セバスティアン・レリオの新作「La Ola」カンヌプレミアに*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月21日 17:11
チリの政治的ミュージカル「La Ola」がカンヌ・プレミア部門で上映決定

★アカデミー賞2018国際長編映画賞を受賞した『ナチュラルウーマン』の監督セバスティアン・レリオの新作ミュージカル「La Ola / The Wave」が、カンヌ・プレミア部門にノミネートされました。ラライン兄弟の制作会社「ファブラ」が手掛けています。2018年にチリを席巻した女性に対する暴力に抗議する大衆デモにインスパイアされて製作されたミュージカル。音楽映画とは縁遠い印象のチリで生まれたことが興味深いですが、レリオはミュージックビデオを多数手がけています。この大衆デモはチリのフェミニスト運動を刺激し、女性の権利に関する憲法改正に繋がった。監督は「スペクタルと政治をミックスさせ、私たちが生きている政治的な不協和音を反映させようと、歌、ダンス、パフォーマンスを使って私たち全員に影響を与える緊急の問題を語るなど、ミュージカルというジャンル内で独自の働き方を見つけた。100人を超えるチリの若手アーティストを紹介できたことを誇りに思う」と「バラエティ」誌に語っている。主人公フリアに新星ダニエラ・ロペスを起用した。

(撮影中のセバスティアン・レリオ監督)
「La Ola / The Wave」
製作:Fabula / Fremantle / Participante
監督:セバスティアン・レリオ
脚本:ホセフィナ・フェルナンデス、マヌエラ・インファンテ、セバスティアン・レリオ、パロマ・サラス
音楽:アニタ(アナ)・ティジュー、カミラ・モレノ、ハビエラ・パラ、マシュー・ハーバート
撮影:ベンハミン・エチャサレタ
美術:タチアナ・モーレン
キャスティング:エドゥアルド・パシェコ
特殊効果:フアン・フランシスコ・ロサス、オスカル・リオス・キロス
製作者:フアン・デ・ディオス・ラライン、パブロ・ラライン、ロシオ・ハドゥエ、セバスティアン・レリオ、(エグゼクティブ)ロベルト・ケッセル
データ:製作国チリ=米国、2025年、スペイン語、ミュージカル・ドラマ、129分、撮影地サンティアゴ、期間9週間、配給 FilmNation Entertainment
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2025カンヌ・プレミア部門正式出品(2025年5月16日)
キャスト:ダニエラ・ロペス(フリア)、アンパロ・ノゲラ、ネストル・カンティジャーナ、タマラ・アコスタ(秘書)、スサナ・イダルゴ(ピエダッド)、アマリア・カッサイ、フロレンシア・ベルナル(レオ)、レナータ・ゴンサレス・スプラリャ、エンツォ・フェラーダ・ロサティ、アブリル・アウロラ、ルカス・サエス・コリンズ、ロラ・ブラボ、パウリナ・コルテス、ティアレ・ルス、他チリのミュージシャン多数
ストーリー:ひたむきな音楽学生であるフリアは、大学のキャンパスで盛り上がっているフェミニスト運動に参加します。多くの仲間が受けている女性への嫌がらせや虐待に抗議しようと立ち上がったグループの取りくみに賛同しているからです。抗議デモの興奮の渦のなか、フリアは友人たちと踊ったり歌ったりすることで自分自身が受けた虐待の経験を振り返ります。彼女は思いきって自分の物語を共にしようとしているなかで、思いがけず抵抗する社会で変化を求める運動の中心人物になっていることに気づきます。


(フリア役の新人ダニエラ・ロペス)
★監督紹介:セバスティアン・レリオ、1974年アルゼンチンのメンドサ生れ、2歳のとき母親の故国チリに移住、父親はアルゼンチン人だが彼の国籍はチリ。監督、脚本家、製作者、フィルム編集者。既に『ナチュラルウーマン』(17,原題「Una mujer fantástica」)や、19世紀の飢饉で荒廃したアイルランドを舞台にしたミステリー『聖なる証 あかし』(22、原題「The Wonder」)でキャリア&フィルモグラフィーは紹介しています。
*『ナチュラルウーマン』の主な作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ⇒2018年03月16日
*『聖なる証』の作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ⇒2022年12月05日
*『聖なる証』の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月06日

(ダニエラ・ベガを配したスペイン語版ポスター)
★長編デビュー作「La Sagrada Familia」は養父の苗字カンポスでクレジットされている。サンセバスチャン映画祭2005でプレミアされ、その後、国際映画祭巡りをして国内外の受賞歴多数。ラテンビート映画祭2006で『聖家族』の邦題で上映された。本作の主人公は新作「La Ola」に出演しているネストル・カンティジャーナである。2作目が「Navidad」(カンヌ映画祭2009)、3作目「El año del tígre」(11)、4作目が国際的に多くの観客の共感を呼んだ「Gloria」(13)で、主演のパウリナ・ガルシアがベルリン映画祭で主演女優賞を受賞し、『グロリアの青春』の邦題で公開された。本作はジュリアン・ムーアをヒロインに2018年、米国で「Gloria Bell」としてリメイクされ、『グロリア 永遠の青春』として公開された。他に2017年、正統派ユダヤ教のコミュニティを舞台にした二人のレスビアンの信仰と性を描いた「Disobedience」(邦題『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』)、チリにオスカー像を運んできた『ナチュラルウーマン』、前作『聖なる証』、9作目となる「La Ola」となる。チリ映画としては字幕入りで観ることのできた幸運な監督の一人です。

(オスカー像を手にしたセバスティアン・レリオ)
★共同脚本家のマヌエラ・インファンテは、「私が大学の教師をしていたとき、約100人くらいの女子学生が本館を包囲しました。私は彼女たちから多くのことを学んだのです。そのときの経験を実際に取り入れました。フェミニストの蜂起の後に何が起こるかは、この映画の基礎の一部です」と回想している。レリオは「ポスト#MeToo 時代の相互合意、個人または集団の声の政治的可能性について話すというアイデアに魅了されている」。世界を変えることを決意した仮面の女性のバンドが酔わせる力を通じて、変化の緊急性と現状との衝突を探求している。
★ミュージシャン紹介:アニタ(アナ)・ティジューは、フランスのリール生れ(1977)、作曲家、ミュージシャン、俳優、ラテン・グラミー賞、TVシリーズ「La Jauría」(全16話、19~22)に女優としてエピソード5話に出演している。ハビエラ・パラは、ララインの『NO ノー』(12)、ゴンサロ・フスティニアノの「B-Happy」(03)を手掛けている。カミラ・モレノは「ファブラ」が最初にプロデュースしたTVシリーズ「Prófugos」(「逃亡者」26話、11~13)、ビデオクリップ「Camila Moreno: Millones」(09)作曲家、女優でもある。そして『ナチュラルウーマン』や『聖なる証』のマシュー・ハーバートが統率している。
★スタッフ紹介:パブロ & フアン・デ・ディオス・ラライン兄弟が2004年に設立した「ファブラ」は、世界的な制作、配給事業を展開しているフリーマントルとファーストルックと契約を結び、チリだけでなく資金不足に苦しんでいるラテンアメリカ諸国のシネアストたちに資金提供をして、ラテンアメリカで最も映画を量産している制作会社です。パブロ・ララインの監督キャリア&フィルモグラフィーについては度々アップしているので割愛します。今回は製作者としてどんな作品を手掛けているか紹介したい。チリは右も左も上流階級は保守的と揶揄されるお国柄ですが、ラライン家は上流階級に属し、チリでは知らない人はいないと言われる政治家一家です。若いシネアスト育成にも資金援助を惜しまないのは褒めてもいい。

(『グロリアの青春』主演のパウリナ・ガルシア)
★自作以外に手掛けた映画は、セバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』以下、「El año del tígre」、『グロリアの青春』、『グロリア 永遠の青春』、オスカル・ゴドイの「Ulises」(11)、マリアリー・リバスの「Joven y alocada」(12、『ダニエラ 17歳の本能』DVD)、チリの不寛容に見切りをつけてアメリカに移住してしまったセバスティアン・シルバの「Crystal Fairy y el cactus mágico」(13、『クリスタル・フェアリー』ラテンビート)、「Nasty Baby」(15)、セバスティアン・セプルべダの「Las Niñas Quispe」(13)は、ベネチア映画祭2013の「批評家週間」でプレミアされ、撮影監督のインティ・プリオネスが撮影賞を受賞するなど受賞歴多数。1974年にチリの高地で羊飼いをして暮らす三姉妹に起きた悲劇的な実話に基づいている。

(セバスティアン・シルバの『クリスタル・フェアリー』)
★『83歳のやさしいスパイ』でブレイクしたマイテ・アルベルディのドキュメンタリー「La memoria infinita」(23、『エターナルメモリー』)、続く彼女のフィクション第1作「El lugar de la otra」(24、『イン・ハー・プレイス』)、アクションものでは、アレクサンダー・ウィットの「Sayen: La ruta seca」(23、『サイエン 死の砂漠』)、「Sayen: La cazadora」(24、『サイエン 最後の戦い』)、2020年の新型コロナウイルス感染で身動きできなくなっていたときに手掛けた短編コレクション『HOMEMADE ホームメード』、ガスパル・アンティーリョの「Nadie sabe que estoy aqui」(『誰も知らない僕の歌』)をトライベッカ映画祭2020(オンライン上映)でデビューさせたことなどは、あまり知られていないと思います。アンティーリョはニュー・ナラティブ部門の監督賞を受賞しています。共同脚本家のホセフィナ・フェルナンデスが脚本を監督と共同執筆している他、「ファブラ」のTVシリーズを手掛けている。「ホームメード」にはレリオも参加しています。『エターナルメモリー』、『イン・ハー・プレイス』は、紹介記事をアップしています。
*『HOMEMADE ホームメード』の紹介記事は、コチラ⇒2020年07月12日
*「Nadie sabe que estoy aqui」の作品紹介は、コチラ⇒2020年05月11日

(マイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』)
★2020年代から量産しているのがTVシリーズ、アントニア・セヘルスやダニエラ・ベガを主軸「La Jauría」(16話、19~22)、メキシコの「Señorita 89」(全8話、22~24)は、ミス・メキシコ・コンテストを巡るドラマ、「42 Días en la Oscuridad」(6話、22,『暗闇の42日間』)には、アンパロ・ノゲラ、ネストル・カンティジャーナが味のある演技をしている。2015年のFIFA 汚職スキャンダルの根底にある実際の陰謀を探るコメディ「El Presidente」(16話、20~22、『腐敗のゲーム~エル・プレシデンテ』)、カリスマ的なスケーターである若い強盗の犯罪ドラマ「Baby Bandito」(8話、24、『ベビー・バンディートの信じられない話』)などがある。
★最新作はメキシコの「Familia de medianoche」(10話、24、『ミッドナイト・ファミリー 真夜中の救急隊』)は毀誉褒貶で、くだらないアメリカ製の医療ドラマよりよほど優れていると高評価の半面、インスパイアされたルーク・ローレンツェンのドキュメンタリー「Midnight Family」(19、『ミッドナイト・ファミリー』)を1作見るだけで充分という評もある。このドキュメンタリーは国際映画祭のドキュメンタリー部門を制覇している。ドキュメンタリーとTVシリーズを比較しても始まらないが、TVシリーズのだらだら引き伸ばしが癇に障る人にはお奨めできない。
★「ファブラ」の紹介が長くなりましたが、チリと言わずラテンアメリカで最も重要な制作会社です。ラライン兄弟とセバスティアン・レリオの共通項は〈威厳をもった不服従〉とでも言っておきましょうか。ラライン監督は、「El Conde」(23、『伯爵』)に続いて、世紀の歌姫マリア・カラスの晩年を描いた「Maria」がベネチア映画祭2024にノミネートされた。Netflix 作品だが日本語版はないようです。「9.11」以後のアメリカが舞台の新作「The True American」(英語)がアナウンスされている。

