アドリアン・ビニエスの第3作 "Las olas" *サンセバスチャン映画祭2017 ⑧2017年09月13日 17:24

         「ホライズンズ・ラティノ」にアドリアン・ビニエスの第3

 

アドリアン・ビニエスは、ベルリン映画祭2009でデビュー作 Gigante がいきなり銀熊賞、新人監督賞、さらにはアルフレッド・バウアー賞のトリプル受賞、一躍ベルリンの寵児となった監督。ラテンビート2010『大男の秘め事』の邦題で上映されました。今回ノミネーションされた Las olas は、昨年の「Cine en Construcción 30」出品作品、エントリーされた6作のうち4作が今年の「ホライズンズ・ラティノ」にノミネートされています。仕事に疲れ果てた中年男アルフォンソが海の中で出会う過去がメランコリックに語られる。「Cine en Construcción」は、ラテンアメリカ諸国の映画振興のために年2回開催され、第30回が20169月のサンセバスチャン映画祭、第31回が20173月のトゥールーズ映画祭に出品された作品。

  

 Las olas The Waves2017

製作:Mutante Cine(ウルグアイ)/ El Campo Cine(アルゼンチン)

監督・脚本・音楽:アドリアン・ビニエス

撮影:ニコラス・ソト、ヘルマン・レオン

編集:パブロ・リエラ、フェルナンド・エプステイン(『ウィスキー』)

録音:フランシスコ・リッジ、マルティン・スカグリア

助監督:サンティアゴ・トゥレルTurell

製作者:アグスティナ・チアリノ、ニコラス・Avruj

 

データ:ウルグアイ=アルゼンチン、スペイン語、2017年、ドラマ、87分、撮影地モンテビデオ、20163月クランクイン、「Cine en Construcción 30」参加作品、サンセバスチャン映画祭2017「ホライズンズ・ラティノ」正式出品、ウルグアイ公開2018年前期予定。

 

キャスト:アルフォンソ・Tort(アルフォンソ)、フリエタ・ジルベルベルグ、カルロス・リサルディ、ファビアナ・チャルロ、ビクトリア・ホルヘ、他

 

プロット:アルフォンソは疲れはてる仕事が終わるとビーチに出かける。海に潜って泳ぐ。海から浮き上がると、5年前に家族と一緒に夏を過ごした別のビーチにいることと気づく。これが素晴らしい旅の始まりだった。彼の人生に沿ってさまざまな夏休み、湯治場がメモランダムに出現する。両親と過ごした子供時代、別れた妻と過ごした神秘的な島、友達と一緒のティーンエージャー時代、マレーシアの海賊ごっこ、2年続けて同じ場所でそれぞれ別の恋人とキャンプしたことが、ノスタルジックにメランコリックに彼の孤独が語られる。

 

         

              (ビーチに向かうアルフォンソ?)

 

         ノスタルジーとアナクロニズムが横溢する中年男の孤独

 

★テイスト的には『大男の秘め事』に近いが、デビュー作にあったスリリングな緊張感は薄れている印象です。アドリアン・ビニエスは、ブエノスアイレス生れのアルゼンチン人ですが、ウルグアイのモンテビデオを本拠地にしている。小国ウルグアイの映画市場はアルゼンチンとは比較にならないほど小さく、彼のようなシネアストは珍しい。本作は上記したように「Cine en Construcción 30」の参加作品、その時のストーリーとは若干違っているようです。「素晴らしい旅の始まり」は、アルフォンソが11歳の子供のときで、両親が岸辺から彼に戻ってくるよう呼んでいるシーンだった。アルフォンソは監督と同世代の38歳から40歳、時代は1985年から2012年に設定されている。大人の体形と変わらないアルフォンソが子供を演じるわけで、そのアンバランスが可笑しみを醸しだしているのでしょうか。

 

アドリアン・ビニエスAdrian Biniezは、1974年ブエノスアイレス州のレメディオス・デ・エスカラダ生れ、監督、脚本家、俳優、現在はウルグアイのモンテビデオ在住。2006年、短編デビュー作 8 horas でブエノスアイレス国際インディペンデントSAFICI1等賞を取る。『大男の秘め事』がベルリン映画祭2009銀熊賞・新人監督賞・アルフレッド・バウアー賞を受賞、他サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」の作品賞を受賞した。サッカー選手をテーマにした長編第2El 5 de Talleres が、ベネチア映画祭2014「第11回ベネチア・デイズ」部門で上映、他ロッテルダム、ヒホン、マル・デル・プラタ、トライベッカ、各映画祭に出品された。第3作目が本作である。俳優としては初めて公開されたウルグアイ映画としても話題を呼んだ『ウィスキー』(04、フアン・パブロ・レベージャ&パプロ・ストール)などに脇役で出演している。

 

     

               (アドリアン・ビニエス監督)

 

    

  (アグスティナ・チアリノ、監督、ニコラス・Avruj、「Cine en Construcción 30」にて)

 

★キャストのうちアルフォンソ役のアルフォンソ・Tortは、2001年『ウィスキー』の監督コンビのデビュー作 25 Watts で初出演、モンテビデオの3人のストリート・ヤンガーの1日を描いたもの、若者の1人を演じた。『ウィスキー』にもベルボーイ役で出演、イスラエル・アドリアン・カエタノの Crónica de una fuga06アルゼンチン)、主役を演じたCapital (Todo el mundo va a Buenos Aiires)07アルゼンチン)、他ビニエス監督の El 5 de Talleres にも出ている。今作には今度共演するアルゼンチンのフリエタ・ジルベルベルグも出演している。ジルベルベルグは、『ニーニャ・サンタ』でデビュー、ディエゴ・レルマンの『隠された瞳』、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』、ダニエル・ブルマンの El rey del Once などで当ブログに登場しています。カルロス・リサルディファビアナ・チャルロは、『大男の秘め事』に出演している。監督は同じメンバーを起用するタイプなのかもしれない。

 

 

(監督は親友だと語る、アルフォンソ・Tort20155月)

 

 
      (左端アルフォンソ、右端主役のエステバン・ラモチェ、El 5 de Talleres から

 

                 

               (フリエタ・ジルベルベルグ、El 5 de Talleres から

 

『人生スイッチ』の記事は、コチラ2015729

 El rey del Once の記事は、コチラ2016829

  

金獅子賞はギレルモ・デル・トロの手に*ベネチア映画祭2017 ③2017年09月11日 15:10

          金獅子賞はメキシコのギレルモ・デル・トロが受賞

 

★先週土曜日(現地時間)に授賞式があり、金獅子賞はメキシコのギレルモ・デル・トロ The Shape of Water(「ザ・シェイプ・オブ・ウォーター」)が受賞しました。製作国はアメリカ、言語は英語、オスカーを狙えるスタートラインに立ちました。時代背景は冷戦時代の1963年ですが、勿論現在のトランプ政権下のアメリカを反響させていますね。ある政府機関の秘密研究所で清掃員をしている孤独な唖者エリサが、カプセルに入れられて搬入されてきた半漁人に恋をするという一風変わったおとぎ話。または隠された政治的メッセージが込められたSF仕立ての寓話ということです。エリサに英国の演技派サリー・ホーキンス(『ハッピー・ゴー・ラッキー』)、半漁人にデル・トロ映画の常連さん、凝り性のダグ・ジョーンズが扮する。『パンズ・ラビリンス』で迷宮の番人パンになった俳優。

 

     

        (金獅子賞のトロフィーを手にして、ギレルモ・デル・トロ) 

 

★水に形はないわけですから「水のかたち」というタイトルからして意味深です。水は入れられた容器で自由に変化する。アマゾン川で捕獲されたという半漁人と言葉を発しないエリサとの恋、水は恋のメタファーか、「私たちの重要なミッションは、愛の存在を信じること」です。どうやら愛の物語のようです。現在52歳、痩せたとはいえ130キロはある巨体から発せられる言葉に皮肉は感じられない。「すべての語り手に言えることだが、何か違ったことをしたいときにはリスクを覚悟するという、人生にはそういう瞬間があるんです」と監督。メキシコに金獅子賞をもたらした最初の監督でしょうか。本作は10作目になる。スペインでは、20181月、La forma del agua のタイトルで公開が決定しています。

 

     

               (エリサと半漁人、映画から)

 

 

