ダビ・トゥルエバの新作*ラテンビート2014 最終回2014年11月21日 17:24

★本作がアカデミー賞スペイン代表作品に決定したこと、このスペイン的色彩の濃い映画がノミネーション5作品まで辿りつける可能性は少ないこと、10月半ばロスアンゼルスで開催された「スペイン映画祭」のオープニング作品に選ばれ、トゥルエバ監督がプロモーションを兼ねてロス入りしたことなどはお知らせしました。監督の親戚が住んでいるロスでは、今ではアメリカ人になっている大勢の従兄弟たちが応援に馳せつけ嵐のようなベソとハグを受けたようです。1915年、カリフォルニアの炭鉱で一旗揚げようと渡米したエウロヒオおじさんの三世にあたる子孫かな、何しろ1世紀前ですから。アメリカ陸軍に志願、そこで学んだ理容の技術を活かして、除隊後ロスで理髪店を開業した。

 

★ラテンビートのチラシによると、松竹メディア事情部提供とあるので、公開またはDVD発売が検討されているのだろうか。間もなく公開される『スガラムルディの魔女』他の配給会社、来年には邦題は未定だが、ガベ・イバニェスのSFAutomataを公開してくれる。アントニオ・バンデラスが主役ということで「ゴヤ栄誉賞2015サンセバスチャン映画祭の記事で既にご紹介しています。 


★東京会場では上映のなかった唯一の作品、横浜会場のチケットは完売でした。当日の朝、予約を入れなかったら危うく涙の帰宅になるところでした。涙は館内で流さないといけません。こんなに素敵なハビエル・カマラを見たことなかった。ゴヤ賞主演男優賞の名に恥じない演技に感動、「ノスタルジック」とか「メランコリー」とか、前作Madrid 19872011)をより高く評価する評者もいるようですが、カマラの演技を貶す人は見当たりませんでした。

 

Vivir es fácil con los ojos cerrados(“Living is Easy With Eyes Closed”)

製作:フェルナンド・トゥルエバ P.C. S.A.
(クリスティナ・ウエテ フェルナンデス=マキエイラ)ゴヤ賞作品賞受賞

監督・脚本:ダビ・トゥルエバ (ゴヤ賞監督賞・オリジナル脚本賞受賞

撮影:ダニエル・ビラル

音楽:パット・メセニー  チャーリー・ヘイデン(同オリジナル作曲賞受賞

ゴヤ賞受賞:主演男優賞(ハビエル・カマラ)、新人女優賞(ナタリア・デ・モリーナ)

同ノミネート:衣装デザイン賞(ララ・ウエテ)

 

キャスト:ハビエル・カマラ(アントニオ)、ナタリア・デ・モリーナ(ベレン)、フランセスク・コロメル(フアンホ)、ホルヘ・サンス(フアンホ父)、アリアドナ・ヒル(フアンホ母)、ロヘリオ・フェルナンデス(ブルーノ)、ラモン・フォンセレ(ブルーノの父ラモン)他

ザ・ビートルズのジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ポール・マッカートニーの記録映像で登場。

 

データ:スペイン、スペイン語、2013コメディ、108分、撮影地:アルメリア県(アンダルシア州) 20131031日スペイン公開、他

サンセバスチャン映画祭2013コンペティション正式出品。

パーム・スプリングス映画祭2014「ラテン映画賞」受賞。カリフォルニア州のパーム・スプリングス市で1月に開催される国際映画祭。アマ・エスカランテの『エリ』と賞を分かち合いました。

 

プロット1966年、ジョン・レノンが映画撮影のためアルメリアにやって来る。ビートルズの歌を教材に英語を教えていた高校教師のアントニオは、自分のヒーローに会おうと決心、休暇をとって短い旅に出る。道中何かから逃げてきたらしい若い娘ベレン、16歳のミニ家出少年フアンホが仲間に加わり、1966年のアルメリアは3人にとって生涯忘れることができない季節になる。

