「モルタデロとフィレモン」アニメ3D*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑩ ― 2015年02月01日 16:50
ハビエル・フェセルが3Dアニメで帰還:ノミネーション6個
★アニメ部門は割愛するつもりでしたが、なにしろ「モルタデロ&フィレモン」だし、6個だし、封切り12週調べで48万人が見たという話だし、あれやこれやでアップすることにしました。いずれ公開されますから(笑)、その折り再アップしますので今回は手短かにいきます。
“Mortadelo y
Filemón contra Jimmy el Cachondo”
長編アニメーション賞:Zeta Cinema(フランシスコ・ラモス、ルイス・マンソ)
脚色賞:ハビエル・フェセル、クリストバル・ルイス、クラロ・ガルシア
プロダクション賞:ルイス・フェルナンデス・ラゴ、フリアン・ララウリ
オリジナル歌曲賞:“Morta y File”ラファエル・アルナウ作曲
美術賞:ビクトル・モニゴテ
録音賞:ニコラス・デ・ポウルピケ、ジェイムズ・ムニョス
*データ:スペイン、スペイン語版とカタルーニャ語版、2014、アニメーション3D、コメディ、91分、製作:Zeta Cinema 、TVE、カタルーニャTV他、配給ワーナー・ブラザーズ・ピクチャー、スペイン公開11月28日
受賞歴:フォルケ賞2015「ドキュメンタリー&アニメーション」部門で作品賞受賞
ノミネーション:間もなく発表される「シネマ・ライターズ・サークル賞」(2月2日)、「ガウディ賞」(2月1日)に多数ノミネートされている。
*キャスト:(ヴォイス)カラ・エレハルデ(モルタデロ)、ハンフリ・トペラ(フィレモン)、ビクトル・モニゴテ、ホセ・アティアス、マリアノ・ベナンシオ(上司エル・スーパー)、ガブリエル・チャメ(ジミー・エル・カチョンド)、エンリケ・ビリャン(バクテリオ教授)、ベルタ・オヘア(オフェリア)、エミリオ・ガビラ(ロンペテチョス)、アテネア・マタ、他。(スペイン語版のヴォイスです)
解説:ジミー・エル・カチョンドとその子分たちは、諜報機関から小型バッグの中にあった、T.I.A.の極秘書類を盗みだすことに成功した。エル・スーパー局長は書類奪還と悪漢懲らしめの任務をモルタデロとフィレモンの二人に託すほか手がなかった・・・(管理人:二人では心もとないですね)。
★フェセル監督が、フランシスコ・イバニェスのコミック“La gran aventura de Mortadelo y Filemón”(2003)を実写化した第1作は『モルタデロとフィレモン』の邦題で公開された。ミゲル・バルデムが監督した第2作“Mortadelo y Filemón, Mision: salvar la
Tierra”(2008)に続く第3弾が本作。「モルタとフィレ」シリーズとしては3作目ですが、フェセル監督としては2作目になります。詳細は公開が決まってからにして、ヒントはいわゆる<23-F>と言われる、1981年2月23日に起きた軍事クーデタ未遂事件のパロディだそうです。アントニオ・テヘロ中佐が200人の治安警備隊員と下院に押し入り、首相以下350人の議員を人質にとった。テレビで生中継されたのでスペイン国民の多くが未だ記憶している。まあ、そんなこと知らなくても楽しめるはずです。
★前2作に出演していたマリアノ・ベナンシオ(エル・スーパー)、ベルタ・オヘア(オフェリア)、エミリオ・ガビラ(ロンペテチョス)は、同じ役柄のヴォイスを担当、バクテリオ教授を演じていたハンフリ・トペラはフィレモンに変わった。フェセル監督、美術監督ビクトル・モニゴテ、製作者ルイス・マンソのダンゴ三兄弟は、『カミーノ』がラテンビート2009で上映されたとき来日、Q&Aに参加してくれました。スタッフ、キャストに『カミーノ』のメンバーも重なっていますね。“モニゴテ”は児童劇シンデレラの指導者、マリアノ・ベナンシオはカミーノの父親になった俳優です。カラ・エレハルデは“Ocho apellidos vascoa”で助演男優賞にノミネーションされているから、2015年は記念すべき年になりそうです。
ゴヤ賞2015ノミネーション*落ち穂拾い ① ― 2015年02月02日 14:47
“Marsella”2個:主演女優賞・助演女優賞
★「主演女優賞はバルバラ・レニーで決まり、助演女優賞はカルメン・マチに」と勝手に決めていますが、ベレン・マシアスの“Marsella”出演のマリア・レオンとゴヤ・トレドも公平を期してご紹介。前にも触れておりますが、特にカルメン・マチのライバルになると思われるのがゴヤ・トレド、『アモーレス・ペロス』や『ヌード狂時代/S指定』で既に登場しています。マリア・レオンは実母カルミナを主役にした実兄パコ・レオンの「カルミナ・シリーズ」で度々ご紹介。
*“Marsella”*
主演女優賞:マリア・レオンMaría León
助演女優賞:ゴヤ・トレド Goya
Toledo
*監督・脚本:ベレン・マシアス Belén Macias
データ:スペイン、スペイン語、2014、ロード・ムービー、95分、撮影地:マルセイユ他、スペイン公開7月18日、ゴヤ賞以外のノミネーション:マリア・レオン「シネマ・ライターズ・サークル賞」最優秀女優賞
キャスト:マリア・レオン(サラ)、ゴヤ・トレド(ビルジニア)、エドゥアルド・フェルナンデス(ヘスス)、ラシェル・ラスカル(ヴィオレト)、ノア・フォンタナルト Fontanalt(クレール)、オスカル・サフラ(アルベルト)、アレックス・モネルMonner(ナチョ)、他
*カタルーニャ語とフランス語の日本語表記によったが正確かどうか。
★こんなオハナシです。生みの親サラと育ての親ビルジニアの物語。娘クレールが4歳のとき、サラはアルコールと薬物依存症のため裁判所から一時的に養育権を奪われてしまう。ビルジニアとアルベルトの夫婦に育てられたクレールは、二人を本当の親だと思っていた。5年後事態が急変する。裁判官が定職につき安定していたサラに娘を戻そうと決めたからだ。その夏、母子はクレールの本当の父親を探すためマルセイユに旅立つことにする。二人の旅は、失われた時間を回復させる旅、心を通わせる冒険の旅になるだろう。
★こういうロード・ムービーは、前に見たことあるよね、というヴィジャブ感があって一歩間違うと陳腐になります。成功のカギは二人の個性派女優の演技に負うところが大きいが、二人ともノミネーションを受けたということは合格点なのでしょう。クレール役の少女は本作がデビュー作だそうです。手堅いエドゥアルド・フェルナンデス、人気上昇中の青年アレックス・モネル、バルセロナを拠点に活躍するフランス女優ラシェル・ラスカルなどが脇を固めている。
