オリソンテス・ラティノス部門 ②*サンセバスチャン映画祭2023 ⑩ ― 2023年08月23日 14:51
タティアナ・ウエソが2作目「El eco / The Echo」で戻ってきた!
★サンセバスチャン映画祭 SSIFF も開幕1ヵ月をきり、連日のごとくニュースが配信されています。例えばセクション・オフィシアルのオープニング作品は宮崎駿の『君たちはどう生きるか』、クロージング作品はイギリスの監督ジェームズ・マーシュの「Dance First」、マーシュ監督は英国史上、最高額、最高齢の金庫破りだったオールドボーイ窃盗団の実話に基づいて描いた『キング・オブ・シーヴズ』(18)が2021年に公開されている。両作ともアウト・オブ・コンペティション部門ノミネート作品であるため金貝賞には絡みません。さらに「ペルラク」部門18作品、「ネスト」部門12作品も相次いで発表されました。更に8月22日にはドノスティア栄誉賞の二人目の受賞者にビクトル・エリセがアナウンスされるなど急に慌ただしくなってきました。エリセはともかくとして、今年は時間的余裕がなく、アップはスペイン語、ポルトガル語映画に限らざるを得ません。今回はオリソンテス・ラティノ部門の続き、ドラマ2作、ドキュメンタリー2作の合計4作をアップします。
*オリソンテス・ラティノス部門 ②*
5)「Clara se pierde en el bosque / Clara Gets Lost in the Woods」
アルゼンチン
監督:カミラ・ファブリ(ブエノスアイレス1989)、監督、脚本家、戯曲家、女優として多方面で活躍しているアルゼンチン同世代の期待の星。女優としてミゲル・コーハン、ベロニカ・チェン、フアン・ビジェガスの「Las Vegas」(18)、アレハンドロ・ホビックやルシア・フェレイラの短編に主演している。


(カミラ・ファブリ監督)
データ:脚本はカミラ・ファブリとマルティン・クラウトが共同執筆、2023年、スペイン語、ドラマ、86分、長編デビュー作。
キャスト:カミラ・ペラルタ(クララ)、アグスティン・ガリアルディ(ミゲル)、フリアン・ラルキエル・テラリーニ(イバン)、フロレンシア・ゴメス・ガルシア(エロイサ)、ソフィア・パロミノ(フアナ)、マイティナ・デ・マルコ(パウリナ)、ペドロ・ガルシア・ナルバイツ(フアン)、マルティア・チャモロ(マルティナ)、カミラ・ファブリ(イネス)、フリアン・インファンティノ(マルティン)、ほか
ストーリー:クララは都会を離れて郊外に家族と小旅行中に、幼馴染の友人マルティナからの母性のアイディアを前面に押し出したメッセージを受けとった。マルティナとはレプブリカ・クロマニョン・クラブで起きた悲劇の一夜を共にしていた。一連のWhatsApp Messengerのテキスト、ホームビデオ、家族とランチする現在と現実のショット、危機と悲劇によって荒廃した都会での彼女自身や友人たちの思春期がつぶさに語られる。レプブリカ・クロマニョン・クラブの悲劇というのは、2004年12月30日の夜にブエノスアイレスのオンセ地区で開催されていたロック・イベント中に193人の命が奪われた大火災をさす。

(撮影中の監督とクララ役のカミラ・ペラルタ)
6)「El castillo / The Castle」アルゼンチン=フランス=スペイン
ドキュメンタリー
監督:マルティン・ベンチモル(ブエノスアイレス1985)、作品紹介、監督のキャリア&フィルモグラフィーは、以下にアップ済みです。
*作品紹介は、コチラ⇒2023年07月21日


7)「El Eco / The Echo」メキシコ=ドイツ
監督:タティアナ・ウエソ(サンサルバドル1972)監督、脚本家。監督のキャリア&フィルモグラフィーは、SSIFF 2021の同部門のオリソンテス賞以下3冠に輝いた「Noche de fuego」にアップしています。新作は、架空の要素が多く含まれているが、メキシコ高地にある村エルエコの子供たちを描いている。監督はメキシコ北部のある村に逗留して、ほぼ1年間掛けて撮影している。監督の子供時代の体験が投影されている。ウエソはエルサルバドル出身だが、4歳のとき両親に連れられてメキシコに移住している。2011年の「El lugar más pequeño」、2016年の「Tempestad」、新作「El Eco」をもって「痛みとトラウマ」三部作を完結したことになる。
*「Noche de fuego」の紹介記事は、コチラ⇒2021年08月19日