 

     無名の人が物語の主人公になった

 

A: ハビエル・カマラが扮した英語教師アントニオにはモデルがいる。監督によると、2006年のことだがアドルフォ・イグレシアスという記者が書いた「カルタヘナの英語教師」という記事を目にした。フアン・カリオンという美声の英語教師がビートルズの歌を使って英語を教えている。そしてジョン・レノンが映画撮影のためアルメリアにやって来るというので会いに出掛けた、という記事です。

B: モデルといっても、この記事に着想を得たというだけで、殆どフィクションですよね。

A: 勿論、登場人物の造形段階では取材していない。トゥルエバは確かな情報を収集して、それを土台に伝記映画を作ろうとしたわけではありませんからね。しかし撮影現場にはカリオン氏も現れて当時の状況などを若い出演者にサジェスチョンしたようです。

B: ゴヤ賞授賞式には監督の隣りに座っていました。オリジナル脚本賞は「あなたのものです」と挨拶していた。 

           
        (監督、カリオン氏 オスカー賞スペイン代表作品に選ばれる)

 

A: ビートルズ・ファンなら題名を見て、ジョン・レノンの永遠に残る「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」(1967)から取られたことが分かります。ビートルズ映画を撮った監督リチャード・レスターの『ジョン・レノンの僕の戦争』撮影のため、レノンは実際にアルメリアに滞在していた。

B: ライヴ・ツアーを一時中止していて、精神的にちょっと参っていた時期ですね。オノ・ヨーコと出会うのは同年11月です。しかしこれはレノンの伝記映画でもない。

A: 監督は、フアン・カリオンの伝記映画でもレノンのでもない、或る時代の、1960年代のスペインの「肖像画」を描こうとした。つまり、無名の人を物語の主人公にしたわけです。時代は1966年、フランコ体制も26年が過ぎた灰色のスペインだった。アルメリアの人々は農業と漁業に従事して生活は貧しく、自由に憧れる若者にとってビートルズはまさにヒーロー、希望の星でもあった。

 

B: そこに先輩監督フアン・アントニオ・バルデムがフランコ没後の第1作として撮ったコメディ“El puente”(1977**がひらめいた。

A: 主役のアルフレッド・ランダが夏季休暇を利用してバイクリードからトレモリノスへ旅をする話で、一種のロード・ムービーでした。そこでカリオン氏のカルタヘナ(ムルシア州)をアルバセテ(カスティリャ=ラマンチャ州)に変更してオリジナル脚本を書いたというわけです。

B: 舞台となるアルメリア(県都)もかれこれ40年も経てば様変わりしていて、60年代を再現するのは難しかったそうですね。

A: ロケ地探しには苦労したと語っています。アルメリア県内の内陸部のタベルナス、ロダルキラル、地中海沿いの「カボ・デ・ガタ」などで撮影は行われた。

 

原題“How I Won the War”(1967、パトリック・ライアンの同名小説の映画化。未公開だったがビデオが発売されたときに付けられた邦題(廃盤)。戦争の愚かさをブラック・ユーモアで笑い飛ばした映画で、本作のメタファーになっている。

**直訳は「橋」ですが、休日に挟まれた平日に「橋」をかけて連休にする意味もあり、ここでは「夏季休暇」がベターかも。

 

     アントニオとレノンは“Help”と叫んでいた!