(パブロ&フアン・デ・ディオス・ラライン兄弟)
シモン・メサ・ソトの「Un poeta」が「ある視点」に*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月14日 17:11
コロンビア映画「Un poeta」はシモン・メサ・ソトの長編2作目

★「ある視点」にノミネートされたシモン・メサ・ソトの「Un poeta」は、最初のアナウンスにはなく追加発表の中にありました。コロンビア映画がノミネートされるのは、2015年のホセ・ルイス・ルヘレスの戦争の不条理を描いた「Alias Maria」以来となります。コロンビア内戦中に女性兵士となったマリアの物語でした。話題になっていたハリウッド女優クリステン・スチュワートのデビュー作も同時にノミネートされました。20作を越えましたのでもう追加はないと思います。同じハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンもノミネートされていますので、今年はコンペティション部門よりこちらのほうが面白そうです。もともと「ある視点」のほうが大物監督がいないだけ意外性のある力作が多く、楽しみにしているシネマニアが多い。

(新作「Un poeta」の主人公オスカル・レストレポ役のウベイマル・リオス)
★シモン・メサ・ソトは、短編「Leidi」(16分、イギリス合作)がカンヌ映画祭2014のパルムドールを受賞しており、その節、作品&監督キャリアを紹介しています。また短編「Madre」(14分、スウェーデン合作)もカンヌにノミネート、長編デビュー作「Amparo」は、カンヌ併催の「批評家週間」にノミネートされ(女優賞受賞)、その後カルロヴィ・ヴァリ、リマ、イスラエル、トロント、サンセバスチャンなど各映画祭に出品され、着実に地歩を固めています。タイトルの「レイディ」も「アンパロ」もヒロインの名前です。タイトルが1語なのも歓迎です。
*「Leidi」の作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ⇒2014年05月30日
*「Madre」の作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ⇒2016年05月12日
*「Amparo」の作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月23日

(短編パルムドール受賞の「Leidi」)

(長編デビュー作「Amparo」)
「Un poeta / A Poet」
製作:Ocúltimo / Medio de Contención Producciones(コロンビア)/
Das kleine Fernsehspiel ZDF/ARTE /Ma ja de Fiction(ドイツ)/
Film i Väst / Momento Film(スウェーデン)
監督・脚本:シモン・メサ・ソト
音楽:マッティ・バイ
撮影:フアン・サルミエント G.
編集:リカルド・サライヴァ
キャスティング:ジョン・ベドヤ
製作者:フアン・サルミエント G.、マヌエル・ルイス・モンテアレグレ、シモン・メサ・ソト(以上コロンビア)、(共同プロデューサー)カタリナ・ベルクフェルト、ヘイノ・デッカート(以上ドイツ)、デビッド・ハーディーズ、マイケル・クロトキェフスキ(スウェーデン)
データ:製作国コロンビア=ドイツ=スウェーデン、2025年、スペイン語、風刺ドラマ、撮影地メデジン、期間5週間、16ミリフィルム。配給権フランス Epicentre films、ワールド Luxbox
映画祭・受賞歴:第78回カンヌ映画祭2025「ある視点」ノミネート(5月19日プレミア)
キャスト:ウベイマル・リオス(オスカル・レストレポ)、レベッカ・アンドラーデ(ユレディ)、ギジェルモ・カルドナ、ウンベルト・レストレポ、マルガリタ・ソト、アリソン・コレア
ストーリー:詩に執着しているが詩人としての栄光を彼にもたらさなかった苦悩するオスカル・レストレポの物語。老いが近づきつつあるオスカルは、詩への執着も冷えて詩の追求に行き詰っています。しかし才能に恵まれながらも謙虚な10代の少女ユレディに出会い、彼女の才能を育てることに生きがいを見いだします。彼の日々に光が差し込んできますが、彼女を詩の世界に引きずり込むことは賢明なことではないかもしれません。

(オスカル・レストレポ役ウベイマル・リオス、ユレディ役レベッカ・アンドラーデ)
★スタッフ紹介:シモン・メサ・ソト(メデジン1986)、監督、脚本家、製作者。キャリア&フィルモグラフィーは、既に紹介ずみです。本作には監督の先輩でもあるコロンビア国立大学UNALの歴史学教授、映画テレビジョン学校でも教鞭をとっているマヌエル・ルイス・モンテアレグレ(ボゴタ1975、製作者、監督、歴史家)が参画している。さらに同大学の卒業生であるクリスティアン・ヌニェスとガブリエラ・クビリョスが参加している。ルイス教授によると、「脚本は深いエモーションと同じくらい笑いを誘うものにしたいと考えていました。シモンは確かなストーリーを組み立て、ビジュアル的には非常に慎重です」と指摘しています。もう一人の製作者フアン・サルミエント G.(1984生れ)は、撮影監督を兼ねていますが、デビュー作でも撮影を手掛けている盟友です。

(製作者マヌエル・ルイス・モンテアレグレ)
★監督は、本作が非常に個人的なプロジェクトだったことをプレス会見で述べています。「コロンビアで映画を作るのは信じてもらえないほど難しい。デビュー作(「Amparo」2021年)の後、もう諦めようと思いました。私は50歳になった自分を想像すると、教師として生計を立て、実際には現在もそうして生活費を稼いでいますが、芸術における過去の理想化された記憶で生きのびている、そういう自分を想像しました」と。オスカル・レストレポは監督自身が投影されているようです。「しかし、芸術を内側から探求したかった。芸術とは何か、それが課す制限、それが要求する妥協は何か。芸術は高貴なものと思われがちですが、独立していても産業でもあります。特に映画では、観客が何を期待しているかを決定する市場があり、特にラテンアメリカ映画では、特定のパターンが繰り返されます。アーティストとして外部の要求に応えるか、あるいは自分を突き動かすものは何かという問いに答えねばなりません。本作は、業界という組織に対するある種の疲労感から、そしてまるでパンク調に感じられる気迫をもって、自由で形を成していないものを作りたいという切望から生まれた」と述べていました。(IndieWire 5月12日付)

(シモン・メサ・ソト)
ディエゴ・セスペデスのデビュー作が「ある視点」に*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月12日 11:23
ディエゴ・セスペデスのデビュー作「La misteriosa mirada del flamenco」

★今年のカンヌ映画祭「ある視点」には、チリの若手監督ディエゴ・セスペデスの「La misteriosa mirada del flamenco」と、コロンビアのシモン・メサ・ソトの「Un poeta」がノミネートされました。セスペデスはカンヌ映画祭2018短編部門で上映された「El verano del león eléctrico」(22分)でシネフォンダシオン賞を受賞しています。後者のメサ・ソト監督は、2021年カンヌ映画祭併催の「批評家週間」に「Amparo」がノミネートされ、サンセバスチャン映画祭「オリソンテス・ラティノス」部門でも上映された。その節、作品並びに監督キャリア&フィルモグラフィーを紹介しているので、まずディエゴ・セスペデスからアップしたい。
*セスペデスのシネフォンダシオン賞の記事は、コチラ⇒2018年05月20日
*「Amparo」の紹介記事は、コチラ⇒2021年08月23日
「La misteriosa mirada del flamenco / The Mysterious Gaze of the Flamingo」
製作:Quijote Films(チリ)/ Les Valseurs(仏)/ Weydemann Bros. GMBH(独)/
Irusoin(西)/ Wrong Men(ベルギー)
監督・脚本:ディエゴ・セスペデス
音楽:フロレンシア・ディ・コンシリオ
撮影:アンジェロ・ファッチーニ
衣装デザイン:パウ・アウリ
メイクアップ:アンドレア・ディアス、フランシスカ・マルケス
プロダクションマネージャー:カミロ・イニゲス
製作者:ジャンカルロ・ナシ、ジャスティン・ペックパーティ、(共同)ブノワ・ローラン、アンデル・サガルドイ、ヨナス&ヤコブ・ヴェイデマン、シャビエル・ベルソサ、他共同製作者
データ:製作国チリ=フランス=ドイツ=スペイン=ベルギー、2025年、スペイン語、コメディ・ドラマ、104分、撮影地チリのサンティアゴ、アタカマ砂漠、クランクイン2024年5月20日
映画祭・受賞歴:第78回カンヌ映画祭2025「ある視点」正式出品、カメラドールにノミネート
キャスト:タマラ・コルテス(リディア12歳)、マティアス・カタラン、パウラ・ディナマルカ(ボア)、クラウディア・カベサス、ルイス・デュボ、他
ストーリー:1980年代初頭のチリの砂漠、12歳になるリディアは荒れ果てた小さな鉱山の町で、愛情あふれたクィアの家族に見守られて暮らしています。しかし謎めいた未知の病気が町に蔓延し始めます。ある男性が別の男性に恋をすると一瞥しただけで感染するという噂です。リディアの優しくて母親のような兄アレショや彼のゲイの友人たちは、保菌者として町の恐怖の標的になります。リディアは憎しみと不寛容に悩まされた世界で、かけがえのない家族を守るためにホモフォビア俗説の探求に乗り出します。家族は彼女の唯一の避難所だからです。

(リディア役のタマラ・コルテス)
30年前のチリで起きた不寛容なバイオレンスを描く現代の神話
★未知の病気がかつて世界中を震撼させたHIVエイズであることが分かります。ハグなどもってのほか、握手しただけで感染すると怖れられました。無知がはびこり死亡率が100%と噂され、感染者への心的暴力が許された時代でした。チリのケースで言うと、保菌者への暴力が未だ顕著でなかったころに子供たちが学校で質問した。その答えの多くが無知からくるもので伝達の方法に問題があった。それで子供の視点を取り入れてストーリーにレアリティをもたせ、共感が得られるのではと考えた、とコメントしている。映画ではリディアの友達が出演している。チリでは長い軍事独裁政権の負の遺産が沈殿しており、現在でも多くの頭脳流失をもたらしている。

(「視線で感染するとでもいうの」と詰め寄るクィアの友人)

(感染しないよう目隠ししている?)
★監督紹介:ディエゴ・セスペデス、1995年サンティアゴ・デ・チリ生れ、監督、脚本家、撮影監督。チリ大学で映画を学ぶ。アンドレア・カスティーリョの「Non Castus」(22分、ロカルノ映画祭2016スペシャル・メンション受賞)と「Bilateral」(16分、SANFIC 2017出品)の撮影を手掛ける。2018年まだ大学在学中に撮った短編「El verano del león eléctrico / The Summer of the Electric Lion」(22分)がカンヌ映画祭シネフォンダシオン賞、サンセバスチャン映画祭パナビジョン賞、モロディスト・キエフ映画祭2019学生映画部門審査員特別賞を受賞する。サンダンス映画祭2019、ビアリッツ映画祭にもノミネートされた。2022年、フランスとの合作短編「Las criaturas que se derriten bajo el sol / The Melting Creatures」(17分)は、カンヌ映画祭、トロント映画祭に出品された。製作をジャンカルロ・ナシとジャスティン・ペックパーティが手掛けている。

(ディエゴ・セスペデス監督)