★マリア・レオンは、1984年セビーリャ生れ、女優。TVシリーズ“SMS, sin miedo a soñar”(2006~07)でデビュー、フェルナンド・ゴンサレス・モリナの“Fuga de cerebros”(2009)のチョイ役で映画デビュー。大きく飛躍したのがベニト・サンブラノの“La voz dormida”(2011)、本作でゴヤ賞2012新人女優賞を受賞した。スペイン内戦後、反フランコ活動をして収監されていた姉(インマ・クエスタ)が刑務所内で出産した姪を育てる妹に扮した。泣かせどころをわきまえた監督にのせられて不覚にも号泣してしまった作品。他にシネマ・ライターズ・サークル賞新人女優賞、サンセバスチャン映画祭2011最優秀女優賞、スペイン俳優組合賞などを受賞、フォルケ賞にもノミネーションされた。
*母カルミナと兄パコの三人で5万ユーロで撮った“Carmina o revienta”(2012)でゴヤ賞2013助演女優賞ノミネーション、カルミナ第2弾“Carmina y amén”でフェロス賞2015助演にもノミネートされた。“Marsella”では、ゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル賞主演にノミネートされている。そろそろ日本にも登場して欲しい女優です。
(クレールとマルセイユに向かうサラ、映画から)
★ゴヤ・トレドは、1969年カナリー諸島のランサロテ島生れ、女優、モデル。1993年TVシリーズでデビュー、前述したようにゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』(2000)の第2話バレリア役があまりに有名だが、東京国際映画祭1998コンペ正式作品の『マラリア』で紹介されたのが最初、主役のマラリアを演じた。この映画の舞台が火の島ランサロテ島なので起用されたと思います。監督のアントニオ・ホセ・ベタンコルは1942年カナリア諸島サンタ・クルス・デ・テネリフェ生れ。テレビ界で活躍していて映画進出は遅いほう。長編第2作「Valentina」(1982)、第3作「Cronica del Alba 1919」(1983)が代表作。本作が4作目と寡作だが、2006年に物故している。ドゥニャ・アヤソ&フェリクス・サブロソの『ヌード狂時代/S指定』(2008)は、ラテンビート2008で上映された。他にエンリケ・ウルビスの『貸し金庫507』、エミリオ・マルティネス≂ラサロの“Las 13 rosas”など。
*受賞・ノミネーションは、ゴヤ賞1999『マラリア』で新人女優賞、同2012パコ・アランゴの“Maktub”で助演女優賞、ともにノミネーション。“Maktub”では「シネマ・ライターズ・サークル賞」助演女優賞受賞、スペイン俳優組合賞ノミネーション。フランスの高級ファッション誌のモデルから転身した。
(クレールとビルジニア、映画から)
★ノミネーションは受けていないがベレン・マシアス監督は、970年カタルーニャ州のタラゴナ生れ、監督、脚本家。2000年短編“El puzzle”がゴヤ賞2001短編部門にノミネート、2001年同“Mala espina”がアルカラ・デ・エナレス短編映画祭のアルカラ市賞受賞、マラケシュ映画祭ゴールデン・スター賞にノミネート。長編デビュー作“El patio de mi cárcer”がサンセバスチャン映画祭2008に正式出品、翌年ゴヤ賞新人監督賞にノミネートされた。
(左から、ゴヤ・トレド、ベレン・マシアス、マリア・レオン)
*関連記事:管理人覚え
ゴヤ賞2013 “Carmina o revienta”⇒2013年8月18日
マラガ映画祭2014“Carmina y amén”⇒2014年4月13日
第7回ガウディ賞2015*結果発表 ― 2015年02月04日 10:07
カタルーニャ語作品賞にマリア・リポルの“Rastres de sàndal”
★いやはや驚きました。下馬評では13個ノミネーションの“Stella Cadente”(ルイス・ミニャロ)が貰うはずだった。しかるに本作は美術賞と衣装賞のたったの2個、蓋を開けて見ないと分からないが実感できました。ゴヤ賞の「脚色賞」部門に“Rastres de sàndal”を見つけたときには「やれ嬉しや、製作者のアンナ・ソレル・ポントの熱意が報われて」と喜びましたが、ガウディ賞受賞は全く予想しませんでした。本作については「モントリオール映画祭2014」で観客賞を貰うなど、バルセロナで話題になっており、カタルーニャ語ながらアップいたしました(⇒2014年12月18日)。ガウディ賞の会員約400人のうちマドリード嫌いが揃っているから波乱がおきます。
(アンナ・ソレル・ポント)
第7回ガウディ賞2015の受賞作&受賞者
◎作品賞(カタルーニャ語): Rastres de sàndal(マリア・リポル)製作:アンナ・ソレル・ポント
◎作品賞(カタルーニャ語以外): 10.000 KM (カルロス・マルケス≂マルセ)
◎監督賞: カルロス・マルケス≂マルセ (10.000 KM)
◎脚本賞: カルロス・マルケス≂マルセ、クララ・ロケ( 10.000 KM)
◎女優賞: ナタリア・テナ (10.000 KM).
◎男優賞: ダビ・ベルダゲル (10.000 KM).
◎プロダクション賞: エドモン・Roch /トニ・ノベリャ (エル・ニーニョ).
◎ドキュメンタリー賞: Gabor(セバスティアン・アルフィエ).
◎短編賞: El Corredor(ホセ・ルイス・モンテシノス)
◎アニメーション: Mortadelo y
Filemón (ハビエル・フェセル).
◎テレビ映画: Descalç
sobre la terra vermella.
◎美術賞: セバスティアン・ボグレル (Stella Cadente).
◎助演女優賞: バルバラ・レニー (エル・ニーニョ).
◎助演男優賞: エドゥアルド・フェルナンデス (エル・ニーニョ).
◎編集賞: クリスティナ‘マパ’パストル (エル・ニーニョ).
◎オリジナル作曲賞: ロケ・バニョス (エル・ニーニョ).
◎撮影賞: カルレス・グシ(エル・ニーニョ).
◎衣装賞: メルセ・パロマ (Stella Cadente).
◎録音賞: セルジオ・ブルマン、オリオル・タラゴ、他 (エル・ニーニョ).
◎特殊効果賞: Lamppost / [Rec]4: Apocalipsis.
◎メイク・ヘアメイク賞: [Rec]4:
Apocalipsis.
◎ヨーロッパ映画賞: 『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 パオロ・ソレンティーノ (伊).