 

A: 1966年のスペインでは、まだ英語が話せる人はほんの少数派、文部省の人たちは、スペイン語という先祖伝来の言葉があるのに英語を学ぶなんて余計なこと、と傲慢にも全く英語教育に気を配らなかったそうです。

B: だから地方の一介の英語教師がビートルズの歌詞を使って子供に英語を教えているのは画期的なことだった。更にビートルズたちがこの歌詞の中に何を込めて歌っているのか知ることはもっと重要だった。

A: 主人公アントニオは、肩に背負っていた重い荷物は取りあえずここに下ろして、自分を解放するための旅に出たかった。レノンもロック・スターの頂点を極めたが孤独に苦しんでいて「ヘルプ!」と叫んでいた。

B: アントニオも村のバルの主人ラモンも、世界から遅れた古くさいスペイン、力ずくで子どもを躾けようとしたり、長髪はなよなよしたゲイだから短くしろとか、そういう子供っぽいスペインに変化が必要と考えていた人たちです。

 

A: フアンホの父親は旧弊な父権的な人ではありませんが、規律を重んじるタイプですね。多分実のお父さんが投影されていると思います。監督は8人兄弟姉妹の末っ子、母親に甘やかされて7歳まで学校に行かなかった話は有名。父親はタイプライターの訪問販売業を営み、そのタイプライターで幼少時から物を書いていたという早熟な子供だった。

B: 『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』(ラテンビート2013上映)で初来日したフェルナンド・トゥルエバ監督は実のお兄さん。

 


A: この映画で彫刻家のモデルになったのが1992年交通事故のため42歳で亡くなった長兄マキシモです。フアンホのモデルは、16歳のとき長髪を切るのを拒絶して3日間家出したお兄さんだと語っています。映画では一番上に見えましたから、そうするとマキシモ兄さんかもしれない。
(来日
Q&A記事はコチラ⇒20131031

B: いずれにしてもホルヘ・サンス扮する父親のモデルは実父かもしれない。

A: 彼は作中では子沢山でしたが、実生活でも『バレンチナ物語』で共演したパロマ・ゴメスと結婚、パパになったと報じられましたが、早くも結婚を解消して、現在はジャーナリストのオルガ・マルセと親密交際中、妊娠説も流れたが否定しています()

 

     ジョン・レノンが見たら気に入った?

 

A: この奇妙なトリオの設定は、実際にはあり得ないですが、センチメンタルなロード・ムービーだと酷評するほどじゃない。三人とも暗い現実からか、先が見えない未来からか分からないが、何かから逃げてきています。しかし他人を思いやることが必要だと分かっている。友情が芽生え、やがてアモールになっていく。

B: 声高なセリフはありませんが、何故か胸を打つ。小さい物語ですが、ホロ苦いユーモア、優しさ、リリシズムに溢れている。

A: それに複雑に入り組んだ感情の動きも見逃せない。これが監督がずっと求めてきたことなんだと思います。実らないと思うが、アントニオはベレンがきっと好きになってしまったんだ、と観客が思った通りになる()

B: メランコリー・コメディと言う人も、おセンチすぎると感じる人もいるでしょうが、こういうオハナシはいい。厳しい現実を前にして感性が鈍感な人物、力強さと優しさを併せ持つ人物を、よく調和させている。

 

A: アントニオの人格にはレノンと似ているところがあって、それが流れ込んでいる。

B: 村のバルの主人も印象に残る。一見すると負け組に見えるが実はそうではない。絶望しているわけでも人生を諦めているわけではない。

A: しかし、待つだけの人生は辛いとね。アクションが必要なんだと考えている。部分的にモタモタするところもあるが、最後のほうで一気にアントニオの感情が爆発する。観客は思わず小さく快哉を叫ぶ。モタモタは雲散霧消して映画館を出られる。

B: 無知で閉鎖的なスペインをぶち壊す、フアンホの世代が古くさいスペインを変えていくことが暗示される。

 

A: ジャンルはコメディということですが、そういう区分けに収まらない映画です。仮にレノンが生きていて見たら、きっと気に入るだろう、という評は最大の褒め言葉です。

B: 勿論、パット・メセニーのギター、チャーリー・ヘイデンのゆったりしたコントラバスの音色、二人のミュージシャンの功績も大きい。ヘイデンは今夏に76歳で惜しくも鬼籍入りしてしまいました。

A: 温かい音色、叙情性のある旋律、彼のライフスタイルを慕うファンは多いのではないですか。

 

