アリエル賞2017*メキシコ・アカデミー賞の結果発表2017年07月15日 16:30

        メキシコ未公開映画が最優秀作品賞以下10冠の不思議

 

★デビュー作(が目立った今年のアリエル賞711日に発表になりました。カテゴリーはまた増えて28個、うち10冠(ノミネート20個)を制したLa 4a compañíaが、未だにメキシコでは公開されていないのに受賞しました。グアダラハラ映画祭201636日)で上映こそされましたが、アカデミー会員の多くはスクリーンでは観てないはずです。今後の公開を期待したのかもしれませんが、配給会社はまだ決まっていないようです。受賞カテゴリーは、作品・男優(アドリアン・ラドロン)・クアドロ男優(エルナン・メンドサ)・編集・視覚効果・特殊効果・美術デザイン・録音・衣装・メイクアップの10個です。Tempestadがドキュメンタリーということからある程度は予想されていましたが、未公開作品が作品賞を取るという結果になりました。

 

           

              (La 4a compañíaのポスター)

 

★アリエル賞はメキシコの社会情勢を反映して、政治的メッセージの強い映画が選ばれる傾向にあると思います。2016年ダビ・パブロスの『選ばれし少女たち』2015年アロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』2014年ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』と、切りこむ角度は違ってもメキシコやラテンアメリカの闇を抉るという意味では同じでした。今年の受賞作も実話をベースにした刑務所が舞台になっている。制度的革命党PRIのホセ・ロペス・ポルティーリョが大統領だった時代(197682)、メキシコ・ペソの大暴落で世界を混乱させた頃の物語です。実現までに10年以上もかかったプロジェクト全員が、待ちに待った受賞者のアナウンスに酔いしれた夕べとなりました。

La 4a compañía」ほかノミネーション発表の記事は、コチラ20176月9日

  

 最優秀作品賞(メキシコ)

『夜を彩るショーガール』Bellas de noche)ドキュメンタリー

                        監督マリア・ホセ・クエバス

『彼方から』(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス

『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン

Tempestad」ドキュメンタリー 監督タティアナ・ウエソ

Me estás matando, Susana監督ロベルト・スネイデル

La 4a compañía(スペイン合作)

                  監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ

El sueño del Mara'akame監督フェデリコ・Cecchetti

 

   

        (ミッチ・バネッサ・アレオラとアミル・ガルバン・セルベラ)

 

 監督賞&長編ドキュメンタリー賞

タティアナ・ウエソTempestad」ドキュメンタリー

女性で監督賞を受賞した第1号となり、当夜のもう一人の華だった。アリエル賞は1947年、16のカテゴリーで始まったメキシコ・アカデミー賞、その長い歴史にもかかわらず、ウエソ監督が初とは驚きを通りこして沈黙あるのみです。女性への暴力が処罰されないメキシコの現在が語られる。パウラ・マルコビッチ監督の自伝的デビュー作「El premio」(メキシコ、仏、独、ポーランド)が、2013年に作品賞を受賞したことがあります。しかし彼女はメキシコで活動しているアルゼンチン出身の脚本家でした。

 

 

        (監督賞のトロフィーを手にしたタティアナ・ウエソ)

 

 オペラ・プリマ第1回作品賞&と音楽賞

El sueño del Mara'akame」監督:フェデリコ・Cecchetti

 

    

                (出演者と一緒に)

 

 男優賞(二人)

アドリアン・ラドロンLa 4a compañía

ホセ・カルロス・ルイスAlmacenados監督:ジャック・サグア・カバビエZagha Kababie確認

若手とベテランが賞を分け合いました。

 

 

      (左から、ホセ・カルロス・ルイスとアドリアン・ラドロン)

 

 女優賞

ベロニカ・ランガー(ランヘル)La calidas監督:マロエイリノ・イスラス・エルナンデス

 

   

               (貫禄の受賞者ベロニカ・ランガー)

 

 助演男優賞

オセHoze・メレンデスAlmacenados

 

 

 助演女優賞

アドリアナ・パスLa calidas

 

  

 新人男優賞

パコ・デ・ラ・フエンテEl alien y yo監督:ヘスス・マガニャ・バスケス

 

 新人女優賞

マリア・エボリTenemos la carne」監督:エミリアノ・ロチャ・ミンター

  

 

 クアドロ男優賞

エルナン・メンドサLa 4a compañía

 

 

 クアドロ女優賞

マルタ・クラウディア・モレノ 「Distancias cortas」

 

 

 

 オリジナル脚本賞

ホアキン・デル・パソルシー・PawlakMaquinaria Panamericana監督ホアキン・デル・パソ

 

 脚色賞

ダビ・デソラAlmacenados

 

 撮影賞

エルネスト・パルドTempestad

 

 編集賞

ミッチ・バネッサ・アレオラフランシスコ・リベラカミロ・アバディアLa 4a compañía

 

   

  (欠席したカミロ・アバディアのトロフィーも手にアレオラ、フランシスコ・リベラ)

 

 視覚効果賞

リカルド・ロブレスLa 4a compañía

 

 特殊効果賞

ルイス・エドゥアルド・アンブリスLa 4a compañía

 

 美術デザイン賞

ジェイ・エロエスティカルロス・コッシオLa 4a compañía

 

 

 音楽賞

エミリアノ・モッタEl sueño del Mara'akame

 

 衣装賞 

ベルタ・ロメロホセ・グアダルーペ・ロペスLa 4a compañía

 

 

 メイクアップ賞

カルラ・ティノコアルフレッド・ガルシアLa 4a compañía

 

 

 録音賞2作)

ハビエル・ウンピエレスイサベル・ムニョスLa 4a compañía

フェデリコ・ゴンサレス・ホルダンカルロス・コルテスTempestad

 

 短編賞(フィクション)

El ocaso de Juan監督:オマル・デネド・フアレス

 

 

 短編賞(ドキュメンタリー)

Aurelia y Pedro監督:オマル・ロブレスホセ・ペルマル

 

 

 短編アニメーション(長編は該当作なし)

Los aeronautas監督:レオン・ロドリゴ・フェルナンデス

 

    

 イベロアメリカ映画賞

『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート

笑う故郷(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル

Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、 監督セバスティアン・コルデロ

『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ

(ブラジルとアルゼンチンが分け合いました)

 

 ゴールデン・アリエル賞(二人)

イセラ・ベガ(女優、脚本家、製作者、シンガー・ソング・ライター)

1939年生まれ。アリエル賞では、女優賞を1984年にアルトゥーロ・リプスタインのLa viuda negra」で受賞しているが、本作は1977年製作、メキシコ公開が1983年でした。他に2000年「La ley del Herodes」でも受賞、他に助演女優賞も受賞している。サム・ペキンパーの米国メキシコ合作映画『ガルシアの首』に出演、これは1975年公開されている。

 

 

ルセロ・イサック(美術監督)

 

 

 

La 4a compañía10個、Tempestad4個、Almacenados」が3個、「El sueño del Mara'akame

La calidas2個ずつ、他は1カテゴリーという結果になりました。既に公開、映画祭上映、ネットフリックスなどで見ることのできる作品もありますが、この他どのくらい日本で見られるでしょうか。マリア・エボリが新人賞を取ったホラー・ファンタジーTenemos la carne」(エミリアノ・ロチャ・ミンター)あたりは期待できそうです。

  

元気印のバルセロナの女性監督たち*カルラ・シモン、ロセル・アギラル・・・2017年07月10日 15:53

     カタルーニャに押しよせる魅惑的な新しい波―独立プロダクションの活躍

 

★どこの国にも当てはまるのが女性監督の圧倒的な少なさです。特にヨーロッパでも東欧では格差が顕著です。しかしカタルーニャではいささか様子が違うようです。というのも独立系プロダクションで映画作りをしている女性監督の活躍が目覚ましいのです。最近1か月間にカルラ・シモン1986)のVerano, 1993ロセル・アギラル1971)のBravaエレナ・マルティン1992)のJúlia ist の新作が次々に公開されることになり話題を呼んでいます。3人ともバルセロナ出身、先月末バルセロナのバルセロ・サンツ・ホテルで行われた鼎談の様子をエル・パイス紙が報じていました。この背景にはESCACで映画を学んでいる女性が40%を超えているという現実を見逃すわけにいきません。