★カタルーニャ語以外の作品賞は、“10.000 KM”(5個)と『エル・ニーニョ』(7個)に集中しており、ガラはまるでこの2作品のために開催された感があります。ゴヤ賞作品賞を受賞すると思われる“La isla mínima”は「ヨーロッパ映画賞」部門にノミネートされただけ、更に受賞はイタリア映画と完璧に無視したかたちで終始しました。いまさらながらバルセロナのマドリードへの対抗意識を深くしたことでした(笑)。どちらも文句なしの一級品であるに違いありませんけどね。
(左から、監督、脚本家、主役の二人“10.000 KM”の受賞者全員)
ゴヤ賞2015ノミネーション*落ち穂拾い ② ― 2015年02月05日 15:39
激戦区「新人女優賞」
★トップを走っていると思われるのが“La isla mínima”のネレア・バロスでしょうか。作品賞・監督賞受賞なら流れとして、譬え出番は少なくても受賞できるのではないか。ナタリア・テナはガウディ賞女優賞に選ばれましたがないかなぁ。夫婦とか恋人同士が遠距離で暮らすことが多くなったスペイン、本作のように妻がアメリカ留学など羨ましいケースで、実際は不況で海外に出稼ぎに行かざるを得ない別居が多い。観客が家族の在り方に疑問をもち、身につまされるプロットが受けているのかもしれません。ナタリア・テナとイングリッド・ガルシア・ヨンソンは主役、ヨランダ・ラモスとネレア・バロスは脇役です。主役のほうが強いかもしれない。
新人女優賞の4候補
1)ナタリア・テナ 10.000 km 監督:カルロス・マルケス≂マルセ
2)ヨランダ・ラモス Carmina y
amén 監督:パコ・レオン
3)ネレア・バロス La isla
mínima 監督:アルベルト・ロドリゲス
4)イングリッド・ガルシア・ヨンソン Hermosa juventud 監督:ハイメ・ロサーレス
★ナタリア・テナNatalia Tenaは、1984年ロンドン生れのイギリス人、イギリス育ちの女優、歌手だが、両親がスペイン系でスペイン語が堪能。クリス&ポール(兄)・ワイツ兄弟の『アバウト・ア・ボーイ』(2002)で映画デビュー、もう「ハリーポッター」のニンファドーラ・トンクス役でお馴染み。またジョージ・R・R・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』をテレビドラマ化したシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』にオシャOcha役で出演。
受賞歴:オースティンのSXSW映画祭2014女優賞受賞、マラガ映画祭2014主演女優賞を“Todos
están muertos”のエレナ・アナヤと分け合った(今回アナヤは主演女優賞にノミネートされている)。2月1日発表になったガウディ賞女優賞を受賞しました。
*ゴヤ賞2015ノミネーション⑧ ⇒2015年01月30日
*マラガ映画祭2014 ⇒2014年04月04日/04月11日
(ナタリア・テナ、映画から)
★ヨランダ・ラモスYolanda Ramosは、1968年バルセロナ生れ、喜劇俳優、テレビの司会者。1998年バルセロナのローカルTV番組のバラエティーショー“El Molino”でデビュー。アンテナ3やテレシンコでテレビ司会者として活躍。特に2014年4月からテレシンコの番組“Hable con ellas”の司会者、同10月の政治討論番組“Un tiempo nuevo”に出演。映画デビューは、アルモドバルの『ボルベール』のテレビ司会者、サンティアゴ・セグラの『トレンテ 4』の娼婦役、“Carmina y amén”が本格的なデビュー。舞台もマドリードのグランビア小劇場の“La Cavernícola”に出演している。
受賞歴:パコ・レオンのカルミナ第2弾“Carmina y amén”でマラガ映画祭2014の助演女優賞(銀賞年を受賞 前作と同じ母カルミナ・バリオス、妹マリア・レオンの親子三人が中心になって作ったセビーリャ版コメディ。本作で2015年のフェロス賞とシネマ・ライターズ・サークル賞にノミネートされた。
*マラガ映画祭2014⇒2014年04月13日
(マラガ映画祭授賞式でのヨランダ・ラモス)
★ネレア・バロスNerea Barrosは、1981年、サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、女優。ハビエル・ベルムデスの“Nena”(1997)で映画デビュー、同監督の“León y Olvido”(2004)、“Rafael”(2008)、“El oro del
tiempo”などに出演。TVシリーズ“Matalobos”(2009~10)や“Volver a casa”(2010)、評価の高かった“El tiempo entre
costuras”に1話だけ出演している。今回は失踪した二人姉妹の母親役です。第2回フェロス賞助演女優賞では受賞を逃しました。他にシネマ・ライターズ・サークル賞の新人女優賞にノミネート、ゴヤ賞は初めて。このカテゴリーは予測が難しい、誰が取ってもおかしくない激戦区です。
*ゴヤ賞2015ノミネーション⑥ ⇒2015年01月24日
(ネレア・バロス、映画から)
★イングリッド・ガルシア・ヨンソン Ingrid Garcia-Jonsson は、スウェーデンの女優だが幼少時はセビリャで育ち、のちマドリードに居を定めている。2006年から舞台俳優としてデビュー、映画はヘスス・プラサの短編“Manual for Bored Girls”(2011)でブロンドの少女役が初出演、代表作はマヌエル・バルトゥアルの長編“Todos tus secretos”(2014)、アルバロ・ゴンサレスの短編“ El jardinero”(2013)など。スペイン語の他、英語、仏語、勿論スウェーデン語ができる。長編映画の主役は初めて。スウェーデン人だがマドリードに在住しているから、ナタリア・テナより親近感はあるかもしれない。ハイメ・ロサーレス監督が合格点を与えた新人女優。
*カンヌ映画祭2014「ある視点」部門ノミネーションは、コチラ⇒2014年05月04日/05月26日
(イングリッド・ガルシア・ヨンソン、映画から)
ゴヤ賞2015ノミネーション*落ち穂拾い ③ ― 2015年02月07日 17:39
フアン・ディエゴを応援していたのに
★脚色賞:チェマ・ロドリゲスのデビュー作“Anochece en la Indía”は、マラガ映画祭2014でフアン・ディエゴが男優賞を受賞、館内が一番沸いた映画でした。他にホセ・マヌエル・ガルシア・モヤノが編集賞を受賞しました。当時ゴヤ賞受賞が云々されていましたが、結局ノミネーションされたのは、パブロ・ブルゲス、ダビ・プラネル、チェマ・ロドリゲス共同執筆の脚色賞1個、どうも選出方法に問題があるのじゃないかと勘ぐりたくなります。かつて選出法に疑問を呈してアカデミーと絶縁した大物監督がいましたけど。公開が4月11日と大分前なのも損しているんです。
ストーリー、下半身不随の老リカルドの車椅子冒険ロード・ムービー。かつてオリエントをトラックでヒッピーしていたリカルドは、人生の最期をインドで迎えようと時間を遡る旅を決心する。しかし今や老いと病で車椅子生活、ルーマニア女性ダナを介助者にして陸路をインドへと向かう。ヨーロッパを横断してトルコ、イラン、パキスタンを経てインドへ。孤独な二人の旅は、人生にけりをつける口実となり、やがて愛と時の経過についての、現在の価値と失われた時間の回復の大切さについての物語に変貌していくだろう。
(リカルドとダナ、映画から)
★フアン・ディエゴ(1942年セビリャ生れ)が下半身不随の老ヒッピーのリカルドを演じます。車椅子で出発、ヨーロッパを横断してインドに到達しようと旅に出る。勿論死出の旅です。わざわざ何でインドまで行って死にたいのか。ずっと車椅子の撮影だから、ディエゴは断るだろうと思ったと監督。ディエゴ自身も「自分とかけ離れたもの、下半身不随とかヒッピーとかね、そういう役は好きじゃない」と。まず撮影前の5カ月間、車椅子で暮らしてみることにした(!)。散歩も車椅子、知り合いやファンが「どうしたんだい?」と(笑)。座りづめで体は浮腫むし、車椅子から転落しそうになるしで恐怖だったそうです。しかしそうこうしているうちに何故リカルドがインドで死にたいかが理解できるようになった。萎えた足で椅子に縛り付けられた人生がどんなものかが理解できたと。「死を望むのは、人生をこよなく愛しているから」です。ノミネーション1個でも日本上陸が待たれます。
★監督をご紹介しておきます。チェマ・ロドリゲス、1967年セビリャ生れ、作家、監督、脚本家。テレビ・ドキュメンタリー映画ではベテラン。2006年の “Estrellas de la Linea” が、ベルリン映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞。またマラガ映画祭2006審査員特別メンション、サンセバスチャン映画祭でセバスチャン賞、カルロヴィ・ヴァリ、モントリオール、エジンバラ、シカゴ等々に正式出品。他に“Coyote” (2009)、“El abrazo de los peces” (2011)が代表作。
*マラガ映画祭2014は、コチラ⇒2014年04月11日¨
*フアン・ディエゴ紹介は、コチラ⇒2014年04月21日
(フアン・ディエゴ、監督、共演のハビエル・ペレイラ。マラガ映画祭記者会見にて)
イベロアメリカ映画賞は確定している!