        「国際批評家週間」の作品賞にナタリア・グラジオラのデビュー作

 

★ベネチア映画祭併催の「国際批評家週間」の最優秀作品賞に、アルゼンチンのナタリア・グラジオラの長編デビュー作 Temporada de caza が受賞しました。パタゴニアを舞台にした父と息子の物語です。ベネチアだけでなく、サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門にもノミネートされており、その他、シカゴ、ハンブルク各映画祭にも出品されることが決まっています。 

   

     (ポスターを背にナタリア・グラジオラ監督、リド島にて、2017年97

 

★「上映が終わると凄いオベーションで、みんな感激して泣いてしまいました。全員ナーバスになって、人々のエネルギーに押されて・・・何しろこんなに大勢の観客の前で上映するのは初めてだったし・・・」と、手応えは充分感じていたようです。最後のガラまで残っていたのは「私と母と代母だけで、あとはブエノスアイレスに戻ってしまった」とホテル・エクセルシオールでインタビューに応じていた。映画祭期間中は代金が3倍ぐらいに跳ね上がるから、最後までいるのは相当潤沢なクルーでないと無理ですね。何しろリド島なんて不便だもんね。

 

★息子ナウエル役を「見つけるまでに300人ぐらい面接した。ラウタロを一目見て、この子にする、と即決した。これが正解だったの、彼しかいなかった」と監督。こういう出会いが重要、「デビュー作というのは何につけ困難を伴いますが、ヘルマン・パラシオス(父親役)とボイ・オルミが出演を快諾してくれたことが大きかった」、運も実力のうちです。既に監督キャリアを含めた作品紹介をしております。次回作は女医を主人公にしたドラマとか。

 

 

    (息子役のラウタロ・ベットニと父親役のヘルマン・パラシオス、映画から)

 

 Temporada de caza の記事は、コチラ2017812

 

『ヒア・アンド・ゼア』の監督作品*サンセバスチャン映画祭2017 ⑦2017年09月10日 17:07

    オフィシャル・セレクション第4弾、5年ぶりメンデス・エスパルサの新作

 

アントニオ・メンデス・エスパルサが、新作 Life And Nothing More 5年ぶりにサンセバスチャンにやってきます。彼はデビュー作 Aquí y allá 『ヒア・アンド・ゼア』の邦題で、東京国際映画祭TIFF2012「ワールド・シネマ」で上映されました。スペインの若手監督ですが、もっぱら米国、メキシコで仕事をしています。前作はアマチュアを起用してフィクションともドキュメンタリーとも、両方をミックスさせたような作品でした。あるメキシコ移民がアメリカから故郷に戻ってくる。家族と再会した幸福感や安堵感が、時間がゆったり流れるなかで、やがて喪失感に変化していくさまをスペイン語とナワトル語で描いた。今回はフロリダを舞台にしての英語映画ですがマドリード生れの将来有望な若手ということでご紹介いたします。『ヒア・アンド・ゼア』がTIFFで上映されたときには、当ブログは存在していなかったので初登場です。

 

         

        (英題ポスター、左から、ロバート、ライネシア、レジーナ)

  

  Life And Nothing More La vida y nada más2017

製作:Aqui y alli Films

監督・脚本:アントニオ・メンデス・エスパルサ

撮影:バルブ・バラショユ(『ヒア・アンド・ゼア』)

編集:サンティアゴ・オビエド

美術・プロダクション・デザイナー:クラウディア・ゴンサレス

録音:ルイス・アルグエリェス

プロダクション・ディレクター:ララ・テヘラ

キャスティング:Ivo Huahua

プロデューサー:ペドロ・エルナンデス・サントス(『ヒア・アンド・ゼア』『マジカル・ガール』)、アルバロ・ポルタネット・エルナンデス、アマデオ・エルナンデス・ブエノ

(エグゼクティブ)ポール・E・コーエン、ビクトル・ヌネス

 

データ:製作国スペイン=米国、英語、ドクフィクション、113分、撮影地フロリダ、20161031日クランクイン、約6週間。製作資金50万ユーロ。トロント映画祭2017「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」正式出品(98日ワールドプレミア)、サンセバスチャン映画祭オフィシャル・セレクション正式出品。

 

キャスト:レジーナ・ウィリアムズ(母親)、アンドリュー・ブレイクトン(長男14歳)、ライネシア・チェンバース(長女3歳)、ロバート・ウィリアムズ(ロバート)

 

プロット:シングルマザーのレジーナはフロリダ北部の町でウエイトレスをして2人の子供を育てている。町では日常的にいざこざ起きている。思春期を迎えたアンドリューは、現在のアメリカでアフリカ系アメリカ人としてのより良い生き方を模索している。レジーナは絶え間ない闘いを余儀なくされ、さらに息子の問題行動と周囲に溶け込む余裕のないことが社会との軋轢を深めていく。不在の父に会いたいという息子の思いが、彼を危険な十字路に立たせることになる。

 

  

              (スペイン語題ポスター)

 

       多角的な視点で描いた長編デビュー作 Aquí y allá

 

アントニオ・メンデス・エスパルサ1976年マドリード生れ、監督脚本製作。マドリードのコンプルテンセ大学法学部卒、その後ロスアンゼルスに渡UCLA映画を学んだ後、さらにニューヨークのコロンビア大学映画制作マスターコースを終了。ここでメキシコ移民のペドロ・デ・ロス・サントスと知り合い2009年、彼を主役にした短編 Una y otra vez を撮る。TVE短編コンクール賞、ロスアンゼルス映画祭短編作品賞、オスカー賞プレセレクションに選ばれるなど、受賞歴多数。主に仕事の本拠地はアメリカである。

 

   

      (新作 La vida y nada más 撮影中のメンデス・エスパルサ監督)

 

★カンヌ映画祭2012批評家週間」で長編デビュー作 Aquí y allá(スペイン=米国=メキシコ)グランプリを受賞したときは36、資金不足から監督脚本製作とでもこなし作の主人公にも Una y otra vez ペドロ・デ・ロス・サントスを起用、ペドロの妻テレサも実際の奥さん、ただし2人の娘さんは別人です。当時「彼や彼の家族、友人、隣人との出会いと応援がなかったらこの映画は生まれなかった」と監督は語っている。彼自身は舞台となるメキシコに住んだことはなく、キャスティングはペドロを通じて知り合った移民たち、聞き書き、ドキュメンタリーの手法を採用したが、あくまでもフィクションである。上記したように故郷のゲレーロの山村に戻った当座は、妻も依然と変わりなく温かく迎えてくれ、幸福感と安堵感に満たされるが、あまりの静寂さにやがて喪失感に襲われるようになる推移がゆったりと描かれていた。バルブ・バラショユ撮影監督の映像美、アメリカから見たメキシコ、メキシコから見たアメリカ、という二つの視点が光った作品。

 

  

           (デビュー作『ヒア・アンド・ゼア』のポスター)

 

     

          (緑に囲まれた山間を親子4人で散策、映像が素晴らしかった)

 

       アフリカ系アメリカ人に対する社会的不公正と人種差別、父親の不在

 

★第89回アカデミー賞作品賞受賞の『ムーンライト』を例に持ち出すまでもなく、アフリカ系アメリカ人の差別をテーにした映画は枚挙に暇がありません。勿論、メインテーマはそれぞれ違いますが、どうしてもステレオタイプ的な描かれ方になりがちです。それを避けるには『ラビング 愛という名前のふたり』のように実話をベースにすることが多い。5年ぶりとなる長編2作目 Life And Nothing More は、大きく括ると、いわゆるドクフィクションdocuficciónというジャンルに属している。ドキュメンタリーの父と言われるロバート・フラハティの『モアナ』に始まり、他作品では、ルキノ・ヴィスコンティの『揺れる大地』、ポルトガルのペドロ・コスタの『ヴァンダの部屋』、同名小説がベースになっていますが、フェルナンド・メイレレスの『シティ・オブ・ゴッド』などを挙げることができる。

 