(短編デビュー作「El verano del león eléctrico」の英語版ポスター)
★本作制作の経緯は、2019年にセスペデスがシネフォンダシオン・レジデンスに参加して製作の土台を練る。翌年のサンセバスチャン映画祭の期間中、イクスミラ・ベリアクにも参加、トリノ・フィルムラボでTFL プロダクション賞を受賞、副賞として50.000ユーロの製作助成金を受け取ることができた。翌年のサンダンス・インスティテュートの製作者サミットに参加、フランスの制作会社「Les Valseurs」 の協力が報じられ、2024年にはドイツの制作会社「Weydemann Bros. ヴェイデマン・ブラザーズ・フィルム」の共同製作が決まった。初めにシネフォンダシオン・レジデンスありきでした。どこの映画祭も一度受賞すると、後々も面倒をみてくれるようです。多分イクスミラ・ベリアクにも参加しているのでサンセバスチャン映画祭にもノミネートされる可能性が高くなっている。
★キャストのうち、パウラ・ディナマルカは「Las criaturas que se derriten bajo el sol」に、ルイス・デュボは「El verano del león eléctrico」に出演している。最初のシナリオと完成版には結構違いがあり、例えばリディアの年齢も7歳から12歳までと幅がある。まだ正確な情報が入手できていないので、追い追い追加訂正していく予定です。
カルラ・シモンの新作「Romeria」*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月08日 20:06
「Romería」はカルラ・シモン「家族三部作」の完結編

★第78回カンヌ映画祭2025コンペティション部門ノミネート作品は、前回アップしたオリベル・ラシェの「Sirat」とカルラ・シモン(バルセロナ1986)の「Romería」の2作。ラシェ監督はカンヌの常連ですが、シモン監督は長編は初めてです。ただデビュー作『悲しみに、こんにちは』と2作目『太陽と桃の歌』が公開されているから、日本での認知度はシモンのほうが高いかもしれない。マラガ映画祭2023のマラガ才能賞を受賞したときのインタビューで、次回作「Romería」で「自分の家族についての三部作を完結します」と述べていた通りになりました。デビュー作で監督自身を、2作目で母方の家族を、そして今回の新作で父方の家族を語ります。6歳のときに両親を薬物依存のエイズで失うという複雑な事情から、監督を取り巻く大人たちの善意の嘘でフラストレーションを抱えながら育ちました。新作では『悲しみに、こんにちは』の少女フリーダは18歳になり、マリナとなって登場します。

(本作撮影中のシモン監督)
*『悲しみに、こんにちは』の紹介記事は、コチラ⇒2017年02月22日
*『太陽と桃の歌』の作品紹介記事は、コチラ⇒2022年01月27日
*マラガ映画祭2023マラガ才能賞受賞記事は、コチラ⇒2023年03月19日
*映画国民賞2023受賞記事は、コチラ⇒2023年06月12日

(第2作『太陽と桃の歌』)
★長編3作の他に短編数編を撮っており、なかでベネチア映画祭2022短編部門に出品した短編「Carta a mi madre para mi hijo」(25分、仮題「息子のために母に宛てた手紙」)は、新作に繋がっている印象を受けていますが、どうでしょうか。マリナは母親が書き残した日記を携えて、父方の家族、祖父母、叔父叔母が暮らしている大西洋岸の港湾都市ビゴを目指して旅に出ます。時代は2004年に設定されています。マリナには本作でデビューを飾るリュシア・ガルシアを起用、ボーイフレンドになる若者ヌノにミッチ・ロブレス、若い二人をトリスタン・ウジョア、ホセ・アンヘル・エヒド、サラ・カサスノバス、ジャネット・ノバスなどベテラン演技派が固めています。製作者のメインは、昨年の映画国民賞2024を受賞したマリア・サモラ、デビュー作からタッグを組んでいます。
*マリア・サモラの映画国民賞受賞&キャリア紹介記事は、コチラ⇒2024年06月16日

(アンヘラ・モリーナ主演の「Carta a mi madre para mi hijo」)
★審査委員長ジュリエット・ビノシュ以下審査員全員の発表があり、間もなくカンヌ映画祭も開幕します。審査員のなかにメキシコのカルロス・レイガダス監督の名前がありました。
「Romería」
製作:Elástica Films / Romería Vigo AIE / Dos Soles Media / Ventall Cine / 3Cat
協賛Comunidad de Madrid / ICEC / RTVE / Movistar Plus+/ Netflix / Vodafone /
Xunta de Galicia 他
監督・脚本:カルラ・シモン
撮影:エレーヌ・ルヴァール
キャスティング:マリア・ロドリゴ
衣装デザイン:アンナ・アギラ
製作者:マリア・サモラ(Elástica Films)
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・カタルーニャ語、フランス語、ドラマ、104分、撮影地ガリシア州ポンテベドラ県ビゴ、他ポンテベドラ各地、2024年8月20日クランクイン、ガリシア政府Xunta de Galiciaより300.000ユーロの助成金を得ている。公開スペイン2025年9月5日(予定)
映画祭・受賞歴:第78回カンヌ映画祭2025コンペティション部門ワールドプレミア、第72回シドニー映画祭2025(6月14日)
キャスト:リュシア・ガルシア(マリナ)、ミッチ・ロブレス(ヌノ)、トリスタン・ウジョア、ホセ・アンヘル・エヒド、サラ・カサスノバス、ジャネット・ノバス、ミリアム・ガジェゴ、セリーヌ・ティル、ダビ・サライヴァ(ポルトガルの警察官)、セルヒオ・キンタナ(ポルトガルの警察官)、ミッチ・マルティン
ストーリー:少女時代に両親を亡くしたマリナは、まだ一度も会ったことのない父方の祖父母が暮らしている大西洋岸の港湾都市ビゴに行かねばなりません。大学の奨学金申請書の署名が必要だからです。父方の家族が自分を受け入れてくれるのか抵抗されるのか不安を抱え、母親が残した日記を携えて旅立ちます。叔父叔母やいとこたちとの出会いを通じて、父の物語と父が母と共有していた愛を繋ぎ合わせようとしますが、マリナの出現は長いあいだ封印していた若い夫婦の薬物問題の辛い記憶を呼び起こし、家族が秘密にしていた恥を掻き立ててしまいます。優しさを蘇らせ、過去に結びついた言葉にならない傷を癒しながら、マリナはほとんど覚えていない両親の断片的で、しばしば矛盾する記憶を繋ぎ合わせます。いとこヌノとの10代の恋が彼らとの繋がりを可能にするでしょうか。

(マリナとヌノ)
「ロメリア」はカルラ・シモンのルーツを探す巡礼物語
★時代は2004年、ヒロインのマリナは18歳という設定(1986年生れの監督と同年齢)、何度か訪れて気に入ったバルセロナとは反対側の大西洋岸に面したガリシアのビゴが舞台です。前述したように本作は監督の「家族三部作」の完結編です。ビゴでクランクインしたおり、「自分の家族にインスパイアされて撮った作品です。多くの対立やトラウマを抱えた複雑な家族ですが、深いところで愛と信頼、誠実が存在する家族です」と語っている。フィクションですが、マリナには監督が色濃く投影されており、「極めて個人的な」ストーリーになっているそうです。さらに撮影セットは20年前の雰囲気を出すように設え、両親の物語を再構築できるようにした。「この場所で自分たちは愛についての映画をつくっているのだ」とも語っている。
★「ロメリア」の物語は、ある意味で現在のシモン監督、過去の両親についての物語である。10年前のこと監督は、両親がビゴで過ごしていた人生を知りたいと思うようになった。それ以来、明らかにしようと手動カメラを手に度々ビゴにやってきた。シモンは母が近親者に宛てて書いた数通の手紙を見つけたことも後押ししたようです。「いつも物語には、何が真実で何が真実でないかという視点があります。だから物語はとても主観的なものです」、視点を変えると、突然別の顔が現れる。撮影中に面白いことがあった。ある婦人が近づいてくると、彼女の祖母の友達だった女性の娘さんだったことが分かった。「こんなことが起こるのは本当に感動的」と語っている。

(シモン監督、リュシア・ガルシア、ミッチ・ロブレス)
★郊外を散歩している隣人たちやオリーブ栽培都市にやってきた訪問客も見落とせないチャンスをくれる。撮影を始めようとすると、直ぐに通行人が通りを塞いでしまう。中を覗くためにセットの柵を越えてガードレールを押しのけテラスまで入ってしまう。「ここで何しているの?」「映画撮ってるの」の繰り返し。ある女性がタイトルの〈Romería〉に興味がわいたのか、撮影のために集められたミュージシャンたち、証明器具、飾りつけられた小旗、カウンターに並べられた食べ物や飲み物をチラッと見て、「ロメリアね、そうね、ぴったりだわ」と。この言葉は監督にとって、自身が生きてきた神秘的な旅を呼び出したのだが、今はマリナに引き継がれている。
*スペイン語の〈Romería〉は、聖地巡礼、巡礼祭の意味で、祝祭日には大勢の信者や観光客でごった返す。それとセットがそっくりだったからでしょう。スペインではサンティアゴの巡礼が有名ですが、ウエルバ州アルモンテのロシオ村で行われる「Romería de El Rocío」も有名です。聖週間が終わった50日目の精霊降臨ペンテコステスの日にエル・ロシオ礼拝堂でミサが行われる。従って年によって移動しますが大体5月下旬から6月初めになります。「Virgen del Rocío」(ブランカ・パロマ)に捧げる巡礼祭。この日を目指してスペイン各地から、または海外から、馬車や牛車、あるいは徒歩で、人口23.000人の村に100万人以上が訪れる。
★キャスト紹介:マリナ役のリュシア・ガルシアは、街路を散歩しているところを偶然目にして引き止め、キャスティングに来るよう誘った。とても素晴らしかった。決まった候補は未だいなかった。彼女にとっては冒険でした。実際こんなプロセスで決まることもあるんですね。ヌノ役のミッチ・ロブレスは、短編出演、ホアキン・オリストレル制作の高校を舞台にしたTVシリーズ「Hit」(20~22)に出ていると紹介されているが確認できなかった。

(リュシア・ガルシア)

(ミッチ・ロブレス)
★トリスタン・ウジョア(フランス1970)は、俳優、監督、フリオ・メデムの『ルシアとSEX』主演、アレハンドロ・アメナバルの『オープン・ユア・アイズ』、TVシリーズ『情熱のシーラ』でスペイン俳優組合2014助演男優賞、同『アスンタ・バステラ事件』でフォトグラマス・デ・プラタ2025俳優賞を受賞している。最近はTVにシフトしている。ジャネット・ノバスはハイオネ・カンボルダの『ライ麦のツノ』でゴヤ賞2024新人女優賞を受賞したばかりです。この映画の製作者も本作と同じ Elástica Films のマリア・サモラです。撮影はフランスのトップクラスの撮影監督エレーヌ・ルヴァールと文句なし。スペインではハイメ・ロサーレスとタッグを組んでいる。また今回「ある視点」ノミネートのスカーレット・ヨハンソンの「Eleanor the Great」も手掛けている。

(撮影中のトリスタン・ウジョア)

(エレーヌ・ルヴァールと監督)
オリベル・ラシュ「Sirat」の主役はセルジ・ロペス*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月03日 18:12
セルジ・ロペスはロマンチックコメディも得意!

