ベルリン映画祭2015*番外編2015年03月04日 11:33

        パノラマ部門にセバスチャン・シルバの新作

 

★コンペティション外ですがチリのセバスチャン・シルバの新作Nasty Babyが「パノラマ」部門で上映されていました。ベルリンはコンペ外にパノラマ→フォーラム→ゼネレーション(子供が審査員)と4つのセクションがあります。「ラテンビート2010」で『家政婦ラケルの反乱』、同2013には『クリスタル・フェアリー』と『マジック・マジック』が上映された。2013年には監督自身も来日、Q&Aに参加しております。シルバは既にカミングアウトしていて故国では息苦しいのか、「私はチリではアウトサイダー」と語っており、2010年からニューヨーク市のブルックリンに居を定めて製作、従って本作も残念ながら言語は英語です。

 

       

          (Tunde Adebimpe とクリステン・ウィグ“Nasty Baby”から)

 

★“Nasty Baby”は、ブルックリンに住んでいるゲイ・カップルが人工授精で子供を持とうとする話。予告通り監督自身も出演しておりますが、「nastyな」赤ん坊とは穏やかでないタイトルです。20136月にクランクイン、エキストラはブルックリン周辺の隣人たちということです。2015年、米国=チリ、英語、100分。1月下旬に行われたサンダンス映画祭2015がプレミア。

 

        

            (サンダンス映画祭での監督以下出演者、左から2人目がシルバ監督)

 

経歴・フィルモグラフィー紹介記事は主にコチラ⇒2013925

『クリスタル・フェアリー』はコチラ⇒20139251029Q&A

『マジック・マジック』はコチラ⇒9271026Q&A

『家政婦ラケルの反乱』はコチラ⇒2013927

 

 

       フォーラム部門にドミンガ・ソトマヨル・カスティリョの新作

   

Mar ドミンガ・ソトマヨル・カスティリョの長編第2作目、 チリ=アルゼンチン合作、2014年、70分。チリのバルディビア映画祭201410月)で上映、ベルリン映画祭の後、チリのサンチャゴで開催される「第5回女性映画祭2015 FEMCINE 5」(324日~29日)のイベロアメリカ映画部門の上映が決まっています。ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、パラグアイ、ベネズエラ、スペイン、ポルトガルなどの女性監督作品が一堂に会します。


33歳のマルティンMartinはガールフレンドと夏季休暇に海Marに出掛ける。彼の母親が到着するまでは何事もなく平穏に過ごしていたが・・・。MartinMarに意味があるようで、だから英語‘Sea’にはできないか。家族の崩壊、移動(旅行)がテーマらしく、デビュー作『木曜から日曜まで』と似ているようです。監督が脚本、製作を兼ねているだけでなく、他の俳優たちも脚本、製作を掛け持ちしている。うち脚本家の一人マヌエラ・マルテリも“Apnea”で監督デビュー、「第5回女性映画祭2015」の短編部門に選ばれている。とにかくチリだけでなく、ラテンアメリカの女性シネアストたちは元気です。


★『木曜から日曜まで』“De jueves a domingo”(2012Thursday till Sunday”)は、ロッテルダム映画祭2012がプレミア、その後世界各地の映画祭にエントリー、「東京国際映画祭2012」でも上映され邦題はそのときのもの。ドミンガ・ソトマヨル・カスティリョは、1985年チリのサンティアゴ生れ、若くて美人だ。チリのカトリック大学視聴覚学部を卒業したばかりの2009年に撮った短編“Videojuego”(ビデオゲーム)が、2010年ロッテルダム映画祭に出品され話題に。『木曜から日曜まで』はオランダから資金が出て合作となったが、カンヌ映画祭の映画基金も貰って製作された。 


★離婚を決意した若い両親と何も知らない二人の姉弟4人で、木曜から土曜にかけて車(日本製M929)で「お別れ旅行」をする話。姉ルシアの賢そうな目とカメラの目は、走っている車中では常に後ろ向きの両親の姿を見ることになる。このルシア役の子役サンティ・アウマダは監督の妹の友人ということだが、自然な演技が気持ちよく、おしなべてその他の子役の扱いに感心した。「子役には台本を与えず、姉弟二人のリアクションを観察しながら、日々起こるハプニングを加えて撮影したことで、より自然な演技を引き出すことに成功した」とQ&Aで語っていた。

 

  

  (構図の取り方が優れていた『木曜から日曜まで』 両親の背中を見ながら移動する姉弟)

 

★車窓を飛び去る荒涼としたチリの風景、スピード感もあって将来が楽しみな監督と感じた。第2作目となる本作がフォーラム部門とはいえベルリンにエントリーされたのは嬉しい。テーマの一つに「移動」を上げたのは、チリも含めてラテンアメリカ映画の特徴と考えるから。上記のセバスチャン・シルバにも顕著です。「チリは細長い国なので、移動といえば北か南に行くしかない」が、これに心理的な移動が加わって、デビュー作とは思えない完成度を示した。

 

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