★“Relatos
salvajes”受賞が確実だからもうイイヤ、というわけにいかないか。かつて当ブログでとり上げた2作品がノミネーションされているのでちょっと触れておきます。
★クラウディア・ピントの“La distancia más larga”(2013)は、ベネズエラ=スペイン合作、113分。ハビエル・フェセルの『カミーノ』で信仰に凝り固まった母親に扮したカルメ・エリアスが、人生にけりをつけようと生れ故郷に戻ってくる60代の女性を演じる。映画初出演の子役オマール・モヤ、カラカス生れのアウレック・ワイートAlec Whaite(1990)など。過去を辿る死出の旅、家族の出会いなどを、ベネズエラ南西部にあるグラン・サバナ(ヒロインの生れ故郷)、雄大なテーブルマウンテンのロライマ山を背景に描く。
受賞歴:モントリオール映画祭2013「グラウベル・ローシャ賞」受賞、ウエルバ・ラテンアメリカ映画祭2013観客賞受賞。クリーブランド映画祭2014優れた女性監督に贈られる賞を受賞。ヒホン映画祭2013コンペティション正式出品、ハバナ映画祭2013初監督作品正式出品など他多数。
(カルメ・エリアスとオマール・モヤ、映画から)
★クラウディア・ピントClaudia Pinto Emperador:ベネズエラの監督、脚本家、製作者。TVシリーズで出発、長編第1作で数々の賞を受けた。ベネズエラの二つの顔、首都カラカスの喧騒、遠く離れたグラン・サバナのロライマの静寂、そこで描かれるのは「生を語るための死」、何故なら死は時間より前にやってくるからである。「家族の別れと和解、許しと希望が語られる」と監督。ゴヤ賞にノミネートされたのは、「とても光栄です、なぜなら各国レベルが高くノミネーションは容易じゃありませんから」と。
*モントリオール映画祭2013の紹介は、コチラ⇒2013年09月05日
★エルネスト・ダラナスの“Conducta”は、2013年イカイクICAICが唯一資金を提供して製作したキューバ映画。そういうわけでキューバ代表作品として選ばれる場合は必ず本作になります。ゴヤ賞以外にも米国アカデミー賞も本作でした。マラガ映画祭2014「ラテンアメリカ」部門も同じですが、幸運にも最優秀作品賞を受賞しました。監督賞にエルネスト・ダラナス、女優賞にアリーナ・ロドリゲス、審査員スペシャル・メンション賞をアルマンド・バルデス、さらにディエゴ・フェルナンデス・プジョルの“Rincón de Darwin”(ウルグアイ=ポルトガル)と観客賞を分け合いました。グアダラハラ映画祭他にも出品。
*マラガ映画祭2014ラテンアメリカ映画部門紹介は、コチラ⇒2014年04月04日
(アリーナ・ロドリゲスとアルマンド・バルデス、映画から)
バンデラス栄誉賞、アルモドバルの手から*ゴヤ賞2015 ― 2015年02月07日 23:36
おしまい編として、再びバンデラス栄誉賞について
★間もなくガラが始まりますが、アルモドバル自らがバンデラスにゴヤ栄誉賞を手渡すとか。今回、アルモドバル自身が監督した映画はありませんが、エル・デセオが製作した“Relatos salvajes”が作品賞を含め9個ノミネーションされている。バンデラスから「ゴヤの胸像は是非アルモドバルの手から」と、アカデミーに依頼があったようです。『オール・アバウト・マイ・マザー』のオスカー像をアルモドバルに手渡したのは、当時ハリウッドで活躍していたバンデラスとペネロペ・クルスでした。スペイン・アカデミーとアルモドバルの確執は根深く、完全に解消されたわけではありませんが、出席の理由が二つになったので、多分現れるでしょうね。
(アルモドバルとバンデラス、サンセバスチャン映画祭2008から)
★バンデラスがサンセバスチャン映画祭2008で「ドノスティア賞」を受賞したときも贈呈者はアルモドバルでした(Donostiaはバスク語でサン・セバスティアン)。2008年はゴヤ賞授賞式にはまだ欠席していた時期(2005年から欠席)、復帰したのはアレックス・デ・ラ・イグレシアがアカデミー新会長になった2010年でした。『プリズン211』が作品賞を含め大賞を独り占めした年、モンソン監督にゴヤの胸像を手渡しのがアルモドバルでした。予期せぬアルモドバル出現にみんな唖然としてしまった。「あんたがしつこいから・・・」とアルモドバル、あんたとはデ・ラ・イグレシア、復帰をしつこくせがんだのでしょうね(笑)。
★第29回目の栄誉賞受賞者で最も若い54歳、育ての親でもあるアルモドバルを前にして、どんなスピーチをするのでしょうか。2014年は映画を映画館では見なかった人、スペイン映画には興味を示さなかった人が映画館に足を向けた画期的な年でした。大蔵省にもタンマリ税金が入ったのだから、今年は映画産業ほか文化事業に予算を回して下さい、消費税21%は高すぎますゾ。
ゴヤ賞2015*結果発表 ― 2015年02月09日 21:11
ホセ・イグナシオ・ベルテ大臣出席!
