マラガ映画祭2016*オープニングはキケ・マイジョのスリラー ①2016年04月14日 18:33

    オープニングはコンペティション外からキケ・マイジョの“Toro”に決定

 

     

         (第19回マラガ映画祭2016ポスター)

 

★第19回マラガ映画祭は例年より若干後ろにずれて422日から、クロージングは51日と月を挟んでしまいました。オープニングは公平を期してかコンペティション外からキケ・マイジョの“Toro”に決定、正式出品は14作品、コルド・セラの“Gernika”と新人ポル・ロドリゲスの“Quatretondeta”が、下馬評では先頭を走っています。

 

          

              (マリオ・カサス“toro”のポスター)

 

★第1弾は、長編デビュー作『エヴァ』(“Eva”)でゴヤ賞2012新人監督賞やガウディ賞など複数受賞したキケ・マイジョToroからご紹介。ラテンビート2012上映『エヴァ』で日本でも認知度のあるキケ・マイジョ、前作は近未来2041年が舞台のSFでしたが、近作は現代のアンダルシアを舞台に2人の兄弟が織りなすスリラー・アクション、『エヴァ』とは大分様相が異なります。暗い過去を断ち切って5年ぶりに出所してきたトロにマリオ・カサス、ワルの兄ロペスにルイス・トサール、彼には小さな娘ディアナがいる。この3人によろ48時間のアンダルシアへの逃亡劇、ハリウッド並みのカーアクションで盛大に車が吹っ飛びます。スペイン映画ファンには両人ともお馴染みでしょう。

 

   

     (なんとも冴えない髪型の兄役トサールと泥沼に落ちるカサス、映画から)

 

       Toro2015

製作:Apaches Entertainment / Atresmedia Cine / Zircozine / Escandalo Films /

     Maestranza Films

監督:キケ・マイジョ

脚本:ラファエル・コボス、フェルナンド・ナバロ

撮影:アルナウ・バルス・コロメル

編集:エレナ・ルイス

美術:ぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモ

データ:スペイン、スペイン語、2015年、スリラー、マラガ映画祭2016オープニング上映422日、撮影地アルメリア、マラガ、トレモリノス他、米国公開予定

 

キャスト:マリオ・カサス(トロ)、ルイス・トサール(兄ロペス)、ホセ・サクリスタン(ロマノ)、クラウディア・カナル(ロペス娘ディアナ)、ホセ・マヌエル・ポガ、イングリッド・ガルシア・ヨンソン(エストレーリャ)、他

 

解説:トロは彼の人生を閉じ込めた長い5年間の刑期を終えて出所してきた。反逆したい気持ちを抑えて暗い過去を断ち切り、社会復帰を目指して新たな一歩を踏み出した。しかし彼を待っていたのは、小さな娘ディアナを連れて追われている古買人の兄ロペスだった。複雑な家族関係にある兄弟は、それぞれの命を救うために古疵を癒やすことなく和解せざるをえなかった。こうして三人の目まぐるしい48時間のアンダルシアへの逃避行が始まった。暗い過去から逃げようとしても逃げられないとき、人間はどうすればいいのだろうか?

 

★故買人は盗品の事実を知っていて売買する人、ロペスは危険な古買人だった。かつてトロが引き起こした悲惨な事件にはロペスが関係しているようです。ルイス・トサールは『プリズン211』で声を潰して以来、元に戻らないのか、すっかりワルが似合う役者の仲間入りをしたようです。マリオ・カサスは、『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』、『スガラムルディの魔女』など、今はアレックス・デ・ラ・イグレシアのお気に入りとなっています。ホセ・サクリスタンは、カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』のホントウの主人公になったスペイン映画の重鎮、この春やっと公開されてお目見えした。イングリッド・ガルシア・ヨンソンは、ハイメ・ロサーレスがカンヌ映画祭2014でプレミアした“Hermosa Juventud”でデビューしたスゥエーデン出身の才媛という言葉がぴったりする演技派女優(マドリード在住)、キャスト陣は不足なしでしょうか。ホセ・マヌエル・ポガはアルベルト・ロドリゲスの“Grupo 7”やハイメ・ロサーレスの“Miel de naranja”に出演している。

 

  

              (本作撮影中のキケ・マイジョ監督)

 

★スタッフ陣のうち脚本のラファエル・コボスは、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』や“Grupo 7”を手がけて、ロドリゲス監督の信頼が厚い。美術担当のぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモも『マーシュランド』組。脚本の共同執筆者フェルナンド・ナバロと撮影監督のアルナウ・バルス・コロメルはハビエル・ルイス・カルデラの『SPY TIME スパイ・タイム』を共に担当している。こうして纏めてみると、大体の輪郭が見えてきます。早ければ秋ごろ短期間かも知れませんが公開が期待できそうです。

