre)」ホセ・マリア・フォルケ
1987「Redondela」ペドロ・コスタ
1988「No hagas planes con Marga」ラファエル・アルカサル
「Remando al viento」ホラー、『幻の城 バイロンとシェリー』ゴンサロ・スアレス、
英語、公開
「Jarrapellejos」アントニオ・ヒメネス=リコ
1989「Bajarse al moro」コメディ、フェルナンド・コロモ
「El mar y el tiempo」フェルナンド・フェルナン・ゴメス
「Viento de cólera」ペドロ・デ・ラ・ソタ、
ムルシア・スペイン映画週間パコ・ラバル女優賞
1991「El laberinto griego」ラファエル・アルカサル
1992「El marido perfecto」ベダ・ドカンポ・フェイホー
1993「Havanera 1820」キューバ合作、アントニ・ベルダゲル、
シネマ・ライターズ・サークル女優賞
「El pájaro de la felicidad」ピラール・ミロ
1995「Un paseo por las nubes」『雲の中で散歩』メキシコ=米、アルフォンソ・アラウ、
公開1995
「La ley de la frontera」アルゼンチン合作、アドルフォ・アリスタライン
「Boca a boca」『電話でアモーレ』マヌエル・ゴメス・ペレイラ、公開1997
1997「Sus ojos se cerraro y el mundo sigue andando」アルゼンチン合作、
ハイメ・チャバリ
「Ni el tiro del final」『ラブ・ウォーク・イン』米=アルゼンチン、
フアン・ホセ・カンパネラ、英語、未公開、ビデオ発売1999
「La camarera del Titanic」仏=伊=独=西、ビガス・ルナ、トゥリア女優賞1998
1998「Yerma」ピラール・タボラ
1999「Celos」ビセンテ・アランダ
「Volavérunt」『裸のマハ』ビガス・ルナ、サンセバスチャン映画祭1999女優賞
2000「Sin dejar huella」メキシコ合作、マリア・ノバロ
2001「Mi dulce」イタリア合作、ヘスス・モラ・ガマ
「Hombres felices」ロベルト・サンティアゴ
2003「Io non ho paura」」『ぼくは怖くない』伊=西=米、スリラー、
ガブリエレ・サルヴァトレス、イタリア語、公開2004
2003「Carta mortal」クライム、エドゥアルド・コルテス
2004「El maquinista」『マシニスト』米合作、サイコスリラー、ブラッド・アンダーソン、
英語・スペイン語、バルセロナ映画女優賞、公開2005
2004「La puta y la ballena」『娼婦と鯨』アルゼンチン合作、ルイス・プエンソ、
未公開、DVD発売
2006「Bosque de sombras」スリラー、コルド・セラ
「Animales heridos」『密会1723号室』ベントゥラ・ポンス、未公開、DVD発売
2007「Oviedo Express」コメディ、ゴンサロ・スアレス
「La carta esférica」イマノル・ウリベ、ペレス=レベルテの小説の映画化
2008「Parlami d'amore」(スペイン題「Háblame de amor」)イタリア合作、
シルヴィオ・ムッチーノ、イタリア語
2011「Maktub」アルゼンチン合作、パコ・アランゴ
「Gli sfiorati」『妹の誘惑』ラブコメ、イタリア、マッテオ・ロヴェーレ、
イタリア語、DVD発売
2018「Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ~希望のベトナム』
パトリシア・フェレイラ、Netflix 配信
2021「Madres paralelas」『パラレル・マザーズ』ペドロ・アルモドバル、
ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、フェロス賞&イベロアメリカ・プラチナ賞受賞
2022「La jefa」『ラ・ヘファ:支配する者』フラン・トーレス、Netflix 配信
2023「Mi otro Jon」パコ・アランゴ
「Que nadie duerme」ルーマニア合作、アントニオ・メンデス・エスパルサ、
フェロス賞助演女優賞ノミネート
*「Que nadie duerme」とアイタナ・サンチェス=ヒホン紹介は、コチラ⇒2024年01月11日
*スペイン映画アカデミー金のメダル受賞記事は、コチラ⇒2015年08月01日/11月20日