(失踪した娘を探す父親と息子)
★前回オリベル・ラシュ「Sirat」の作品&監督フィルモグラフィーを紹介しました。今回は続編として、モロッコのサハラ砂漠で行方不明になった娘を探す父親を演じたセルジ・ロペスの紹介。セルジ・ロペスと言えば、ギレルモ・デル・トロのダークファンタジー『パンズ・ラビリンス』の冷酷無比なサイコパスの大尉ビダル(実際監督がロペスの悪役ぶりに惚れ込んで人物造形をしたという曰くつきのキャラクター)、ドミニク・モルのスリラー『ハリー、見知らぬ友人』の不気味な男ハリー、アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』では、主人公の母親に横恋慕する悪徳町長、と日本で公開された映画からは悪役のイメージが強い。しかし、実はロマンチックコメディが得意で以下に示すように多くのコメディに出演している。またカタルーニャ語映画マルク・レチャの「Un dia perfecte per volar」では、小さな息子と凧あげをする優しい父親を演じて観客を魅了した。スペイン語は当たり前として、流暢なフランス語、英語と語学に堪能なことから3桁に上る作品に出演している。

(『パンズ・ラビリンス』のビダル大尉)

(マルク・レチャの「Un dia perfecte per volar」から)
★父親ルイス役のセルジ・ロペス、1965年12月22日バルセロナ生れ、映画、舞台、TV俳優。16歳で学業を止め、アマチュア劇団に入り俳優の第一歩を踏み出す。その後フランスに渡り、パリのジャック・ルコック国際演劇学校に入学、演技を学んだ。スペイン映画デビューは1991年、ヘスス・フランコの「Ciudad Baja(Downtown Heat)」、フランス語のオーディションに合格して、1992年マニュエル・ポワリエの「La Petite amie d'Antonio」でフランス映画にデビューしてミシェル・シモン賞を受賞している。その後も『ニノの空』など8作に起用されるというポワリエ映画の常連となる。『ニノの空』でセザール賞有望俳優にノミネートされた。主にスペインとフランスの両国でキャリアを築いている。
★共演した国際的な女優連にも目を瞠る、「Lisboa」ではカルメン・マウラ、『スカートの奥で』でビクトリア・アブリル、『堕天使のパスポート』でオドレイ・トトゥ、『シェフと素顔と、おいしい時間』でジュリエット・ビノシュ、『記憶の行方』でエンマ・スアレス、DV男を演じた「Sólo mía」でパス・ベガ、『熟れた本能』ではクリスティン・スコット・トーマス、そして『パンズ・ラビリンス』ではマリベル・ベルドゥとアリアドナ・ヒル、「La boda de Rosa」でカンデラ・ペーニャとナタリエ・ポサと共演している。

(マラガ映画祭2020「La boda de Rosa」のフォトコール)
◎主なフィルモグラフィー◎
1991「Ciudad Baja(Downtown Heat)」ヘスス・フランコ、デビュー作
1992「La Petite amie d'Antonio」(仏語)マニュエル・ポワリエ
1993年若手有望俳優に与えられるミシェル・シモン賞
1997「Western」『ニノの空』(仏語)マニュエル・ポワリエ
シッチェスFF 1997グランアンギュラー主演男優賞、セザール賞1998有望俳優ノミネート
1998「Caresses / Carícies」(カタルーニャ語)コメディ、ベントゥーラ・ポンス
1999「Entre las piernas」『スカートの奥で』マヌエル・ゴメス・ペレイラ
1999「Lisboa」クライム・スリラー、アントニオ・エルナンデス
マラガFF 1999主演男優賞
1999「Une liaison pornographique」『ポルノグラフィックな関係』(仏語)
フレデリック・フォンテーヌ
ベネチアFF 1999パシネッティ主演男優賞、サンジョルディ賞2001スペイン俳優賞
2000「Harry, un ami qui vous veut du bien」『ハリー、見知らぬ友人』(仏語)スリラー、
ドミニク・モル
セザール賞2001主演男優賞、ヨーロッパ映画賞2000ヨーロッパ俳優賞
2001「El cielo abierto」ロマンチックコメディ、ミゲル・アルバラデホ
シネマ・ライターズ・サークル2002主演男優賞、ブタカ賞2001カタルーニャ俳優賞
2001「Sólo mía」ハビエル・バラゲル
フォトグラマス・デ・プラタ2002映画俳優賞、ゴヤ賞2002主演男優賞ノミネート
2002「Dirty Pretty Things」『堕天使のパスポート』(イギリス映画)犯罪
スティーヴン・フリアーズ
2002「Decalage horaire」『シェフと素顔と、おいしい時間』(仏語)ダニエル・トンプソン
2003「Janis et John」『歌え!ジャニス★ジョプリンのように』(仏語)コメディ
サミュエル・ベンチェトリット
2006「El laberinto del fauno」『パンズ・ラビリンス』ダーク・ファンタジー、
ギレルモ・デル・トロ ファンタスポルト2007国際ファンタジー映画賞主演男優賞、
ブタカ賞カタルーニャ俳優賞、トゥリア賞主演男優賞
ゴヤ賞2007主演男優賞ノミネート、ほかノミネート多数
2007「La Maison」(仏語)マニュエル・ポワリエ
2009「Ricky」『Ricky リッキー』(仏語)コメディ、フランソワ・オゾン
2009「Map of the Sounds of Tokyo」『ナイト・トーキョー・デイ』イサベル・コイシェ
2009「Partir」『熟れた本能』(仏語)カトリーヌ・コルシニ
2010「Pa negra」『ブラック・ブレッド』(カタルーニャ語)ダークミステリー、
アグスティ・ビリャロンガ、ゴヤ賞2011助演男優賞ノミネート
2011「Le moine / El monje」『マンク 破戒僧』(仏語)ドミニク・モル
2012「Tango lible」『タンゴ・リブレ 君を想う』フレデリック・フォンテーヌ
2014「El Niño」『エル・ニーニョ』&『ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン
2015「A Perfect Day」『ローブ/戦場の生命線』(英語・西語・ルーマニア語)
シリアスコメディ、フェルナンド・レオン・デ・アラノア
2015「Vingt et une nuits avec Pattie」『パティ―との二十一夜』(仏語)コメディ
アルノー・ラリュー & ジャン=マリー・ラリュー
2015「Un dia perfecte per volar」(カタルーニャ語)マルク・レチャ
アミアンFF 2015主演男優賞、ガウディ賞2016主演男優賞ノミネート
2016「La propera pell」『記憶の行方』(カタルーニャ語)
イサ:カンポ & イサキ・ラクエスタ
2018「Lazzaro Felice」『幸福なラザロ』(伊語)アリーチェ・ロルヴァケル
2019「La inocencia」(カタルーニャ語・西語)ルシア・アレマニー
2020「Josep」『ジュゼップ 戦場の画家』(アニメーション、ボイス、仏語)オーレル
2020「La boda de Rosa」コメディ、イシアル・ボリャイン
ゴヤ賞2021助演男優賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、各ノミネート
2020「Rifkin's Festival」『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(英語)ウディ・アレン
2021「Mediterráneo」『地中海のライフガードたち』ビオピックドラマ、マルセル・バレナ
第17回難民映画祭2022オンライン配信
2022「Pacifiction」『パシフィクション』(仏語)アルベルト・セラ
2022「La manzana de oro」コメディ、ハイメ・チャバリ
2023「La francée du poéte」『詩人の花嫁』(仏語・英語)ヨランド・モロー
2023「El viento que arrasa」(アルゼンチン・ウルグアイ)パウラ・エルナンデス
2025「La terra negra / La tierra」(カタルーニャ語・西語)アルベルト・モライス
2025「Sirat」オリベル・ラシュ
★邦題は公開、ミニ映画祭、DVDスルー、ネットフリックス、プライムビデオなどの配信による。TVシリーズ、「Mano de hierro」(24、8話)が『鉄の手』の邦題でネット配信されている。他にカタルーニャ語TV3シリーズ『あなたに出会っていなければ』(10話)にも出演している。年々父親役が多くなってきている。
◎主な関連記事◎
*『ブラック・ブレッド』の紹介記事は、コチラ⇒2023年04月14日
*『エル・ニーニョ』の紹介記事は、コチラ⇒2014年09月20日/11月03日
*「Un dia perfecte per volar」の作品&監督紹介記事は、コチラ⇒2015年10月01日
*『記憶の行方』の紹介記事は、コチラ⇒2016年04月29日
*「La boda de Rosa」の紹介記事は、コチラ⇒2020年03月21日
*『サン・セバスチャンへ、ようこそ』の紹介記事は、コチラ⇒2020年07月06日
*「Mediterráneo」の紹介記事は、コチラ⇒2021年12月13日
*『パシフィクション』の紹介記事は、コチラ⇒2022年10月13日
*「El viento que arrasa」の紹介記事は、コチラ⇒2023年08月16日
*「La terra negra / La tierra」の紹介記事は、コチラ⇒2025年03月20日
パルムドールを競うオリベル・ラシェの4作目「Sirat」*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月01日 10:38
オリベル・ラシェの新作はモロッコの砂漠を旅するロードムービー

★カンヌは5月の風に吹かれて到来する。第78回カンヌ映画祭2025が5月13日から24日の日程で開催されます。今年はオリベル・ラシェの長編4作目「Sirat」と、カルラ・シモンの3作目「Romeria」がパルムドールを競うコンペティション部門にノミネートされました。シモンの新作のテーマは、監督が6歳のときエイズで亡くなった父親の家族に会う旅を描いた極めて個人的なものということです。まず気になるラシェ監督の新作からアップしたい。前作『ファイアー・ウィル・カム』(19)の主言語はガリシア語でしたが、今作はスペイン語です。主役にカタルーニャ出身のセルジ・ロペスを起用、撮影はアラゴン州の氷点下のテルエルでクランクイン、クランクアップは酷暑のサハラ砂漠だった由、かなり挑戦的な撮影だったようです。撮影監督のマウロ・エルセは前作でゴヤ賞2020撮影賞を受賞しています。今回はスーパー16ミリで撮影された。

(撮影中のラシェ監督とセルジ・ロペス)
「Sirat」
製作:4 A 4 Productions / El Deseo / Filmes da Ermida / Uri Films / Movistar Plus+
/ Los Desertores 協賛ICEC / ICAA / RTVE / TV3、他
監督:オリベル・ラシュ
脚本:オリベル・ラシュ、サンティアゴ・フィロルFillol
撮影:マウロ・エルセ
音楽:カンディング・レイ
キャスティング:マリア・ロドリゴ
プロダクションデザイン&美術:ライア・アテカ
衣装デザイン:ナディア・アシミ
メイクアップ&ヘアー:サイラ・エバ・アデン、ミカエラ・ピメンテル、ルシア・ソラナ
製作者:アグスティン・アルモドバル、ペドロ・アルモドバル、ハビ・フォント、オリベル・ラシュ、オリオル・マイモー、マニ・モルタサビ、アンドレア・ケラルト、(エグゼクティブ)エステル・ガルシア
データ:製作国フランス=スペイン、2025年、スペイン語、ドラマ、115分、撮影地アラゴン州のテルエル、サラゴサ、モロッコのサハラ砂漠、期間2024年5月~6月、ワールド販売配給:The Match Factory、スペイン配給はBTeam Ficturesにより2025年6月6日公開予定
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2025コンペティション部門ノミネート
キャスト:セルジ・ロペス(ルイス)、ブルノ・ヌニェス(息子エステバン)、ジェイド・オウキッド、リチャード・ベラミー、ステファニア・ガッダ、ジョシュア・リアム、トニン・ジャンヴィエ、他アマチュア多数
ストーリー:ルイスとその息子エステバンは数ヵ月前に失踪した娘マリナを探しに、モロッコの乾燥した幻想的な山塊で迷っている或るレイブに到着する。マリナはこのような過激なパーティの一つに参加したのち行方不明になっていたからです。娘に会えることを信じて、サハラ砂漠で開催される最後のフィエスタを求めてレイバーたちのグループの後を追うことに決める。社会の埒外で生きようとする人々の風変わりなロードムービーでもある。