  

  

(左から、カルラ・シモン、ロセル・アギラル、エレナ・マルティン、バルセロ・サンツにて)

 

ESCAC : Escuela Superior de Cinema i Audiovisuals de Catalunya カタルーニャ・シネマ・オーディオビジュアル高等学校。1993年バルセロナ大学の付属校としてバルセロナで設立、翌年開校した。現在は同州のタラサTarrasa(テラッサTerrassa)にあり、現校長はSergi Casamitjanaである。同校の卒業生には、当ブログでもお馴染みのフアン・アントニオ・バヨナ(『怪物はささやく』17)、キケ・マイジョ(『ザ・レイジ 果てしなき怒り』15)、マル・コル(『家族との3日間』09)、ハビエル・ルイス・カルデラレティシア・ドレラなどバルセロナ派の優れた監督を輩出している。

 

★同じバルセロナで仕事をしているが、シモンとアギラルは初顔合わせだった。それは年齢差の他に、映画を学んだ出身校の違いもありそうです。例えばシモンはバルセロナ自治大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科を卒業後、映画はロンドン・フィルム・スクールで4年間学んでいる。アギラルがバルセロナ自治大学でジャーナリズムを学んでいるときは、ESCACはまだ設立前だった。マルティンはバルセロナのポンペウ・ファブラ大学(1990設立)を卒業、この公立大学で学ぶ女子学生数は74%に達しており、スペイン全体では51%と男子学生を逆転してしまっている。女性シネアストの活躍にはこのような裾野の広がりがあるようです。

 

      「ロンドンでの4年間が私を映画作りに駆り立てた」とカルラ・シモン

 

カルラ・シモン(バルセロナ1986)の監督、脚本家。Verano 1993(カタルーニャ語題 Estiu 1993)でデビュー、ベルリン映画祭2017ジェネレーション部門の第1回作品賞・国際審査員賞、マラガ映画祭2017では作品賞「金のビスナガ」とドゥニア・アジャソ賞を受賞した。この賞はガン闘病の末に2014年鬼籍入りしたドゥニア・アジャソ監督の功績を讃えて設けられた賞。第7回バルセロナD'Autor映画祭正式出品。他にブエノスアイレス・インディペンデント映画祭監督賞、イスタンブール映画祭審査員特別賞などを受賞している。選考母体が欧州議会の第11回ラックス賞のオフィシャル・セレクション10本にも選ばれています。プロットは紹介記事を読んでもらうとして、「両親がエイズで亡くなったため叔父さん夫婦と従妹と一緒に暮らさねばならなくなった6歳の少女の一夏の物語」です。観客にも批評家にも好感度バツグン、両方に評価されるのは、易しそうでいてなかなか難しいものです。主役の少女フリーダは監督自身に重なります。つまり監督のビオグラフィーがもとになっていて、6歳にしてはちょっとおませな少女像です。

 

       

      (養父を演じたダビ・ベルダゲルとフリーダ役のライア・アルティガス)

 

★ロンドンでの4年間が私を映画作りに駆り立てた。というのもロンドン時代に「内に抱いている、心を動かされる物語を語りたいと強く突き動かされた」からです。バルセロナに評判の高い独立プロダクションが本当に存在するかどうか具体的に答えるのは難しいが、「カタルーニャの女性監督の数がここにきて急に増えたことは確かなことです。要するにカギはこうしたいという意思表示や本当にやる気があるかどうかです。とても小さい世界ですから、お互いに刺激やエネルギーのやり取りがしやすい。ロンドンでは誰とも親しくしなかった。マル・コル監督やプロデューサーのバレリエ・デルピエレと交流し、結果彼女がプロモートしてくれた」。バレリエ・デルピエレは本作のエグゼクティブ・プロデューサーの一人です。 本作を支えてくれたスタッフの80%が女性だったことも明かしていた。  

 

        

          (ライア・アルティガスに演技指導をするシモン監督)

 

 Estiu 1993 とカルラ・シモンの紹介記事は、コチラ2017222327

 

     「マドリードよりバルセロナのほうが自由がある」とロセル・アギラル

 

ロセル・アギラル(バルセロナ1971)の監督、脚本家。Brava2017)は第2作、3人のうち一番年長のロセル・アギラルの Brava は、マラガ映画祭の記事で作品と監督のキャリアを紹介しております。新人とは言えませんが、国際的にも高い評価を受けたデビュー作 La mejor de mí 2007年と10年前になり、女性監督のおかれた地位の険しさを改めて感じさせられます。「第2作をクランクインさせるまで長くて曲がりくねった道を辿りましたが、撮りたい映画を作れるわけではありません。胎児を引っ張り出す助けをする助産婦さんのようなものです」と生みの苦しみをのぞかせた。それでも「マドリードは産業的だが、反対にバルセロナの独立プロダクションはより自由に伸び伸びと作らせてくれる」とカタルーニャのindieの柔軟さを語っていた。

 

  

         (ヒロインのライア・マルルを配したポスター)

 

★「20年前には、フェミニズムや男女平等について語ることは恥で、それは映画でさえ僅かでした。今日でも相変わらず男尊女卑が大手を振るっていますから、声を張り上げなければなりません」と。ESCAC内には「観客を置き去りにしない多くの独立プロダクションがあって、決まりきった事柄を回避する良い方法が得られます」とも。「私たちが望むのは現在の不均衡を是正して欲しいだけです。というのも私たちは男性が作るあまりに単純化された一方向性の世界観に馴らされてしまっているからです」と警鐘を鳴らしておりました。

 

 

             (ロセル・アギラル監督)

 

Brava とロセル・アギラルの紹介記事は、コチラ2017311

 

     「映画史は学ばなかった。学んだのは男性映画史だった」とエレナ・マルティン

 

エレナ・マルティン(バルセロナ1992Júlia ist2017)はデビュー作、マラガ映画祭2017ZonaZine部門の作品賞、監督賞を受賞している他、第7回バルセロナD'Autor映画祭に正式出品された。自ら主役ジュリア(フリア)を演じた自作自演のデビュー作。新世代の代表的監督の一人、映画と舞台、監督と女優と二足の草鞋を履いている。バルセロナのポンペウ・ファブラ大学UPFの学生時代に仲間4人と共同監督したLas amigas de Agata(15)でも主役のアガタに扮した。本作は「ポンペウ・ファブラ大学の最終学年に閃いた作品、公立大学のUPFにはESCACのような制作会社がないので常に資金不足、コストを下げるために、およそ持てるもの全てにについて議論し励ましあい、グループで作っている」とマルティン。彼女の仲間たちにとって「アメリカ映画、例えば『今日、キミに会えたら』(Like Crazy2011)を見ることはヒントになった。なぜなら若人たちの会話とか状況が似通っていたからです」と語っている。まだ経験不足でバルセロナの映画産業について語る立場にないが、「大学では映画史は学ばなかった。学んだのは男性映画史だった。コンペティションも男性優位、女性が作る映画は取るに足りないと遠ざけられる」とも語っている。

 

    

          (ヒロインのエレナ・マルティンを配したポスター

 

★当ブログ初登場作品、脚本はエレナ・マルティン、ポル・レバケマルタ・クルアニャスマリア・カステリビの共同執筆、撮影はポル・レバケ。キャストはエレナ・マルティン、オリオル・プイグラウラWeissmahrほか、90分、スペイン公開616日。プロット「ジュリアはバルセロナ建築大学の学生、深く考えたわけではないがベルリンにエラスムスに行こうと決心する。初めて家を離れるのも冒険なのだ。ところがベルリンでは、どんよりとして冷たい想像を超えた凍てつくような寒気という手痛い歓迎を受けてしまった。期待と現実の落差に立ち向かうことになるが、どう見ても新しい人生はバルセロナで考えていたようなものとはかけ離れ過ぎていた」。エラスムスに行くというのはEU域内を対象にした留学奨励制度を指していると思うが、あるいは世界各国に対象を広げたエラスムス・ムンドゥスかもしれない。