★前作『ヒア・アンド・ゼア』同様ノンプロの俳優を起用、撮影はアメリカ大統領選挙中の熱気に包まれたフロリダで、1031日にクランクインした。製作者のペドロ・エルナンデス・サントスは、「不確実な空気を取り込むには、これ以上の好機はないからだ」と語っている。掛け持ちで仕事に追われて不安定な母親レジーナと口達者なロバートとの会話も自然なアドリブの部分があり、それが非常にエモーショナルなものを呼び起こしたと監督。子供たちの父親は刑務所に収監中だが、14歳になる問題児アンドリューは会いたいと思っている。しかしそれは母親から禁じられており、本作でも父親の不在がキイポイントの一つになっているようだ。特権と組織全体的な人種差別が複雑に入り組んでいるアメリカ社会の今が語られる。

 

(ライネシア)

   

 

(レジーナ・ウィリアムズ)

    

追記:東京国際映画祭2017「ワールド・フォーカス」部門に『ライフ・アンド・ナッシング・モア』の邦題で上映されます。          

  

バスク語映画 "Handia"*サンセバスチャン映画祭2017 ⑥2017年09月06日 15:16

    オフィシャル・セレクション第3弾『フラワーズ』の監督が再びやってくる

 

★世界の映画祭を駆け巡った『フラワーズ』(Loreak 14)の監督ジョン・ガラーニョと、その脚本を手掛けたアイトル・アレギが、19世紀ギプスコアに実在したスペイン一背の高い男ミケル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(181861)にインスパイアーされて Handia を撮りました。本名よりもGigante de Altzoアルツォの巨人」という綽名で知られている人物です。前作でジョン・ガラーニョと共同監督したホセ・マリ・ゴエナガは、脚本&エグゼクティブ・プロデューサーとして参画しています。バスク自治州のサンセバスチャンで開催される映画祭ですが、オフィシャル・セレクションに初めてノミネートされたバスク語映画が『フラワーズ』だった。

 

 

            (ワーキング・タイトルのポスター)

 

 Handia(ワーキング・タイトルAundiya、英題 Giant 2017

製作:Irusoin / Kowaiski Films / Moriarti Produkzioak /

監督:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ

脚本:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アンド二・デ・カルロス

音楽:パスカル・ゲーニュ

撮影:ハビエル・アギーレ

編集:ラウル・ロペス、Laurent Dufreche

キャスティング:ロイナス・ハウレギ

プロダクション・デザイン:ミケル・セラーノ

メイクアップ&ヘアー:オルガ・クルス、Ainhoa Eskisabel、アンヘラ・モレノ、他

衣装デザイン:サイオア・ララ

プロダクション・マネージメント:アンデル・システィアガ

製作者:ハビエル・ベルソサ、イニャキ・ゴメス、イニィゴ・オベソ、

      (エグゼクティブ)ホセ・マリ・ゴエナガ、フェルナンド・ラロンド、コルド・スアスア

 

データ:スペイン、バスク語(スペイン語を含む)、2017年、歴史ドラマ、製作資金約200万ユーロ、サンセバスチャン映画祭2017正式出品、スペイン公開1020日予定

 

キャスト:エネコ・サガルドイ(ミゲル・ホアキン・エレイセギ)、ホセバ・ウサビアガ(兄マルティン・エレイセギ)、ラモン・アギーレ(父アントニオ・エレイセギ)、イニィゴ・アランブラ(興行主アルサドゥン)、アイア・クルセ(マリア)、イニィゴ・アスピタルテ(フェルナンド)、ほか

 

プロット:マルティンは、第一次カルリスタ戦争からギプスコアの集落で暮らす家族のもとに戻ってきた。そこで彼が目にしたものは、出征前には普通だった弟ホアキンの身長が見上げるばかりになっていたことだった。やがて人々がお金を払ってでも、地球上で最も背の高い男を見たがっていることに気づいた二人の兄弟は、野心とお金と名声を求めて、スペインのみならずヨーロッパじゅうを駆けめぐる旅に出立する。家族の運命は永遠に変わってしまうだろう。19世紀に実在した「アルツォの巨人」ことミケル・ホアキン・エレイセギの人生にインスパイアーされて製作された。

 

             

 

       スペイン海軍の将軍に扮した巨人ミゲル・ホアキン・エレイセギ

 

★実際のミゲル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(バスク語ではMikel Jokin Eleizegi Arteaga)は、18181223日、ギプスコア県のアルツォ村で9人兄弟姉妹の4番目の男の子として生まれた。母親は彼が10歳のころに亡くなっている。20歳で先端巨人症を発症して死ぬまで身長が伸びつづけたということです。記録によると身長が227センチ、両手を広げると242センチ、靴のサイズは36センチだったという(身長には異説がある)。当時のヨーロッパでは最も背が高く「スペインの巨人」として、イサベル2世時代のスペイン、ルイ・フィリップ王時代のフランス、ビクトリア女王時代のイギリスなどを興行して回った。たいていトルコ風の服装、あるいはスペイン海軍の将軍の衣装を身に着けて舞台に立った。19611120日、肺結核のため43歳で死亡、遺体は生れ故郷アルツォAltzoに埋葬されたが、コレクターの手で盗まれてしまっている。映画は史実に基づいているようですが、やはりフィクションでしょうか。

 

       

       (スペイン海軍の将軍の衣装を着たミゲル・ホアキン)

 

 キャスト

★兄弟を演じるエネコ・サガルドイ1994)もホセバ・ウサビアガも初めての登場、二人ともバスク語TVシリーズ Goenkale に出演している。2000年から始まったコメディ長寿ドラマのようで、エネコ・サガルドイは本作で2012年にデビュー、翌年までに57話に出演している。身長が高いことは高いが227センチのミゲル・ホアキンをどうやって演じたのか興味が湧きます。二人ともバスク語の他、スペイン語、英語の映画に出演している。

 

 

          (ミゲル・ホアキン・エレイセギ役のエネコ・サガルドイ、映画から)

 

       

            (左端が兄マルティン役のホセバ・ウサビアガ、映画から)

  

  

  

★第一次カルリスタ戦争は1933年に勃発、1939年に一応終息しました。兄マルティンが復員してから物語は始まるから、時代背景は1940年代となります。イニィゴ・アランブラ扮するアルサドゥンは、実在したホセ・アントニオ・アルサドゥンというナバラ在住の男で、ホアキンを見世物にして金儲けしようと父親に掛け合った。なかなか目端の利いた男だったようです。父親役のラモン・アギーレ1949生れ)は、フェルナンド・フランコがゴヤ賞2014新人監督賞を受賞した La herida13)、公開されたアルモドバルの『ジュリエッタ』、イニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン~』、ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』(2012パルム・ドール)などに出演しているベテラン。フェルナンド・フランコの新作 Morir が、今年の特別プロジェクションにエントリーされているので、時間的余裕があればアップしたい。

 

    

 (映画の宣伝をする?アルサドゥン役のアランブラ、ネパールのプーンヒル標高3310mにて)

 

 スタッフ

★製作者は、ラテンビート、東京国際映画祭で上映された『フラワーズ』 80 eguneanFor 80 Days)に参画したスタッフで構成されており、唯一人エグゼクティブ・プロデューサーのコルド・スアスアが初参加、過去にはフェルナンド・フランコの La herida、マルティネス=ラサロのヒット作 Ocho apellidos vascos14)、アメナバルの Regresión15、未公開)などを手掛けている。プロダクション・マネージメントのアンデル・システィアガも初参加、過去にはアレックス・デ・ラ・イグレシア映画『13 みんなのしあわせ』『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』他を手掛けている。音楽はフランス出身、1990年からサンセバスチャンに在住しているパスカル・ゲーニュと同じです。監督キャリア&スタッフ紹介は『フラワーズ』にワープしてください。

 

  

               (『フラワーズ』のポスター)

 

★前作の脚本を担当、本作で監督にまわったアイトル・アレギAitor Arregi は、ジョン・ガラーニョとの共同でドキュメンタリー Sahara Marathon0455分)を撮っている。他にイニィゴ・ベラサテギとアドベンチャー・アニメーション Glup, una aventura sin desperdicio0470分)、Cristobal Molón0670分)を共同で監督している。また本作では脚本と製作を担ったホセ・マリ・ゴエナガとドキュメンタリー Lucio0793分)を撮り、グアダラハラ映画祭のドキュメンタリー部門で作品賞を受賞している。

 

  

                   (ジョン・ガラーニョとアイトル・アレギ)

 

 

(ホセ・マリ・ゴエナガとアイトル・アレギ)

 

