『KIKI~恋のトライ&エラー』 パコ・レオン*ラテンビート2016 ⑥ ― 2016年10月08日 10:33
パコ・レオンの新作コメディ―テーマはままならぬ恋の行方
★当ブログで何回も登場させているコメディの旗手パコ・レオン、やっと日本にやってきました。実母カルミナと実妹マリア・レオンを主人公にしたコメディ“Carmina o revienta”(12)で鮮烈デビュー、2014年、続編“Carmina y amén”もヒットを飛ばし、2015年には早くもマラガ映画祭のエロイ・デ・ラ・イグレシア賞*を受賞した。第3作『KIKI~愛のトライ&エラー』も公開後たちまち100万人突破と勢いは止まらない。スペインは経済も政治も不安定から脱却できないから、庶民はコメディを見て憂さ晴らししているのかもしれないが、そればかりではないでしょう。

(出演者を配したポスター、クマ、ワニ、ライオンなど各々の愛のかたちが描かれている)
『KIKI~愛のトライ&エラー』(“Kiki, el amor se hace”)
製作: ICAA / Mediaset España / Telecinco Cinema / Vértigo Films
監督:パコ・レオン
脚本(共):パコ・レオン、フェルナンド・ペレス、ジョッシュ・ローソン(フィルム)
撮影:キコ・デ・ラ・リカ
編集:アルベルト・デ・トロ
キャスティング:ピラール・モヤ
美術:ビセンテ・ディアス、モンセ・サンス
衣装デザイン:ハビエル・ベルナル、ぺぺ・パタティン
メイクアップ&ヘアー:ロレナ・ベルランガ、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ、他
データ:スペイン、スペイン語、2015,102分、ロマンチック・コメディ
キャスト:パコ・レオン、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア、カンデラ・ペーニャ、ルイス・カジェホ(アントニオ)、ルイス・ベルメホ、アレクサンドラ・ヒメネス、マリ・・パス・サヤゴ(パロマ)、フェルナンド・ソト、アナ・Katz、ベレン・クエスタ、ダビ・モラ(ルベン)、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリコ(エドゥアルド)、ほか。
()なしは概ね実名と同じ。

(記者会見に出席した面々、左からカンデラ・ペーニャ、マリ・パス・サヤゴ、ダビ・モラ、
ベレン・クエスタ、監督、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア)
解説:オーストラリア映画、ジョッシュ・ローソンの“The Little Death”(14)が土台になっている。プロットか変わった性的趣向をもつ5組のカップルが織りなすコメディ。このリメイク版というか別バージョンというわけで、レオン版も世間並みではないセックスの愛好家5組の夫婦10人と、そこへ絡んでくるオトコとオンナが入り乱れる。ノーマルとアブノーマルの境は、社会や時代により異なるが、ここでは一種のparafilia(語源はギリシャ語、性的倒錯?)に悩む人々が登場する。ローソン監督も俳優との二足の草鞋派、テレビの人気俳優ということも似通っている。
★さて、スペイン版にはどんな夫婦が登場するかというと、
◎1組目は、レオン監督自身とアナ・カッツのカップルにベレン・クエスタが舞い込んでくる。
◎2組目は、ゴヤ賞2016主演女優賞のナタリア・デ・モリーナ(『Living is Easy with Eyes Closed』)とアレックス・ガルシア(“La novia”)のカップル、この夫婦を軸に進行する(harpaxofilia)
◎3組目は、カンデラ・ペーニャ(『時間切れの愛』『チル・アウト!』)とルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』)のカップル(dacrifilia)
◎4組目は、ルイス・カジェホ(ラウル・アレバロの“Tarde para la ira”)、とマリ・パス・サヤゴのカップル(somnofilia)
◎5組目が、ダビ・モラとアレクサンドラ・ヒメネス(フアナ・マシアスの“Embarazados”ではレオン監督と夫婦役を演じた)のカップル(elifilia)。
そこへフェルナンド・ソト、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリゴ、ミゲル・エランなどが絡んで賑やかです。どうやら「機知に富んだロマンチック」コメディのようだ。