(金のメダル2015をフアン・ディエゴと受賞する)
★ゴヤ賞2025ノミネート発表は、昨年より大分遅れましたが、現地グラナダから12月18日11:00とアナウンスされました。現地発表は今回が初、例年はマドリードの本部ですから珍しい。司会者はナタリア・デ・モリーナとアルバロ・セルバンテスの二人。
第39回ゴヤ賞2025栄誉賞にアイタナ・サンチェス=ヒホン*ゴヤ賞2025 ① ― 2024年12月09日 11:41
総合司会者にベテラン女優マリベル・ベルドゥとレオノール・ワトリング

(アイタナ・サンチェス=ヒホン)
★第39回ゴヤ賞2025の授賞式は、既に2月8日(土)のグラナダ開催が決まっておりました(グラナダ展示会議宮殿にて開催)。今年はノミネーション発表が遅れていますが、10月8日、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、グラナダ市長マリフラン・カラソ、副会長ラファエル・ポルテラ、グラナダ市議会文化評議員フアン・ラモン・フェレイラなどが出席して、イスラム建築であるサント・ドミンゴの王の間にてゴヤ賞の大枠が発表されました。

(映画アカデミー会長メンデス=レイテ、グラナダ市長マリフラン・カラソ)
★11月13日、ガラ当日の総合司会者の発表がありました。マリベル・ベルドゥとレオノール・ワトリング、日本でも公開作品の多い知名度抜群の女優二人が仕切ることになりました。

(総合司会者マリベル・ベルドゥ、レオノール・ワトリング)
★マリベル・ベルドゥ(マドリード1970)は「レオノールと私は親友同士、私たちは共にエネルギッシュです。二人ともやるべき仕事を理解しており、チームを組んでやります。だからガラでは、ご覧になってくださる方々が楽しめるよう司会することに務めます。ゴヤ賞という特別な夕べに愛をこめて取りくみます。どうか上手くいきますように!」と表明した。
*ゴヤ賞ではビセンテ・アランダの『アマンテス』(91)で初ノミネートされてから何回も対抗馬に敗れ、グラシア・ケレヘタの「Siete mesas de billar francés」(07)が「5度目の正直」となって受賞するまでの道程が長かった。しかしその後の怒涛の受賞歴は以下のキャリア紹介に譲ります。
*マリベル・ベルドゥのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2014年04月07日
★レオノール・ワトリング(マドリード1975)は「ゴヤ賞のガラに、私が尊敬するマリベルと一緒に司会することが夢でした。名誉なことでありますが責任も感じています。素晴らしいシナリオ作家たちが私たちと一緒だなんて何と力強いことでしょう!」と強調しました。やはりガラ全体を構成する脚本家の良し悪しが鍵を握っています。
*ゴヤ賞関連では、アントニオ・メルセロの「La hora de los valientes」(98)、イネス・パリス他の『マイ・マザー・ライクス・ウーマン』(02)でノミネートされただけです。デビューは1990年代初めですが、ビガス・ルナの『マルティナは海』(01)で日本初登場、次いで翌年アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』でブレイクした。バンド Marlango のボーカルとしても活躍している。
*レオノール・ワトリングのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年06月11日
ゴヤ栄誉賞2025の受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホン
★11月17日、スペイン映画アカデミーは、ゴヤ賞2025ゴヤ栄誉賞受賞者にアイタナ・サンチェス=ヒホン(ローマ1968)をアナウンスしました。映画のみならず舞台、TVシリーズで40年に及ぶキャリアの持ち主です。アカデミー理事会は「最初から仲間から愛され、尊敬され、批評家のみならず観客からの評価も高い」、メンデス=レイテ会長は「真面目で責任感が強く、有能で親密、すべての作品に誠実さと深みを与える方法を熟知している」ことを授賞理由に挙げました。