〈Sirat〉はアラビア語の「まっすぐな道」というイスラム教の概念
★最初のタイトルは「After」だったので、記事によってはこちらで紹介されている。〈Sirat〉はアラビア語で「道」を意味する。ラシェ監督が繰り返し探求する超越的な緊張を反映して「まっすぐな道」というイスラム教の概念から影響を受けているらしい。監督によると、登場人物は「人生に挑戦し、過激で厳しい方法で試練に耐える。重要な質問が投げかけられ、内面を見つめ直し、人生の意味を考え、・・・生と死の境界が曖昧になるほどの極端な冒険を体験する」。「セルジ・ロペスは、ブルノ・ヌニェスとプロでない出演者のグループを伴って、この過酷な旅に出発します」とコメントしていますが、ラシェ映画はあれこれ予測しても始まりません、観るしかないでしょう。

(プロではないが国際的な俳優のグループ、フレームから)
★監督紹介:オリベル・ラシュ、1982年パリ生れ、5~6歳のころ家族でガリシア州のア・コルーニャに戻る。長編デビュー作は自身も出演している「Todos vós sodes capitáns / Todos vosotros sois capitanes」(10)、スペイン=モロッコ合作、モノクロ、78分、「監督週間」にノミネートされ、国際映画批評家連盟FIPRESCI賞受賞した。2作目「Mimosas」(16)が「批評家週間」でグランプリ受賞、3作目「O que arde / Lo que arde」(『ファイアー・ウィル・カム』)が、「ある視点」審査員賞受賞、4作目がコンペティション部門と全てがカンヌでプレミアされている。2作目と3作目は以下で作品紹介をしています。
*「Mimosas」の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2016年05月22日
*「O que arde / Lo que arde」の紹介記事は、コチラ⇒2019年04月28日/同年11月21日




★キャスト紹介:主役ルイスを演じるセルジ・ロペス(バルセロナ1965)のキャリア&フィルモグラフィーは、次回アップいたします。ルイスの息子エステバンを演じるブルノ・ヌニェスは、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが監督したTVミニシリーズ「La Mesías」(23、全7話のうち4話出演)でデビュー、ロジェール・カザマジョールが扮するエンリックの子供時代の好演が今回の抜擢に繋がりました。このシリーズは2023年のフォルケ賞、2024年のフェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、スペイン俳優連盟賞、オンダス賞などを軒並み制覇した話題作でした。

(セルジ・ロペスとブルノ・ヌニェス)
審査員特別賞受賞作ベレン・フネス「Los Tortuga」*マラガ映画祭2025 ⑪ ― 2025年04月25日 13:23
ベレン・フネスの第2作「Los Tortuga」が4冠の快挙

★ベレン・フネスの2作め「Los Tortuga」は、審査員特別賞、監督賞、脚本賞(共同執筆マルサル・セブリアン)、SIGNIS(カトリック・メディア協議会賞)の4冠を受賞しました。長編デビュー作「La hija de un ladrón」はサンセバスチャン映画祭2019のセクション・オフィシアルにノミネート、主演のグレタ・フェルナンデスが女優賞を受賞しました。ゴヤ賞2020新人監督賞を受賞した折、作品紹介もキャリア&フィルモグラフィーも簡単に紹介しただけでしたので、脚本共同執筆者のマルサル・セブリアンも含めてアップいたします。
*ベレン・フネスのキャリア紹介は、コチラ⇒2019年12月24日
*マラガ映画祭2025授賞式の記事は、コチラ⇒2025年03月28日
「Los Tortuga / The Exiles」
製作:Oberon Media / La Claqueta PC / La Cruda Realidad / Los Tortuga La Plícula /
Quijote Films
協賛 3Cat / Cenal Sur Radio y Televisión / Canal Sur Televisión / ICEC /
ICAA / RTVE / TV3、他
監督:ベレン・フネス
脚本:ベレン・フネス、マルサル・セブリアン
撮影:ディエゴ・カベサス
音楽:パロマ・ペニャルビア
編集:セルヒオ・ヒメネス-AMAE
美術:パウラ・エスプニー
キャスティング:クリスティナ・ペレス、イレネ・ロケ、マリチュ・サンス
衣装デザイン:ルルデス・フエンテス
メイクアップ&ヘアー:サラ・カセレス
製作者:オルモ・フィゲレド・ゴンサレス=ケベド(La Claqueta)、アントニオ・チャバリアス(Oberon Media)、マヌエル・H・マルティン、アンヘルス・マスクランズ、ジャンカルロ・ナシ(Quijote Films)、カルロス・ロサド・シボン、(エグゼクティブ)アルバ・ボッシュ・デュラン、サラ・ゴメス(La Claqueta)、(アソシエイトプロデューサー)マルサル・セブリアン
データ:製作国スペイン=チリ、2024年、スペイン語・カタルーニャ語、ドラマ、109分、撮影地バルセロナとハエン県、販売 Film Factory Entertainment、配給(スペイン)A Contracorriente Films、公開スペイン2024年11月15日
映画祭・受賞歴:トロント映画祭2024セクション・センターピースでプレミア、テッサロニキ映画祭 Meet the Neighbors コンペティション、女優賞(アントニア・セヘルス)、スペシャル・メンション(エルビラ・ララ)、マル・デル・プラタ映画祭、以下2025年、パームスプリングス映画祭、ヨーテボリ映画祭、マラガ映画祭(上記)、クリーブランド映画祭新人監督部門コンペティション、マイアミ映画祭ナイト・マリンバス賞受賞
キャスト:アントニア・セヘルス(デリア)、エルビラ・ララ(娘アナベル)、マメン・カマチョ(イネス)、ペドロ・ロメロ、ロレナ・アセイトゥノ、メルセデス・トレダノ、セルヒオ・ジェルペス、ビアンカ・コバックス(Iuliana)、セバスティアン・アロ(ホセ)、ノラ・サラ=パタウ、ギレム・バルボサ、パディ・パディリャ(郵便配達員)、ジョルディ・ぺレス(ハビ)、ペドロ・カステリャノ、他
ストーリー:夫フリアンが亡くなってから、デリアとアナベル母娘は彼のいない人生に向き合っています。経済的困窮から立ち退きの脅威に晒されています。ハエンのオリーブ畑とバルセロナの街並みを舞台に、母娘は異なった方法で喪に服していますが、愛と痛み、優しさと辛さのバランスを取りながら、自分たちの不確実な将来の再建に立ち向かおうとしています。

(フレームから)
★監督紹介:ベレン・フネス、1984年バルセロナのリポレト生れ、監督、脚本家。2008年、バルセロナ大学に付属しているESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)のコミュニケーションと監督の学位を取得、その後キューバに渡りEICTV(映画テレビジョン国際学校)の修士コースで学んだ。2015年短編「Sara a la fuga」で監督デビュー、マラガ映画祭の銀のビスナガ短編賞と監督賞を受賞した。2017年短編2作目「La inútil」(17分)がメディナ映画祭脚本賞をマルサル・セブリアンと受賞、ガウディ賞短編部門にノミネート、2018年トロント映画祭のタレントラボに選ばれ、長編デビュー作の脚本を執筆する。翌年サンセバスチャン映画祭2019セクション・オフィシアルに「La hija de un ladrón」のタイトルでノミネートされた。本作は短編「Sara a la fuga」がベースになっている。主演のグレタ・フェルナンデスが女優賞を受賞した他、トゥールーズ・シネスパニャ脚本賞、翌年のガウディ賞では非カタルーニャ語映画賞・監督賞・脚本賞の3冠、ゴヤ賞新人監督賞を受賞した。バジャドリード映画祭2019で女性監督に贈られるドゥニア・アヤソ賞も受賞している。新作「Los Tortuga」が長編第2作になる。

ビュー作「La hija de un ladrón」のポスター)

(新人監督賞を受賞したベレン・フネス、ゴヤ賞2020ガラ)
★脚本家紹介:マルサル・セブリアン、1983年バルセロナ生れ、脚本家、脚本アナリスト、製作者、俳優、バルセロナ大学の教師。23歳という年齢でESCACの脚本特別コースで学んだという遅咲きの脚本家。ベレン・フネスの全4作の脚本を共同執筆している他、2012年マルティ・サンスのドキュメンタリー「L’estigma?」(スペイン=イスラエル)、2019年ラファ・デ・ロス・アルコスの短編「Todo el mundo se parece de lejos」(15分)にそれぞれ監督と共同執筆している。受賞歴はベレン・フネスと同じです。俳優としてリリアナ・トーレスのコメディ「Family Tour」(13)に出演している。2025年4月、GAC(カタルーニャ脚本家連合)の総会で新会長に選出されました。


(マルサル・セブリアンとベレン・フネス、ガウディ賞2020ガラ)
★キャスト紹介:アントニア・セヘルス、1972年サンティアゴ生れ、映画、舞台、TV女優。父は産婦人科医のフェルナンド・セヘルス、母は仏教徒でアドベンチャー・カメラマンのモニカ・オポルト。セント・ジョージ学校で学び、その後グスタボ・メサ演劇学校(現テアトル・イメージ)で演技を学んだ。チリ国営テレビでテレノベラ(連続テレビ小説)に出演、キャリアを積んだ。1995年、クリスティン・ルカスの「En tu casa a las ocho」のアントニエタ役で映画デビューする。その後の活躍は以下のフィルモグラフィーの通りです。2006年にパブロ・ララインと出遭い、彼の代表作「ピノチェト政権三部作」(『トニー・マネロ』『ポスト・モーテム』『No』)、『ザ・クラブ』では映画の鍵を握る訳ありシスター・モニカ役で存在感を示した。私事に触れると、ララインとは長女誕生の2008年正式に結婚、2011年に長男誕生するも2014年離婚している。しかし離婚後もララインのスペイン語映画のほぼ全作に出演している。映画祭上映、公開、ネット配信など字幕入りで見ることができた。

(G.G.ベルナルとタッグを組んだ『No』のフレームから)

(チリの名優が共演した『ザ・クラブ』のフレームから)
★もう一人の重要な監督マティアス・ビセとは、ラライン映画より先の長編デビュー作「Sábado」(03)に起用された。たった65分間の映画でしたがマンハイム・ハイデルブルク映画祭でファスビンダー記念特別賞、FIPRESCI賞、チリのアルタソル賞を受賞した問題作、セヘルスは妊婦役に扮した。その後も度々オファーを受け出演している。2022年に主演した「El castigo」では、旅行中に行方不明になった子供の母親に扮し、その複雑な母性の危うさや揺らぎを見事に演じて多数の受賞に輝いた。


(マラガ映画祭2023セクション・オフィシアルにノミネートされた「El castigo」)
★ラライン映画では、監督お気に入りのアルフレッド・カストロとタッグを組むことが当然多いわけだが、他の監督、例えばマルセラ・サイドがカンヌ映画併催の「批評家週間」にノミネートされた「Los perros」(17)でも、軍事独裁政権下で体制側に与していた過去を引きずるセレブ階級の女性を演じている。ほか女性監督のドミンガ・ソトマヨールの「Tarde para morir joven」、マヌエラ・マルテッリの『1976』などが挙げられる。