     人生は本当に長い、カリオン氏に捧げたいゴヤの胸像

 

B: いままで10回もゴヤ賞がノミネートに終わったのには何が足りなかったのか、今回はその理由を掴んだと思いますか。

A: 多分ね。暴力や皮肉が描かれる映画に受賞が優先されることが時々あるが、自分はそういう映画を作りたいとは思わない。でも今まで貰えなかったことを一度も悪く解釈したことはないと語っている。人生は本当に長いと思う。ある日、誰かが近寄ってきて、「ダビ、昨夜ホテルのテレビで君の映画を見たよ、とっても感動した」と言ってくれたらいい。そういう映画を作りたい。

B: まさに本作はそういう映画でした。

A: 本作のモデルになったフアン・カリオンは既に90歳を越している。「彼に負うところが多かった、彼が映画を気に入ってくれて本当に嬉しかった」とインタビューに応えていました。 

 

 

 
                     (監督とカリオン氏 イビサにて)

(以下の監督・キャスト紹介は主に2014131の記事に加筆訂正を加えて再構成したもの)

*監督キャリア紹介*

ダビ・トゥルエバ David Rodriguez Trueba 1969年マドリード生れ、監督・脚本家・作家・俳優・ジャーナリスト。マドリード・コンプルテンセ大学ジャーナリズム情報科学科卒業。1992年米国に渡り「アメリカン・フィルム・インスティチュート」脚本科に入学。大学在学中に脚本を書き始め、エミリオ・マルティネス・ラサロに認められる。後に彼の『我が生涯最悪の年』(1994の脚本を書き、ゴヤ賞1995脚本賞にノミネートされている。

ゴヤ賞は「10回ノミネートで無冠」のレコード保持者でしたが、11回目で宿願を果たしました。「永遠に二番手」と囁かれていましたけれど。現在は小説の新作を準備中、映画は目下予定はないようですが、本作の成功で資金が集まれば、次回作も期待できる。

Los peores anos de nuestravida日本スペイン協会創立40周年記念を祝して開催された「スペイン映画祭1997」で上映されたときの邦題。フアンホの父親役ホルヘ・サンスと母親役アリアドナ・ヒルが、ここでは若い恋人役を演じている。彼女はトゥルエバ夫人だったが離婚、2009年にヴィゴ・モーテンセンと再婚した。

 

1991 Felicidades, Alberti”(TV映画の脚本家として出発。

1993 “El peor programa de la semana”(TVシリーズ5)で監督デビュー。

1996 La buena vida”(長編映画デビュー作)、ゴヤ賞1997新人監督賞・脚本賞にノミネートされた他、カルロヴィー・ヴァリー映画祭特別審査員賞、トゥリア賞(第1作監督賞)受賞。

2003 Soldados de Salamina”、ハビエル・セルカスの同名小説『サラミスの兵士たち』(翻訳題名)の映画化、オスカー賞2004スペイン代表作に選ばれるも最終候補に残れなかった。またコペンハーゲン映画祭脚本賞、トゥリア賞(スペイン映画部門)を受賞、ゴヤ賞はノミネートに終わる。

2006Bienvenido a casa

2007Rafael Azcona, oficio de guionista”(TVドキュメンタリー)、脚本の恩師であり、ダビのシナリオ作家としての才能を開花させたと言われる名脚本家アスコナの業績を辿ったドキュメンタリー、翌年2月に鬼籍入りした。

2011Madrid, 1987”、主役のホセ・サクリスタンにフォルケ賞をもたらして映画。

2013Vivir es fácil con los ojos cerrados”(省略

他、短編、脚本、俳優出演多数。兄トゥルエバの『あなたに逢いたくて』(95)や『美しき虜』(98)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『ぺルディータ・ドゥランゴ』(97)の脚本に参加している。 

                

              (ゴヤ賞受賞式でのトゥルエバ監督)

