『バードマン』*アカデミー賞2015作品賞2015年03月06日 16:46

      メキシカン黄金時代の再来か、アレハンドロ・G・イニャリトゥ『バードマン』

    

★昨年のアルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』に続いて、今年もメキシコ出身の監督がオスカーを手にした。今回アレハンドロ・G・イニャリトゥ1963年メキシコ・シティ生れ)は、作品賞・監督賞・脚本賞のトリプル受賞だから驚きだ。手は2本しかないからオスカー像が一度に持てない()。因みに撮影賞のエマニュエル・ルベツキ1964メキシコ・シティ生れ)もメキシコからの移民、それで「メキシカン黄金時代」なんて書かれることになったが、勿論どちらもメキシコ映画じゃないし、スペイン語でもない。ルベツキは昨年の『ゼロ・グラビティ』に続いて2度目の受賞、二人は「エル・ネグロEl Negro」「エル・チボEl Chivo」とニックネームで呼び合う仲、同時受賞でヨカッタヨカッタ。

     

          

      (オスカー像が一度に持てないエル・ネグロことゴンサレス・イニャリトゥ)

 

 
2度目のオスカー像を手に、エル・チボことエマニュエル・ルベツキ)

 

★『BIUTIFUL ビューティフル』の後、少しスランプ気味で引きこもっていたが、禅の瞑想のお蔭でカオスから抜け出られたという。常に自身の根っこにある「メキシコ」に拘りつづけていたが、それが吹っ切れた。ここに新生ゴンサレス・イニャリトゥが誕生した。キャストにはスペイン語ができない人を選び、主役には主人公と同じ辛い体験をしたことのある俳優を探すことにした。そしてマイケル・キートンに行き着いたという訳らしい。こうして『バードマン』は動き出した。ルベッキによると不自然さを捨てるため全編長回しで撮りたかったが、それは無謀すぎるので、観客にはあたかもそう見えるようにするのに苦労した。

      

             

           (主演男優賞を逃したマイケル・キートン)

 

★監督紹介は日本語のウイキィでも読めるし、本作の公式サイトもアップされているからキャスト、プロット以下は割愛、下記に長編フィルモグラフィーだけ記しました。代表作5作がすべて日本語で鑑賞できる数少ない監督の一人。メキシコの監督とはいえ母国語のみはデビュー作『アモーレス・ペロス』だけ、本作のカンヌ映画祭2000での成功がアメリカ行きの切符を可能にした。日本では監督の名前を知らなくても第1話に出演したガエル・ガルシア・ベルナル(写真下)の名前なら知っている。同年の東京国際映画祭には監督以下スタッフとキャストが来日して、下馬評通りグランプリを受賞しました。更に『バベル』がカンヌ映画祭2006コンペにノミネーション、メキシコ初の監督賞を受賞しました。カルロス・レイガダス2012年、アマ・エスカランテ2013年ですからずっと後ですね。

   

                                

                      (『アモーレス・ペロス』のG・G・ベルナル)

★他にスペイン語が主言語なのはBIUTIFUL ビューティフル』だけです。というわけで当然ながらスペイン語関係の賞は少ない。デビュー作『アモーレス・ペロス』がメキシコのアリエル賞ファースト作品賞他、ハバナ映画祭ファースト作品賞他、ボゴタ映画祭作品賞他、チリのバルディビア映画祭ファースト作品賞受賞ぐらいでしょうか。ゴヤ賞は『BIUTIFUL ビューティフル』がオリジナル脚本賞にノミネートされただけ、メキシコの監督というよりハリウッド監督という捉え方をされています。移民監督ですが、国籍は現在もメキシコです。メキシコ「移民」というと「不法」をイメージしがちですが、彼はアルフォンソ・キュアロンのようなセレブ階級ではありませんが、中流階級の出身、「列車の旅」組ではありません。 

 

★オスカー作品賞受賞でも興行成績は飛躍的に伸びるかどうか。元夫婦対決と話題になった『ハートロッカー』と『アバター』、妻に軍杯が揚がったがトータル22億円、対する夫の『アバター』はケタ違いの400億円と言われている。『バードマン』の最近の数字は45億円(米国)、製作費1800万ドルは充分回収できているが、今後どれだけ増やせるか。20152月までに世界の殆どの国が公開しており、日本の410日公開がドン尻のようで、話題は早くも2016年のアカデミー賞予想に移っている。

 

*長編フィルモグラフィー*

2000Amores perros”『アモーレス・ペロス』(メキシコ)西語 

200321 Grams”『21グラム』(米国)英語

2006Babel”『バベル』(米国・仏・メキシコ)英語・アラビア語・西語・日本語・
   ベルベル語他

2010Biutiful”『BIUTIFUL ビューティフル』(メキシコ・西)西語・中国語・ウォロフ語

2014Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance

 『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(米国)英語

2016The Revenant**(米国)英語、(撮影中)

 

ウォロフ語は、セネガル、ガンビア、モーリタニアにかけて住むウォロフWolof族の言語。

**The Revenant”は、実在した毛皮取りのワナ猟師ヒュー・グラス(17801833)を主人公にした伝記小説の映画化。舞台は19世紀初頭のアメリカ、レオナルド・ディカプリオ主演です。雪のカナダで撮影中。撮影監督は勿論エマニュエル・ルベッキです。20161月米国公開が決定しています。 


         

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