イサキ・ラクエスタの新作はスリラー*マラガ映画祭2016 ⑥ ― 2016年04月29日 10:28
金貝賞受賞者ラクエスタ、金のジャスミン賞ゲットなら両賞受賞は初となる!
★「金のジャスミン賞」というのはマラガ映画祭の作品賞、「金貝賞」はサンセバスチャン映画祭の最高賞のことです。イサキ・ラクエスタは、2011年に長編6作目“Los pasos dobles”で「金貝賞」を受賞しています。マラガ映画祭は比較的若い監督に焦点が当てられているので将来的にも両賞の受賞は限られます。8作目となる本作はイサ・カンポとの共同監督、オリジナル版タイトルはカタルーニャ語の“La propera pell”、スペイン語は“La proxima piel”でマラガは字幕上映のようです。最初の候補作にはなかった作品、最終選考で浮上しました。イサキ・ラクエスタは“La leyenda del tiempo”(2006)が『時間の伝説』という邦題で上映されたことや、河瀨直美と短編ドキュメンタリー“Sinirgias:Las variaciones Naomi Kawase e Isaki Lacuesta”(09)を共同監督したことから若干認知度はあるでしょうか。

“La propera pell”(“La próxima piel”)2016
製作:Corte y Confeccion de pelicula/ La Termita Films / Sentido Films / Bord Cadre Films
協賛ICAA / ICCE / TV3 /Eurimage
監督・脚本・製作者(共同):イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ
脚本(共同):フェラン・アラウホ
撮影:ディエゴ・ドゥスエル
音楽:ヘラルド・ヒル
美術:ロヘル・ベリエス
編集:ドミ・パラ
製作者(共同):オリオル・マイモー、ラファエル・ポルテラ・フェレイレ、他
データ:スペイン、カタルーニャ語・フランス語・スペイン語、2016年、103分、スリラー、撮影地サジェント・デ・ガジェゴ(アラゴン州ウエスカ県北部)、バルセロナ。マラガ映画祭2016では4月28日上映。
キャスト:アレックス・モネール(レオ/ガブリエル)、エンマ・スアレス(母アナ)、セルジ・ロペス(伯父エンリク)、イゴール・スパコワスキー(従兄弟ジョアン)、ブリュノ・トデスキーニ(少年センターの指導員ミシェル)、グレタ・フェルナンデス(ガールフレンド)、ミケル・イグレシアス、シルビア・ベル、他
解説:8年前突然行方知れずとなった少年が、心の声に導かれて国境沿いのピレネーの小さい村に戻ってくる。もはやこの世の人ではないと誰もが信じており、家族さえ謎に満ちた少年の失踪を受け入れていた時だった。青年は果たして本当にあの行方不明になった子供なのか、またはただなりすましているのか、という疑いが少しずつ浮かぶようになってくる。
★前作“Murieron por encima de sus posibilidades”がサンセバスチャン映画祭2014コンペティション外で上映されて間もなく、次回作の発表がジローナであった。「8年前にほぼ脚本は完成していたが、製作会社が見つからずお蔵入りしていた。一人の女性と行方不明になっていた息子が10年ぶりに出会う物語です。フランスとの国境沿いのピレネーの村が舞台、このような地域は人によっては目新しく映る所です。ツーリストとその土地で暮らす人との違いを際立たせたい。季節は真冬、とても風土に密着した映画」とインタビューで語った。イサ・カンポと8年前から構想していたこと、製作会社、キャスト陣、11月3日にサジェント・デ・ガジェゴでクランクイン、撮影期間は6週間の予定などがアナウンスされた。

(本作撮影中のイサ・カンポとイサキ・ラクエスタ)
★最初の構想では母子の出会いは10年ぶりだったこと、まるで神かくしにあったかのように突然消えてしまった息子がピレネーの反対側、フランスの少年センターで発見されることなど若干の相違が見られます。製作会社のうちLa Termita Filmsは二人が設立しており、責任者は主にイサ・カンポのようです。製作会社が見つからなければ自分たちで作ってしまおう、というのが若いシネアストたちの方針なのでしょう。

