「短編」部門に選ばれたコロンビア映画*カンヌ映画祭2016 ③2016年05月12日 19:22

          メデジンの一断面を描く小児ポルノの犠牲者たち

 

 

★カンヌ映画祭の公式上映には他に「ドキュメンタリー」部門、「短編」部門などがありますが、前者にはスペイン語映画はゼロ、後者の10作品のなかに、スペインのフアンホ・ヒメネスTimecodeとコロンビアのシモン・メサ・ソトMadre(“Mother”)が生き残りました。シモン・メサ・ソトはカンヌ映画祭2014Leidiが短編部門のパルムドールを受賞した監督です。まずこちらからご紹介。全体的に昨年のコロンビア映画には目を見張るような勢いが感じられましたが、今年は比較的静かな印象です。今年の応募作品は約5000作、10作品に絞る作業も大変と思いますが、年々増加しているのではないでしょうか。審査委員長に河瀨直美がアナウンスされています。

カンヌ映画祭2014の“Leidi”の記事は、コチラ⇒2014年0530

 

          

               (短編デビュー作のポスター)

 

        Madre(“Mother”)2016

製作:Momento Film(スウェーデン)/ Evidencia Films(コロンビア) 協賛Alcaldía

監督・脚本:シモン・メサ・ソト

製作者:David Herdies(スウェーデン)、フランコ・ロジィ(コロンビア)

データ:コロンビア、スウェーデン合作、スペイン語、2016年、短編

カンヌ映画祭2016「短編」部門正式出品

 

解説:メデジンの丘の貧しい地区に暮らしている16歳の少女アンドレアの物語。ポルノ映画出演の依頼がくると、丘を下りて町の繁華街に出掛けていく。タイトルを〈Madre 母親〉とつけたのは、主人公の少女と母親との絆が語られるからだそうです。

 

      

         (中央のアンドレアに焦点を絞って撮られている)

 

★前作“Leidi”もコロンビア第二の都市メデジンが舞台でしたが、本作も同じです。コロンビアは6段階に分けられた特有の階級社会で、住む場所もおよそ決っている。ブラジルのファベーラも高い場所にあるが、コロンビアも同じようです。アンドレアのケースは珍しいことではなく、コロンビアで起きている現実の一断面にすぎないと監督。少女たちがポルノ映画のオーディションに駆けつけるのは普通のことで、それなりの需要があるということ、背景には小児性的虐待がある。どの国にも言えることだが、現実には目に見えないものが社会に潜んでいる。

 

★「物語は持ち込まれたものです。子供を搾取している実態について短編映画を作りたいが、とコンタクトをとってきた、これが始まりです」と監督。「生やさしいテーマではないし、誰だって語りたくない。切り口をどうするかが難しかった」。数カ月というもの自転車で街中を走り回って、福祉団体の戸を叩き、少女たちと話し合い、どのようにして小児ポルノの世界に出入りするのかをネットを通じて調査した。まずはポルノビデオに現れる少女たちを見ることだった。400人以上の少女たちに会い、その証言を映画のなかに流し込んだ。「一度足を踏み入れると抜けられず反復性があること、背後にある大きな問題が教育です。お金が欲しいという野心、もっとも大きいのが貧困問題です」「小児性的虐待はメデジンに限ったことではなく、カルタヘナやその他の都市でも起きていることだから全国展開して欲しい」と監督。

 

           

              (最近のシモン・メサ・ソト監督)

 

シモン・メサ・ソトSimón Mesa Soto1986年、アンティオキア県都メデジン生れ、監督、脚本家、製作者、編集者、撮影監督。アンティオキア大学マルチメディア&視聴覚コミュニケーション科卒、ロンドン・フィルム・スクールの映画監督科マスターコースで学ぶ奨学資金を得て留学、監督コースの他、撮影監督、撮影技師のプロジェクトに参加。中編Back Homeがロンドン・ナショナル・ギャラリーの録画(再放送用フィルム)部門の一部になった。これはLos tiempos muertos0935分)の英語題と思われるが確認できていない。ロンドン・フィルム・スクールの卒業制作として撮られたLeidiがカンヌ映画祭2014短編部門のパルムドールを受賞した。受賞はコロンビア初の快挙だったが、引き続きシカゴ、ロンドン、メルボルン、バンクーバー、サンパウロ、釜山など国際映画祭に出品、短編部門の賞を多数受賞している。イギリスで映画を学んだことで、仲間の英語映画の撮影監督や編集も手掛けている。

 

            

             (カンヌ映画祭2014授賞式にて)

 

★共同製作者フランコ・ロジィは、カンヌ映画祭2014の「批評家週間」にGente de bienがワールド・プレミアされた監督。二人はそれまで交流はなかったそうですが、カンヌで意気投合して次回作の製作に参加することにした。こういう国際映画祭での出会いは若い監督にとって刺激になります。スウェーデンのDavid Herdiesは、“Leidi”を見て感動、是非コラボしたいと申し出てくれたそうです。国内だけにとどまっていてはダメということです。

 

     

      (フランコ・ロジィの“Gente de bien”から)

 

フランコ・ロジィの“Gente de bien”の紹介記事は、コチラ⇒201458


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