『フラワーズ』と 80 egunean の内容&キャリア紹介は、コチラ2014119


ディエゴ・レルマンの第5作*サンセバスチャン映画祭2017 ⑤2017年09月03日 14:52

   オフィシャル・セレクション第2弾、アルゼンチンからディエゴ・レルマン

 

★今年のオフィシャル・セレクションにノミネートされた4作は、スペイン語2作、バスク語、英語が各1作ずつと、例年とは少し様相が異なります。うちスペイン語はマヌエル・マルティン・クエンカの El autor ディエゴ・レルマン Una especie de familia 2作だけです。ディエゴ・レルマンは20代の半ばにモノクロで撮った第1作『ある日、突然。』(2002Tan de reoente)で「鮮烈デビュー」したアルゼンチンの監督。レイトショーとはいえ劇場公開され、その奇抜なプロットに驚かされました。エントリーされた新作は第5作目になります。

ラテンビート2017でも『家族のように』の邦題で上映が決定された。

 

  

 

    Una especie de familiaA Sort of Family2017

製作:El Campo Cine(アルゼンチン)/ Bossa Nova(ブラジル)/ 27 Films Production(独)/

   Bellota Films(仏)/ Staron Films(ポーランド) 協賛INCAA

監督:ディエゴ・レルマン

脚本(共同):ディエゴ・レルマン、マリア・メイラ

撮影:ヴォイテク・スタロン

編集:アレハンドロ・Brodersohn

音楽:ホセ・ビリャロボス 

キャスティング:マリア・ラウラ・ベルチ

美術:マルコス・ぺドロン

衣装デザイン:バレンティナ・バリ

メイクアップ:ナンシー・Marignac

プロダクション・マネジメント:エセキエル・ラボルダ、イネス・ベラ

製作者:ニコラス・Avruj(エグゼクティブ)、ディエゴ・レルマン、他多数

 

データ:アルゼンチン=ブラジル=ポーランド=フランス、スペイン語、2017年、90分、社会派スリラー、ロード・ムービー。撮影地カタマルカ州、ブエノスアイレス、ミシオネス州、201611月初旬クランクイン、12月末アップ。トロント映画祭2017コンテンポラリー・ワールド・シネマ部門上映98日、サンセバスチャン映画祭正式出品、アルゼンチン公開914

 

キャスト:バルバラ・レニー(マレナ)、ダニエル・アラオス(ドクター・コスタス)、クラウディオ・トルカチル(マリアノ)、ヤニナ・アビラ(マルセラ)、パウラ・コーエン(ペルニア医師)、他

 

プロット:ブエノスアイレスの中流家庭で育った38歳になる女医マレナのロード・ムービー。ある日の午後、ドクター・コスタスから直ちにアルゼンチンの北部に出立するよう電話が掛かってくる。待ち望んでいた赤ん坊の誕生が差し迫っているというのだ。マレナは逡巡しながらも、この不確かな旅に出立しようと決心する。行く手にはたくさんの罠が仕掛けられており、赤ん坊によってもたらされる予想外の高い代価や、自分が望んだものを手に入れるための限界はどこまでかを常に自問自答しながら、法にかなった道徳的な障害に直面する。私たちも新しい人生に立ち向かうマレナと一緒に旅をすることになるだろう。

 

★エグゼクティブ・プロデューサーのニコラス・Avrujによると、マレナは最近娘を亡くし夫とも別れている。母親になりたいが養子縁組のシステムが複雑で望みを叶えられない、という設定にした。養子縁組制度の欠陥という社会的問題にサスペンスの要素をミックスさせたドラマのようです。ミシオネス・ビジュアルアート研究所とアルバ・ポセ病院の協力を受けて撮影された。ミシオネスは北西をパラグアイ、北と東をブラジルと接している、アルゼンチンでも2番目に小さい州、パラナ、ウルグアイ、イグアスという大河が流れていて、河や密林の風景も映画の主人公のようです。 

   

   (赤ん坊を求めてミシオネスにやってきたマレナ役のバルバラ・レニー、映画から)

 

★デビュー作『ある日、突然。』前作 Refugiado も一種のロード・ムービーでしたが、本作でもヒロインはブエノスアイレスから北部を目指して旅をする。このラテンアメリカ映画に特徴的な「移動」は、たいていひょんなきっかけで突然やってくる。エル・パイス紙の記事によると、同じく金貝賞を狙う、ギリシャのアレクサンドロス・アブラナス Love me Not にテーマが類似しているという。あるカップルが若い移民女性を代理母として契約する。女性を彼らの瀟洒な別荘に招き、生活スタイルを教え楽しんでもらう。妻はある秘密を抱えているが表に出さない。夫が仕事に出かけた後、妻と女性は軽く飲んでドライブに出かける。翌朝、夫は妻が事故車のなかで焼死体となっていることを知らされる。大体こんな筋書です。両作に共通しているのは、これから生まれてくるはずの赤ん坊を待っていること、赤ん坊のメタファーに類似性があるようです。

 

★アレクサンドロス・アブラナス(1977、ラリッサ)は、第2Miss Violence が、ベネチア映画祭2013で監督賞(銀獅子賞)、フェデオラ賞(ヨーロッパ地中海映画)などを受賞している。ここでは深入りしませんが、Miss Violence もある秘密を抱えた少女の自殺をめぐる物語で、審査員や観客を魅了した。ディエゴ・レルマンと同世代の若手監督、ギリシャの次世代を担うだろう楽しみな監督です。Love me Not も賞に絡みそうな気がしますが、どうでしょうか。

 

 キャスト

★マレナ役のバルバラ・レニーは、アルゼンチン出身のスペイン女優、アルゼンチン弁を克服して、『私が、生きる肌』『マジカル・ガール』『エル・ニーニョ』などに出演、日本での知名度も高いほうかもしれません。抜群のスタイルを生かしてモデル、映画にとどまらず舞台にも意欲的に出演、二足の草鞋派です。

バルバラ・レニーの主な紹介記事は、コチラ2016215

 

  

             (赤ん坊を胸に抱くマレナ、映画から)

 

ダニエル・アラオスは、1962年コルドバ生れ。ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの監督コンビの第2作『ル・コルビュジエの家』(09)に初出演、不気味な隣りの男ビクトルに扮した俳優です。第3Querida, voy acomprar cidarrillo y vuelvo11)にも起用された。新作『笑う故郷』には出演しておりませんが、間もなく公開されます。クラウディオ・トルカチルは、1975年ブエノスアイレス生れ、公開作品では、パブロ・ヘンドリックの El Ardor14)に出演しています。ガエル・ガルシア・ベルナルがシャーマンに扮してジャングルでの撮影に臨んだ映画、新大陸にはタイガーは棲息していないのですが、『ザ・タイガー 救世主伝説』とまったく意味不明の邦題で公開されました。

『ザ・タイガー 救世主伝説』の記事は、コチラ20151218

 

   

       (打ち合わせをする製作者ニコラス・Avrujとダニエル・アラオス)

 

 スタッフ

ディエゴ・レルマン Diego Lermanは、1976年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、製作者、舞台監督。産声を上げた324日が奇しくも軍事クーデタ勃発日、これ以後7年間という長きに及ぶ軍事独裁時代の幕が揚がった日でした。彼の幼年時代はまさに軍事独裁時代とぴったり重なります。体制側に与し恩恵を満喫し家族も少なからずいたでしょうが、レルマンの家族はそうではなかった。ブエノスアイレス大学の映像音響デザイン科に入学、市立演劇芸術学校でドラマツルギーを学ぶ。またキューバのサン・アントニオ・デ・ロス・バーニョスの映画TV学校で編集技術を学んでいる当ブログでは、カンヌ映画祭2014「監督週間」に第4作目 Refugiado 選ばれたときに、キャリアとフィルモグラフィーの詳細を記事にしておりますが3年前になりますので、今回再構成して下記に付録としてアップしています。

 

   

               (ディエゴ・レルマン監督)

 

★第4作から撮影を手掛けているヴォイテク・スタロンWojtek (Wojciech) Staron(ヴォイテクは男子名ボイチェフの愛称)は、1973年生れのポーランド人、主にドキュメンタリー国際的に活躍している撮影監督です。なかでメキシコで脚本家として活躍しているアルゼンチンのパウラ・マルコヴィッチ長編デビュー作 El premio がベルリン映画祭2011にエントリーされ、スタロンは銀熊賞(芸術貢献賞の撮影賞)を受賞しています自分の少女時代を送ったサン・クレメンテ・デル・トゥジュという湯治場を舞台に軍事独裁時代を少女の目線撮ったマルコビッチの自伝的要素の強い映画アリエル賞も受賞している