(インタビューを受ける受賞者、プレス会見にて)
★一方、アイタナは授賞の知らせに「圧倒され、とても感謝して幸せに浸っています」とコメント、また女優にとって栄誉賞は「名誉であり、仲間から愛されていると感じられる、映画ファミリーの一員であることを意味します。プロとして40年が経ちましたが、自分が愛されていると感じて感動しています。これからの前進の励みになります」と語った。

(メンデス=レイテ会長とアイタナ・サンチェス=ヒホン)
★過去の女性受賞者は8名、うち直近10年間の受賞者が5対5と男性と拮抗していて、やっと女性シネアストが評価される時代が到来したことを実感します(他の4人はアンヘラ・モリーナ、ぺパ・フローレス〈マリソル〉、マリサ・パレデス、アナ・ベレン)。今は亡きビガス・ルナの『裸のマハVolavérunt』のアルバ公爵夫人役でサンセバスチャン映画祭1999銀貝賞の女優賞を受賞、アルモドバルの『パラレル・マザーズ』(21)でゴヤ賞助演女優賞に初ノミネートされ、フェロス賞とイベロアメリカ・プラチナ賞には受賞した。別途紹介記事を予定していますが、スペイン映画アカデミー金のメダルをフアン・ディエゴと受賞した折に、紹介記事をアップしています。
*アイタナ・サンチェス=ヒホンの紹介記事は、コチラ⇒2015年08月01日
アルモドバルのドノスティア栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉙ ― 2024年09月29日 17:21
アルモドバルにドノスティア栄誉賞――プレゼンターはティルダ・スウィントン

★9月26日(木)クルサール・ホール、ペドロ・アルモドバルのドノスティア栄誉賞ガラが、スペイン首相ペドロ・サンチェス夫妻も出席して賑々しく行われました。受賞者は前日25日が75歳の誕生日だった由、サンセバスチャン映画祭に初めて参加したのは44年前、デビュー作『ペピ、ルシ、ボンと他大勢の娘たち』がニュー・ディレクターズ部門にノミネートされたときでした。そして今年、第81回ベネチアFFの金獅子賞を受賞したばかりの「The Room Next Door / La habitación de al lado」がセレモニーの後上映されました。本作は東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にラテンビート共催作品として『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の邦題で上映されます。

(左から、首相夫人ベゴーニャ・ゴメス、ペドロ・サンチェス首相、
ペドロ・アルモドバル、ティルダ・スウィントン、SSIFF2024ガラ、9月26日)
★プレゼンターはラ・マンチャの監督が英語で長編を撮った『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の主役の一人を演じたティルダ・スウィントン、彼女はジャン・コクトーの戯曲に基づいた短編『ヒューマン・ボイス』にも主演している。最後にスペインサイドの共演者、フアン・ディエゴ・ボット、ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズ、ビクトリア・ルエンゴも登壇して、受賞者を祝福しました。もう一人の主演者ジュリアン・ムーアは残念ながら不参加でした。プレゼンターはアルモドバルの映画について「人間的な親しみのこもった慰めをあたえ、私たちが必要としているときに私たちを明るくし」、「私たちを虜にし、楽しませ、感動させ、ほぼ半世紀を分かち合ってきた。そして終りの兆しが感じられない」と称揚した。


(トロフィーにキスするラ・マンチャの監督)