 

特別賞の行方

本映画祭にはコンペティション以外に特別賞として本映画祭に貢献したシネアストに贈られるマラガ賞リカルド・フランコ賞エロイ・デ・ラ・イグレシア賞レトロスペクティブ賞「金の映画」ビスナガ・プラタ‘シウダ・デル・パライソ’があります。コンペの前段として受賞者の名前を簡単にお知らせいたします。判断材料として()内に昨年の受賞者を入れました。

 

マラガ賞(俳優アントニオ・デ・ラ・トーレ)

パス・ベガ(女優)

フリオ・メデムの『ルシアとSEX』(2001)でゴヤ賞新人賞他を受賞、2003年ビセンテ・アランダの『カルメン』、1999年米国のTVドラマ出演を期に軸足を海外に広げていった。2002年ベネズエラ人のオルソン・サラサールと結婚、ニ男一女の母。スペイン映画のスクリーンからは遠ざかっていますが、米国、フランス、イタリア、メキシコの映画に出ずっぱり、目下のところ海外活躍組です。 

 

カルド・フランコ賞(キコ・デ・ラ・リカ)

テレサ・フォント(映画編集者)

編集者は裏方なのでテレサ・フォントが受賞するのは嬉しい。今年「金の映画」を受賞する『アマンテス / 愛人』のビセンテ・アランダ監督の作品を数多く手がけた編集者。リカルド・フランコの“Berlin Blues”(88)、ビガス・ルナの『ハモンハモン』、3人とも既に鬼籍入り、20年前のアレックス・デ・ラ・イグレシアのホラー『ビースト 獣の日』も編集した。

 

 

エロイ・デ・ラ・イグレシア賞(監督・脚本家・俳優パコ・レオン)

サンティアゴ‘サンティ’アモデオ・オヘダ(監督・脚本家・ミュージシャン)

1969年セビーリャ生れ、ギタリスト、作曲家など多彩な顔をもつ。脚本家として出発、同郷のアルベルト・ロドリゲスとのコラボの後、長編映画“Astronautas”(03)でデビュー、ゴヤ賞新人監督賞にノミネートされた。続く2006Cabeza de Perros”は上海映画祭2007に出品、国際的にも評価される。2013年“Quién mató a Bambi”ほか。昨年のコンペティション部門審査員を務めた。

 

 

 

レトロスペクティブ賞(監督イサベル・コイシェ)

グラシア・ケレヘタ(監督)

今年も女性監督が受賞、当ブログではゴヤ賞2015作品賞ノミネーション、スペイン映画アカデミー副会長就任の記事など含めて度々ご紹介しています。

 

 

「金の映画」(オーソン・ウェルズの『フォルスタッフ』)

『アマンテス / 愛人』1991)監督ビセンテ・アランダ

主演者ビクトリア・アブリル、ホルヘ・サンス、マリベル・ベルドゥ。ゴヤ賞1992の作品賞・監督賞受賞作品。ベルリン映画祭でビクトリア・アブリルが主演女優賞を受賞、アランダの名を国際的に高めた作品。     監督と本作についての記事は、コチラ⇒201566

 

     

        (ビクトリア・アブリルとホルヘ・サンス、映画から)

 

  

ビスナガ・プラタ‘シウダ・デル・パライソ’(女優フリエタ・セラノ)

エミリオ・グティエレス・カバ(映画と舞台俳優)

1942年バジャドリード生れ、パスクアル・アルバの曾孫、イレーネ・アルバの孫、エミリオ・グティエレスとイレーネ・カバ・アルバの息子、レオカディア・アルバの甥の息子・・・と延々と続く有名なシネアスト一家。子役時代を含めると長い芸歴です。カルロス・サウラがエリアス・ケレヘタとタッグを組み、ベルリン映画祭1966銀熊監督賞を受賞した『狩り』(1965)に出演、4人の兎狩り仲間の一番若い青年役だった。アレックス・デ・ラ・イグレシアのブラック・コメディ『13みんなのしあわせ』(La Comunidad)と2002年のミゲル・アルバラデホの“El cielo abierto”でゴヤ賞助演男優賞を連続受賞、マラガ映画祭1998にも同監督の“La primera noche de mi vida”で最優秀男優賞を受賞している。

 

 

各賞の特徴と性格についてはマラガ映画祭2014にアップ、コチラ⇒201447