 

   

          (ジュリアを演じたエレナ・マルティン、映画から)

 

★意を尽くせませんでしたが鼎談のあらあらを総花的にご紹介いたしました。バルセロナはマドリードよりindie独立プロダクションで製作する監督が多く、その中にはイサキ・ラクエスタ&イサ・カンポ夫婦(La proxima piel マラガ映画祭16)、カルロス・マルケス=マルセ10.000 KMマラガ映画祭14)、マルク・クレウエトEl rey tuerto マラガ映画祭16)などもおり、当ブログでもご紹介しております。

 La proxima piel マラガ映画祭2016の紹介記事は、コチラ2016429

 10.000 KM マラガ映画祭2014の紹介記事は、コチラ2014411

 El rey tuerto マラガ映画祭2016の紹介記事は、コチラ201655

 

パブロ・ベルヘルの新作コメディ「アブラカダブラ」*いよいよ今夏公開2017年07月05日 18:37

           大分待たされましたが84日スペイン公開が決定

 

   

『ブランカニエベス』の成功で国際的にも知名度を上げたパブロ・ベルヘルの第3Abracadabra がいよいよ公開されることになりました(84日)。どうやら9月開催のサンセバスチャン映画祭を待たないようです。昨年の初夏にクランクイン以来、なかなかニュースが入ってきませんでしたが、YouTubeに予告編もアップされ笑ってもらえる仕上りです。モノクロ・サイレントの前作は、2012年のトロント映画祭を皮切りにサンセバスチャン、モントリオール、USAスパニッシュ・シネマ、ロンドン・・・と瞬く間に世界の各映画祭を駆け抜けました。サンセバスチャン映画祭では金貝賞こそ逃しましたが、審査員特別賞他を受賞、翌年のゴヤ賞は作品賞の大賞以下10冠を制覇、米アカデミーのスペイン代表作品、アリエル賞などなど受賞歴は枚挙に暇がありません。ということで2013年、はるばる日本にまでやってきてラテンビート上映後、公開に漕ぎつけたのでした。新作は果たして柳の下の二匹目のドジョウとなるのでしょうか。

 

 Abracadabra  2017

製作:Arcadia Motion Pictures / Atresmedia Cine / Persefone Films / Pegaso Pictures / Movistar +  Noodles Production(仏)/ Films Distribution(仏)

監督・脚本・音楽:パブロ・ベルヘル

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

音楽:アルフォンソ・デ・ビラジョンガ

編集:ダビ・ガリャルト

衣装デザイン:パコ・デルガド

美術:アンナ・プジョル・Tauler

プロダクション・デザイン:アライン・バイネエAlain Bainee

キャスティング:ロサ・エステベス

メイクアップ&ヘアー:Sylvie Imbert(メイク)、ノエ・モンテス、パコ・ロドリゲス(ヘアー)他

製作者:サンドラ・タピア(エグゼクティブ)、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、アンヘル・ドゥランデス、ジェローム・ビダル、他

 

データ:スペイン=フランス、スペイン語、2017年、ブラック・コメディ、ファンタジー、サスペンス、カラー。公開:スペイン84日、フランス111日、配給ソニー・ピクチャー

 

キャスト:マリベル・ベルドゥ(カルメン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(カルロス)、ホセ・モタ(カルメンの従兄ペペ)、ジョセップ・マリア・ポウ(ドクター・フメッティ)、キム・グティエレス(ティト)、プリスシリャ・デルガド(トニィ)、ラモン・バレア(タクシー運転手)、サトゥルニノ・ガルシア(マリアノ)、ハビビ(アグスティン)、フリアン・ビジャグラン(ペドロ・ルイス)他

 

プロット:ベテラン主婦のカルメンとクレーン操縦士のカルロス夫婦は、マドリードの下町カラバンチェルで暮らしている。カルロスときたら寝ても覚めても「レアル・マドリード」一筋だ。そんな平凡な日常が姪の結婚式の当日一変する。カルロスが結婚式をぶち壊そうとしたので、アマチュアの催眠術師であるカルメンの従兄ペペが仕返しとして、疑り深いカルロスに催眠術をかけてしまった。翌朝、カルメンは目覚めるなり夫の異変に気付くことになる。霊が乗り移って自分をコントロールできないカルロス、事態は悪いほうへ向かっているようだ。そこで彼を回復させるための超現実主義でハチャメチャな研究が始まった。一方カルメンは、奇妙なことにこの「新」夫もまんざら悪くないなと感じ始めていた。果たしてカルロスは元の夫に戻れるのか、カルメンの愛は回復できるのだろうか。

 

        

             (カルメンとカルロスの夫婦、映画から)

 

★大体こんなお話のようなのだが、監督によれば「新作は『ブランカニエベス』の技術関係のスタッフは変えずに、前作とは全くテイストの違った映画を作ろうと思いました。しかし、二つは違っていても姉妹関係にあるのです。私の全ての映画に言えることですが、中心となる構成要素、エモーション、ユーモア、驚きは共有しているのです」ということです。キコ・デ・ラ・リカパコ・デルガドアルフォンソ・デ・ビラジョンガなどは同じスタッフ、キャストもマリベル・ベルドゥジョセップ・マリア・ポウラモン・バレアなどのベテラン起用は変わらない。『SPY TIMEスパイ・タイム』のイケメンキム・グティエレスの立ち位置がよく分からないが、カルロスに乗りうつった悪霊のようです。監督はそれ以上明らかにしたくないらしい。コッポラの『地獄の黙示録』のカーツ大佐が手引きになると言われても、これでは全く分かりませんが「映画館に足を運んで確かめてください」だと。若手のプリスシリャ・デルガドは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でエンマ・スアレスの娘を演じていた女優。

 

  

       (撮影中の左から、ホセ・モタ、マリベル・ベルドゥ、ベルヘル監督)

 

★マリベル・ベルドゥ以下三人の主演者、アントニオ・デ・ラ・トーレ、ホセ・モタの紹介は以下にアップしています。アントニオ・デ・ラ・トーレは、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』やラウル・アレバロのデビュー作『物静かな男の復讐』で見せた内省的な暗い人格、デ・ラ・イグレシアの『気狂いピエロの決闘』の屈折した暴力男とは全く異なるコミカルな男を演じている。多分ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ『デブたち』のノリのようだ。どんな役でもこなせるカメレオン役者だが、それが難でもあろうか。デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』のホセ・モタについては、「アブラカダブラ」で紹介しております。

 

         

               (ペペ役のホセ・モタ、映画から)

 

「アブラカダブラ」の監督以下スタッフ&キャスト紹介は、コチラ2016529

マリベル・ベルドゥの紹介記事は、コチラ2015824

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介記事は、コチラ201398


米アカデミー新会員に招待されたイベロアメリカのシネアスト2017年07月03日 11:09

 

        新会員候補者774人のなかで断るシネアストは何人くらい?