★昨年はゴヤ賞授賞式をイギリスでの会議を理由に欠席したベルテ大臣(教育文化スポーツ省)も、今年は姿を見せました。消費税減税を声高にスピーチするゴンサレス・マチョ(アカデミー会長)を先頭に案の定ハチの巣攻撃を受けました。なかでもアルモドバルが大臣のところに歩み寄って、「映画や文化に携わる友人の皆さん・・・セニョール・ベルテ、あなたはそうではありません」と挨拶した。ガラで一番会場がピーンと張りつめた瞬間だったとか。また来年はマドリードを留守にしてしまうかもね。とにかく21%をせめて15%に下げて欲しいらしいが、これは大蔵省の仕事だよ。
(消費税減税を訴えるアカデミー会長ゴンサレス・マチョ)
★外れたカテゴリーは新人男優賞、『エル・ニーニョ』のヘスス・カストロを予想しましたが、意外や“Ocho apellidos vascos”のダニ・ロビラの手に渡りました。映画でも実人生でもカップルとなったクララ・ラゴの熱いベソを受けていました。主な受賞者は以下の通り。
最優秀作品賞
○ La isla mínima
最優秀監督賞
○ アルベルト・ロドリゲス La isla mínima
○ハビエル・グティエレス La isla mínima
最優秀主演女優賞
○バルバラ・レニー Magical Girl (本作は1個にとどまりました)
最優秀助演男優賞
○ カラ・エレハルデ Ocho apellidos vascos
最優秀助演女優賞
○ カルメン・マチ Ocho apellidos vascos
最優秀新人男優賞
○ ダニ・ロビラ Ocho apellidos vascos
最優秀新人女優賞
○ ネレア・バロス La isla mínima
最優秀新人監督賞
○ カルロス・マルケス≂マルセ 10.000 km
最優秀オリジナル脚本賞
○ アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス La
isla mínima
最優秀脚色賞
○クラレ・ガルシア、クリストバル・ルイス、ハビエル・フェセル
Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo
最優秀イベロアメリカ映画賞
○ Relatos salvajes (アルゼンチン=西) ダミアン・シフロン
○Paco de Lucía: La búsqueda クーロ・サンチェス・バレタ
○La isla mínima フリオ・デ・ラ・ロサ
最優秀オリジナル歌曲賞
○“Nino sin Miedo”『エル・ニーニョ』
(歌手インディア・マルティネス、作曲ダビ・サンティステバン)
最優秀プロダクション賞
○『エル・ニーニョ』 エドモン・Roch、トニ・ノベリャ
最優秀編集賞
○ホセ・M・G・モヤノ La isla
mínima
○マルク・オルテス、オリオル・タラゴ、セルジオ・ブルマン 『エル・ニーニョ』
○アレックス・カタラン La isla mínima
最優秀美術賞
○ ペペ・ドミンゲス La isla mínima
○ フェルナンド・ガルシア La
isla mínima
最優秀メイク&ヘアメイク賞
○カルメン・ベイナト、ペドロ・ロドリゲス、ホセ・Quetglas 『トガリネズミの巣穴』
○ラウル・ロマニリョス、ギジェルモ・オルベ 『エル・ニーニョ』
○ Mortadelo y Filemón contra
Jimmy el Cachondo ハビエル・フェセル
◎ゴヤ栄誉賞 アントニオ・バンデラス
プレゼンターは、予告通りペドロ・アルモドバルでした。
(監督賞受賞のアルベルト・ロドリゲス)
(時計回り、ネレア・バロス、ハビエル・グティエレス、バンデラス、バルバラ・レニー、
ダニ・ロビラとクララ・ラゴ)
★トレビアは授賞式総集編をゆっくり見てから、いずれ総括編として記事にしていくつもりです。
バンデラス栄誉賞スピーチ*ゴヤ賞授賞式あれこれ ― 2015年02月15日 12:35
♪もういくつ寝ると授賞式~~♪
A: 授賞式当日よりも前日までが楽しめるのはお正月と同じ、根回しや裏工作(?)の票取り合戦があるらしく、何事にも戦略は重要です。終わってしまえば「戦いすんで夜が明けて」泥酔してるか、「冬草や兵どもが夢の跡」とぼやくだけです。
B: 迷っている仲間にダイレクトにアタックするらしい。映画賞というのは会員同士が選ぶわけで恩義があるとか、借りがあるとか心理的な抑圧もあり得ますね。
A: 高がゴヤ賞、されどゴヤ賞です。今年は現在21%の消費税減税、文化政策費削減など、教育文化スポーツ大臣が出席したこともあって、現政権への風当たりは強かったようです。しかしかつてアスナール政権(PP)がイラク戦争に参戦を表明、出席者たちは「ノーモア戦争」のゼッケンを胸に登壇したような過激さはなかった。「お祭りに政治色を持ちこむな」と批判する意見もありましたけど、記憶に残る授賞式でした。
B: PP支持者のなかには欠席した人も出た。しかし、「私を見習いなさい、政治に口出しは無用」という40年間を体験したスペインでは、映画産業に限らず政治的な旗幟を鮮明にする傾向がありますね。
A: 国の指導者の真綿で首を絞めつけるような抑圧があれば、誰もまともな判断ができなくなります。声高に「国民の平安」を叫ぶスローガンには気をつけなくちゃ。
B: 特定の思想を植えつける全ての映画には抵抗していく、また繰り返される決まり文句には関心を怠ってはいけない、ですかね。
辞退していたゴヤ栄誉賞
A: 前日のバンデラスはやはりナーバスになっていたようです。注目の受賞スピーチはいささか長かった印象。「自分が持てるすべてを仕事に注ぎ込んできたが、これは天命と言っていい。しかしはるかに重要なことは現実にその責任を果たしていく」という言葉で切り出して、謙虚ながらそれなりの自負を垣間見せました。
B: 同郷のピカソと同じように俳優になるべくして生れてきたということですね。私たちは夢と違いすぎる人生を歩んでいるのですが、バンデラスは故郷に錦を飾ることができた幸せ者です。
A: 二十歳で故郷を離れたときのシーンを語ったときはちょっと感動的でした。列車の窓からだんだん小さくなっていくホームに佇む両親を見つめていた。お父さんはもう亡くなりましたが、あちらで喜んでいることでしょう。
B: 手ぶらでマラガに戻ってくるな、持っているお金だけで暮らせ、など父親の堅実な教えを守り、セマナ・サンタにはできる限り帰省する孝行息子でもある。古くさい教えかもしれませんが、息子の成功を信じる父親像が浮かび上がってきます。
A: 以前にも書きましたが、彼は大兄弟会連合Cofradias
Fusionadasの会員、これは「悲しみと愛のマリアVirgen de Lágrimas y Favores」の聖櫃財産管理委員のことで、その一員としてセマナ・サンタに参加する。2011年、大兄弟会団体よりセマナ・サンタの開会の辞を述べる「プレゴネロpregonero」に任命され、2013年にはメナMenaの信徒団よりマラガ名誉市民に指名されています。善き人、勤勉な働き者、国際的に活躍するマラガ人として尊敬に値する人に贈られる称号です。
B: マラガの海岸通りに記念碑が建ってるそうです。
