新人監督賞候補レティシア・ドレラ*ゴヤ賞2016ノミネーション ⑧ ― 2016年01月19日 14:58
マラガ映画祭で新人脚本家賞を受賞したレティシア・ドレラ
★マラガ映画祭2015では時間切れでアップできなかった“Requisitos para ser una persona normal”という長たらしいタイトルでデビューした監督。日本ではパコ・プラサのホラー『REC 3ジェネシス』の女優として知られています。本作は4シリーズの中でも国内外ともに不評で、残念ながら「ただのゾンビ映画」と怒るホラー・ファンもおり、当たらずとも遠からずでした。しかしこの映画が縁結びの神様になって二人は結婚しました。8歳の年齢差など昨今では珍しくありませんね。

(ボルハとマリアの等身大人形に挟まれて、レティシア・ドレラ、プレス会見で)
★ゴヤ賞絡みでは作品賞の候補になっているパウラ・オルティスの“La novia”に主人公レオナルドの妻役で出演しています。出発は女優、写真でも分かるように大変な美人、そのうえ頭もよくて、「天は二物を与えず」といいますが、時にはこのような不公平が出来してしまいます。マラガ映画祭では自身が新人脚本家賞、ダビ・ガジャルトが編集賞を受賞しました。
“Requisitos para ser una persona normal”2015
製作:Corte y Confeccion de pelicuras / Estomagode la Vaca / El / テレフォニカ・スタジオ
監督・脚本:レティシア・ドレラ
撮影:マルク・ゴメス・デル・モラル
音楽:ルテア・サロム
編集:ダビ・ガジャルト
キャスティング:ミレイア・フアレス
製作者:(エグゼクティブ・プロデューサー)パコ・プラサ、(同)オリオル・マイモー、
ガブリエル・アリアス・サルガド
データ:スペイン、スペイン語、2015年、90分、ロマンティック・コメディ、撮影地バルセロナほか、スペイン公開6月4日
受賞歴・ノミネーション:マラガ映画祭2015新人脚本家賞、編集賞、撮影賞を受賞。フェロス賞2016ノミネーション「コメディ」部門作品賞、ポスター賞、予告編賞、ゴヤ賞ノミネーション新人監督賞、新人男優賞(マヌエル・ブルケ)、編集賞、いずれも発表待ち。
キャスト:レティシア・ドレラ(マリア)、マヌエル・ブルケ(ボルハ)、ミキ・エスパルベ(グスタボ)、ジョルディ・Llodra(アレックス)、カルメン・マチ(友人)、シルビア・ムン(バルバラ)、ダビ・ベルダゲル、アレクサンドラ・ヒメネス(クリスティナ)、他
*ゴチック体はゴヤ賞にノミネーションを受けたカテゴリー
プロット:30歳になる一風変わったマリアの物語。彼女には〈普通の人〉になりたいという目標がある。それにはまず普通の人とはどういう人なのかを定義しなければならないだろう。マリアは自分の人生に物事を無理に嵌めこめないほうがいいと考える。仕事を持たない、家賃を払わないため借りていたアパートを追い出され、家族との関係を絶ち、ずっと前から取るに足りないとロマンティックな恋もしていない。仕事の面接官が「じゃ、あなたのなりたい人はどんなタイプなの?」「普通の人よ」「分かったわ、じゃ普通の人ってどんな人?」・・・そこで弟アレックスの助けを借りて、〈普通の人〉の必要条件リスト作りをはじめることに。例えば、仕事、家、伴侶、社会生活、趣味などをリストアップしてみた。そんななかでマリアは減量に無我夢中のダイエット青年ボルハに出会う。彼女はボルハの減量指南、ボルハはマリアの普通の人作戦の手助けに協力することになる。