(お祝いのスピーチをするティルダ・スウィントン)
★受賞者は開口一番、会場に夫人を同伴して出席していたサンチェス首相に「文化を支援するためにここに来ていただき本当にありがとう」とまず感謝を送った。こう挨拶されては支援しないわけにいかないです。「私の映画を際立たせるものがあるとすれば、それは登場人物たちが享受している自由であり、自由がなければ人生は生きる価値がない」と語った。便箋4~5枚手にしていたから長い受賞スピーチだった。「私のような年齢でドノスティア賞を貰うのは終着を意味するかもしれない。これまでの行程のご褒美かもしれないが、私はそう思っていない。私にとって映画は、祝福か呪詛か、休むことなく脚本を書き監督すること以外の人生は考えられないし、仮にそれが酷い作品だったとしても作り続けるつもりだ、何故ならその反対は空っぽだからだ」とスピーチし、これからも映画を作り続けることが自分の命であり、映画なしの人生はあり得ないことを強調した。

(左から、ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズ、受賞者、ビクトリア・ルエンゴ、
フアン・ディエゴ・ボット、ティルダ・スウィントン)
★ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが主演する新作について「憎しみのメッセージが支配する現実において、私の映画はその反対です。共感、寄り添い、助け合うことを提案しています」と、かつてのキャバレー・アーティスト、危険を怖れずメロドラマを撮りつづけるアルモドバルは、これから上映される新作のほのめかしをした。
★1970年代に徒手空拳でマドリードにやってきた映画界の異端児の本祭登場は、先述したように1980年の『ペピ、ルシ、ボンと他大勢の娘たち』、その後セクション・オフィシアルに『セクシュリア』(82)、アウト・オブ・コンペティションに『私の秘密の花』(95)、1993年には「アルモドバルの夕べ」という特集が組まれている。またドノスティア栄誉賞のプレゼンター役で、1996年アル・パチーノ、2004年ウディ・アレン、2008年愛弟子アントニオ・バンデラスにトロフィーを手渡すためにやってきている。

★さらにメイド・イン・スペイン部門で『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、『トーク・トゥ・ハー』(02)、『バッド・エデュケーション』(04)、『ボルベール〈帰郷〉』(06)、『抱擁のかけら』(09)、『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)、『ジュリエッタ』(16)、『ペイン・アンド・グローリー』(19)が上映されている。因みに本賞は1986年から始まっており、スペインの受賞者としては8人目、受賞順に1999年フェルナンド・フェルナン=ゴメス、2001年パコ・ラバル、2008年アントニオ・バンデラス、2013年カルメン・マウラ、2019年ペネロペ・クルス、2023年ビクトル・エリセ、同ハビエル・バルデムです。
★ガラの司会者はバスク自治州ビスカヤ出身のエネコ・サガルドイ(1994)、バスク語とスペイン語で進行役を務めた。サガルドイは『アルツォの巨人』でゴヤ賞2018新人男優賞を受賞している、俳優、製作者、最近バスク語で短編「Betiko gaua / The Eternal Night」を監督、マラガ映画祭2023短編部門にノミネートされた。

(司会者エネコ・サガルドイ)
★ドノスティア栄誉賞ガラのフォト集(クルサール・ホールにて)

(右から2人目、ペドロ・サンチェス首相夫妻、会場にて)

(受賞者とティルダ・スウィントン)



(メリナ・マシューズ)


(ビクトリア・ルエンゴ)

(フアン・ディエゴ・ボット)

(ラウル・アレバロ)

(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』のスタッフ&キャスト、
制作会社エル・デセオのアグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシアを交えて)
*『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の記事は、コチラ⇒2024年06月18日
*『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』のきじは、コチラ⇒2023年05月04日
*『ヒューマン・ヴォイス』の記事は、コチラ⇒2020年08月16日
*『ペイン・アンド・グローリー』の記事は、コチラ⇒2019年04月22日
*『ジュリエッタ』の記事は、コチラ⇒2016年02月19日
*『アイム・ソー・エキサイテッド』の記事は、コチラ⇒2013年09月21日
映画国民賞受賞のマリア・サモラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉗ ― 2024年09月26日 15:31
製作者マリア・サモラに映画国民賞2024の授与式