 

★ホワイト男性の牙城ハリウッドも国内外からの批判を浴びて、重い腰を上げたということでしょうか。2016年「♯OscarsSoWhite」の政治的キャンペーン以来、従来のアカデミー会員規則の変更を迫られた。会員の92%以上が白人男性で平均年齢が62歳という具体的な数字を挙げられてみれば、これはやはり異常な「老人クラブ」だと今更ながら驚きます。シェリル・ブーン・アイザック会長によれば、昨年は683人、今年は59か国774人に招待状を送ったということです。新会員のうち非白人が30%、女性が39%、一番若い会員はエル・ファニングの19歳、これで少しは平均年齢が下がるでしょうか(笑)。勿論会員になりたくなければ招待を断ってもいいわけですが、世界で最も選り抜きの映画クラブですから損得を計算する必要がありそうです。90年前に設立者293人で始まった米アカデミーの会員は、約7500を数える大所帯になったわけです(アカデミーはこれまでも正確な構成員数は明らかにしていない)。

 

★日本からも三池崇史監督、真田広之、昨年母親になった菊地凛子など、米国で比較的認知度のある人の名前が報道されていましたが、スペイン、ラテンアメリカ諸国でも同じ傾向のようです。スペイン映画出演では、エレナ・アナヤパス・ベガヴィゴ・モーテンセンダニエル・ブリュールエドガー・ラミレス、ロドリゴ・サントロなどの俳優、当ブログ未紹介のロドリゴ・サントロはブラジルで絶大な人気を誇る大スター、ウォルター・サレスの『ビハインド・ザ・サン』、エクトル・バベンコの『カランジル』や最近ではパトリシア・リヘンの『チリ33人の希望の軌跡』ほか、米国映画にも多く出演している。

 

(エレナ・アナヤ)

  

 

★撮影監督では、ホセ・ルイス・アルカイネアフォンソ・ベアトキコ・デ・ラ・リカエルネスト・パルドなど。アフォンソ・ベアトは、ブラジル出身ですがアルモドバルの『ライブ・フレッシュ』や『オール・アバウト・マイ・マザー』を手掛けている。メキシコのエルネスト・パルドは主にドキュメンタリーを撮っている撮影監督、最近ではタティアナ・ウエソの "Tempestad" でフェニックス賞ドキュメンタリー部門の撮影賞を受賞、これから発表になるアリエル賞2017でもノミネートされています。

 

(エルネスト・パルド)

 

 

★監督では、アドルフォ・アリスタラインパトリシア・カルドソアレハンドロ・ホドロフスキーエクトル・オリベラアルトゥーロ・リプスタインパブロ・トラペロなど、当ブログに登場してもらった名前を挙げておきます。アドルフォ・アリスタライン2003年にスペイン国籍を取得、アルゼンチンとの二重国籍です。サンセバスチャン映画祭やゴヤ賞のノミネーションでよく目にする監督、オスカーでは1992年のUn lugar en el mundo が最終候補に選ばれた。2004年の『ローマ』がラテンビートで上映されている。アルトゥーロ・リプスタインはメキシコ出身だが、アリスタライン同様2003年にスペイン国籍をとり、現在は夫人で脚本家のパス・アリシア・ガルシア・ディエゴとサンセバスチャン在住。『真紅の愛』(96)や『大佐に手紙は来ない』(99)などが公開されている。友人でもあったルイス・ブニュエルの後継者と言われている。

 

   

     (アルトゥーロ・リプスタインと夫人パス・アリシア・ガルシア・ディエゴ)

 

パトリシア・カルドソも当ブログ未紹介の監督(日本表記はカルドーゾ)、コロンビアのボゴタ出身だが、1987年米国に移住している。2002年のサンダンス映画祭で Real Women Have Curves が観客賞・審査員賞を受賞しており、2010年の Lies in Plain Sight が『見えない真実』という邦題で紹介されているようだが未見です。米国での活躍が選定の一つになっている。

 

               メキシコはハリウッドを目指す?

 

★メキシコは隣国ということもあって、上記のアルトゥーロ・リプスタイン、エルネスト・パルドを含めて6人が招待を受けました。メキシコはますますハリウッドを目指すのでしょうか。ほかの4人は、『エリ』のアマ・エスカランテ監督、カナナ・フィルムの中心的プロデューサー、『選ばれし少女たち』や『ミス・バラ』を企画したパブロ・クルスベルタ・ナバロ(日本表記はバーサ・ナヴァッロ)、デル・トロのホラー『クロノス』(93)、『デビルズ・バックボーン』(01)、続いて『パンズ・ラビリンス』などをプロデュースしている。監督・脚本家のナタリア・アルマダは、第40代メキシコ大統領プルタルコ・エリアスの曽孫、ドキュメンタリー作家としてスタートした。代表作は、Al otro lado05)、曾祖父の足跡をたどったEl general09)、El Velador11)など。最新作の初フィクションTodo lo demas16)が高評価、ヒロインのアドリアナ・バラッサがアリエル賞女優賞にノミネートされている。2012年にマッカーサー奨学資金を受けている。メキシコの6人は既に招待受諾の意思を表明している。

 

(アマ・エスカランテ)

 

              

  (パブロ・クルス)

 

 (ベルタ・ナバロ)

          

 

(ナタリア・アルマダ)

           

 

★昨年既に招待されている監督に、カルロス・レイガダスカルロス・カレラパトリシア・リヘンがいる。ブニュエルの『ビリディアナ』や『皆殺しの天使』で知られるシルビア・ピナル1931)は、まだテレドラに出演している現役だが投票の権利を行使しないと表明している。いずれにしてもシネマニアには大して関係ないことですから、ここいらへんで。


サルバドル・ダリと妹の確執を描いた"Miss Dali"*ベントゥラ・ポンス新作2017年06月29日 11:52

   画家サルバドル、妻ガラ、妹アンナ・マリアの確執を描いた現代版「ギリシャ悲劇」

 

★ダリの「娘」を主張するピラル・アベルさんの申立てにより、「マドリード裁判所、DNA鑑定のためサルバドル・ダリの遺体掘り起しを命令」(626日)には、さすがのダリも彼の世でびっくりしていることでしょう。当然、ダリ財団が掘り起し阻止を上訴する意向ですから、泥仕合が続きますね。これとは全く関係ありませんが、ベントゥラ・ポンスの新作 Miss Dali201790分)がクランクアップ、秋にはスペイン公開がアナウンスされました。ダリの4歳下の妹アンナ・マリア190889)を主人公に画家との長年にわたる確執を描いた現代版「ギリシャ悲劇」です。今年の327日に、ダリ家の別荘があるカダケスでクランクイン、本格的には529日から6月にかけて撮影された。画家が滞在したニューヨークは、雰囲気が似ているジローナ県で行われたようです。物語は1920年代から兄妹が亡くなる1989年までが語られる。

 

   

サルバドル・ダリ190489、フィゲラス)自身についての著作や映画は、既に幾つも存在していますが、その妹についてはそれほど知られていません。主人公ミス・ダリを演じる英国女優シアン・フィリップス1933、ウェールズ、『デューン砂の惑星』)でさえ「脚本が届くまでダリに妹がいるなんて知りませんでした。しかしカダケスに来てみて、それとなく疑問が解けたように感じました」。構想4年、本作執筆のため自伝を含め23冊のダリ関連本を読んだというポンス監督も、同じ小さな町に40年間も住みながら口を利かず他人同然だったという兄妹の壮絶な関係に現代版「ギリシャ悲劇」を感じたようです。クレア・ブルーム1931、ロンドン、『英国王のスピーチ』)が演じたアンナ・マリアの親友マギーだけが実在の人物ではなくフィクションだそうです。アンナ・マリアが一時期英国に留学していたとき知り合った友人に想定したようです。ということで英国のベテラン女優二人が主役に起用されました。 

 

    

(アンナ・マリア役のシアン・フィリップスとマギー役のクレア・ブルーム)

 

   

         (ダリ家が夏の別荘として所有していたジローナ県カダケスで撮影中の二人)

 

★アンナ・マリアは画家、その友人たちロルカやブニュエルの最初のミューズであり親友だったという。もともと夢見がちな少女だったというアンナ・マリアの幸せな青春時代は市民戦争でもろくも終わりを告げました。フランコ軍のスパイという容疑をかけられ誤って逮捕、収監、拷問を受けたトラウマが尾を引いていたこと、ポール・エリュアールと妻ガラがカダケスに現れ、ダリとガラの距離が急速に狭まったこと、ガラが夫を捨て画家のもとに走ったことなどが重なって拍車がかかったようです。謎に包まれた義姉ガラへの根深い嫉妬心は広く知られたことであるが、彼女の出現で兄の寵愛を失った打撃は大きかったようです。映画ではどのように描かれるのでしょうか。40年間フィゲラスで暮らしながら絶交状態だったという兄妹、アンナ・マリアは兄が1989年鬼籍入りした数か月後に後を追うように旅立った。

 

 