(共演したカストロとセヘルス、「Los perros」から)
★少女時代から女優になることが夢だった由、「声がよかったが歌手になるには無理があった。趣味は料理、魚は食べるベジタリアン、多様性に欠けているからテレビは見ません、後ろめたい娯楽はサウナ」だそうです。スペイン語版ウイキペディアによると、ララインと出会う前のパートナーは舞台俳優のリカルド・フェルナンデス(2001~04)、ララインと別れてからはミュージシャンのGepe(ダニエル・アレハンドロ・リベロス・セプルべダ、2015~17)とある。
★演劇では、アリエル・ドルフマンの戯曲『死と乙女』でアルタソル賞2012女優賞、TVシリーズでは、「Secretos en el jardín」(2013~14、90話)でアルタソル賞2014女優賞、「La jauría」(2019~22、全16話)でプロドゥ賞2020、カレウチェ賞2021主演女優賞に各ノミネートされた。カレウチェCaleuche賞は2015年から始まったチリ俳優組合が選考母体の賞、「変容する人」に与えられる。セヘルスは『ザ・クラブ』で2016年助演女優賞を受賞している。
◎主なフィルモグラフィー(監督名、主な受賞歴、なお短編・テレノベラ・TV は割愛)
1995「En tu casa a las ocho」クリスティン・ルカス
2003「Sábado」マティアス・ビセ
2007「Pecados」マルティン・ロドリゲス
2008「Tony Manero」『トニー・マネロ』パブロ・ラライン「ピノチェト三部作」の1、
テレビプロデューサー役
2010「Post Mortem」『ポスト・モーテム』同「ピノチェト三部作」の2、主役
ハバナFF 2010女優賞・アントファガスタFF 女優賞、アルタソル賞ノミネート
2010「La vida de los peces」マティアス・ビセ 助演
ペドロ・シエナ賞2011助演女優賞ノミネート
2012「No」『Noノー』「ピノチェト三部作」の3、G.G.ベルナルの元妻の反体制活動家役
2015「El club」『ザ・クラブ』パブロ・ラライン 助演
シカゴFF 2015俳優賞・カレウチェ賞2016助演女優賞・ペドロ・シエナ賞2016
イベロアメリカ・プラチナ賞2016助演女優賞ノミネート多数
2015「La memoria del agua」マティアス・ビセ 脇役
2017「Una mujer fantastica」『ナチュラルウーマン』セバスティアン・レリオ
レストラン店主役
2017「Los perros」マルセラ・サイド 主役
ストックホルムFF 2017女優賞・アルトゥラスFF 2018主演女優賞、ノミネート多数
2017「Neruda」『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』パブロ・ラライン、端役
2018「Tarde para morir joven」ドミンガ・ソトマヨール 脇役
2021「Mensajes privados」マティアス・ビセ
2022「1976」『1976』マヌエラ・マルテッリ 脇役
2022「El castigo」マティアス・ビセ 主役
タリン・ブラックナイツ2022女優賞・ペドロ・シエナ賞2022、以下シアトル、
トリエステ、ブエノスアイレス、リマ各映画祭2023女優賞、北京FF 2024女優賞
2023「El conde」『伯爵』パブロ・ラライン 脇役
イベロアメリカ・プラチナ賞2024助演女優賞ノミネート
2024「Los domingos mueren mas personas」(アルゼンチン)アイール・サイド、脇役
2024「Los Tortuga」(スペイン合作)ベレン・フネス、主役
◎当ブログ関連記事
*『ザ・クラブ』の紹介記事は、コチラ⇒2015年10月18日
*「Los perros」の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月01日
*『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』の紹介記事は、コチラ⇒2017年11月22日
*「Mensajes privados」の紹介記事は、コチラ⇒2022年03月14日
*『1976』の紹介記事は、コチラ⇒2022年09月13日
*「El castigo」の紹介記事は、コチラ⇒2023年03月03日
*「Los domingos mueren mas personas」の紹介記事は、コチラ⇒2024年08月29日
★カンヌ映画祭2025コンペティション部門&「ある視点」、カンヌFF併催の「監督週間」&「批評家週間」などのノミネーション発表があり、全体像が見えてきました。スペインからはコンペティション部門にオリベル・ラシェ*の3作目「Sirat」とカルラ・シモンの3作目「Romeria」の2作がノミネートされました。また「ある視点」部門にディエゴ・セスペデスの「La misteriosa mirada del flamennco」、コロンビアのシモン・メサ・ソトのコメディ「Un poeta」など、今年は珍しく4 作もノミネートされました。順次作品紹介を予定しています。
*オリベル・ラシェ Oliver Raxe は、相変わらずオリヴィエ・ラセ、オリバー・ラクセと表記が定まりませんが、前作『ファイアー・ウィル・カム』で来日した折に確認したところ、ガリシア語読みのオリベル・ラシェが最も近いということでしたので、当ブログでは前作以後こちらに統一しています。
イベロアメリカ金のビスナガ「El ladrón de perros」*マラガ映画祭2025 ⑩ ― 2025年04月18日 16:28
イベロアメリカ映画部門の金のビスナガ受賞作「El ladrón de perros」

★もう一つの金のビスナガ作品賞に選ばれたビンコ・トミシックの「El ladrón de perros / The Dog Thief」は、2024年6月開催のトライベッカ映画祭でプレミアされるや、グアダラハラ、ミュンヘン、AFIラテンアメリカ、リオデジャネイロ、トルコのアンタルヤ・ゴールデン・オレンジ、インド、マル・デル・プラタ各映画祭、翌年にはスウェーデンのヨーテボリ、そしてマラガにやってきた。共同監督での長編はあるが本作がソロデビュー作品である。監督紹介は後述しますが、まずは作品紹介から。
*マラガ映画祭2025授賞式の記事は、コチラ⇒2025年03月28日
「El ladrón de perros / The Dog Thief」
製作:Color Monster / Zafiro Cinema / Calamar Cine / Easy Riders Films
監督:ビンコ・トミシック
脚本:ビンコ・トミシック、サム・ハイライ
撮影:セルヒオ・アームストロング
音楽:ウィサム・ホジェイ
編集:ウルスラ・バルバ・ホプフナー
製作者:アルバロ・マンサノ・サンブラナ、エダー・カンポス、マティアス・デ・ブルギニョンBourguignon、ガブリエラ・メーレMaire、(エグゼクティブ)ナディア・トゥリンチェフ、フランチェスカ・ノイア・ファン・デル・シュタイ、ほか
データ:製作国ボリビア=チリ=メキシコ=フランス=イタリア、2024年、スペイン語、ドラマ、90分、撮影ボリビアのラパス、配給販売 Luxbox、公開チリ2024年8月、ボリビア同年10月、他
映画祭・受賞歴:トライベッカ映画祭2024ワールドプレミア、グアダラハラ映画祭イベロアメリカ部門(アルフレッド・カストロが生涯功労賞、フランクリン・アロがメンション受賞)、ミュンヘン映画祭シネビジョン・コンペ、AFIラテンアメリカ映画祭、リオデジャネイロ映画祭、アンタルヤ・ゴールデン・オレンジ映画祭(フランクリン・アロ主演男優賞)、インド映画祭、マル・デル・プラタ映画祭、ケララ映画祭、以下2025年、ヨーテボリ映画祭、マラガ映画祭イベロアメリカ映画(金のビスナガ作品賞)、マイアミ映画祭(マリンバス賞ノミネート)、モスクワ映画祭、フォルケ賞2024ラテンアメリカ映画部門ノミネート、イベロアメリカ・プラチナ賞2025オペラ・プリマ賞&価値ある映画と教育プラチナ賞ノミネート、第20回サンティアゴ映画祭SANFIC(フランクリン・アロ男優賞)、ハバナ映画祭脚本賞、リマ映画祭審査員特別賞、プンタ・デル・エステ映画祭(ウルグアイ)監督賞受賞、他

(監督も出席したボリビア公開イベント、2024年10月15日)
キャスト:アルフレッド・カストロ(セニョール・ノボア)、フランクリン・アロ・ワスコ(マルティン)、テレサ・ルイス(セニョリータ・アンドレア)、マリア・ルケ(グラディス)、フリオ・セサル・アルタミラノ(ソンブラス)、ニノン・ダバロス(アンブロシア夫人)、クレベル・アロ(モネダス)、他
ストーリー:15歳の孤児マルティンは首都ラパスの広場で靴磨きをして働いている。先住民であることを隠すため毛糸の帽子を被っている。差別されないためである。亡くなった母親の友人グラディスの家で暮らしている。彼の上得意であるセニョール・ノボアは独り身の洋服仕立屋で、美しいジャーマンシェパードが唯一の友である。マルティンは彼を父親ではないかと思いはじめている。マルティンは彼に近づくため予想もしない行動に出る。

(ジャーマンシェパードを連れて靴磨きに来るセニョール・ノボア)

(セニョール・ノボアとマルティン)

(ジャーマンシェパードとマルティン)
★監督紹介:ビンコ・トミシック・サリナス、チリの監督、脚本家、製作者。2014年、初短編「Durmiente」(アルゼンチン、16分)が、フィクナム、グアダラハラ、カリ、サンパウロ、バンクーバー、各映画祭に出品される。同年制作会社「Calamar Cine」を設立、2016年、フランシスコ・エビアと共同監督した「El fumigador / Cockroach」(チリ=アルゼンチン、80分)が、第20回PÖFFタリン・ブラックナイツでプレミアされ、サンティアゴ映画祭SANFIC 2016で「ベスト・ナショナル・フィルム」を受賞する。2018年、短編「Aicha」(アルゼンチン=ボリビア=チリ、11分)は、ビアリッツ、グアダラハラ、シカゴ、ロカルノアカデミー2019で上映される。2024年「El ladrón de perros」で長編ソロデビューを果たした。本作はカンヌのシネフォンダシオン・レジデンシアとベネチアのビエンナーレ・カレッジ・シネマによって企画されました。短編は英語字幕入りで見ることができます。

(監督とフランクリン・アロ、グアダラハラ映画祭2024)

(「El fumigador / Cockroach」)
★キャスト紹介:ボリビアのラパスを舞台に監督と同胞である受賞歴を誇るアルフレッド・カストロとオーディションで起用されたボリビアのフランクリン・アロを軸に展開します。カストロはチリを離れてスペインの国籍を取り二重国籍(キャリア紹介は以下)。アロは12歳のときから実際に靴磨きをして働いていた。先住民は学校で差別される。何とか自分の人生を変えたいと考えていたときオーディションが開催されることを聞いて応募した。今は靴磨きを恥じていないし誇りを持つことができたが変えるのは簡単ではないと、マラガ映画祭のインタビューに答えていた。
*アルフレッド・カストロのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2024年05月23日

(フランクリン・アロ)