 

   

    (銀熊賞のトロフィーを手にしたヴォイテクスタロン、ベルリン映画祭2011

 

  

付録:ディエゴ・レルマンの長編フィルモグラフィー

2002 Tan de repente (アルゼンチン)『ある日、突然。』監督・脚本・プロデューサー モノクロ

2006 Mientras tanto(アルゼンチン)英題 Meanwhile 監督・脚本

2010 La mirada invisibleアルゼンチン==西『隠れた瞳』監督・脚本・プロデューサー

2014 Refugiado (アルゼンチン=ポーランド=コロンビア=仏)監督・脚本・プロデューサー

2017 Una especie de familia 省略

他に短編、TVドキュメンタリーを撮っている。

 

1Tan de repente ロカルノ映画祭銀豹賞、ハバナ映画祭金の珊瑚賞、ウエルバ・ラテンアメリカ映画祭銀のコロン賞、2003年にはニューヨーク・レズ&ゲイ映画祭でも受賞するなど多くの国際舞台で評価されました。まだ20代半ばという若さでした、計算されたプロットにはアメナバルデビュー当時を思い出させました。ユーロに換算すると4万ユーロという低予算で製作された。

 

2Mientras tanto :アルゼンチン映画批評家協会賞にValeria Bertuccelli が主演女優賞(銀のコンドル賞)、クラリン・エンターテインメント賞(映画部門)にもBertuccelli が女優賞、ルイス・シエンブロスキーが助演男優賞を受賞しましたが、レルマン自身はベネチア映画祭のベネチア作家賞にノミネートされただけでした。「アルゼンチンの『アモーレス・ペロス』版」と言われた作品。『僕と未来とブエノスアイレス』(04、公開06)のダニエル・ブルマンがプロデューサーの一人。

 

3La mirada invisible 東京国際映画祭2010で『隠れた瞳』の邦題で上映された。映画祭では監督と主演女優フリエタ・シルベルベルクが来日しました。マルティン・コーハンのベストセラー小説Ciencias Morales2007エライデ賞受賞)にインスパイアーされての映画化。従ってタイトルも登場人物小説とは異なり、特に結末が大きくっていました。軍事独裁制末期1982年のブエノスアイレス、エリート養成の高等学校が舞台でしたが、国家主義的な熱狂、行方不明者、勿論フォークランド戦争は出てきませんが、この学校がアルゼンチン社会のアナロジーと考えると、その「見えない視線」に監視されていた社会の恐怖が伝わってくるという仕掛けがしてあった彼の作品の中で軍事独裁が顕著に現れているのが本作です。かつてブエノスアイレスが「南米のパリ」と言われた頃に建築された建物が高等学校として採用され、それ自体が絵になっています。

 

★第4 Refugiadoカンヌ映画祭2014「監督週間」にノミネーション。7歳のマティアスと母ラウラに起こったことがマティアスの無垢な驚きの目を通して語られる。父ファビアンのドメスティック・バイオレンスDVを逃れて、身重の母とティトを連れた息子は安全な避難場所を求めて都会を彷徨い歩く都会をぐるぐる廻るスリラー仕立てのロード・ムービー。

 

   

     (市内を逃げまわるマティアスと母親役のフリエタ・ディアス、映画から)

 

ディエゴ・レルマンのキャリア&フィルモグラフィーの記事は、コチラ2014511


マヌエル・マルティン・クエンカ*サンセバスチャン映画祭2017 ④2017年08月31日 15:11

   オフィシャル・セレクション第1弾、マルティン・クエンカの El autor

 

オフィシャル・セレクションの第1弾として、賞に絡みそうなマヌエル・マルティン・クエンカの第5 El autor のご紹介。当ブログでは前作『カニバル』(2013)と、当映画祭2005オフィシャル・セレクション部門に正式出品された2作目『不遇』をアップしておりますが、コメディ要素たっぴりの最新作が一番観客にも受け入れやすいのではないかと思っています。『カニバル』は批評家と観客の乖離があり過ぎました。本作はハビエル・セルカスのデビュー作 El móvil 1987、仮題「動機」)の映画化、ワーキング・タイトルはこちらでした。ハビエル・セルカス(1964、カセレス)は、国際的な成功を収めた『サラミスの兵士たち』(01、邦訳08)の著者として専ら知られている。これはダビ・トゥルエバが、2003年に映画化して話題になりました。大著『2666』で世界を驚かしたロベルト・ボラーニョとも接点のある作家です。

 

 

            (ワーキング・タイトルのポスター)

 

 El autorThe Mobile2017

製作:Icónica Producciones / La Loma Blanca P.C. / Alebrije Cine y Video / Canal Sur Televisión 他多数

監督:マヌエル・マルティン・クエンカ

共同脚本:マヌエル・マルティン・クエンカ、アレハンドロ・エルナンデス、

  ハビエル・セルカスの小説 El móvil の映画化

撮影:パウ・エステベ・ビルバ(『カニバル』『不遇』)

音楽:ホセ・ルイス・ペラレス

編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド

美術:ソニア・ノリャ

録音:ダニエル・デ・サヤス

衣装デザイン:ペドロ・モレノ、エステル・バケロ

メイク&ヘアー:アナベル・ベアト(メイクアップ)、ラファエル・モラ(ヘアー)

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラーノ

プロダクション・マネージメント:エルネスト・チャオ

製作者:モニカ・ロサーノ、ダビ・ナランホ、ゴンサロ・サラサル・シンプソン、ホセ・ノリャ(エグゼクティブ)、マヌエル・マルティン・クエンカ(共)

 

データ:スペイン=メキシコ、スペイン語、2017年、コメディ・ドラマ、20169月クランクイン、撮影地セビーリャ、他。トロント映画祭2017スペシャル・プレゼンテーション部門出品、サンセバスチャン映画祭オフィシャル・セレクション出品、スペイン配給Filmax、スペイン公開1117

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(アルバロ)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(フアン)、マリア・レオン(アマンダ)、テノッチ・ウエルタ(エンリケ)、アドリアナ・パス(イレネ)、アデルファ・カルボ(管理人)、ドミ・デル・ポスティゴ(エル・マヌ)、ラファエル・テジェス(セニョール・モンテロ)、ミゲル・アンヘル・ルケ(警官)、カルメロ・ムニョス・アダメ、他

 

プロット:アルバロはセビーリャの公証人事務所で書記として働いているが、人生は灰色に塗りつぶされている。純文学の作家になるのが夢だが、彼の小説は気取っているうえに退屈、失敗続きである。なかなか面白いアイディアが浮かばない、才能も想像力も枯渇しているからだ。彼とは対照的に、妻のアマンダは大地に根を張り、作家になろうなどとは夢にも思わないが、皮肉にも彼女はベストセラー作家になってしまった。今や二人の別居は避けられそうにない。そこで小説の基礎を研究、小説作法の教師をしているフアンに教えを請うことにする。あるときアルバロは、フィクションとは現実に立脚していなければならないことに気づいた。フィクションを超えたリアリティーある物語を創作するために、隣人や友人たちを操りはじめるが・・・

 

     

 

 キャスト

★主役アルバロ役のハビエル・グティエレスは、今回コンペティション外ですが La peste がノミネートされたアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』や、イシアル・ボリャインの『オリーブの樹』、今年春に公開されたイニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』などに出演して知名度は上がっている。小説の書き方を伝授する先生フアンのアントニオ・デ・ラ・トーレは、しばしば登場してもらっている。 

 

(執筆中のアルバロ)

   

 (アルバロとフアン先生)

               