 

*キャスト紹介*

ハビエル・カマラJavier Camara Rodriguz1967年、ラ・リオハ生れ、俳優、監督。高等学校では演劇クラブに所属、ログローニョの演劇学校で学んだ後、RESADで本格的に演技を学ぶためマドリードに移住する。かたわら映画にも興味を抱くようになる。

1991年、ロぺ・デ・ベガの『オルメドの騎士』で初舞台を踏む。1993年、フェルナンド・コロモの“Rosa Rosae”で映画デビュー、同監督の“Alegre ma non troppo”(94)、“ESO”(95)などコロモ監督の映画に出演する。並行してTVドラ・シリーズにも出演、日本で知られるようになったのは、1998年、サンチャゴ・セグラの監督デビュー作『トレンテ』シリーズの第1作目あたりから。その後、フリオ・メデムの『ルシアとSEX』、アルモドバルの『バッド・エデュケーション』、イサベル・コイシェの『あなたになら言える秘密のこと』、アグスティン・ディアス・ヤネスの『アラトリステ』などで多くのファンの心を掴んでいる。2013年ラテンビート上映の『アイム・ソー・エキサイテッド』のゲスト出演とプロモーションを兼ねて来日した。

 

            

             (ハビエル・カマラ ゴヤ賞ガラにて)

 

以下はゴヤ賞ノミネート作品だけ列挙します。

11998 “Torrente, el brazo tonto de la ley 監督:サンチャゴ・セグラ、新人男優賞

22002 『トーク・トゥ・ハー』監督:ペドロ・アルモドバル、主演男優賞

32003 “Torremolinos 73”監督:パブロ・ベルヘル、主演男優賞

42005 『あなたになら言える秘密のこと』監督:イサベル・コイシェ、助演男優賞

52008 『シェフズ・スペシャル』監督:ナチョ・G・ベリジャ、主演男優賞

62013 “Vivir es fácil con los ojos cerrados主演男優賞を受賞

6回ノミネート、トゥルエバ監督との合言葉は、「僕たち、1個もゴヤを持ってない」でしたが、二人仲良くゴヤの胸像を手にすることができました。

 

RESADReal Escuela Superior de Arte Dramatico の略称、1831年、フェルナンド7世の王妃マリア・クリスティナ(・デ・ボルボン)が創設した演劇の伝統校。現在活躍中の俳優では、エドゥアルド・ノリエガ、ブランカ・ポルテージョ、バルバラ・レニーなどが卒業生。

 

ナタリア・デ・モリー Natalía de molina リナレス生れ(アンダルシアの観光地ハエン近郊)、グラナダで育った(正確な生年がIMDbでもアップされていないが、201311月に受けたインタビューで23歳と答えているので1990年ごろか)。俳優・歌手・バレエダンサー(短編で共演しているセリナ・デ・モリーナとは姉妹)。マラガ高等演劇芸術学校で2年間ミュージカルの基礎を学んだ後、マドリードに出て、演劇学校ガレージ・リュミエールGaraje Lumiere やスタジオ・コラッサEstudio Corazzaで演技を学ぶ。長編第1作でゴヤ新人女優賞にノミネートされたシンデレラ・ガール。インタビュアーから「スター誕生ですね」と言われて、「そうなれば嬉しい」と答えた通り、新人女優賞に輝いた。

本作では独身で妊娠してしまった21歳のマラゲーニャ役、アンダルシア訛りが出来ることが出演の幸運を呼び込んだ。「撮影中はまるで一つの家族のようだった」と語っていたナタリア、ナタリー・ポートマンに似ていると言われるとのこと。彼女も踊れて演技できるから「とても光栄に思っている」由。  

             

           (シンデレラ・ガールのナタリア・デ・モリーナ

 