(時々学校にも行くマルティン)
★脇を固めるのはメキシコの女優テレサ・ルイス(ナタリア・ベルスタインの『ざわめき』)、マリア・ルケ(マテオ・ヒルの『ブラックソーン』)、アンブロシア夫人を演じるのはボリビアの女優ニノン・ダバロス、そのほかは本作でデビューしている。アルフレッド・カストロとテレサ・ルイスは、キャリア紹介をしています。
*テレサ・ルイスのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2023年01月28日
★スタッフ紹介:撮影監督のセルヒオ・アームストロングは、チリのパブロ・ララインのピノチェト三部作(08~12)(『トニー・マネロ』、『ポスト・モーテム』、『ノー No』)ほか、『ザ・クラブ』(15)、『ネルーダ大いなる愛の逃亡者』(16、ペドロ・シエナ賞)、『エマ、愛の罠』(19)などララインの代表作を手掛けている。また金獅子賞をラテンアメリカに初めてもたらしたロレンソ・ビガスとタッグを組んだ『彼方から/フロム・アファー』(15)、ベネズエラ出身だがメキシコに移住して撮った『箱』(21)などを手掛けている。他にチリを脱出してアメリカで製作しているセバスティアン・シルバやマイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』(24)も撮っている。
★音楽監督ウィサム・ホジェイは、レバノン出身だがフランスを拠点に活動している映画音楽の作曲家。カミラ・ベルトランのスリラー「Mi bestia」(24、コロンビア=フランス)を担当、映画はシッチェス映画祭イベロアメリカ映画賞を受賞している。製作者のアルバロ・マンサノ・サンブラナは、「映画はラテンアメリカの、またはボリビアの現実を反映している。資金不足で映画製作は難しいが、この映画の成功で力を得た」とマラガで語っている。

(アルバロ・マンサノとフランクリン・アロ、マラガ映画祭2025、プレス会見にて)
エバ・リベルタードの「Sorda」*マラガ映画祭2025 ⑨ ― 2025年04月14日 13:24
金のビスナガ「Sorda」は監督エバと主演者ミリアム姉妹の二人三脚

(エバ・リベルタードとミリアム・ガルロ姉妹)
★季節が往ったり来たりで心身共に疲れます。第78回カンヌ映画祭の名誉パルムドールにロバート・デ・ニーロ受賞のニュース、審査委員長がジュリエット・ビノシュとアナウンスされたきり、他のメンバーは未発表です。昨年のグレタ・ガーウィグに続いて今年も女性が選ばれましたが、最初の女性委員長を務めたのが2014年のジェーン・カンピオン、ビノシュが3人めというから呆れます。コンペティション部門ノミネートもこれからです。トランプ関税は映画界も無傷というわけにいかないし、我が国もトランプに笑顔を向けながらしぶとく抵抗してもらいたい。
★マラガ映画祭作品賞金のビスナガ受賞作「Sorda」は、監督にエバ・リベルタード、聴覚障害者の母親役に実妹のミリアム・ガルロが扮したドラマです。ガルロ自身7歳のとき薬害で聴力を失っており、アイディア誕生の経緯などもドラマチックのようです。ヌリア・ムニョスと共同監督した2021年発表の同タイトルの短編が下敷きになっており、第25回マラガ映画祭2022短編部門の銀のビスナガ観客賞を受賞している。来年あたりの公開を期待して作品紹介をいたします。成功にはガルロのパートナー役を演じたアルバロ・セルバンテスの好演を上げる批評家が目につきましたが、二人揃って銀のビスナガを受賞しました。

(左から、ヌリア・ムニョス、ミリアム・ガルロ、エバ・リベルタード、マラガFF2022)

(短編「Sorda」のポスター)
「Sorda / Deaf」
製作:Distinto Films / Nexus CreaFilms / A Contracorriente Films / Diverso Films
協賛ICAA / RTVE / Movistar Plus+/ 7TV Región de Murcia
監督・脚本:エバ・リベルタード
助監督:ミゲル・ガゴ
撮影:ジナ・フェレール・ガルシア
音楽:アランサス・カジェハ(カリェハ)
編集:マルタ・ベラスコ
美術:アンナ・アウケル
録音:ウルコ・ガライ
キャスティング:イレネ・ロケ
衣装デザイン:デシレ・ギラオ、アンヘリカ・ムニョス
メイクアップ&ヘアー:メルセデス・カルセレン・ロペス、クリスティナ・ゴメス・マルキナ、ミリアム・サンチェス
プロダクションデザイン:エレナ・カサス、ゴレッティ・パジェス
製作者:ミリアム・ポルテ(Distinto Films)、ヌリア・ムニョス・オルティン(Nexus CreaFilms)、アドルフォ・ブランコ()、(エグゼクティブ)アマリア・ブランコ(A Contracorriente Films)他
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、ドラマ、100分、撮影地ムルシア、2024年7月クランクイン6週間、公開スペイン4月4日、配給A Contracorriente Films
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2025パノラマ部門観客賞、CICAEアートシネマ賞受賞、マラガ映画祭2025スペイン映画部門作品賞金のビスナガ、主演女優賞(ミリアム・ガルロ)、主演男優賞(アルバロ・セルバンテス)、観客賞、ASECAN賞(アンダルシア・シネマ・ライターズ、オペラ・プリマ部門)、Feroz Puerta Oscuraフェロス・プエルタ・オスクラ賞など受賞、D'A Film Festival(バルセロナ映画祭)正式出品
キャスト:ミリアム・ガルロ(アンヘラ)、アルバロ・セルバンテス(夫エクトル)、エレナ・イルレタ(アンヘラの母エルビラ)、ホアキン・ノタリオ(アンヘラの父フェデ)
ストーリー:聴覚障害者のアンヘラは陶芸工房で自立して働いている。一緒に暮らしている聴覚パートナーのエクトルは、手話を習得して聴覚障害者のコミュニティにも完全に溶け込んでいる。アンヘラは読唇術を学んで間もなくやってくる赤ちゃんを喜びに浸りながら待っているが、赤ん坊が到着すると彼女が努力して築き上げてきた世界のバランスが崩れはじめます。彼女をかつてのような障害者の地位に引きずり下ろし始める。自分と娘にとって何がよく、何がよくないかの決定を迫られる。自分の居場所が分からなくなった聴覚障害者の心の旅が語られる。


(ガルロ、リベルタード監督、セルバンテス、マラガFF 3月15日フォトコール)
★監督紹介:エバ・リベルタード、1978年、ムルシア州モリーナ・デ・セグラ生れ、監督、脚本家、戯曲家、マドリード・コンプルテンセ大学社会学科卒業。ヌリア・ムニョス・オルティンと共同監督したファンタジー「Nikolina」(20)で長編デビュー、ムニョスとのコンビで短編「Leo y Alex en plano siglo 21」(19、6分)や「Sorda」(21、18分)を撮る。後者はアバンカ映画祭、イベロアメリカン短編映画祭など国内外の映画祭の受賞歴多数、ゴヤ賞2023短編映画賞にノミネートされる。短編「Mentiste Amanda」(24、16分)を同じくヌリア・ムニョスと共同監督、メディナ・デル・カンポ映画祭作品賞受賞、ゴヤ賞2025短編映画部門の候補に選出されたがノミネートは逃した。他にTVミニシリーズ、SF「Heroes del Patrimonio」(18)、劇作家としてはコンプルテンセ大学、メキシコのケレタロ自治大学のような独立系の劇団のために執筆や演出を手掛けている。長編「Sorda」は単独で監督した第1作である。

(ヌリア・ムニョスと共同監督した短編「Mentiste Amanda」のポスター)

(共同監督ヌリア・ムニョスと)
★キャスト紹介:ミリアム・ガルロ、1983年、ムルシア州モリーナ・デ・セグラ生れ、映画、舞台女優、視覚芸術を専門とするアーティスト、コンテンポラリー・ダンサー、手話のスペシャリスト、フェミニスト活動家である。7歳のとき服用していた薬でほぼ聴力を失う。ミリアムによると両親が気づくのが遅れたため難聴が進行した由。マドリード・コンプルテンセ大学で美術を専攻、アート、創作の修士号を取得する。最初画家を目指したが、現在は演劇、映画の女優にシフトしている。4匹の犬と自宅の農地で鶏を飼っている。育てている鶏の卵以外は食べないベジタリアン、短編「Sorda」の舞台になった。短編、長編の「Sorda」のほか、「Nikolina」に出演している。

(飼い犬とくつろぐミリアム、ムルシアのモリーナ・デ・セグラの自宅にて)
★エクトル役のアルバロ・セルバンテス、1989年バルセロナ生れ、俳優、製作者。DVD発売やNetflix配信で観る機会があり認知度もそこそこあるように思えますが果たしてどうでしょう。当ブログでは出演した『1898:スペイン領フィリピン最後の日』などの作品紹介はしておりますが、セルバンテスの纏まったキャリア紹介はしていない。これからも活躍が期待できる俳優の一人としてアップします。ジェマ・ブラスコ監督の「La furia」で主演女優賞を受賞したアンヘラ・セルバンテスは実妹。今回揃って銀のビスナガのトロフィーを手にした。

(セルバンテス兄妹、マラガ映画祭2025、3月23日フォトコール)
★1995年、子役としてホアキン・オリストレルのTVシリーズ「Abuela de verano」でスタート、今年のマラガ映画祭ソナシネ部門の作品賞を受賞したイバン・モラレスの「Esmorza amb mi / Desayuna conmigo」まで数えると約60作に出演している。映画デビューはシルビア・ムントがマラガ映画祭2008銀のビスナガ監督賞を受賞した長編デビュー作「Pretextos」ですが、最初に字幕入りで見ることができたのは、『ザ・レイプ 秘密』の邦題でDVDが発売された「El juego del ahorcada」でした。かなりショッキングな邦題でしたが、オリジナルも「処刑ごっこ」と穏やかではなかった。
*『1898:スペイン領フィリピン最後の日』の作品紹介記事は、コチラ⇒2017年01月05日
*「Adú」の作品紹介記事は、コチラ⇒2021年01月24日
*「Ramón y Ramón」の紹介記事は、コチラ⇒2024年08月25日
★代表作を年代順に列挙すると、
2008「Pretextos」(カタルーニャ語)シルビア・ムント、共演ライア・マルル
2008「El juego del ahorcada / The Hanged Man」『ザ・レイプ 秘密』スリラー、監督マヌエル・ゴメス・ペレイラ、インマ・トゥルバウの同名小説の映画化、ゴヤ賞2009新人男優賞にノミネート、共演クララ・ラゴ
2010「Tres metros sobre el cielo」『空の上3メートル』フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ、フェデリコ・モッキアの同名小説の映画化、脚本ラモン・サラサール、共演マリオ・カサス、マリア・バルベルデ
2012「El sexo de los ángeles」『バルセロナ、天使のセックス』ハビエル・ビリャベルデ、マラガ映画祭2012銀のビスナガ助演男優賞受賞、DVD2013発売
2012「Tengo ganas de ti」『その愛を走れ』フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ、『空の上3メートル』の続編、フェデリコ・モッキアの同名小説の映画化、脚本ラモン・サラサール
2016「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』歴史ドラマ、サルバドール・カルボ、スペイン俳優組合ノミネート、共演ルイス・トサール、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデ、Netflix配信
2018「El árbol de la sangre」『ファミリー・ツリー 血族の秘密』フリオ・メデム、Netflix配信
2020「Adú」サルバドール・カルボ、共演ルイス・トサール、アンナ・カステーリョ、メリリャ駐在の治安警備隊員を演じた。ゴヤ賞2021助演男優賞ノミネート、Netflix配信(字幕なし)
2021「Loco por ella」『クレイジーなくらい君に夢中』ダニ・デ・ラ・オルデン、共演ルイス・サエラ、クララ・セグラ
2022「42 segundos」ダニ・デ・ラ・オルデン、共演ハイメ・ロレンテ
2022「Malnazidos」『マルナシドス-ゾンビの谷-』ハビエル・ルイス・カルデラ、
Netflix配信
2023「Eres tú」『だから、君なんだ』アラウダ・ルイス・デ・アスア、Netflix配信
2024「Ramón y Ramón」サルバドール・デル・ソラル、サンセバスチャン映画祭2024オリソンテス・ラティノス部門正式出品、ペルーとの合作
2025「Sorda / Deaf」エバ・リベルタード、マラガ映画祭2025銀のビスナガ主演男優賞受賞
2025「Esmorza amb mi / Desayuna conmigo」イバン・モラレス、主演、マラガ映画祭ソナシネ部門銀のビスナガ作品賞、観客賞など受賞
◎メディナ映画祭2021「21世紀の俳優」を受賞