A: 2014年の夏、アカデミー会長から栄誉賞の打診があったときは辞退したようです。まだ志半ばで俳優を引退する気持ちは微塵もないし、54歳受賞はそもそも若すぎると。時期的に離婚したばかりということも理由として上げていました。
B: 54歳で貰うのは彼の責任ではない(笑)。ハリウッド時代の20年間があり、その頃は「えっ、バンデラスはスペイン人なの?」と嫌味を言われていたから、お茶の間の反応も気になったかも。もっともな判断だと思いますね。
A: スペイン人はかなり妬み深い(笑)。異郷で暮らすと自然と物の見方が複眼的になり、故国の歴史や文化、政治を学ぶ必要に迫られる。彼は勉強家ですね。ピカソに触れているのは同郷ということもあるが、今年公開になるカルロス・サウラの“33 días”で「ゲルニカ」制作中のピカソに扮する。そんなことも影響してるかも。バスク・テレビが製作に参加、音楽は『フラワーズ』のパスカル・ゲーニュです。
B: グウィネス・パルトローがドラ・マールを演じる。彼女は十代のころスペインに交換留学生として滞在していたのでスペイン語は流暢だそうですね。
A: ドラ・マールもアルゼンチンで過ごしたことがあったのでスペイン語ができた。本作はスペイン=カナダ=アルゼンチン合作、言語は西語と仏語です。来年あたりの公開を期待したい。
人生の第2幕がスタートした
B: 栄誉賞受賞の時刻は23時15分、プレゼンターはアルモドバルと公表されていたので、お茶の間は二人がどんなスピーチをするか、パジャマ姿でソファに陣取って待機していた。
A: 作品賞の受賞者は“La isla mínima”と決まったも同然だったから、ハイライトはこっちでした。
B: たくさんの人たちに支えられて、特に直接には知らない、赤絨毯を踏むこともカメラのフラッシュを浴びることもない多くの観客のお蔭でここまでやってこられたと。
A: 音楽家としてファジャ、タレガ、アルベニス、グラナドス、文学者としてはセルバンテス、ウナムノ、バジェ≂インクラン、ロルカ、マチャード、セルヌーダ、アルボルノス、(フランシスコ・)アジャラの名を上げた。アルボルノスは政治家でもあったアルバロ・デ・アルボルノスのことでしょうか。
B: 監督としては、ブニュエル、ベルランガ、サウラ、エリセ、勿論、ペドロ・アルモドバルでした。
A: ベルランガを上げたのは個人的に嬉しい、映画祭上映だけで全て劇場未公開なのが残念でならない。スペインで一番愛された監督がベルランガです。アルモドバルはベルランガ学校の優等生です(笑)。
B: 最後に、この賞を我が娘ステラ・デル・カルメンに捧げると。
A: 両親に捧げると思っていましたが、メラニーとの破局の責任を感じているのですね。
B: ゴヤ賞に撮影賞・美術賞他ノミネートされた“Autómata”は無冠に終わりましたが、今年は公開作品や撮影中のものが目白押しです。
A: 我が人生の第2幕が揚がった、これに向かって前進するという決意で締め括りました。俳優、監督、製作者としてスペイン語映画で活躍して下さい。
(“Autómata”のバンデラス)
*関連記事:管理人覚え*
バンデラス離婚騒動とマラガに新居購入は、コチラ⇒2014年06月21日
バンデラス栄誉賞受賞については、コチラ⇒2014年11月05日/2015年02月07日
ペネロペ・クルス、作品賞のプレゼンター*ゴヤ賞授賞式あれこれ ― 2015年02月18日 10:31
ダニ・ロビラが合格点を貰った授賞式
A: 約4時間、正確には3時間46分の長丁場でした。なかには途中で退席したまま戻ってこない方もおられたようですが、見てるほうだってさぞかし疲れたことでしょう。
B: 日曜から土曜の夜に変更、昨年最悪だった視聴率19.8%を24.7%に回復させ、これは約384万人が見ていた計算になるとか。司会者に“8 apellidos vascos”の主役ダニ・ロビラを抜擢したことが功を奏したようです。
A: 新人男優賞も受賞したし、恐ろしいくらいの幸せを味わった。船長エミリオ・マルティネス≂ラサロ監督に大感謝してましたが、まだ会場に残っていたかしら(笑)。ゴヤ胸像は勿論結婚ホヤホヤのクララ・ラゴに、彼女ちょっとウルウルしてましたね。
(新人男優賞のダニ・ロビラ)
B: TVE局も大満足したようですが、2010年の26.4%には及ばなかった。モンソンの『プリズン211』が作品賞を受賞した年です。
A: やはり司会者の力量も重要ですが、どんな作品がノミネーションされているかが大きい。今回のピークが予定より大分ズレて23時49分の511万人(29.4%)、バンデラスの栄誉賞でした。全部ではないがテレビを見た人はトータルで約1182万人になるんだそうです。
B: 日本映画も国際的な賞をたくさん頂いてますが、こういう話を聞いたことがないのは、管理人が単に知らないだけ?
くっきり色分けされたガウディ VS ゴヤ
A: ガウディ賞はダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』、ゴヤ賞はアルベルト・ロドリゲスの“La isla mínima”とはっきり分かれました。<小島>が大賞を浚いましたが、ちょっと貰いすぎかな。
B: 作品・監督・主演男優・助演女優・脚本・撮影・作曲・編集・美術・衣装デザインの10個、確かに貰いすぎ。昨年のダビ・トゥルエバの“Vivir es fácil con los ojos
cerrados”以上です。
A: ガウディ賞を制した『エル・ニーニョ』は、歌曲・プロダクション・特殊効果・録音の4個、バルセロナ派とマドリード派の犬猿の仲がくっきりした。ガウディ賞が“La isla mínima”をヨーロッパ映画賞部門にノミネーション、ダメ押しにイタリア映画を受賞作に選んだ反発かな。
B: モンソンはマジョルカのパルマ出身だが、別にバルセロナ派というわけではないけど。
A: 写真家アティン・アヤが、フランコ時代にアンダルシアの庶民を撮ったモノクロに触発されて本作が製作されたと知ったら驚くでしょうね。アルベルト・ロドリゲス監督、脚本家のラファエル・コボス、並びに撮影監督アレックス・カタランたちは、アヤの写真に大いに刺激を受けたと語っています。
B: アティン・アヤはセビーリャ出身の写真家、52歳の若さで鬼籍入りしています(2007)。「ちょうど回顧展が開催されて、みんなで見に行った」と監督も語っています。
(オリジナル脚本賞受賞のラファエル・コボスと監督)
A: 『エル・ニーニョ』の撮影も受賞に値すると思いますが、“La isla mínima”の映像美には驚かされます。ロドリゲスはカタランとは第4作“After”(2009)からタッグを組んでいるので、彼の受賞は殊のほか嬉しいようです。
B: 共同脚本家のコボスは『七人のバージン』(2005)から、スタッフを変えないタイプの監督、ノミネーションまでは行くが受賞には手が届かず、やっと本作で宿願が叶った。
A: 今までの分を足して10個でもいいかな。最近発表された「シネマ・ライターズ・サークル賞2015」にも二人は脚本賞を受賞したようです。
ペネロペ・クルス、製作者として初参加
A: 作品賞の贈呈者はなんとペネロペ・クルスでした。俳優としてではなくプロデューサーの肩書きですが、これはフリオ・メデムの新作“Ma ma”でプロデュサーとしてデビューしたからと思います。
B: 二人の子供の母親の貫禄充分だが、美しさは変わらない。3人登場でしたが誰と誰?