(芸術家たちのミューズだった頃の画家とアンナ・マリア、1920年代)

 

(画家と妻ガラ)

  

★詳しいキャストの全体像が見えてきていませんが、若い頃のアンナ・マリアをミランダ・ガスが、少女時代をベルタ・カスタニェ、エミリア・ポメスをポンス映画の常連メルセ・ポンスなど、過去にポンス映画の出演者が占めています。本作の言語はカタルーニャ語と英語ということで、バルセロナ派がキャストの大方を占めています。エミリア・ポメスは、アンナ・マリアの世話をしていた女性で生存しています。ダリの芸術作品やカダケスにあるEs Llané Granの別荘を相続しています。この夏の別荘にはロルカが1925年から3年間続けて訪れていました。当時の詩人のミューズがアンナ・マリアだったと言われています。

 

         

         (ロルカとダリ、カダケスの夏の別荘、1927年夏)

 

  

   (左から、エミリア・ポメス役のメルセ・ポンス、シアン・フィリップス、映画から)

  

★他にアナウンスされている男性キャストのうち、サルバドル・ダリを演じるエクトル・ビダレス、ガルシア・ロルカ(キム・アビラ)やルイス・ブニュエル(アルベルト・フェレイロ)、ポール・エリュアール(ティモシー・コーデュクス)など、妻ガラを誰が演じるのか気になりますが、まだIMDbにはアップされておりません。今回はアウトラインだけのご紹介です。

 

  

         (クレア・ブルーム、監督、シアン・フィリップス)

   

"No sé decir adiós" リノ・エスカレラのデビュー作*気になる俳優たち2017年06月25日 12:16

       「さよなら」のタイミング―どうしようもない別れについての物語

 

★マラガ映画祭2017以来ずっとアップしたいと思いながら後回しになっていたリノ・エスカレラのデビュー作 No sé decir adiós のご紹介。審査員特別賞、脚本賞、女優賞(ナタリエ・ポサ)、助演男優賞(フアン・ディエゴ)、審査員スペシャル・メンション他を受賞しながら紹介を怠っていました。監督紹介はさておき、キャストの顔ぶれは地味ですが、視点を変えればこれほど豪華な演技派揃いも珍しいといえます。末期ガンの父親にフアン・ディエゴ、意見の異なる二人の姉妹にナタリエ・ポサとロラ・ドゥエニャス、脇を固めるのがミキ・エスパルベ、パウ・ドゥラ、オリオル・プラ、エミリオ・パラシオスなど。

  

  

(左から、エミリオ・パラシオス、監督、ナタリエ・ポサ、フアン・ディエゴ、マラガ映画祭)

 

★今年のスペイン映画の珠玉の一編という高い評価を受けていますが、マラガ映画祭は春開催ということもあって、翌年2月のゴヤ賞まで大分時間があくので不利になります。しかし本作は残ると踏んでいますが予想通りになるでしょうか。単なる死についての物語でも、末期ガンについての物語でもないところが評価されているらしく、表面的には父と娘二人の話に見えながら、私たち自身の話でもあるようです。過去にあった家族の確執は直接スクリーンでは語られないが、それは必要なかったからだと監督、お互い傷を負っているということで十分であるということです。したがって観客はそれぞれ想像力を要求されるわけで、観客によって印象が変わるということかもしれません。

 

   

    (ポスター左から、ナタリエ・ポサ、フアン・ディエゴ、ロラ・ドゥエニャス)

 

No sé decir adiósCan't Say Goodbye2017

製作:Lolita Films / White Leaf Producciones

監督・脚本・製作者:リノ・エスカレラ

脚本()・製作者:パブロ・レモン

音楽:パブロ・トルヒーリョ

撮影:サンティアゴ・ラカRacaj

編集:ミゲル・ドブラド

美術:ファニー・エスピネテEspinet

キャスティング:トヌチャ・ビダル

メイクアップ・ヘアー:アンナ・ロシリョ

プロダクション・マネージメント:ダミアン・パリス、マムエル・サンチェス・リャマス

製作者:ロサ・ガルシア・メレノ、セルジイ・モレノ、(エグゼクティブ)ダミアン・パリス

 

データ:スペイン、スペイン語・カタルーニャ語、2017年、ドラマ、96分、製作資金約600.000ユーロ、撮影地アルメリア、バルセロナ、ジローナ、期間4週間、公開スペイン518

映画祭・映画賞:マラガ映画祭2017正式出品、審査員特別賞、脚本賞、女優賞、助演男優賞、審査員スペシャル・メンション他受賞

 

キャストナタリエ・ポサ(カルラ)、フアン・ディエゴ(父ホセ・ルイス)、ロラ・ドゥエニャス(ブランカ)、ミキ・エスパルベ(セルジ)、パウ・ドゥラ(ナチョ)、オリオル・プラ(ココ)、マルク・マルティネス(マルセロ)、ノア・フォンタナルス(イレネ)、エミリオ・パラシオス(ダニ)、グレタ・フェルナンデス(グロリア)、ハビ・サエス(医師)、セサル・バンデラ(看護師)、ブルノ・セビーリャ(看護師)他

 

プロット:人生のエピローグは、早かれ遅かれ誰にも訪れる。しかし「どうして今なの?」「どうして私の父親なの?」、まだ娘には心の準備ができていない。バルセロナで暮らすカルラは、数年前故郷アルメリアを後にして以来帰っていない。姉妹のブランカから突然電話で父ホセ・ルイスの末期ガンを知らされる。カルラは子供時代を過ごした家に飛んで帰ってくる。医師団は父の余命が数か月であると家族の希望を打ち砕くが、カルラには到底受け入れられない。失われた時を取り戻すかのように、バルセロナで治療を受けさせようと決心して準備に着手する。父は自分を取りまく状況を知らないでいたい。父に寄り添ってきたブランカは、現実を直視できないカルラと対立する。より現実的なブランカの目には、コカインを手放せないカルラが現実逃避をしているとしかうつらない。どうしようもない別れに解決策は存在しない。ただいたずらに時間だけが走り去っていくだけである。

 

             痛みを前にして身を守るメカニズム

 

42歳というリノ・エスカレラ監督の長編デビュー作。脚本推敲に7年の歳月を掛けたという。コンビで脚本を執筆したパブロ・レモンとは2009年に出会った。ちょうど短編 Elena quiere0719分)が完成した後で次作の構想を模索していた時期だったという。Max Lemcke Casual Day を見て脚本がとても良かったので接触した。同作はフアン・ディエゴやルイス・トサールが出演した話題作、2008年のシネマ・ライターズ・サークル賞の作品・監督・脚本・主演男優・助演男優の5冠を受賞している。「最初の構想は肉体的な病に冒されている父と精神的な病をもつ娘の話だった。それをこのように膨らませてくれたのはパブロのお蔭です。自分一人では到底できなかった」と語っている。「パブロはスペインの優れた脚本家の一人」と篤い信頼を寄せている。 

  

       (左から、パブロ・レモン、リノ・エスカレラ、プレス会見にて)

 

シネヨーロッパのインタビューを要約すると、「アルメリアを舞台にしたのは、製作費が節約できること以外に、以前短編を撮って気に入っていたからだが、この小さな町は登場人物の家族にぴったりの美しい景色だったことです。カタルーニャのスタッフたちも受け入れてくれて、他にバルセロナやジローナでも撮影した。意思疎通が難しい家族は現在では珍しくないこと、そういうテーマを掘り下げることに関心があったことが根底にある」と語っていた。この家族が特殊なケースではなく、どこの家族も抱えている問題が観客に受け入れられたのではないか。2002年に短編デビュー、過去に5編ほど手掛けている。うち前出の Elena quiere がアルメリア短編映画祭、イベロアメリカ短編映画祭に正式出品、後者でビクトル・クラビホが男優賞を受賞した。同作はYouTubeで鑑賞できる。

     