(銀のビスナガ主演男優賞の受賞スピーチをするセルバンテス)
★短編、TVシリーズは割愛しましたが、オリオル・フェレルの「Carlos, Rey Emperador」(『カルロス~聖なる帝国の覇者~』2015~16、17話)は彼にとって素晴らしい転換点になった(フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞などにノミネート)。神聖ローマ皇帝カール5世(スペイン王カルロス1世)を演じた。イサベル・デ・ポルトゥガル役のブランカ・スアレス、エルナン・コルテス役のホセ・ルイス・ガルシア・ぺレス他、ナタリエ・ポサ、スシ・サンチェス、エリオ・ペドレガルなどベテラン演技派との共演が刺激になったようです。7ヵ月以上に及んだ撮影では、季節の区別なく酷暑の中でも常に重たい衣装を着用しなければならず大変だったと語っている。また約20作くらい出演している短編ではダビ・ペレス・サニュドの「Un coche cualquiera」(19)で、CinEuphoria 2021の男優賞にノミネートされている。

(カルロス1世に扮したアルバロ・セルバンテス)
音が溢れる社会の中で身振りと思考のあいだの繋がりを確立する困難さ
★本作のテーマは聴覚障害者が聴者の世界で直面する問題を探求しているが、聴覚障害そのものがテーマではなく、自分の居場所を探す女性の心の旅のようです。アンヘラはたまたま耳が聞こえなかった。娘が生まれる前の日常はエクトルの努力の甲斐もあって穏やかであった。生まれる子供の聴覚がどちらになるかは半々だったが、娘はたまたま耳が聞こえるほうだった。赤ん坊は読唇術も手話も分からない、どのようにして言葉を教えたらよいのか分からない。声を出せないアンヘラは当然パニックに陥る。アンヘラが求めていた調和のとれた家庭生活、母親としての絆が得られない。先に娘との絆を築いたエクトルに嫉妬して苛立つアンヘラ、エクトルの「どうして欲しいんだ、夫も娘も耳が聞こえないほうがよかったのか?」というセリフに象徴されるように危機が訪れる。アンヘラの矛盾した複雑な感情の揺らぎ、忍耐強さ、エゴイズム、硬直性などが語られる。

(「あなただけが完璧な親で、一人で育児を楽しんでいる」と夫を非難するアンヘラ)

(聴覚障害者のコミュニティでは幸せなアンヘラ)
★アンヘラは娘と会う前の出産時に既に異変を体験していた。分娩室は聴覚障害者のコミュニティでも親しい友人たちの集まりのように安全ではない。陣痛が激しくなると看護スタッフたちはアンヘラが耳が聞こえないことを忘れてしまう。自分たちの指示に従わないアンヘラに慌てる、出産の凄さに度肝を抜かれたエクトルも極度の緊張から手話で上手く指示を伝えられない。アンヘラの存在を許容していた社会が突然機能しなくなる。普段は完璧に思えた関係も大波が来ると役に立たない。公共の場で目に見えない聴覚障害は、目に見える視覚障害のように視覚化されない。アンヘラも白い杖を使用していたわけでも盲導犬と一緒でもなかった。


(娘に言葉を教えるアンヘラ)
★音が溢れる社会の中で身振りと思考のあいだの繋がりの確立には困難がともなう、音が聞こえることとそれが言葉として聞こえることは同じではない。耳の聞こえない母親が耳の聞こえる赤ん坊に「どうやって言葉を教えるのだろうか」が本作のアイディアの出発点だったという。聴者の世界に適応するよう育てられているため聴覚障害者あるいは難聴者は社会から見えにくくなっている。それぞれ異なった世界に帰属しているのに可視化されていない。監督は「アンヘラは聴者の世界に対して準備できているが、世界はアンヘラに対して準備できていない」と、ベルリン映画祭のインタビューで語っています。またエクトルという人物造形には、分身として監督が少し投影されており、セルバンテスには撮影開始1年前にオファーをした。手話を学ぶ時間が必要だったからと語っている。予告編だけでは舌足らず、鑑賞後に改めてアップが必要です。
マラガ―スール賞のカルメン・マチ*マラガ映画祭2025 ⑧ ― 2025年04月06日 15:27
カメレオン女優カルメン・マチの強かな生き方

(マラガ―スール賞を受賞したカルメン・マチ、2025年3月15日)
★後回しになっていた今年の特別賞マラガ―スール賞の受賞者カルメン・マチのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。1963年1月7日マドリード生れ、マリア・デル・カルメン・マチ・アロヨ、両親ともスペイン人だが、父方の家系はイタリアのジェノバのアーティスト一家である。1980年、17歳でヘタフェのタオルミナ劇団に入り、初舞台はロルカの「血の婚礼」だった。1994年ホセ・ルイス・ゴメスが主宰する演劇学校ラ・アバディアに入団、バリェ=インクランの「貪欲、欲望と死の祭壇画」、「ベニスの商人」などの舞台に立つ。演劇関係では最高賞Max賞に、2011年「Falstaff」(シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』の登場人物)で助演女優賞、2009年「Platonov」(チェーホフの『プラトーノフ』)助演女優賞、2008年「La tortuga de Darwin」(フアン・マヨルガ作、ダーウィンによってガラパゴス諸島からイギリスに連れてこられた海亀ハリエット役)で主演女優賞を受賞している。ほかソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』(2015~17)やチェーホフの『桜の園』(2019)に出演している。
★映画デビューは遅く、主役に起用されたのはハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」で、カセレス・スペイン映画祭2009の女優賞を受賞した。続くエミリオ・アラゴンのデビュー作「Pájaros de papel」はラテンビート映画祭2010で上映された後、『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の邦題で公開され、監督と来日した。役柄からイメージするのとは違った華奢な体型とその物静かな雰囲気に驚かされた。同年ナチョ・G・ベリリャの「Que se mueran los feos」では、ハビエル・カマラと共演、彼の小姑役を演じた。

(「Pájaros de papel」のフレームから)
★そして観客動員数1000万人、スペイン映画興行成績ナンバーワンとなったエミリオ・マルティネス=ラサロの「Ocho apellidos vascos」出演である。翌年のゴヤ賞ではコメディ作品の受賞はないという大方の予想を覆して、カラ・エレハルデの助演男優賞、ダニ・ロビラの新人賞、マチの助演女優賞の3冠をゲットした。以来引っ張りだことなり、続編「Ocho apellidos catalanes」はネットフリックスで配信された。

(ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたマチ)

(共演者のカラ・エレハルデと)
★主演作が多くなり、なかでアルゼンチンのマリナ・セレセスキーのシリアスドラマ「La puerta abierta」の娼婦役に起用され、ゴヤ賞2017で初めて主演女優賞にノミネートされた。その他フォルケ賞、フェロス賞もノミネートに終わったもののスペイン俳優組合賞を受賞した。テレレ・パベス、アシエル・エチェアンディアなどが共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの「El bar」、「アイーダ」の共演者エドゥアルド・カサノバのデビュー作「Pieles」など、Netflix配信、ミニ映画祭、公開などで日本でも認知度が高くなりファンが増えてきた。作品紹介記事は、当ブログでアップした一覧を添付しているので参考にしてください。ネットフリックスやプライムビデオで配信されたなかで既に配信が終了している作品もあります。

(『クローズド・バル』のフレームから、左端にカルメン・マチ)

(高評価の「La puerta abierta」のポスター)
★私生活は公にしないのでミステリアスな部分も多いが、20年来のパートナー、ミュージシャンのビセンテとは「結婚にも子供をもつことにも怖れがある」そうです。


(20年来のパートナー、ビセンテと仲睦まじく買い物)
受賞歴:2013年メモリアル・マルガリーダ・シルグ賞、2017年マドリード金のメダル受賞、2024年芸術功労賞金のメダルを各受賞している。
◎主なフィルモグラフィー◎
1999「Lisa」短編、カルロス・プジェ
2002「Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役
2003「Descongélate!」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ
「Torremolinos 73」『トレモリーノス73』パブロ・ベルヘル、美容院の客
2004「Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役
2005「Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ
2006「Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ
2009「Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
「La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役、カセレス・スペインFF女優賞受賞
2010「Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、
ラテンビート2010女優賞受賞
「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客
2013「Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル
2014「Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、
ゴヤ賞2015助演女優賞受賞
2015「Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、
ベニ・マリン役
「Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア
2015「Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』
エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ/ カルメ役
2016「Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役
「La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞
2017「El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
アレックス・デ・ラ・イグレシア
「Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ
2018「Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、
主役カルメン・ガラテ
「La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、ビルヒニア母親役
モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞
2019「Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役
「Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ
2020「Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役
「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー
2021「El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役
2022「Amor de madre」『僕とママの”じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役
「Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン
「La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ
「Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役
2024「Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演
「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役
2025「Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役
★TVシリーズ、進行中の出演を含めると80作を超える。従って初期の端役、短編、TVシリーズは割愛しています。今回リストアップしての印象は、映画でのノミネート数に比して受賞が少ないということでした。TVシリーズ「7 vidas」(99~06、204話)では2000年から参加して98話出演、本作のアイーダ・ガルシア・ガルシア役の人気に乗じてスピンオフした「Aída」(05~14、238話)では101話に出演している。両シリーズともシチュエーションコメディ、後者の受賞歴はフォトグラマス・デ・プラタ(2004,2005,2007)、オンダス賞2008、スペイン俳優組合賞2005と多いが、疲れはてて自ら降板を願い出ている。そしてリターン・コールで再登場したのがTVでなくスクリーン、今年公開予定の「Aída y vuelta」である。授与式に駆けつけてくれたパコ・レオンが監督している。彼はルイスマ・ガルシア・ガルシア役で全238話に出演しており、新作でも勿論出演しないわけにいかない。みんな少しずつ老けましたが元気です。

(TV出演メンバーで撮る映画「Aída y vuelta」の出演者たち)
★ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが製作、監督したミュージカル「La mesías」(23、全7話)とディエゴ・サン・ホセ創案、エレナ・トラぺ監督の「Celeste」(24、全6話)、前者はメシアの到来を妄想するファナティックな老母モンセラット・バロ役(6~7話に出演)、後者はラテン音楽のスーパースターのセレステの脱税を証明するというミッションを受けた税務捜査官役、TV部門のフォルケ賞2024女優賞とフェロス賞にノミネートされ、フォトグラマス・デ・プラタを受賞している。

(マルサの女を演じたTVシリーズ「Celeste」から)

(有能な税務捜査官を好演した「Celeste」のポスター)
◎カルメン・マチ関連記事一覧◎
*「Ocho apellidos vascos」キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2015年01月28日
*『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月17日
*「Las furias」の紹介記事は、コチラ⇒2016年02月26日
*「La puerta abierta」の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月12日
*『クローズド・バル~』の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月22日/02月26日/04月04日
*『スキン~あなたに触らせて~』の紹介記事は、2017年08月20日
*「Nieva en Benidorm」の紹介記事は、コチラ⇒2021年02月11日
*「El cover」の紹介記事は、コチラ⇒2021年05月18日
*『PIGGY ピギー』の紹介記事は、コチラ⇒2022年12月19日
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