(受賞者マリア・サモラ)
★9月21日タバカレラで、2024年の映画国民賞の授与式がありました。受賞者マリア・サモラ(バレンシア1976)は、カルラ・シモンや今年のセクション・オフィシアル審査委員長を務めるハイオネ・カンボルダなど、インディペンデント映画中心の作品を手掛けています。6月に受賞がアナウンスされていましたが、映画部門の授与式はサンセバスチャン映画祭と決まっており、副賞は30.000ユーロです。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省とスペイン映画アカデミーで、今回のプレゼンターはエルネスト・ウルタスン文化相でした。
*マリア・サモラのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2024年06月16日

(マリア・サモラとエルネスト・ウルタスン文化相)
★21日からコンペティション部門、その他の第1回目の上映が始まり、海外勢を含めた国内の監督、製作者、俳優がレッドカーペットに登場しました。これまで作品紹介をしてきましたチームを中心にフォトをアップします。まずは審査員メンバーから。
*キャリア紹介は、コチラ⇒2024年09月21日

(審査委員長スペインの監督ハイオネ・カンボルダ)

(審査員アルゼンチンの作家レイラ・ゲリエロ)

(審査員アメリカの俳優フラン・クランツ)

(審査員ギリシャの監督クリストス・ニク)

(審査員フランスの製作者キャロル・スコッタ)

(審査員オーストリアの監督ウルリヒ・ザイドル)
★セクション・オフィシアル出品作、イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka / I’m Nevenka」のチーム

(女優ミレイア・オリオル、監督、俳優ウルコ・オラサバル、9月21日)

(ボリャイン監督、共同脚本執筆者イサ・カンポ)
★セクション・オフィシアル出品作、「Conclave」のエドワード・ベルガー監督

★セクション・オフィシアル特別上映、カンヌ映画祭総代表のティエリー・フレモーのドキュメンタリー「Lumiere!, L’aventure continue」(16、『リュミエール!』)のチーム

(ティエリー・フレモーとエグゼクティブプロデューサーのマエル・アルノー)
★オリソンテス・ラティノス部門、「El jockey / Kill The Jockey」の監督と出演者たち

(ルイス・オルテガ監督)

(左から、ウルスラ・コルベロ、ナウエル・ぺレス・ビスカヤート、オルテガ監督、
マリアナ・ディ・ジロラモ)
ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉖ ― 2024年09月25日 17:59
ブランシェットにドノスティア栄誉賞―プレゼンターはアルフォンソ・キュアロン

★9月21日、ドノスティア栄誉賞2024の受賞者ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞の授与式がクルサール・ホールでありました。プレゼンターは、イギリスと米国の合作のTVミニシリーズ「Disclaimer」(24、7話)でタッグを組んだメキシコのアルフォンソ・キュアロン(クアロン)、受賞者の「厳格さと卓越した演技」を称賛しました。

(ハグしあうケイト・ブランシェットとアルフォンソ・キュアロン)
★ケイト・ブランシェット(メルボルン1969)は、紹介するまでもなくオーストラリアを代表するオスカー女優、主演女優賞(『ブルージャスミン』13)と助演女優賞(『アビエイター』04)と受賞、ノミネートは主演した『エリザベス』(98)、『エリザベス ゴールデン・エイジ』(07)、『キャロル』(15)、『TAR ター』(22)など4回、助演も含めると合計6回、IMDbによると合計218賞、288ノミネートとあり、今後も増え続けるでしょう。2022年から始まった国際ゴヤ賞の第1回受賞者でもあり、因みにプレゼンターはペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルスでした。アルモドバルも今回のドノスティア栄誉賞二人目の受賞者、授与式は26日の予定です。
*ブランシェットの国際ゴヤ賞受賞の記事は、コチラ⇒2022年02月13日
★「海外で仕事をするオーストラリアの女性として、多くの国境を越えて世界中を旅するという光栄に浴してきました。そして文化的、映画的な国境も超えた、この素晴らしく活気に満ちたバスクの映画祭で、この賞を受け取るのは名誉なことです」と感謝した。キュアロン監督のプレゼンに感謝し、自分を多くの場所に運んでいったキャリアは、折衷的で奇妙なものだと分析した。ただ共通するのは「知りたいという願望」であり、人間であることが何を意味するのか知りたいということです。私たちのようにものを作るのが仕事である場合、疑問や不確実性は付きまといます。謙虚に認めねばなりません。「私は知りません、だから学びに来ました」と言わねばなりません。性急に答えを見つけることには反対です。知らないことが私の一部になり、少しずつ理解が始まります。「知りたいという欲求」で旅は続きます。