データ:脚本タティアナ・ウエソ、2023年、スペイン語、ドキュメンタリー、102分。本作は既にベルリン映画祭2023でプレミアされ、エンカウンターズ部門の監督賞とドキュメンタリー賞を受賞している他、香港映画祭ドキュメンタリー賞ノミネート、シアトル映画祭ノミネート、カルロヴィ・ヴァリ映画祭、リマ映画祭ドキュメンタリー賞、エルサレム映画祭シャンテル・アケルマン賞を受賞している。

(タティアナ・ウエソ、ベルリン映画祭2023ドキュメンタリー作品賞のガラから)
キャスト:モンセラ・エルナンデス(モンセ)、マリア・デ・ロス・アンヘレス・パチェコ・タピア(祖母アンヘレス)、ルス・マリア・バスケス・ゴンサレス(ルス)、サライ・ロハス・エルナンデス(サライ)、ウィリアム・アントニオ・バスケス・ゴンサレス(トーニョ)、他多数
ストーリー:メキシコ北部の人里離れた村エル・エコは、子沢山の家族が多く、生活は貧しく、子供たちは羊と年長者たちの世話をしています。孫娘は祖母が死ぬまで世話をしなければなりません。霜と旱魃が村を苦しめます。子供たちは両親の話す言葉と沈黙から、死、病気、愛を理解することを学びます。エコは魂のなかにあるもの、周りの人々からうける確実な暖かさ、人生で直面する反逆と眩暈について、成長についての物語です。

8)「Estranho caminho / A Strange Path(Extraño camino)」ブラジル
WIP Latam 2022 作品
監督:グト・パレンテ(セアラ州都フォルタレザ1983)は、監督、脚本家、撮影監督、俳優。長編10作目になる。WIP Latem 2022の最優秀賞作品賞受賞作。
*脚本グト・パレンテ、撮影リンガ・アカシオ、美術タイス・アウグスト、録音ルカス・コエーリョ、編集ビクトル・コスタ・ロペス、ティシアナ・アウグスト・リマ、タイス・アウグスト、グト・パレンテ。トライベッカ映画祭2023では、父親ジェラルド役のカルロス・フランシスコが説得ある演技で主演男優賞を受賞している。


(デビッド役のルカス・リメイラ)
データ:製作国ブラジル、2023年、ポルトガル語、ミステリー、85分、トライベッカ映画祭2023で国際コンペティション部門の作品賞、脚本賞、監督賞、カルロス・フランシスコが主演男優賞を受賞するなど4冠を制した。撮影地フォルタレザ。セアラ州文化省からの資金提供を受けている。

(父親役のカルロス・フランシスコ)
キャスト:ルカス・リメイラ(デビッド)、カルロス・フランシスコ(父ジェラルド)、リタ・カバソ(テレサ)、タルツィア・フィルミノ(ドナ・モサ)、レナン・カピバラ(レナン)、アナ・マルレネ(マリアナ先生)、他多数
ストーリー:若い映画背作者デビッドは、映画祭で自作を発表するため生れ故郷のブラジルに向かっています。到着すると新型コロナのパンデミックが急速に全国に広がり始めていた。映画祭は中止され、空港が封鎖されたため帰国便もキャンセルされてしまう。デビッドは滞在先を必要としており、十年以上話していない風変わりな男である父親ジェラルドを訪ねることにする。彼が父親のアパートに到着すると、奇妙なことが起こり始めます。デビッドの軌跡を辿るドラマ。和解の痛み、不条理の喜びの表現などが描かれる。

(カミラ・ファブリ、マルティン・ベンチモル、タティアナ・ウエソ、グト・パレンテ)
オリソンテス・ラティノス部門12作出揃う*サンセバスチャン映画祭2023 ⑨ ― 2023年08月16日 17:49
オープニングはパウラ・エルナンデス&クロージングはカロリナ・マルコビッチ

