イベロアメリカ・フェニックス賞財政難で一旦休止のニュース2019年04月07日 15:29

             ない袖は振れない苦しい台所事情も政治がらみか?

 

      

                               (黒いフェニックスの卵)

 

★毎年初冬の11月に開催されていた「イベロアメリカ・フェニックス賞」が、メキシコ当局による財政援助が難しくなり、やむなく休止に追い込まれてしまいました。第1回が2014年でしたから、たったの5回しか開催されなかったことになります。イベロアメリカと銘打たれておりましたが、選考母体は2012年創設されたばかりの「Cinema 23」でメキシコ主導の映画賞、授賞式開催国は持ち回りでなくメキシコと決まっていました。元宗主国のスペインとポルトガルも参加してノミネーションはされましたが、グランプリに輝くことはついぞありませんでした。

 

     

      (第1回グランプリ作品ディエゴ・ケマダ=ディエスの「金の鳥籠」、授賞式から)

 

2017年には、TVシリーズ部門にNetflixオリジナル作品の参加を開始、Netflixに門戸を開いた。麻薬王エスコバルの誕生から死までを描いた『ナルコス』がドラマ部門で、コメディ部門でも『クラブ・デ・クエルボス』が受賞した。第5回の2018年には『ペーパー・ハウス』が受賞、さらに「ネットフリックス・プリマ・オペラ賞」を設けて盛上げに協力し始めていたのですが、所詮焼け石に水だったようです。

 

       

                (TVシリーズ部門、2018年受賞作『ペーパー・ハウス』Netflix

 

★本映画賞の二大資金援助はメキシコの連邦政府と地方政府だったようで、主催者によると両者の折合いが難航、回答が貰えなかったことが休止の主たる理由だという。メキシコ新大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドルは、一部の反汚職運動のような市民団体への助成金カットを数週間前に発表していた。政権批判をして論争のタネを振りまくNGOや文化団体には援助したくないのでしょう。そういう意味では本映画賞は、受賞作品を一瞥すれば一目瞭然、かなり政治的な色合いが濃く、援助カットの標的になってもおかしくない。第1回授賞式は、メキシコの麻薬密売組織に関係している政治家や警察関係者による学生43名の失踪殺害事件を厳しく批判、第5回はフェミニズム運動、特にアルゼンチンでの妊娠中絶合法化のシンボル緑のハンカチ運動など、毎年ラテンアメリカ諸国政府への「No」を鮮明にしている。

 

1回作品賞2014『金の鳥籠』(メキシコ)ディエゴ・ケマダ=ディエス監督

2回作品賞2015『ザ・クラブ』(チリ)パブロ・ラライン監督

3回作品賞2016『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(チリ)パブロ・ラライン監督

4回作品賞2017『ナチュラルウーマン』(チリ)セバスティアン・レリオ監督

5回作品賞2018『夏の鳥』(コロンビア)クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ共同監督

   

      

(第3回作品賞『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』の製作者フアン・デ・ディオス・ラライン、

    トロフィーを手にしたネルーダ役のルイス・ニェッコ、刑事役のG.G.ベルナル)

      

     

   

 (第4回作品賞『ナチュラルウーマン』で女優賞に輝いたダニエラ・ベガ)

  

 

     

(第5回作品賞『夏の鳥』ガラ、緑のハンカチを巻いたクリスティナ・ガジェゴ監督とスタッフ)

 

★残念なニュースですが、再開を願って2020年を待ちましょうか。