★カルラを演じたナタリエ・ポサ1972、マドリード)は、「彼女は深い傷を抱えて自己否定のなかで生きている。窒息しそうな自分を仕事に追いやり、コカインやアルコールで麻酔をかけている」と分析している。問題は父親の病気にあるのではなく彼女自身の中にある、ということでしょうか。ナタリエ自身も8年前に父親をガンで見送っている。「脚本を読むなり眩暈がした。自分が体験したことが書かれていたからです」と語っている。突然の死で「さよなら」の準備ができていなかったが、本作に出演したことでもう一度「さよなら」の過程を体験したようです。現実にある病院で本物の医者や患者に囲まれて撮影された。「脚本は完璧でコンマ一つ変えなかった」とナタリエ。「私のような年齢になって、自分の経験やパッションが生かされるような類まれな美しい脚本にめぐり合えることは滅多にあることではありません」と、幸運なめぐりあわせをかみしめている。これがハリウッドなら女性の40代は90歳の老婆です。

 

      

      (セルジ役のミキ・エスパルベ、カルラ役のナタリエ・ポサ、映画から)

 

テレビ界で活躍の後El otro lado de la cama02で映画デビュー、マルティン・クエンカのLa flaquesa del bolcheviqueに出演。ゴヤ賞ノミネートはダビ・セラーノのDías de fútbol03)で助演女優賞、マヌエル・マルティン・クエンカのMalas temporadas05『不遇』)で主演女優賞、マリアノ・バロソのTodas las mujeres13)で助演女優賞があるが受賞はない。守りに入らない演技派女優です。すべて未公開なのが残念です。 最近アルモドバルの『ジュリエッタ』、来月公開のセスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』などに脇役で出演している。前述したように No sé decir adiós 銀のビスナガ女優賞を受賞した。

 

★ブランカ役のロラ・ドゥエニャス1971、バルセロナ)は、診断の結果を受け入れ、父亡き後の心の準備を始める。カルラとは正反対のリアクションを起こす。カルラのように都会に逃げ出さず、小さな町に止まって父を見守ってきたブランカには、カルラの知らない辛い人生があった。日本デビューは群集劇『靴に恋して』の他、代表作としてアメナバルの『海を飛ぶ夢』とアントニオ・ナアロ他の Yo, también ゴヤ賞主演女優賞2回受賞している。アルモドバル作品として『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール』『抱擁のかけら』など他多数。アルモドバル作品の出演が多いことから、ナタリエ・ポサより認知度は高いようです。

 

    

         (父ホセ・ルイス、カルラ、ブランカ、映画から)

 

★父親ホセ・ルイス役のフアン・ディエゴ1942、セビーリャ)は、「私たち出演者は、生と死と愛の脚本を前にしていた。これは言わば現実を超越している映画です。私にとって一番重要なことはただ語ることではなく、どのように語るかです。だって死はいつかは誰にも訪れてくるからね」と語っています。当ブログでは、フアン・ディエゴについては贔屓俳優として度々登場させています。

マラガ映画祭2014、及びキャリア紹介は、コチラ2014421411

スペイン映画アカデミー「金のメダル」受賞の記事は、コチラ201581

 

        

                (父親役のフアン・ディエゴ)

 

★来年のゴヤ賞2018に絡みそうなこと、お気に入りの俳優が出演しているということでご紹介いたしました。なおIMDbのコメント欄に Todo saldrá bien のパクリという酷評が載っていますが、これはヴィム・ヴェンダースの3D映画『誰のせいでもない』(Every Thing Will Be Fine スペイン題 Todo saldrá bien)とは別の作品です。2016年に公開されたヘスス・ポンセ作品(ここでは父親でなく母親)です。予告編を一見した印象では似ていると感じました。

 

 

『笑う故郷』の邦題で『名誉市民』が近日公開*アルゼンチン・コメディ2017年06月18日 15:17

           やっと公開日がアナウンスされましたが・・・

 

 

★アルゼンチンのガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの監督コンビが撮ったEl ciudadano ilustreの公開日がアナウンスされました。昨年ラテンビートと東京国際映画祭と共催で上映されたときは、オリジナル・タイトルの「名誉市民」だったのが、どういうわけかこんな邦題になってしまった。タイトルは自由に付けてよい決りだが、わざわざ改悪する必要があったのだろうか、なにか裏事情があるのかと腑に落ちない。本作はオスカル・マルティネス扮するノーベル賞作家ダニエルを、「名誉」市民と考えるか、はたまた「不名誉」市民と考えるかにオチがあるのではないか。映画によっては原題をそのまま邦題にするとチンプンカンプンのケースもあるから一概に言えないが、本作はそれに該当しない。「笑う故郷」ではネタバレもいいとこだと思うが、まあいいや。オスカル・マルティネスがベネチア映画祭2016の男優賞を受賞した。

 

   

          (オスカル・マルティネス、ベネチア映画祭2016にて

 

★当ブログでは『名誉市民』のタイトルで記事にしております。改めて内容紹介はしませんが、メタファー満載、いたるところに伏線が張り巡らされ、最後にどんでん返しが用意されています。個人的には『ル・コルビュジエの家』の奇抜さ面白さに軍配を挙げますが、こちらも幾通りにも楽しめる映画です。

内容・監督・キャスト紹介の記事は、コチラ20161013

ラテンビート鑑賞後の記事は、コチラ201610月23

 

岩波ホール2017916(土)~ (タイム・テーブルはまだアップされておりません)

 

 

       「トルーマン」ではなく『しあわせな人生の選択』で一足先に公開

 

 

★その他のお薦め映画の一つが、セスク・ゲイTrumanです。本作は『しあわせな人生の選択』の邦題で、一足先に公開されます。当ブログでは「トルーマン」で内容紹介をアップしております。「しあわせな・・・」とか「・・・の選択」など、過去に幾つもあったような邦題ですが、あまりに平凡すぎて何をか言わんやです。トルーマンはリカルド・ダリン扮するフリアンの愛犬の名前、この老犬トロイロは撮影中ダリンと一緒に暮らしていた。撮影後まもなくして死んでしまい、フリアンと同じく心優しいダリンの涙はなかなか乾きませんでした。というわけでサンセバスチャン映画祭2015で赤絨毯を歩いたときダリンが連れていた犬は、トロイロ(トルーマン)のムスメだった。トロイロは自閉症の子供と遊べるよう特別に訓練されたブルマスティフ犬、ダリンの友犬でした。誰でもいつかは人生に「さよなら」しなければなりません。未来の時間が残り少なくなったとき、人間は何を考えるのだろうか、というエモーショナルなお話です。

 

   

    (ダリンとカマラ、トロイロのムスメ、サンセバスチャン映画祭2015にて)

 

★当ブログでは「トルーマン」のタイトルで紹介しております。サンセバスチャン映画祭2015では、リカルド・ダリンと友人トマス役のカメレオン俳優ハビエル・カマラが男優賞(銀貝賞)を二人で分け合いました。この異色の組み合わせが成功のカギの一つでしょうか。翌年のゴヤ賞2016では、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、助演男優賞の5冠を制し、その他ガウディ賞4冠など受賞歴多数。

 

作品内容、監督キャリア、キャストの主な紹介記事は、コチラ201619

ゴヤ賞2016の受賞結果の記事は、コチラ2016212

 

ヒューマントラストシネマ有楽町恵比寿ガーデンシネマ

 201771(土)~ (特別鑑賞券発売中)

  

ピラール・バルデムが輝いた夕べ*祝AISGE設立15周年2017年06月13日 16:06

    「母は引退を望まない、私たちも続投を望んでいる」とバルデム3兄弟

 

65日(月)、AISGE設立15周年祭がマドリードのCirco Price劇場**で行われた。どうしてピラール・バルデムがヒロインだったのかと言えば、AISGE設立時からの功労者、なおかつ現理事長でもあるからです。2013年から肺気腫を病み、当夜も左手に酸素ボンベをぶら下げての登壇、15周年のお祝いは、結局ピラールへのオマージュとして開催されたようなわけでした。3人の子供(カルロスモニカハビエル)と二人のお嫁さん(ペネロペ・クルスセシリア・Gessa)ほか、参加者はビクトル・マヌエルアナ・ベレン夫妻、ミゲル・リオスジョアン・マヌエル・セラアシエル・エチェアンディアロッシ・デ・パルマゴヤ・トレドアイタナ・サンチェス=ヒホン・・・などなど総勢1300人ほどが参集、他にペドロ・アルモドバルアントニオ・バンデラスコンチャ・ベラスコカルメン・マチなどからビデオで祝辞が届けられた。