A: 長身の人がAtipica Filmsのホセ・アントニオ・フェレス、赤いドレスがAntena 3 Filmsのメルセデス・ガメロ、もう一人は多分Sacromonte Filmsのヘルバシオ・イグレシアスかもしれない。製作者は裏方だから、スピーチも短くて歓迎、「スピーチは短ければ短いほどよい」です。
B: 監督賞は昨年の受賞者ダビ・トゥルエバからロドリゲスへ、これは恒例ですが、アレックス・デ・ラ・イグレシアも登壇していた。
A: 主演男優賞ハビエル・グティエレスは、本作でサン・ジョルディ賞、サンセバスチャン銀貝賞、フォルケ賞、フェロス賞、シネマ・ライターズ・サークル賞と貰える賞の全てを独占した。
B: ロドリゲス映画は初出演、演劇、テレビ、映画と164センチと小柄ながらエネルギッシュ、今回は苦労を共にした共演のラウル・アレバロがライバルでした。これは辛いね。
A: それが「ラウル・アレバロ、君の連帯感に感謝するよ、今夜は僕が喝采を浴びているが、僕は君を賞讃したい。監督としてはまだ駆け出しだが、この国の現在と未来のアクターだ。君が好きだよ、ホントに」というスピーチになった。
B: 思考停止状態だと切り出したが、受賞がほぼ確定していても本番は興奮するようですね。「アルベルト・ロドリゲス、これはまったくなんてことだ」と言ってました。
(主演男優賞のハビエル・グティエレス)
A: アニマラリオAnimalario(1996 設立)というマドリードに本拠をおく演劇集団のメンバー、アルベルト・サン・フアン、エルネスト・アウテリオ、主演女優賞のバルバラ・レニーなどが所属している。
B: ヨーロッパの俳優は、演技の基礎を舞台で磨いている人が多い。バルバラ・レニーも映画と演劇の二つの海で泳ぐと宣言してますね。どちらも諦めないと。
A: 彼女はマドリード生れだが少女時代はアルゼンチンで育っている。だから高校ではアルゼンチン訛りをからかわれ、女優として矯正に苦労しているようです。“Magical Girl”はサンセバスチャンの金貝賞受賞作品でしたが、ゴヤはこれ1個でした。
B: レニーは、モンチョ・アルメンダリス、イサキ・ラクエスタ、ダニエル・モンソン、そして映画の魅力を教えてくれた最初の恋人ジョナス・トゥルエバに感謝を捧げていた。
(主演女優賞のバルバラ・レニー)
A: レニーは、カルロス・ベルムト監督に「是非あなたの映画に出たい」と頼んでいたとか。3日後にコーヒーを一緒に飲み、1週間後プロジェクトに参加していた。「貰った脚本は狂気と挑発、そして幻想的でした」と。そうやって“Magical Girl”を自分に引き寄せた。
B: フランス人ながらオスカー女優となったマリオン・コティヤールが好きだそうです。
A: マリオンの妥協をしない演技が魅力、「妥協は死と同じ」だからと語っている。
B: これからも個性的な監督からのオファーが期待されます。
A: 新人女優賞のネレア・バロスは「もしかして」と思っていたでしょうが、現実になって相当感激していた。「ホントに驚いたわ、ありがとうございます。受賞できるなんて全然思っていなかった」
B: 今年は主演女優が二人ノミネートされていたから、確率は五分五分でした。
(新人女優賞のネレア・バロス)
“Ocho apellidos vascos”は報われた?
A: 助演男優賞のカラ・エレハルデはイシアル・ボリャインの『雨さえも~ボリビアの熱い一日~』(2010)以来の受賞です。そのときのスピーチが長すぎて批判されたせいか、今回は制限時間を守った。何しろ司会者のロビラが娘婿、彼を困らせたくなかった(笑)。
(助演男優賞のカラ・エレハルデ)
B: カルメン・マチは、今年1月に77歳で逝去したばかりのアンパロ・バロを偲んでゴヤ胸像を彼女に捧げました。バロも同じ助演女優賞を受賞していますね。
A: グラシア・ケレヘタの“Siete mesas de billar francés”(2007)で受賞している。旅立つ少し前に会ったとき、アンパロから「つまり、ゴヤ賞が欲しいというわけね」と言われ、「まさか、アンパロ、そんなこと言ってないわよ」、「でも私にはそう聞こえるけど」という会話を紹介した後、「親愛なるアンパロ・バロ、これをあなたに捧げます」と結んだ。
B: 大先輩への悼辞も兼ねた、ユーモアを効かせた素晴らしいスピーチでした。
(助演女優賞のカルメン・マチ)
A: イベロアメリカ映画賞は受賞が確定していたせいかダミアン・ジフロン監督以下大勢出席してましたね。さて、きりがないからゴヤ賞はここいらでお開きにします。第65回ベルリン映画祭でチリのパブロ・ララインの“El club”がグランプリ審査員賞(銀熊賞)を受賞しました。金熊賞に継ぐ大賞です。オープニング作品に選ばれたイサベル・コイシェは無冠に終わりました。
(イベロアメリカ映画賞のダミアン・ジフロン)
*関連記事:管理人覚え
アルベルト・ロドリゲス、フィルモグラフィー紹介⇒2015年1月24日
アレックス・カタラン、キャリア紹介⇒同上
アティン・アヤ、キャリア紹介⇒同上
ハビエル・グティエレス、キャリア紹介⇒同上
ネレア・バロス、キャリア紹介⇒2015年2月5日
バルバラ・レニー、キャリア紹介⇒2015年1月21日
カラ・エレハルデ、キャリア紹介⇒2015年1月28日
カルメン・マチ、キャリア紹介⇒同上
ダミアン・シフロン、キャリア紹介⇒2015年1月19日
ペネロペ・クルス、初プロデューサー“Ma ma”⇒2015年1月5日
パブロ・ララインの”El Club”グランプリ審査員賞*ベルリン映画祭2015 ① ― 2015年02月22日 21:59
『NO』から3年、新作がベルリン映画祭グランプリ審査員賞に
★今年のベルリン映画祭は、イサベル・コイシェ(バルセロナ、1960)の“Nadie quiere la noche”で開幕しました。オープニング作品にスペイン映画が選ばれたのは初めて、ということで期待しましたが無冠、代わりにと言ってはなんですが、パブロ・ララインの“El Club”が審査員賞グランプリを受賞しました。前作『NO』(2012)はカンヌ映画祭「監督週間」でアート・シネマ賞受賞、また米国アカデミー外国語映画賞にノミネーションされたがハネケの『愛、アモール』に破れた。ベルリンは今回が初めてです。
(熊のトロフィーを高々と差し上げたパブロ・ラライン、ベルリン映画祭授賞式)