フランセスク・コロメルFrancesc Colomer (フアンホ役) 1997年、バルセロナ生れ。本作では実年齢を演じている。アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』(2011)の少年アンドレウで既にゴヤ賞新人男優賞受賞を果たしている。他にダニ・デ・ラ・オルデンのカタルーニャ語のコメディ“Barcelona, nit d’estiu”(2013Barcelona, noche de verano”スペイン語題)で主役を演じている。3年ですっかり若者になりましたが、あの独特の目ですぐ分かります。

フアンホは、長髪を禁じる父親に反抗して3日間のミニ家出をした、当時16歳だった監督の兄弟の一人がモデルになっている。

 

ラモン・フォンセレRamon Fontsere(ラモン役):1956年バルセロナ生れ、俳優。ダビ・トゥルエバの“Soldados de Salamina”でファランヘ党員の詩人サンチェス・マサスを演じた。同“Madrid, 1987”、マル・コルのカタルーニャ映画“Tres dies amb la familia”(2009Tres dias con la familia”スペイン語題)などが代表作。

本作では村のバルの主人になり、キャスト陣の中でもその演技は際立っていた。人生がラモンに与え、そして奪っていったものが何であるか知っている、着実な人生観をもった人物。彼に魅了されずにいるのは不可能です。

 

           

       (左から、演技が光ったラモン・フォンセレとハビエル・カマラ)

 

ロヘリオ・フェルナンデスRogelio Fernandez(ブルーノ役):本作でデビュー。ラモンの小児麻痺の息子を演じた。

 

ホルヘ・サンスJorge Sanz(フアンホの父親役: 1969年、マドリードうまれ、映画・舞台・テレビ俳優。ペドロ・マソの“La miel”(79)に9歳でデビュー、1982年アントニオ・ベタンコールがラモン・センデルの小説を映画化した『バレンチナ物語』の名子役ぶりが話題になる。つづくフェルナンド・フェルナン・ゴメスの“Mambrú se fue a la guerra”(85)、フェルナンド・トゥルエバの“El año de las luces”(86)でマリベル・ベルドゥと共演、子役から大人へと無事に変身できた。ビセンテ・アランダの『アマンテス 愛人』(91)と『リベリタリアス自由への道』(96)、兄トゥルエバの『ベルエポック』(92)など、ヒット作に次々と出演した。『バレンチナ物語』で共演したパロマ・ゴメスと45年前に再会して結婚、息子も生れたが、互いに合意して離婚した。映画では「プラトニックな恋に終わった二人だが、実人生では恋を成就できた」と報道されたのに、束の間に終わった。

最近の舞台出演は、映画“Orquesta Club Virginia”(92)の劇場版にアントニオ・レシネス、ビクトル・エリアス、マカレナ・ゴメス等と出演している。
       

                 
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

      (左から撮影中のホルヘ・サンス、ロヘリオ・フェルナンデス、監督

 

アリアドナ・ヒルAriadna Gil(フアンホの母親役):1969年、バルセロナ生れ、映画・舞台女優、テレビ出演多数。ビガス・ルナの“Lola”(86)で映画デビュー、代表作にオスカー賞を受賞したフェルナンド・トゥルエバの『ベルエポック』(92)でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。エミリオ・マルティネス・ラサロの『我が生涯最悪の年』、“Soldados de Salamina”、ギジェルモ・デル・トロの『パンズ・ラビリンス』(07)、フェルナンド・トゥルエバの『泥棒と踊り子』(09)など。アグスティン・ディアス・ヤネスの『アラトリステ』(06)で共演したヴィゴ・モーテンセンと2009年結婚した。他にアルゼンチンの「コンドル・デ・プラタ」女優賞を受賞した“Nueces para el amor”(01)がある。

 

        

     (結婚5周年のお祝いができたヴィゴ・モーテンセンとアリアドナ・ヒル)

 

★トゥルエバ兄弟の作品のほとんどを手掛けている製作者のクリスティナ・ウエテ(兄トルエバ夫人)については、コチラ⇒2014112 / 213