アメリカン・ドリームの挫折を描いた”Callback”*マラガ映画祭2016 ⑨2016年05月03日 15:48

       監督と俳優が合作したスリラーが「金のジャスミン賞」

 

★オリジナル版の言語が英語という映画が作品賞を受賞した。スペイン語のできる英語話者が主人公の映画は珍しくなくなったが、カルレス・トラスCallbackは初めてのケースではないかと思う。10年ほど遡ってみたが該当する作品はなかった。ゴヤ賞を含め数々の賞に輝いたイサベル・コイシェの『あなたになら言える秘密のこと』(05)が同じケースだが、これはマラガでは上映されなかった。マラガは国際映画祭ではなく、スペイン語映画に特化している映画祭なのだが、製作国がスペインならOKという時代になったのでしょう。

 

★今回の金賞は大方の見方とは異なった結果になったようです。エル・パイスのレポートによると、話題の中心イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポLa propera pellセバスティアン・ボレンステインKóblic2作品に絞られていたそうです。開幕から観客の大きな輪ができていたのもこの2作品だった。つまり観客の受けはイマイチだったということかな。しかし審査員は結果的に“Callback”を選んだわけです。さて来年は第20回となる節目の年、大きなイベントが計画されているようです。 

       

           (マルティン・バシガルポをあしらったポスター)

 

    Callback2016

製作:Zabriskie Films / Glass Eye Pix

監督・脚本・製作者:カルレス・トラス

脚本(共同):マルティン・バシガルポ

撮影:フアン・セバスティアン・バスケス

編集:エマーヌエル・ティツィアーニ

製作者(共同):マルティン・バシガルポ、ラリー・フェッセンデン、ティモシー・ギブス、他

データ:スペイン=米国、オリジナル言語英語、2016年、スリラー、80分、マラガ映画祭2016上映427日他、バルセロナ映画祭428

 

キャスト:マルティン・バシガルポ(ラリー・デ・チェッコ)、リリー・スタイン(アレクサンドラ)、ラリー・フェッセンデン(ラリーの雇い主ジョー)、ティモシー・ギブス(福音派の牧師)

 

解説:ラリーは熱烈な福音主義のプロテスタント、引越し業者のもとで働いている。彼にはプロフェッショナルな大スターになるという夢があるがチャンスはなかなか巡ってこない。雇い主のジョーとは折り合いが悪く、孤独な一人暮らしを続けている。ある日、アレクサンドラという女性が彼の人生に入ってきたことでラリーの運命に転機が訪れる。運が向き始めたようにみえたが、ことごとく悪い方へ転がり始めてしまう。アメリカン・ドリームを抱いて一か八かやってくるが、ニューヨークのような大都会では多くの移民がフラストレーションと厳しい孤独に苦しむことになる。夢を果たせずに挫折する移民たちの物語。

      

     

        (最優秀男優賞を受賞したマルティン・バシガルポ、映画“Callback”から)

 

監督紹介:カルレス・トラスは、1974年バルセロナ生れ、監督、脚本家、製作者。カタルーニャ映画スタジオ・センター(CECC)で学ぶ。ベルリン映画祭の「Berlinale Talent Campus」の参加資格を得て、リドリー・スコット、スティーヴン・フリアーズ、ウォルター・サレス、クレール・ドニ、撮影監督クリストファー・ドイルなどのセミナーに出席した。長編映画は以下の通り:

2004Jovesラモン・テルメンスとの共同監督、バルセロナ映画賞新人監督賞受賞、他

2009Trashガウディ賞監督賞ノミネーション、他

2011Open 24H監督・製作者、ガウディ賞監督賞ノミネーション、他

2016Callback 

   

            (マラガ映画祭でのカルレス・トラス監督)

 

キャスト紹介マルティン・バシガルポはチリ生れ、1975年からニューヨーク在住の俳優、脚本家、製作者。ロンドン、ベラルーシ共倭国の首都ミンスクの芸術アカデミー、ニューヨークの名門演劇学校ステラ・アドラー・スタジオなどで演劇を学ぶ。舞台デビューは2003年の『ハムレット』、2008年『セールスマンの死』、ほか昨年2015は『三人姉妹』など。アメリカン・ルネッサンス・シアター・カンパニーのメンバー。

 

★映画、TVは、マーリー・エルナンデスの短編“La Reclusa”(2013USA、スペイン語、12分)でデビュー、アメリカのTVドラ“The Hunt with John Walsh”(2014,第4Victim 1話)に出演、本作が本格的な長編映画デビューとなる。初長編で最優秀男優賞受賞が決して棚ボタでないことは経歴が証明している。脚本には彼の体験が色濃く反映されている。

 

       

        (最優秀男優賞のトロフィーを掲げて、マルティン・バシガルポ)

 

リリー・スタインは本作アレクサンドラ役がデビュー作、ラリー・フェッセンデン1963年ニューヨーク生れ、ホラー映画でお目にかかっている。風貌がホラー映画『シャイニング』に出てくる太めのジャック・ニコルソンに似ている(笑)。ティモシー・ギブスは、1967年カリフォルニアのカラバサス生れ、劇場公開作品はないようだが、ダーレン・リン・バウズマンのサスペンス・ホラー『111111』(米西、20111111日にアメリカで公開、DVD)で主役を演じた。ほかにハイメ・ファレロのホラー・アクション『バンカー/地底要塞』(西、2015DVD)にも出演している。 

   

               (リリー・スタイン、映画から)

 

 

    

           (ラリー・フェッセンデン右側、映画から)

 

 

    

             (マラガ映画祭でのティモシー・ギブス)

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