★アマンダ役のマリア・レオンは、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』や兄パコ・レオンのコメディ「カルミナ」シリーズなどでご紹介していますが、久しぶりのブログ登場なのでおさらいしておきます。1984年セビーリャ生れ監督パコ・レオンは実兄TVシリーズSMS, sin miedo a soñar”(200607)でデビュー、フェルナンド・ゴンサレス・モリナのFuga de cerebros”(09)のチョイ役で映画デビュー。大きく飛躍したのがベニト・サンブラノのLa voz dormida11『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』)、本作でゴヤ賞2012新人女優賞を受賞した。スペイン内戦後、反フランコ活動をして収監されていた姉(インマ・クエスタ)が刑務所内で出産した姪を育てる妹に扮した。他にシネマ・ライターズ・サークル賞新人女優賞、サンセバスチャン映画祭2011最優秀女優賞、スペイン俳優組合賞などを受賞、フォルケ賞にもノミネーションされた。母カルミナと兄パコの三人で5万ユーロで撮ったCarmina o revienta12)でゴヤ賞2013助演女優賞ノミネーション、カルミナ第2Carmina y aménでフェロス賞2015助演にもノミネートされた。ベレン・マシアスのMarsella14では、ゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル主演女優にノミネートされ

 

   

                (フアン先生とアマンダ)

 

★エンリケ役のテノッチ・ウエルタはキャリー・フクナガの『闇の列車 光の旅』やパトリシア・リヘンの『チリ33人 希望の軌跡』などに出演、イレネ役のアドリアナ・パスは、カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』や東京国際映画祭2013で上映されたアーロン・フェルナンデスの『エンプティ・アワーズ』で主役を演じている。共にメキシコの俳優です。ラファエル・テジェスはセビーリャ生れ、管理人のアデルファ・カルボはマラガ生れ、二人ともアンダルシアのことは知り尽くしている。

 

アドリアナ・パスは、1980年メキシコ・シティ生れ。16歳で舞台デビュー、メキシコ自治大学文学哲学部で劇作法と演劇を学ぶ。映画修業のため一時期スペイン、ポルトガルに滞在、メキシコに帰国後、キューバのロス・バニョス映画学校で脚本を学。女優ではなく監督、脚本家志望だったらしい。在学中よりセミプロとして舞台に立つ。映画デビューはセサル・アリオシャのTodos los besos07)、これはメキシコ・シティ国際現代映画祭、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭にも出品された。カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』(09)にディエゴ・ルナの妻役で出演、翌年のアリエル賞共演女優賞にノミネートされた。そのほか代表作にアリエル賞2010を総なめにしたカルロス・カレラのコメディEl traspatio、アントニオ・セラーノのMorelos12)、アンドレス・クラリオンドのデビュー作Hilda12『エンプティ・アワーズ』(13)など。役柄によって美しさが変化する女優として定評があ理論派、演技派の女優。

 

   

        (撮影中のハビエル・グティエレス、監督、アドリアナ・パス)

  

 スタッフ

マヌエル・マルティン・クエンカ1964年スペイン南部アルメリアのエル・エヒド生れ、監督、脚本家、製作者。グラナダ大学でスペイン哲学を学び、1989年マドリードのコンプルテンセ大学情報科学を卒業する。在学中の1988年から正式の監督アシスタントとして働き始め、マリアノ・バロッソ(1959)、ホセ・ルイス・クエルダ(1947)、イシアル・ボリャイン(1967)、ホセ・ルイス・ボラウ(1929)などとコラボする。短編、ドキュメンタリーなどを手掛けた後、2003年長編デビュー作 La fraqueza del borchevique がサンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクションにノミネートされ高い評価を受けた。翌年のゴヤ賞2004では、脚色賞を受賞、主演のマリア・バルベルデが新人女優賞を受賞した。

 

      

            (撮影中の監督とハビエル・グティエレス)

 

★第2 Mala temporadas(『不遇』)もサンセバスチャン映画祭2005に正式出品、数々のノミネーションや賞を果たした。2010 La mitad de Oscar はトロント映画祭だったが、2013『カニバル』2014524日公開)は再びサンセバスチャン映画祭に戻って正式出品された。パウ・エステベ・ビルバが撮影賞(銀貝賞)を受賞、ゴヤ賞もゲットした。主役のアントニオ・デ・ラ・トーレが第1回フェロス賞の主演男優賞を受賞した作品。監督とサンセバスチャンは相性がよく、新作に期待が寄せられている。

 

2004年に制作会社「La Loma Blanca producciones Cinematograficas」を設立、第3 La mitad de Oscar

から製作している。2009年には出版社「Lagartos Editores」を設立、若いアンダルシアの作家育成に尽力している他、映画関係書籍のコレクション、過去の映画テキストを刊行している。より詳しい監督キャリア&フィルモグラフィーについては『不遇』や『カニバル』を参照してください。キューバ出身スペイン在住の共同執筆者アレハンドロ・エルナンデスについても紹介しています。監督と二人三脚で執筆しているほか、アカデミー賞外国語映画スペイン代表作品の候補サルバドル・カルボの 1898, Los ultimos de Filipinas を単独執筆している。

 

★前2作、『カニバル』と La mitad de Oscar 音楽はなかったが、新作にはクエンカ生れ(1945)のシンガー・ソング・ライターのホセ・ルイス・ペラレスが担当して話題になっています。IMDbに記載がないのは、初めての経験で「できるかどうか分からなかったので伏せておくよう」依頼されていたから。レコーディング・スタジオで「ラテンジャズのメロディがちりばめられたシークエンスを監督と初めて観て、子供のように二人で笑ってしまった」と語っている。依頼を受けてからの9ヵ月間、まるで身重の女性のように大変だった。やっと無事に生まれてくれたようです。 

   

               (監督とホセ・ルイス・ペラレス)

 

『カニバル』の記事は、コチラ201398

Mala temporadas(『不遇』)の記事は、コチラ201461172

マリア・レオン『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』の記事は、コチラ201559

『エンプティ・アワーズ』の記事は、コチラ2013117

 

脇役に徹した個性派女優テレレ・パベス逝く2017年08月29日 10:46

 

       去る811日、脳溢血のためマドリードのラ・パス病院で死去

 

★訃報記事は気が重い。特に大好きだったテレレ・パベスとなると尚更です。TVを含めると100本近くの映画に出演しておきながら、ゴヤ賞助演女優賞を受賞したのが2014年、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』(13)だった。テレレ・パベスTerele Pávez(本名Teresa Marta Ruiz Penellaは、政治家ラモン・ルイス・アロンソを父に、芸術一家だったマグダレナ・ペネリャ・シルバを母として、1939729ビルバオ生れたが、育ったのはマドリードでした。四人姉妹の末っ子、うち二人の姉エンマ・パネリャ(19312007)とエリサ・モンテス(1934)も女優。姉たちの影響で女優の道に進み、3人揃って出演した映画が1作だけあるようだ。女優エンマ・オソレス(エリサの娘)の叔母にあたる。

 

    

 

1970年代のテレレ・パベス

   

 

1973年、編集者ホセ・ベニト・アリケ(2008年没)との間に息子が誕生したが、テレレは父子の認知を望まず、シングル・マザーの道を選んで、自分の父姓ルイスを取ってカロロ・ルイスCarolo Ruiz とした。母子関係はいつも良好とは言えなかったそうだが、没後カロロは涙の会見をした。同年生れのピラール・バルデムと共に、女性シネアストの地位向上にも尽力したテレレ・パベスだったが、去る811日、脳溢血のためマドリードのラ・パス病院で死去、813日、遺体はエル・エスコリアルの火葬場で荼毘に付された。写真下はマドリードのホテル・リッツで行われたゴヤ賞2017の前夜祭のような会合に出席した母子、彼女はマリナ・セレセスキーの La puerta abierta 6度目の助演女優賞にノミネートされていた。

 

 

      (息子カロロ・ルイスに寄り添うテレレ・パベス、20171月)

 

60年に及ぶ長い女優人生だったが、一度も主役を演じたことがなかった。しかし20世紀スペインでもっとも愛され尊敬された監督と称されたガルシア・ベルランガ、『無垢なる聖者』のマリオ・カムス、『セレスティーナ』のヘラルド・ベラ、ビセンテ・アランダ、ビガス・ルナ、そして1995年のホラー・コメディ『ビースト 獣の日』出演以来、アレックス・デ・ラ・イグレシアのお気に入りとなった。映画デビューはガルシア・ベルランガ19212010辛口コメディNovio a la vista(1954「一見、恋人」仮題)1959年、ベルランガがプロデュースして、ヘスス・フランコが監督したコメディ Tenemos 18 años に姉エリサの夫になるアントニオ・アロンソなどと共演した。その他マヌエル・バスケス・モンタルバンの陰謀小説を映画化したビガス・ルナの Tatuaje1979「刺青」仮題)などがある。