(ナタリア・デ・モリーナとアレックス・ガルシアのカップル)
★〈-filia〉というのは、「・・の病的愛好」というような意味で、harpaxofilia の語源はギリシャ語の〈harpax〉からきており、「盗難・強奪」という意味、性的に興奮すると物を盗むことに喜びを感じる。dacrifiliaは最中に涙が止まらなくなる症状、somnofiliaは最中に興奮すると突然眠り込んでしまう、いわゆる「眠れる森の美女」症候群、elifiliaは予め作り上げたものにオブセッションをもっているタイプらしい。にわか調べで正確ではないかもしれない。

(パコ・レオンとアナ・カッツのカップルにベレン・クエスタが割り込んで)
★製作の経緯は、監督によると「最初(製作会社)Vértigo Filmsが企画を持ってきた。テレシンコ・フィルムも加わるということなので乗った」ようです。しかし「プロデューサーからはいちいちうるさい注文はなく、自由に作らせてくれた」と。「すべてのファンに満足してもらうのは不可能、人それぞれに限界があり、特にセックスに関してはそれが顕著なのです。私の作品は厚かましい面もあるが悪趣味ではない。背後には人間性や正当な根拠を描いている」とも。「映画には思ったほどセックスシーはなく(期待し過ぎないで)、平凡で下品にならないように心がけた」、これが100万人突破の秘密かもしれない。

(ルイス・カジェホとカンデラ・ペーニャのカップル)
*監督キャリア&フィルモグラフィー*
★パコ・レオン Paca Leon:1974年セビーリャ生れ、監督、俳優、製作者。スペインでは人気シリーズのテレドラ“Aida”(2005~12)出演で、まず知らない人はいない。2012年“Carmina o revienta”でデビュー、マラが映画祭でプレミアされて一躍脚光を浴び、翌年のゴヤ賞新人監督賞にノミネートされた。つづくカルミナ・シリーズ第2弾“Carmina y amén”もマラガ映画祭2014に正式出品した。第3作が『KIKI~愛のトライ&エラー』です。カルミナ・シリーズでは、レオン監督の家族、孟母ならぬ猛母カルミナ・バリオスと妹マリア・レオンが主役だったが、第3作には敢えて起用しなかった。フアナ・マシアス監督の“Embarazados”紹介記事にレオン監督のキャリア紹介をしています。
*フアナ・マシアスの“Embarazados”は、コチラ⇒2014年12月27日

(孟母でなく猛母カルミナ・バリオスと孝行息子のパコ、管理人お気に入りのフォト)
★カルミナ・シリーズでは監督業に専念しておりましたが、今回の第3作には監督、脚本、俳優と二足どころか三足の草鞋を履いています。俳優と監督を両立させながら独自のポリシーで映画作りをしている。将来的にはスペイン映画の中核になるだろうと予想しています。日本では俳優として出演したホアキン・オリストレル監督の寓話『地中海式 人生のレシピ』(2009、公開2013)が公開されている。マラガ映画祭2015でエロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞している。
★ “Carmina o revienta” は、DVD発売や型破りのインターネット配信(有料)で映画館を空っぽにしたといわれた。第2作“Carmina y amén”も封切りと同時にオンラインで配信したいと主張したが、これには通常の仕来りを壊すものと批判もあった。彼によれば「公開後4か月経たないとDVDが発売できないのは長すぎて理不尽であり、それが海賊版の横行を許している。消費税税増税でますます映画館から観客の足が遠のいている現実からもおかしい。さらに均一料金も納得できない。莫大な資金をかけた『ホビット』のような大作と自作のような映画とが同じなのはヘン」というわけ。これはトールキンの『ホビットの冒険』を映画化したピーター・ジャクソンの三部作。アメリカ製<モンスター>に太刀打ちするには工夫が必要、今までと同じがベターとは言えないから、この意見は一理あります。
★関連記事・管理人覚え
*パコ・レオンの主な紹介記事は、コチラ⇒2015年3月19日
*“Carmina o revienta”はコチラ⇒2013年8月18日(ゴヤ賞2013新人監督賞の項)
*“Carmina y amén”はコチラ⇒2014年4月13日(マラガ映画祭2014)
*ラウル・アレバロの“Tarde para la ira”は、コチラ⇒2016年2月26日
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2016/10/08/8217924/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。