(受賞スピーチをするケイト・ブランシェット)
ケイトを泣かせたジョージ・クルーニー、ビデオ祝辞はサプライズ!?
★ビデオ出演でヴェネチアから祝福を送ったのは、友人で共演者でもあったジョージ・クルーニーでした。「私はあなたを監督し、共演する幸運に恵まれました。周りの人たち皆に幸せをもたらしました。私はあなたの友人であることを誇りに思います」と。さらに演技を芸術レベルに高めたパフォーマーの一人だと称賛、マーロン・ブランド、キャサリン・ヘプバーン、モンゴメリー・クリフト、ジャック・ニコルソン、かつてのドノスティア栄誉賞受賞者でもあるメリル・ストリープとロバート・デ・ニーロの名前を挙げ、「ケイト、あなたもその一員になりました」と語りました。「私もそこへ行きたかったのですが行けません。今、ヴェネチアにいて飲んでいます。おまけにズボンを履いていません。しかし、もしズボンを履いてヴェネチアで飲んでなかったら、そこで一緒に乾杯したでしょう」とユーモアたっぷりに称賛した。涙で目張りが崩れるのを気にしながら「ファッキング・ジョージ!」とやっと一言お返ししました。


(ズボンを着用していないクルーニーの祝賀ビデオに涙するブランシェット)
★授与式の司会を務めたのは女優のマルタ・エトゥラでした。「卓越性とリスクに取りくむ」演技者、「メッセージを持った、強い女性で献身的な複雑なキャラクターに命を吹き込んだ」と称賛した。またフェミニズム、移民問題、母国オーストラリアの先住民に関連したプロジェクトの演出&製作を手掛けていることを強調した。米アカデミー以下の3桁に及ぶ受賞歴の紹介、多くの監督に愛され、例えばマーティン・スコセッシ、テレンス・マリック、スティーブン・ソダーバーグ、リドリー・スコット、サリー・ポッター、ウディ・アレン他を次々に列挙して、女優の幅広い活躍を称揚した。

(受賞者を称賛するマルタ・エトゥラ)
★ガラの後、ブランシェットの最新作となるコメディ・ホラー「Rumours」(24、カナダ=独=米合作)が上映された。カナダのガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ゲイレン・ジョンソンのトリオが監督している。カンヌ映画祭2024でプレミアされ、映画祭巡りをしている。

(中央がケイト・ブランシェット、ポスター)
★ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞関連のフォト集

(現地入りしたケイト・ブランシェット、出迎えた総ディレクター)

(恒例のサインをする)

(ファンサービスも怠りなく・・・)

(アルフォンソ・キュアロンとのツーショット)
ハビエル・バルデムのドノスティア栄誉賞授与式*サンセバスチャン映画祭2024 ㉕ ― 2024年09月23日 17:43
ハビエル・バルデム――1年遅れのドノスティア栄誉賞授与式

★9月20日、第72回サンセバスチャン映画祭が開幕しました。進行役の司会者はスペインを代表するコメディアン、アンドレウ・ブエナフエンテとベルト・ロメロのご両人、昨年ベロドロモ部門で上映されたTVシリーズ「El otro lado」(6話)の共演者、登壇早々舌戦をたたかわせて会場を沸かせました。もう一人がバスク出身の女優バルバラ・ゴエナガが、ユーモアに満ちた援護射撃でプレゼンターのミッションを果たしました。