(主役のガブリエルを演じたアレックス・モネール、映画から)
*監督紹介*
★イサキ・ラクエスタ Isaki Lacuesta :1975年、へロナ(カタルーニャ語ジローナ)生れ、監督、脚本家、製作者、両親はバスク出身。バルセロナ自治大学でオーディオビジュアル・コミュニケーションを学び、Pompeu Fabra 大学のドキュメンタリー創作科の修士号取得、ジローナ大学の文化コミュニケーションの学位取得。マラガ映画祭2011年エロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞している。現在は映画、音楽、文学についての執筆活動もしている。共同監督のイサ・カンポと結婚、二人三脚で映画を製作している。
*長編フィルモグラフィー(長編ドキュメンタリーを含む)*
2002“Cravan vs Cravan”
2006“La leyenda del tiempo”『時間の伝説』ラス・パルマス映画祭特別審査員賞受賞、アルメニアのエレバン映画祭の作品賞「銀のアプリコット賞」受賞、他
2009“Los condenados” サンセバスチャン映画祭FIPRESCI国際映画批評家連盟賞受賞
2010“La noche que no acaba”(ドキュメンタリー)
2011“El cuaderno de barro”(61分の中編ドキュメンタリー)ビアリッツ・オーディオビジュアル・プログラマー国際映画祭FIPA「音楽ライブ」部門ゴールデンFIPA受賞、ゴヤ賞2012ドキュメンタリー部門ノミネーション
2011“Los pasos dobles”サンセバスチャン映画祭2011金貝賞受賞作品、他
2014“Murieron por encima de sus posibilidades”コメディ、サンセバスチャン映画祭2014コンペティション外出品作品
2016“La propera pell”本作

(「金貝賞」のトロフィーを手にしたラクエスタ監督と脚本家イサ・カンポ、授賞式)
★第2作“La leyenda del tiempo”(『時間の伝説』)は二つのドラマ、カンタオールの家系に生まれた少年イスラの物語とカンタオーラを目指してスペインにやってきた日本女性マキコの物語を交錯させ、二人の出会いと喪失感を描いたもの。日本はフラメンコ愛好者がスペインを除くと世界で一番多い国ということか、あるいは日本女性(マキコ・マツムラ)が出演していたせいか、セルバンテス文化センター「土曜映画上映会」で2010年上映された(日本語字幕入り)。個人的には“Murieron por encima de sus posibilidades”のような100%フィクションのコメディが好みですが、あまり評価されなかった。ボクもワタシも仲間に入れてとばかり人気俳優が全員集合しての演技合戦、その中から今回の主役アレックス・モネール、エンマ・スアレス、セルジ・ロペスなどが起用されました。
★イサ・カンポ Isa Campo :1975年生れ、脚本家、監督、製作者。バルセロナのPompeu Fabra 大学の映画演出科で教鞭をとっている。ラクエスタとの脚本共同執筆歴が長く、“Los condenados”、“La noche que no acaba”、“El cuaderno de barro”、“Los pasos dobles”、“Murieron por encima de sus posibilidades”の5作でコラボしている。アルバ・ソトラのドキュメンタリー“Game Over”(15)は、ガウディ賞2016(ドキュメンタリー部門)で作品賞を受賞している。監督としては短編、ビデオ多数、本作が長編映画デビュー作である。最近1児の母になった。現在はウルグアイ出身のフェデリコ・ベイロフの脚本を執筆中、彼の最新作はサンセバスチャン映画祭2015で“El apóstata”(ウルグアイ、フランス、チリ合作)で審査員スペシャル・メンションを受賞した。ほかにコメディ“Acné”(08、アルゼンチン、メキシコ他との合作)が『アクネACNE』の邦題で短期間公開されている。

(“Murieron por encima de sus posibilidades”撮影頃のカンポとラクエスタ)
★キャスト陣:最近のエンマ・スアレスは話題作に出演している。若いころには上手い女優とは思わなかったが監督には恵まれている。年齢的にはおかしくないのですが、アルモドバルの“Julieta”でも母親役でした。セルジ・ロペスはポル・ロドリゲスの“Quatretondeta”で紹介したばかりです。

★若いアレックス・モネールは1995年バルセロナ生れ、上記したように“Murieron por encima de sus posibilidades”にチョイ役で出演しています。デビュー作はパウ・プレイシャスPreixasの“Héroes”(10)、パトリシア・フェレイラの話題作“Els nens salvatges”(“Los niños salvajes”)で3人の若者の一人に抜擢された。マリア・レオンとゴヤ・トレドが共演したベレン・マシアスの“Marsella”(14)、日本ではパコ・プラサの“[REC]3”(12)で登場しています。
*ベレン・マシアスの“Marsella”の記事は、コチラ⇒2015年

(セルジ・ロペスとアレックス・モネール、映画から)
★ブリュノ・トデスキーニは、1962年スイス生れ、フランス映画で活躍している。スペイン映画ではアグスティ・ビリャロンガの“El pasajero clandestino”(95)やヘラルド・エレロの“Territorio Comanche”(97)に出演している。しかし本拠地はフランス、パトリス・シェローのお気に入り、『王妃マルゴ』(94)、『愛する者よ、列車に乗れ』(98)に出演している。代表作は2003年のベルリン映画祭でシェロー監督が銀熊賞を受賞した『ソン・フレール―兄との約束』の難病に冒された兄役でしょうか。見続けるのがなかなか辛い映画でしたが、ルミエール賞受賞ほかセザール賞ノミネーションなどを受けた作品。

(左から2人目がブリュノ・トデスキーニ、アレックス・モネール、エンマ・スアレス)
*追記:『記憶の行方』の邦題で、Netflix 配信されました。
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