 

      

     (左から、登壇したバルデム一家、ハビエル、モニカ、ピラール、カルロス)

 

AISGEArtistas, Intérpretes, Sociedad de Gestnの略、映画と舞台の俳優、声優、舞踊家、監督など、スペインのアーティストすべての権利を守るための交渉団体。2002年設立、執行部は25名、理事長の任期は4年、選挙によって選ばれる。しかし2003年以来ピラール・バルデムが連続して再選されており、常に二番手になりやすい女性アーティストの地位向上に尽力している。

**Circo Priceトーマス・プライス(アイルランド出身)1853年設立したプライス・サーカス曲馬団が前身、スペインには1880年に来西した。1970年閉鎖した劇場跡に、マドリード市議会の肝煎りで文化施設として、2007年リニューアル・オープンした。所在地ロンダ・デ・アトーチャ、2000人収容、音楽会などイベントが開催されている。

 

          

          (1列中央席のピラールと家族、フィエスタ会場にて)

  

ピラール・バルデムPilar Bardem1939314日、セビーリャ生れの78歳、映画81本、舞台43本、テレビ・シリーズ31本、まさに女優一筋の人生を歩んでいる。故アントニオ・バルデム(『恐怖の逢びき』)は実兄。ゴヤ賞は、1995年、アグスティン・ディアス・ヤネスのNadie hablará de nosotras cuando hayamos muertoで助演女優賞受賞、2004年、ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスのMaría queridaで主演女優賞ノミネートの2回だけと少ない。徹底したフランコ嫌い、物言う反戦女優としても有名。2013年以来健康不安を抱えているが、まだ「引退」したわけではない。「私がすぐ死ぬことを子供たちは望んでいないし、私も第三共和制を見るまでは死ねない」とスピーチ、現在の立憲君主制は勿論気に入らない。というわけで死神は当分お呼びでない。しかし、前日打ち合わせのために母親と会ったハビエルによると、「まるでマイク・タイソンと闘った後のようだった」と冗談めかして語っている。3時間に及んだというフィエスタの夕べは、バルデム家の女家長には結構激務だったのではないでしょうか。

 

   

  (「・・・第三共和制を見るまでは・・・」とスピーチするピラール、左はモニカ)

 

★下の写真は当夜のハイライトの一つ、コミック・トリオ「Tricicle***の演技、毛糸の帽子とピエロの付け鼻がトレードマーク。4人なのはピラールの息子が飛び入り出演しているからだそうです(右端の赤い帽子がハビエル)。彼はアシエル・エチェアンディア(ビルバオ出身の歌手、俳優、「La novia」「Ma ma」)がイタリアの「あまい囁きParole parole」を歌ったときにはボンゴを叩いた。ミゲル・リオス、ビクトル・マヌエルとアナ・ベレンの左翼カップルも「見て、見て・・・なんてピラールは素敵なの・・!」と歌で呼びかけた。バルデム一家にとって一生涯忘れられない感激の一夜となった。

 

       

(コミック・トリオ「Tricicle」とハビエル・バルデム)

 

     

   (ボンゴを叩くハビエル、「あまい囁き」を熱唱するアシエル・エチェアンディア)

 

 

               (ビクトル・マヌエル、アナ・ベレン、ミゲル・リオス)

 

***バルセロナ演劇研究所の3人の学生が、1979年バルセロナで結成したコミック・トリオ。モンティー・パイソン、ローワン・アトキンソン、またはMr.ビーンの流れを汲むパントマイムが得意。舞台出演が主だがテレビや映画にも出演している。

 


アリエル賞2017*ノミネーション発表2017年06月09日 12:13

         メキシコ版アカデミー賞、作品賞候補にドキュメンタリーも

 

         

★アリエル賞2016の結果発表は5月中だったが、今年は711日ということです。昨年の授賞式は『選ばれし少女たち』の監督ダビ・パブロスが両手に花でしたが、今年も同じような結果でしょうか。ざっと見た限りですが、ノミネーションは昨年12月の「イベロアメリカ・フェニックス賞」、11月開催の「ロス・カボス映画祭」受賞作品などと、当然ですがダブっているようです。最優秀作品賞ノミネーションには、公開、映画祭上映、ネットフリックスと、既に日本語字幕入り作品も交じっています。カテゴリーの数が多く、監督賞・脚本賞などはダブるので、最優秀作品賞とイベロアメリカ映画賞だけアップしておきます。ゴチック体は当ブログで扱った作品です。

 

   

             (最優秀作品賞ノミネーションの7作品)

 

最優秀作品賞(メキシコ)

『夜を彩るショーガール』Bellas de noche)ドキュメンタリー

                        監督マリア・ホセ・クエバス

『彼方から』(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス

『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン

Tempestad」ドキュメンタリー、監督タティアナ・ウエソ

Me estás matando, Susana監督ロベルト・スネイデル

La 4a compañía(スペイン合作)

                  監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ

El sueño del Mara'akame監督フェデリコ・Cecchetti

印はデビュー作

 

マリア・ホセ・クエバスの『夜を彩るショーガール』は、カンヌ映画祭で物議をかもしたネットフリックスで放映されている作品、ディスコ全盛期の1970年代から80年代にかけて活躍した5人のショーガールvedette(リン・メイ、ワンダ・セウス、プリンセサ・ジャマル、ロッシー・メンドサ、オルガ・ブレースキン)の数奇な人生を語るドキュメンタリー。ショー場面が続く前半よりオール60歳代になった後半が胸を打つ。彼女たちの栄光と転落がホンネで語られるからです。vedette というのはフランス語起源のバラエティーショーのセックス・シンボル的な女性スター、踊れて歌えて演技もできるアーティスト。モレリア映画祭2016メキシコ・ドキュメンタリー賞、ロス・カボス映画祭、パナマ映画祭などで受賞している。本作はドキュメンタリー部門でもノミネートされている。

 

 

アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラの「La 4a compañía」は、最多の20カテゴリーでノミネートされている。本作についてはミシェル・フランコの「Las hijas de Abril」に出演していたエルナン・メンドサの紹介記事で少しだけ触れています。両監督のデビュー作。

 

 

タティアナ・ウエソの「Tempestad」は8部門ノミネーション、分類はドキュメンタリーだがドラマでもある。監督はこの二つのジャンルは区別できないと語っている。暴力が処罰されることのないメキシコ、二人の犠牲者の物語。ミリアムは人身売買の濡れ衣を着せられて収監中、アデラは移動サーカスで働いている。闇が支配する世界への旅は同時に自由への旅でもある。一種のロードムービー。ベルリン映画祭2016フォーラム部門上映で高い評価を受け、12月開催の「フェニックス賞」ではドキュメンタリー賞やエルネスト・パルドの素晴らしい映像が撮影賞などを受賞している。『夜を彩るショーガール』同様、本作もドキュメンタリー部門でノミネートされている。審査員の評価は高いと思います。

 

 

★「El sueño del Mara'akame」はフェデリコ・Cecchettiの長編第1作、タイトルのMara'akameはウイチョル族のシャーマンを指すようです。オースティン映画祭観客賞とスペシャル・メンション、モレリア映画祭第1回・2回作品賞受賞、シカゴ映画祭他で上映されている。今年のアリエル賞は新人監督が目立つ印象です。4作とも第1回監督賞にノミネートされている。

 

 

 

『彼方から』の紹介記事は、コチラ2016930

『ノー・エスケープ自由への国境』は、コチラ2017年4月23

Me estás matando, Susana」は、コチラ2016322

La 4a companía」は、コチラ201758

 

イベロアメリカ映画賞

Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル

Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、ドイツ)

