新喜劇の旗手ダニエル・サンチェス・アレバロ2013年08月25日 14:27

★ジャンルとしてスペインのコメディは成功例が多い。彼の場合、名前よりデビュー作『漆黒のような深い青』(2006)とか、近くは第3作『マルティナの住む町』(2011)を撮った監督と言ったほうが分かりやすいかもしれない。二つともラテンビートで上映され、2作目となる『デブたち』も「2009スペイン映画祭」で紹介されたから、かなり幸運な人です。第1作はゴヤ賞新人監督賞受賞を筆頭に、国内のマラガに止まらず世界の映画祭ヴェネチア、シカゴ、ストックフォルム、トゥールーズと、高い評価を受けた作品でした。

★次回作は、“Paracuellos”というカルロス・ヒメネスの人気コミックの映画化がアナウンスされていましたが違いました。製作もヒット作を量産しているフェルナンド・ボバイラが責任者のMad Produccionesに決定していたのにね。コミックはスペインでも下降線を描いていますから頓挫したのかもしれません。

★第4作となる“La gran familia espanol”(英題“Family United”)の本国公開が9月13日と目前に迫り話題になっています。負け組5人兄弟(一人は欝病、もう一人は身体障害者、ほかの一人は知恵遅れ・・・)のミクロな世界を描きながら、今やEUのお荷物となっているスペインの、嘘でかためた社会が抱えるマクロな問題にメスを入れているようです。彼自身16年間も精神分析を受けている思惑の人だから、書くことで克服しようとしたようです。1970年生れということは年齢的に難しい時期に差しかかっているのかもしれません。背景にはハリウッドの古典、ブロードウェイでもロングランしたスタンリー・ドーネンの『掠奪された七人の花嫁』(1954)への目配せがあるということです。

★キャストは、今年4月惜しくも鬼籍入りしたビガス・ルナの『女が男を捨てるとき』(2006)やイシアル・ボジャインの“Katmandu”で主役を演じたベロニカ・エチェギ(カトマンズ入りしての過酷な条件下の撮影にカルチャーショックを受けた由)。ビガス・ルナのは日本ではクソミソだったが理解されにくいのが残念です。こちらは劇場未公開作品ですが、2012年セルバンテス文化センター土曜映画会で上映されました。男性陣は監督が「義兄ちゃん」と呼んで義兄弟同然のアントニオ・デ・ラ・トーレ(4作オール出演)、『デブたち』以外出演したキム・グティエレス、今年スクリーンで見られたら嬉しい映画の一つ。
(写真:ダニエル・サンチェス・アレバロ)

コメント

_ nieves ― 2013年08月25日 16:51

アレバロ作品はすべて観ています。特に「デブたち」は相当好きですね。、、、というところで、次回作“La gran familia espanol”の「『掠奪された七人の花嫁』への目配せ」というのがとても気になり、楽しみです!!
『掠奪〜』はMGMの中でもダントツに好き!!! 
ちょっとダメダメだけど楽しい兄弟たちに心奪われました。この作品が彼の映画でどのように生きてくるんでしょうか? 
はやく観たいですね〜。

_ アリ・ババ39 ― 2013年08月25日 17:15

>_ nievesさん
 コメントありがとうございます。この世代は、前の世代と違ってハリウッド映画にアレルギーがありません。なにしろ自国の映画よりハリウッド映画で育ちましたから。ハリウッドとの違いは、捻りかたが複雑なことですね。

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