 

   

  (左から、パコ・ラバル、テレレ・パベス、アルフレッド・ランダ、『無垢なる聖者』から)

 

★出演作で一番評価が高いのが、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』Los santos inocentes1984、アルフレッド・ランダが演じた主人公妻レグラに扮した。ミゲル・デリーベスの同名小説の映画化、1960年代のスペイン農民のレクイエムです。これは20世紀スペイン映画史に残る名画、パベスの最高傑作と言ってもいいでしょう。残念ながらまだゴヤ賞は始まっていませんでした。アンヘラ・モリーナやフアン・ディエゴと共演したゴンサロ・エラルデの Laura, del cielo llega la noche1987)で第2回目のゴヤ賞に初ノミネート、翌年も続いてノミネートされたが受賞できなかった。ビセンテ・アランダの「エル・ルーテ」の続編、El Lute II: mañana seré libre1988)に起用された。

 

          

            (演技が絶賛された『セレスティーナ』から)

 

★そのほかゴヤ賞関連では、ヘラルド・ベラの『セレスティーナ』96)の演技が認められてゴヤ賞確実と言われながらノミネーションさえされなかった。しかし1997年サン・ジョルディ賞を受賞した。3回目のノミネーションがアレックス・デ・ラ・イグレシアの『13みんなのしあわせ』(00だが、カルメン・マウラが主演、エミリオ・グティエレス・カバが助演を受賞したものの、テレレは受賞できなかった。4回目の『気狂いピエロの決闘』も空振り、アレックス映画のマスコット的女優となった『スガラムルディの魔女』13)で宿願を果たした。カルメン・マウラ扮する人食い魔女のリーダーの母親マリチェを怪演した。これは三度目の正直ではなく「五目」でした。今年2017もマリナ・セレセスキーの La puerta abierta16)で認知症の母親役を演じて6度目のノミネーションを受けた。ゴヤ賞ノミネーションはすべて助演女優賞です。

 

     

                  (魔女マリチェに扮した『スガラムルディの魔女』から)

 

      

 (涙、涙のゴヤ賞2014助演女優賞の授賞式にて)

 

★アッレクス・デ・ラ・イグレシアがゴヤ1996監督賞を受賞した『ビースト、獣の日』に初出演したあとも、上記以外に『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』(02)『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(15)『クローズド・バル』(17)などに起用されている。

 

   

  (左から、カロリナ・バング、カルメン・マウラ、デ・ラ・イグレシア、テレレ・パベス)

 

★テレレ・パベスを理解するのに避けて通れないのが父ラモン・ルイス・アロンソとの関係である。父はガルシア・ロルカ殺害に深く関与したことで告発され、テレレや姉二人ともにその重荷を背負って生きてきた。父親は内戦勃発の1936年、ヒル・ロブレス率いるスペイン独立右翼連合CEDA所属の元国会議員としてグラナダでは有名だった。アカ嫌いのルイス・アロンソは、グラナダのファランヘ党のリーダーとして幅を利かせていたという。ロルカ逮捕には関与したが、818日のロルカ銃殺には立ちあっていなかった。ダブリン出身だが1978年からスペインに移り住み国籍まで取った、ロルカ研究の第一人者イアン・ギブソンの著書に、逮捕の経過が詳細に書かれている。こういう事情を知らなかった若い舞台演出家が「ベルナルダ・アルバの家」のオファーをしたことがあったようです。時とともに内戦の悲劇も風化していくということでしょうか。

Federico García Lorca: A Life, ロンドン、Faber and Faber, 19891997年に翻訳書が出版)

 

★三人姉妹は集団的敵意の重圧に苦しみ、一時期父姓のルイスを省いていた。親の負債を子供がどれだけ負うべきかという是非はともかく、充分苦しんだという。私たち三人姉妹は「父親を恥じてRuizを省いていたが、もうすんだこと、父親としてはいい人だったのよ」とテレレは語っていたそうです。父親はフランコ総統が197512月に亡くなり後ろ盾を失ったことで不安を感じ、ラスベガスに移住していた三女マリア・フリア(19372017)を頼って数週間後にはアメリカに渡り、3年後の1978年に死去した。

 

★テレレを陶片追放から救い出してくれたのがデ・ラ・イグレシアだった。周囲の重圧をはねのける真摯な態度、傷つきやすさ、誠実さ、誰にも真似できない強烈な個性、それは彼女自身が編み出した演技だった。割り当てられた人物になりきる能力がずば抜けていた。「泣くべき時に泣き、どんな状況にも対応できた。モンスターだったよ」と『セレスティーナ』のベラ監督。トレードマークのような大胆なマスカラをつけ、しわがれ声をあちらで響かせていることだろう。

 

 

Novio a la vistaの記事は、コチラ2015621

『無垢なる聖者』の記事は、コチラ2014310日・11

『スガラムルディの魔女』の記事は、コチラ20141018

 La puerta abierta の記事は、コチラ2017112

ガルシア・ロルカの死についての記事は、コチラ2015911

 

アントニオ・バンデラス「国民映画賞2017」受賞*その他いろいろ2017年08月25日 14:06

          バンデラスがサンセバスチャン映画祭にやってくる

 

★「国民映画賞」の授賞式は、サンセバスチャン映画祭で行われるのが恒例、アントニオ・バンデラスが久しぶりにサンセバスチャンにやってきます。昨年はアンヘラ・モリーナで盛り上がりましたが、なかには2015年のフェルナンド・トゥルエバのように「今更もらっても・・・」と受賞をごねる監督もいたりして、受賞者の選考は難しい。今回も「もう上げちゃうの、どうして?」と疑問を呈するシネアストもいるようでした。今年の126日に心筋梗塞で倒れ、その後ジュネーブの有名な心臓外科病院で3本のステント手術を受けており、健康不安というトラブルを抱えるようになっています。

 

 

          (心臓手術後のアントニオ・バンデラス、20174月)

 

2015年には最年少の受賞者としてゴヤ栄誉賞をもらったばかり、2008年にはサンセバスチャン映画祭の栄誉賞ドノスティア賞2004金のメダル、シッチェス映画祭2014栄誉賞、マラガ映画祭2017では名誉金のビスナガ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞2015栄誉賞などなど、海外も含めて50代にして数々の栄誉賞に輝いています。まだ受賞歴のないゴヤ賞主演男優賞あるいは助演男優賞が待たれるところです。

 

ゴヤ賞2015栄誉賞の記事は、コチラ2014115

マラガ映画祭2017名誉金のビスナガ賞の記事は、コチラ201741

 

 

       アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表は・・・

 

★先日、アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表候補3作がスペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイクの口から発表になりました。今年の話題作、カルラ・シモンのデビュー作 Verano 1993(ラテンビート2017の邦題『夏、1993)、パブロ・ベルヘルの第3作コメディ Abracadabra (仮題「アブラカダブラ」)、サルバドル・カルボの戦争歴史物 1898, Los ultimos de Filipinas 以上3作に絞られました。カルラ・シモンの Verano 1993 は、オデッサ映画祭2017のインターナショナル部門の作品賞を受賞したばかり、ヨーロッパ映画賞2017の候補に選ばれています。

 

  

   (カルラ・シモンの Verano 1993

 

           (パブロ・ベルヘルの Abracadabra

 

  

                    (サルバドル・カルボの 1898, Los ultimos de Filipinas

 

Verano 1993 の紹介記事は、コチラ2017222

Abracadabra の紹介記事は、コチラ201775

1898, Los ultimos de Filipinas の紹介記事は、コチラ201715

 

 

       ヨーロッパ映画賞2017にスペインから3作が残りました

 

★ヨーロッパ映画賞エントリー51作が発表になりました。うちスペインからは次の3作が選ばれています。スペイン映画界に多大な貢献をしているフアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(劇場公開になっています)、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』Netflix放映)、カルラ・シモン『夏、1993(ラテンビート2017上映予定)の3作です。51作のなかから、114日開催のセビーリャ・ヨーロッパ映画祭でノミネーションが正式に確定します。11作品が恒例ですから選ばれるとしてもどれか1作です。授賞式は例年通り129日にベルリンで行われます。

 

  

 (フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』)

 

     

                                (ラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』)


ホライズンズ・ラティノ部門12作*サンセバスチャン映画祭2017 ③2017年08月24日 14:12

             ベルリン、カンヌ、ベネチアなどに重なるラインナップ

 

  

 

★ラテンビートに関係の深い作品群がこの「ホライズンズ・ラティノ」、製作国がラテンアメリカに特化している部門です。12作品で決定のようです。取りあえず映画の原題、監督名、製作国を列挙しておきます。12作中半分の6がカンヌ映画祭などで既にアップ済みです。サンセバスチャンは9月末と三大映画祭後の開催ということもあって、なかなかワールド・プレミア作品を選ぶのは難しい。また今年目立ったのが、サンセバスチャン映画祭201516Cine en Construcción部門に参加した作品が7作もあったことでした。この部門の受賞者には、副賞として35,000ユーロの賞金が与えられます。

 

 1)Una mujer fantástica  監督セバスティアン・レリオ チリ=ドイツ=スペイン=米国

  1. ベルリン映画祭2017銀熊脚本賞、テディー賞ほか受賞作品、トロント映画祭2017出品 

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ2017126222

  2.  