(進行役のベルト・ロメロ、アンドレウ・ブエナフエンテ、バルバラ・ゴエナガ)
★セレモニーには昨年のドノスティア栄誉賞受賞者の一人、ハビエル・バルデムへの1年遅れの授与式、ヨルゴス・ランティモスの『哀れなるものたち』の国際映画批評家連盟賞FIPRESCI 2024 の授与式、スペインのウォルト・ディズニー・スタジオの総ディレクターマヌエル・ムロが登壇して、ブラジルの批評家エラ・ビッテンコートからトロフィーを受け取りました。またセクション・オフィシアルの審査委員長ハイオネ・カンボルダ以下審査員紹介、オープニング作品、フランスのオドレイ・ディヴァンの新作「Emmanuelle」の出演者ノエミ・メルラン、ウィル・シャープ、チャチャ・ホアン、ジェイミー・キャンベル・バウアーなどの紹介、上映などがありました。
★スペイン7人目となるドノスティア栄誉賞2023の受賞者ハビエル・バルデムの登壇は、拍手と歓声が鳴りやみませんでした。キャリア&フィルモグラフィー紹介は既に昨年アップ済みですが、背後のスクリーンに次々に映し出される『ハモンハモン』、『ペルディーダ』、『ライブ・フレッシュ』、『月曜日にひなたぼっこ』『海を飛ぶ夢』、『ノーカントリ―』、『007スカイフォール』、『ラビング・パブロ』、「El buen Patrón」エトセトラに、貰うのが遅すぎたのではないかと思うほどでした。
*ハビエル・バルデムのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年06月09日

(祝福する姉モニカ、兄カルロスとバルデム3姉弟)
★彼の本祭での受賞歴は、1994年にイマノル・ウリベの『時間切れの愛』とゴンサロ・スアレスの「El detective y la muerte」の2作により銀貝男優賞を受賞しただけで、これは大方の予想を裏切るサプライズ受賞でした。マリサ・パレデスからトロフィーを受け取ったまま「ありがとう」以外感涙でスピーチができず、そのまま会場の歓声に見送られて退場してしまったのでした。この前代未聞の映像が今夜も流れて、会場の拍手喝采を浴びていました。
★登壇したときから涙だった女優の姉モニカ・バルデム、作家で俳優の兄カルロス・バルデム、そしてプレゼンターは、受賞者の演技指導の師フアン・カルロス・コラッツァでした。1959年アルゼンチンのコルドバ出身の演出家兼演技指導者、1990年にスペインのアンダルシア演劇センターに招かれて来西、マドリードに演劇学校を設立、以来スペインで活動している。本校の優等生の一人バルデムに「ハビエル、芸術は社会を豊かにするために不可欠という信念をもって、芸術の壊れやすく神秘的な思潮への君の献身に、ありがとう」と断言しました。

(フアン・カルロス・コラッツァ、ハビエル)
★俳優の仕事は「真実と誠実さに関係がある」と教えてくれた恩師に感謝し、自分を見いだしてくれた今は亡きビガス・ルナ監督と女優だった母親ピラール・バルデムに、最後に会場にいる妻ペネロペ・クルス、二人の子供たちレオとルナにトロフィーを捧げました。姉弟3人抱き合って涙ナミダの退場でした。


(涙が止まらないペネロペ・クルス)
★以下、9月20日オープニング当日のフォト集

(FIPRESCI賞、マヌエル・ムロとエラ・ビッテンコート)

(コンペティション部門の審査委員長カンボツダ以下審査員、右から3人目が監督)

(開幕作品「Emmanuelle」のオドレイ・ディヴァン監督以下出演者たち
左から2人目が監督、レッドカーペットでのフォトコール)

(現地入りしたハビエル・バルデム)

(恒例のサインをするバルデム)

(ペネロペ・クルスと赤絨毯に登場したバルデム)
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