★パブロ・ララインは、1976年チリの首都サンチャゴ生れ。父親エルナン・ラライン・フェルナンデス氏は、チリでは誰知らぬ者もいない保守派の大物政治家、1994年からUDI(Union Democrata Independiente 独立民主連合) の上院議員で弁護士でもあり、2006年には党首にもなった人物。母親マグダレナ・マッテも政治家で前政権セバスチャン・ピニェラ(2010~14)の閣僚経験者、つまり一族は富裕層に属している。ラライン監督の『NO』に関連するので触れると、ピニェラ前大統領はピノチェト大統領の8年間延長についての国民投票では「No」に投票している。ピニェラは世界的な大富豪、アメリカの経済紙「フォーブス」で資産総額で437位に数えられている。同じ地震国であるということか、東日本大震災後に2回来日して被災地を視察している。
★ミゲル・リティンの『戒厳令下チリ潜入記』でキャリアを出発させている。弟(6人兄妹)フアン・デ・ディオス・ララインと 「Fabula」というプロダクションを設立、その後、独立してコカ・コーラやテレフォニカのコマーシャルを制作して資金を準備してデビュー作“Fuga”(2006)を発表した。<ジェネレーションHD>と言われる若手の「クール世代」に属している。監督では、『マチュカ』や『サンティアゴの光』のアンドレス・ウッド、『ヴォイス・オーヴァー』のクリスチャン・ヒメネス、『家政婦ラケルの反乱』や『マジック・マジック』のセバスティアン・シルバ、『グロリアの青春』のセバスティアン・レリオ、『プレイ/Play』のアリシア・シェルソンなどがおり、シェルソンの『プレイ』は「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006」で新人監督賞を受賞した作品。(邦題は映画祭上映時のもの)
★『NO』について:サンセバスチャン映画祭2012の「ZABALTEGIのパールズ」部門にエントリーされ、観客総立ちのオベーションを受けた作品。続いて東京国際映画祭 2012のコンペティション部門、ラテンビート2013でも上映された。「ピノチェト政権三部作」の最終作。第一部がアルフレッド・カストロ主演の『トニー・マネロ』(2008、ラテンビート上映)で1970年代後半のチリ、第二部が同じくカストロ主演の“Post
mortem”(2010)、時代背景が1973年のアジェンデ政権末期、つまり時代は二部→一部→三部の順になります。第二部はメタファーが多くチリ社会の知識を要求する複雑な作品、本作が一番分かりやすい作品と言える。しかし断然光っているのは好き好きもあるが、第一部『トニー・マネロ』か。
(『トニー・マネロ』の主役アルフレッド・カストロ、クール世代の一人)
★『NO』が東京国際映画祭2012で上映されたときラライン監督の来日はなかったのですが、ラライン兄弟の映画製作に初参加したダニエル・マルク・ドレフュス(ロス在住のアメリカ人)が来日してQ&Aに参加してくれた。「ラライン兄弟は共に次回作の撮影に入っており、極寒の場所にいて来日できなかったが、日本の皆さまによろしくと言付かってきた」と挨拶した。その次回作が銀熊賞受賞の“El Club”です。
(ガエル・ガルシア・ベルナル主演『NO』のポスター)
★受賞作“El Club”は、ピノチェト政権三部作同様チリの暗い過去を掘り起こす映画のようで、モラルの崩壊、イデオロギーの歪曲、カトリック教会の位階制、神父の小児性愛など見るものを困惑させ不快にもさせる。しかし、映像の検証は説得力があり最後は心揺さぶられることになるようだ。チリの同胞はできれば目を背けたいテーマに違いない。
キャスト:アルフレッド・カストロ(ビダル神父)、アレハンドロ・ゴイク(オルテガ神父)、ハイメ・バデル(シルバ神父)、アレハンドロ・シエベキング(ラミレス神父)、アントニア・セヘルス(シスター・モニカ)、マルセロ・アロンソ(ガルシア神父)、ロベルト・ファリアス(サンドカン)、ホセ・ソーサ(マティアス・ラスカノ神父)他
(左から、アルフレッド・カストロ、監督、ロベルト・ファリアス、ベルリンにて)
プロット:かつて好ましからぬ事件を起こして早期退職させられた神父たちのグループを、教会が海岸沿いの人里離れた村の一軒家に匿っている。神父たちはカトリック教会のヒエラルキーのもと共同生活を送っており、シスター・モニカが神父たちの世話をして生活を支えている。彼女が外と接触できる唯一の人間であり、神父たちが飼っている狩猟犬グレーハウンドも世話していた。ある日、この「クラブ」に5人目の神父が送られてきたことで静穏な秩序が一変してしまう。
(“El Club”のシーンから)
★アルフレッド・カストロは、「ピノチェト政権三部作」全てに出演、『トニー・マネロ』がラテンビートで上映された折り来日している。ラライン監督夫人でもあるアントニア・セヘルスも同じく3作に出ており、『NO』ではガエル・ガルシア・ベルナルが演じた主人公のモト妻役を演じていた女優、テレビ製作者、ラライン同様セレブ階級に属しており、結婚は2006年、2人子供がいる。
★ラライン監督談:少年時代の教育はカトリック系の学校に通った。そこで分かったのは、神父に三つのタイプがあったこと、その一つが軍人に抵抗して神父になったケース、犯罪者や行方不明者として何の痕跡も残さず突然移動させられた。その一人がチリでは有名なフランシスコ・ホセ・コックス神父(同性愛や小児性愛で告発されたラ・セレナ市の大司教も務めた神父)、彼が住んでいた牧歌的なスイスの館の写真を見て、この映画のアイディアが生れたということです。
★出演者には前もってシナリオを渡さず、大枠の知識だけで撮影に入った。つまり誰も自分が演ずる役柄の準備ができないようにした。3週間で脚本を書き、2週間半の撮影は秘密裏に、編集は自宅でやった。それを弟フアン・デ・ディオス(製作者)と関係者2人に見せ、ベルリンの主催者に送った。オーケーが出たので大急ぎで正式のプロダクションを立ち上げた。観客と一緒に見たのはここベルリンが初めて、と映画祭のインタビューで語っています。教会はこの映画については、目下ノーコメントらしい。しかし観客の反応に手ごたえを感じたようです。
追加情報:『ザ・クラブ』の邦題でラテンビート映画祭で上映されました。
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