  1.  

      

  2. 2)La familia 監督グスタボ・ロンドン・コルドバ ベネズエラ=チリ=ノルウェー 

    カンヌ映画祭2017「批評家週間」正式出品 

    Cine en Construcción 30参加作品

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ2017428

  3.  

  1.  

       

    3La novia del desierto 監督セシリア・アタンバレリア・ピバト アルゼンチン=チリ

    カンヌ映画祭2017「ある視点」正式出品

    Cine en Construcción 31参加作品 

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ2017514 

  2.  

  1.  

       

  1. 4)Las hijas de Abril ミシェル・フランコ メキシコ  

    カンヌ映画祭2017「ある視点」審査員賞受賞作品

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ201758526

  2.  

  1.  

      

  2. 5)Los perros マルセラ・サイド チリ=フランス 

    カンヌ映画祭2017「批評家週間」正式出品

    Cine en Construcción 31参加作品

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ201751

  3.  

     

  1.     

  1. 6)Temporada de caza ナタリア・ガラジオラ アルゼンチン 監督  

    ベネチア映画祭2017「国際批評家週間」正式出品

    Cine en Construcción 31参加作品

    内容&監督キャリア紹介は、コチラ2017812

  2.  

  1.  

    以上6作は新たなアップは割愛いたします。

     

    7Al desierto 監督ウリセス・ロセル アルゼンチン=チリ

     

  1.  

  2.     

    8Arábia / Araby 監督アフォンソ・ウチョアジョアン・ドゥアン ブラジル

  3.   

  4.  

  1.  

  2.      

  1. 9)Cocote ネルソン・カルロス・デ・ロス・サントス・アリアス 

      ドミニカ共和=アルゼンチン=ドイツ=カタール 長編初監督作品 

      

  1.   

     

  2. 10)La educación del rey 監督サンティアゴ・エステベス アルゼンチン=スペイン 

      Cine en Construcción 30参加作品 長編初監督作品

  3.     

  1.   

     

  2. 11)Las olas アドリアン・ビニエス ウルグアイ=アルゼンチン 

    Cine en Construcción 30参加作品

      

  1.   

     

  1. 12)Medea アレクサンドラ・ラティシェフ コスタリカ=アルゼンチン=チリ 

      Cine en Construcción 30参加作品 長編初監督作品

  2.   

  1.  

     

    ★ナンバー(7)以降は、何作可能か分かりませんが、賞に絡みそうな作品からプロット、監督紹介を予定しています。今年のラインナップは粒ぞろいの印象、エントリー(8)番のブラジル映画 Arábia / Araby は、年初開催のロッテルダム映画祭で話題になって以来、既に世界各地の映画祭で上映されて受賞もしています。予告編からも「これは・・・」と思わせる凄さがあります。多分何かの賞に絡むでしょう。エントリー(11)番 Las olas のアドリアン・ビニエスは、アルゼンチン出身ですが現在はウルグアイで活動しています。ラテンビート2010で『大男の秘め事』が上映されている監督の長編3作目です。



ニューディレクターズ部門13作*サンセバスチャン映画祭2017 ②2017年08月23日 11:45

                スペイン語映画はドキュメンタリーを含む4作品

 

 

    

★スペインでも観光地バルセロナと近郊の都市を標的にしたテロがあり犠牲者が出ました。映画も政治と密接な関係がありますから、今年のサンセバスチャン映画祭が案じられます。ラインナップ13作品のうちアジアからも台湾、中国、韓国から各1作品、フィリピンからは2作品も選ばれてい。スペイン語映画からは、スペイン、コロンビア=アルゼンチン、チリ=スペイン=アルゼンチン、アルゼンチンの4作品です。各作品の内容並びに監督紹介は別途にアップする予定です。

 

★スペイン語映画の4作は、以下の通り:

Alberto García-Alix. La línea de sombra スペイン、ドキュメンタリー、

  監督ニコラス・コンバロ

解説:スペインの写真家アルベルト・ガルシア=アリックス(1956年)の足跡と作品を描いたドキュメンタリー。ニコラス・コンバロは、1979年ラ・コルーニャ生れのアーティスト。

 

 

 

Matar a Jesús コロンビア=アルゼンチン、フィクション、監督ラウラ・モラ

解説・プロット22歳の大学生パウラは大好きだった父親を殺害されてしまった。父親はメデジンの公立大学で政治科学の教授をしていた。離れたところからだが、犯人が猛スピードで走り去るモーターバイクが見えたが、パウラにはどうしてこんなことが起きてしまったのか理解できなかった。事件の2ヵ月後のクリスマスに、父親を殺害した若いヘススと偶然通りですれ違った・・・

ラウラ・モラは、メデジン生れの36歳、監督、脚本家、製作者。2006Brotherhood で短編 デビュー、TVシリーズ『パブロ・エスコバル 悪魔に守られた男』(20122話)を監督する。本作は2002年に父親を殺害された実体験がもとになっている。サンセバスチャン映画祭の総指揮者ホセ・ルイス・レボルディノスが、試写後2時間で即決したという力作。

 

  

 

Princesita チリ=スペイン=アルゼンチン、フィクション、監督マリアリー・リバス

解説・プロット12歳になるタマラは、地の果てチリ南部で暮らしている。タマラはあるカルト的集団のカリスマ的指導者ミゲルを崇拝している。しかし夏、彼女が初潮を迎えたらミゲルとのあいだに聖なる子供をもつというミッションを与えられる。タマラは自分が望んでいたものとはかけ離れた現実に直面していることに気づく。彼女の不服従は少女から女性に成長するなかで暴力に向きを変え、思いもかけないかたちで、自由を獲得するだろう。

マリアリー・リバスの長編第2作、サンセバスチャン映画祭2015Cine En Construcción」参加作品。チリ南部で実際に起きた事件にインスピレーションをうけて製作された。

 

   

 

Tigre アルゼンチン、フィクション

  監督シルビナ・シュニッセルSchnicer・シュリーマンウリセス・ポラ・グアルディオラ

解説・プロット65歳になったリナは、長いあいだ顧みなかった昔の家に、過去を取り戻し、家を建て直し、息子ファクンドとの関係も修復したいと帰ってきた。ここデルタ・デル・ティグレの奥深くにある島の家で息子を育て、人生の多くの時間を過ごしたのだ。息子もデルタを出てしまってずっと会っていない。やがて母と息子は再会するが、すべてが変わってしまったことに気づくだろう。デルタの時はゆっくり流れ、全ての人を包み込みながら混乱させる。スクリーンにさまざまな風景、活発な島の子供たちが現れるのを目にするだろう。

シルビナ・シュニッセル・シュリーマンはブエノスアイレス生れ、ウリセス・ポラ・グアルディオラはカタルーニャ出身だが現在はブエノスアイレスに在住している。共に初監督作品。デルタで4週間撮影したそうだが、次々に現れるデルタの自然も主人公の一人とか。過去にヴィゴ・モーテンセンが一卵性双生児の兄弟に扮したアナ・ピターバーグの『偽りの人生』(12)の舞台も、ここデルタ・デル・ティグレだった。