(太めのボルハ役マヌエル・ブルケとマリア役のレティシア・ドレラ、映画から)
★レティシア・ドレラのキャリアとフィルモグラフィー:1981年バルセロナ生れ、女優、脚本家、監督、プロデューサー。ロスアンゼルスのエリック・モリスの演技スタジオ、マドリードのフアン・カルロス・コラッサの学校で演技を学ぶ。声楽をスサナ・ドメニック、ジャズをカレン・タフト(マドリード)、クラシックバレエをココ・コミン(バルセロナ)などに師事する。テレビ女優として出発、人気シリーズ“Al salir de clase”(2000~02)のアンヘラ役で389話に出演、他にテレドラでは“Los Serrano”や“Hospital Central”“Guante blanco”が有名。

(本作撮影中の監督)
★長編映画デビューは2002年のエミリオ・マルティネス=ラサロの『ベッドの向こう側』、この邦題はセルバンテス文化センターで上映されたときのもので日本語字幕はなかったと思います。先述した『REC 3ジェネシス』では、トゥリア女優賞とサン・ジョルディ女優賞を受賞、未公開だがパウラ・オルティスのデビュー作“De tu ventana a la mia”(12)で演じたビオレタ役でもサン・ジョルディ女優賞を受賞した。公開作品ではアレックス&ダビ・パストール兄弟の『ラスト・デイズ』(13)に出演している。そして最新作が長編監督デビュー作でもある本作、主人公のマリアを演じている。
★監督としては、短編“Lo siento, te quiero”(09)、“A o B”(10)など、前者はガウディ賞短編部門でノミネーション、後者は2010年のファンタジック・フェスで短編ファンタジック賞を受賞した。私生活での伴侶は『REC 3ジェネシス』の監督パコ・プラサ。彼は本作のエグゼクティブ・プロデューサーの一人。彼女も彼の短編“Luna di miele”などにプロデューサーとして参画、互いにプロモーションに尽力している。プラサ監督は「スペインホラー映画上映会」(セルバンテス文化センター、2014年7月)が開催されたおり来日して、ホラー映画についてのトークに出席、『REC 3ジェネシス』も上映された。

(パコ・プラサとレティシア・ドレラ、『REC 3ジェネシス』のプレス会見で)
★スペイン公開日に集合した若いシネアストたち マラガ映画祭から程ない6月4日に公開され、ゴヤ・トレド、エドゥアルド・ノリエガ、マカレナ・ガルシアなどの俳優たち、パコ・レオン監督、勿論パコ・プラサも応援に馳せつけた。出席できなかった人は、例えばブランカ・スアレスのようにお祝いの言葉をツイートしている。各映画祭で常にベストドレッサーとして賞賛される「赤絨毯の華」も、いよいよ監督デビューした。間もなく発表になるフェロス賞にはどんなドレスで現れるのか。
★世の中に普通の人などおりません インタビューから見えてくるレティシア・ドレラの人物像はすこぶる明快です。要約すると・・・
Q「この度どうして脚本家や監督という新しい仕事を始めたのですか」
A「あら、自然の成り行きなの。私は物語を語りたい、伝えたいという必要から女優になりました。ずっと女優をしていて脚本家、監督、演技者という具合に区別する必要がないと考えるようになった。現在は女優としてTVドラ・シリーズに出演していますが、同時に脚本執筆を両立させています」
Q「この映画には自伝的な要素が含まれていますか」
A「いいえ。しかし物語の視点は疑いなくとても個人的なものです。脚本のセンセーショナルな部分は、私を含めて皆が自分の人生のどこかで出会うことだと思っています。自分の生き方を変えたい、今よりましな人生があるに違いない、よりハッピーになりたい、そんなこんなが挿入されています。絶え間ないフラストレーションに晒されていますから、幸せを熱望するのです」
Q「あなたにとって普通とはどういうことですか」
A「誰も普通の人ではありません。すべての人がかけがえのない唯一人の特別な人です」
*映画館を後にするとき、ハッピーな気分になれるようです。
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