                 監督セバスティアン・コルデロ

『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

 追記:公開邦題『笑う故郷』として岩波ホールで9月16日から

『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ

『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート

 

★「Anna」は、ゴヤ賞2017のイベロアメリカ映画賞ノミネート、これから発表になる第4回イベロアメリカ・プラチナ賞には主演のフアナ・アコスタが候補者となっている。映画賞、映画祭で目にするが受賞にまで至らない。「Sin muertos no hay carnaval」は、セバスティアン・コルデロが生れ故郷エクアドルで撮った話題作、いつかご紹介したいと思っている映画の一つ。

 

 

 

アナ・ミュイラートの長編第4作目『セカンドマザー』(Que Horas Ela Volta?)は、英題「The Second Mother」の片仮名起こし、東海地方で展開しているコロナシネマワールドでのみ上映される「メ~シネマ」作品として今年1月公開された。ミュイラート監督は1964年サンパウロ生れの53歳、サンパウロ大学で映画を学ぶ。脚本家としてキャリアを出発させた。主にテレビ界での活躍が目立っていたが、短編中編を手掛けた後、2002年「Durval Discos」で長編デビューを果たす。日本ではカオ・アンブルゲールの『1970、忘れられない夏』(2006シネフィル・イマジカ放映、当時ハンバーガーと表記された)や『シングー』(2011ラテンビート2012)の脚本家の一人として紹介されているが、もっと注目されていい監督の一人。またベテラン女優のヘジーナ・カゼRegina Caseが母親役を演じているのも見逃せない。レジーナ・ケースという英語読みがあり、ポルトガル語はスペイン語以上に人名表記が定まっていない。古い話だが、アンドルッシャ・ワッディントンの佳作『エゥ・トゥ・エリス』(東京国際映画祭2000上映)で日本初登場、これは『私の小さな楽園』の邦題で公開された。

 

  

               (母と娘、ブラジル版ポスター)

 

『名誉市民』の主な紹介記事は、コチラ20161013

『物静かな男の復讐』の主な紹介記事は、コチラ2017年1月9日

  

第4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017*ノミネーション発表2017年06月05日 14:31

 「オスカーに匹敵する」賞とケイト・デル・カスティージョがノミネーション発表

 

 

★先月31日(水)、ハリウッド映画の中心地ロスアンゼルス(ビバリーヒルトン・ホテル)でイベロアメリカ・プラチナ賞2017のノミネーション発表がありました。ビバリーヒルトンは、例年オスカー賞候補者の昼食会やゴールデン・グローブ賞のガラが開催されるホテル、それでケイト・デル・カスティージョの開会の辞が「オスカーに匹敵する」云々になったようです。デル・カスティージョ(女優1969メキシコ・シティ、現ロス在住)、その他、エドワード・ジェームズ・オルモス(俳優1947ロス)、アンジー・セペダ(女優1974カルタヘナ、現マドリード在住)、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(俳優1982カステジョン)の4人(写真中央はCNNの司会者フアン・カルロス・アルシニエガス)が各カテゴリーのノミネーション発表を行った。今年の授賞式会場は、722日(土)、マドリードの屋内競技場カハ・マヒカCaja Mágicaで開催される。ここは2020年のオリンピック誘致ではテニス会場になるはずだった。スポーツだけでなく音楽祭なども開催されている。

 

 

 (左から、エドワード・ジェームズ・オルモス、ケイト・デル・カスティージョ、一人置いて

       アンジー・セペダ、ミゲル・アンヘル・シルベストレ)

 

★最多ノミネーションは、フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』の7(監督・美術・録音・撮影・編集・オリジナル音楽・価値ある映画と教育)、ただしメインの作品賞には、オリジナル版が英語作品だったため、「言語はスペイン語・ポルトガル語」という条件を満たせず該当外となった。続くパブロ・ラライン「ネルーダ」5個(2017秋公開が予定されているが、邦題は未定)、ロレンソ・ビガス『彼方から』ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』アルモドバル『ジュリエッタ』アルベルト・ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』セルソ・ガルシアLa delgada línea amarilla4個でした。当ブログではセルソ・ガルシア作品以外は既にアップ済み。なお写真掲載は1カテゴリー1個に絞った。

 

   

           (最多ノミネーション7個の『怪物はささやく』)

 

  主要カテゴリーのノミネーション

作品賞(ドラマ部門)

Aquarius」(ブラジル)クレベール・メンドンサ・フィリオ監督

『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン監督

『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)アルベルト・ロドリゲス監督

『ジュリエッタ』(スペイン)ペドロ・アルモドバル監督

「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)パブロ・ラライン監督

 

『スモーク・アンド・ミラーズ』

  

           

監督賞

フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(スペイン)

クレベール・メンドンサ・フィリオ「Aquarius」(ブラジル)

ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)

パブロ・ラライン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』(スペイン)

 

クレベール・メンドンサ・フィリオ監督

   

          

脚本賞

アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

アンドレス・ドゥプラット『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)

セルソ・ガルシアLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

ギジェルモ・カルデロン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン

パベル・ヒロウド&アレハンドロ・ブルゲス他「El acompañante」(キューバ、ベネズエラ、

  コロンビア)

 

 (「El acompañante」)

  

女優賞

アンジー・セペダLa semilla del silencio」(コロンビア)

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』(スペイン)

フアナ・アコスタAnna」(コロンビア・フランス)ジャック・トゥールモンド・ビダル監督

ナタリア・オレイロGilda, no me arrepiento de este amor」(アルゼンチン)

                   ロレナ・ムニョス監督

ソニア・ブラガAquarius」(ブラジル)

  

(アンジー・セペダ)

  

             

男優賞

アルフレッド・カストロ『彼方から』(ベネズエラ、チリ)

ダミアン・カサレスLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

ルイス・ニェッコ「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

オスカル・マルティネス『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)

  

(ダミアン・カサレス)

  

 

オペラ・プリマ(第1回監督作品、ドラマ部門)

『彼方から』(ベネズエラ、チリ)ロレンソ・ビガス

La delgada línea amarilla」(メキシコ)セルソ・ガルシア

Rara」(アルゼンチン、チリ)ペパ・サン・マルティン

Viejo calavera」(ボリビア)キロ・ルッソ

『物静かな男の復讐』(スペイン)ラウル・アレバロ

   

 

             (ペパ・サン・マルティンの「Rara」)

 

 

★女優賞ノミネートのナタリア・オレイロは、ウルグアイで開催された第3回目の総合司会者、ウルグアイ出身ですが主にアルゼンチンで活躍している(『ワコルダ』)。「Gilda, no me arrepiento de este amor」は1996年交通事故死したアルゼンチンの歌姫ヒルダのビオピック。ソニア・ブラガは第1回プラチナ賞2014の栄誉賞受賞者、「Aquarius」はカンヌ映画祭2016正式出品を皮切りに世界各地の映画祭巡りをした。アンジー・セペダは、今回ノミネーション発表をしたコロンビア出身の女優だが、本拠地をマドリードに移している。ノミネーション発表をした先輩ケイト・デル・カスティージョとは親友同士だそうです。フアナ・アコスタが出演した「Anna」(西語・仏語)は、ゴヤ賞2017のイベロアメリカ映画部門にノミネートされた。2015年製作とやや古い。フアナ・アコスタはエルネスト・アルテリオと結婚、スペイン映画出演も多く、当ブログ登場も多いほうか。エンマ・スアレス他、男優賞ノミネートの紹介は不要ですね。

 

(「Anna」のフアナ・アコスタ)

 

 

★その他のカテゴリーとして、オリジナル音楽、撮影、美術、録音、ドキュメンタリー、アニメーション、シリーズのテレビドラマその他がありますが割愛、受賞結果はアップいたします。

 

EGEDA (Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales FIPCAFederación Iberoamericana de Productores Cinematográficos y Audiovisuales) が主催します。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための管理交渉団体です。EGEDA1990年創設、活動は1993年から。スペイン、チリ、コロンビア、US、ペルー、ウルグアイ他などが参加しております。