★去る8月3日、第71回サンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門12作(2022年と同じ)が発表になりました。既にスペインが共同製作国になっている2作、アルゼンチンのドロレス・フォンシとマルティン・ベンチモルはご紹介しておりますが、残る10作が発表になり、これですべてが出揃ったことになります。
★オープニング作品は、アルゼンチンのパウラ・エルナンデスの「El viento que arrasa / A Ravaging Wind」(スペイン語)、クロージング作品は、ブラジルのカロリナ・マルコヴィッチの「Pedágio / Toll」(ポルトガル語)と、共に女性監督作品が選ばれました。監督は男性4名、女性8名と、女性シネアストの元気のよさが際立っています。WIP Latam 2作、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラム1作が含まれました。作品賞はオリソンテ賞、今回は全作品をご紹介する時間的余裕がなく、管理人が予想する賞に絡みそうな作品をつまみ食いすることになりそうです。一応全12作の作品名、監督、製作国、トレビア情報を列挙しておきます。3回に分けてアップします。
*オリソンテス・ラティノス部門 ①*
1)「El viento que arrasa / A Ravaging Wind」アルゼンチン=ウルグアイ
オープニング作品、2023年、スペイン語、ドラマ、94分
監督:パウラ・エルナンデス(ブエノスアイレス1969)は、アルゼンチンの監督、脚本家、女優。本作はセルバ・アルマダの処女作(2012年刊)である同名小説の映画化。チリのアルフレッド・カストロ、スペインのセルジ・ロペスなど、本邦でも知名度のある演技派がクレジットされている。アルゼンチンのチャコ州が舞台。トロント映画祭2023でワールドプレミアされる。

(パウラ・エルナンデス監督)
キャスト:アルムデナ・ゴンサレス(レニ)、アルフレッド・カストロ(父親ピアソン神父)、セルジ・ロペス、ホアキン・アセベド
ストーリー:父ピアソン神父の盲目的信仰にとらわれているレニは、父と福音主義の使命を共有しています。或るありふれた自動車事故が彼らをグリンゴの経営する修理工場に導いていきます。神父が整備士の息子タピオカの魂を救うことに取りつかれたとき、レニは自分の運命を受け入れることを理解する。


2)「Pedágio / Toll」ブラジル=ポルトガル
クロージング作品、2023年、ポルトガル語、ドラマ、101分
監督:カロリナ・マルコヴィッチ(サンパウロ1982)は、監督、脚本家、製作者、フィルム編集者。2007年短編デビュー、短編6編の後、「Carvao / Charcoal / Calvón」)で長編デビューを果たした。これはサンセバスチャン映画祭2022の同セクションに選ばれており、2年連続のノミネートです。監督キャリア&フィルモグラフィーなどは、昨年既に紹介しています。本作も前作に続いて、テーマは宗教、生と死、義務とは何かです。高速道路の料金所で働いている女性がヒロイン、ゲイである息子を救済するため違法な行為に手を染めるようになっていく。製作はデビュー作を手掛けたカレン・カスターニョと再タッグを組み、監督自身も製作に参画、撮影はルイス・アルマンド・アルテアガ。
*カロリナ・マルコヴィッチのキャリア紹介は、コチラ⇒2022年08月25日

キャスト:メイヴ・ジンキングス(スエレン)、トマス・アキノ(アラウト)、アイザック・グラサ、カウアン・アルバレンガ(ティキーニョ)、カイオ・マセド(リック)、アリネ・マルタ・マイア(テルマ)
ストーリー:高速道路の料金所係員であるスエレンは、ゲイである息子のことで苦しんでいる。著名な外国人司祭が率いる高額なゲイの改宗ワークショップに息子を送るため、車で海岸に行く人々から金品を盗み取るマフィアの片棒を担ぐことにする。ただし、これは息子を入所させるという高貴な目的のためだけに必要な額だけです。反LGBTQ+の現大統領派からは「不快な社会ドラマ」と揶揄されている。

(カロリナ・マルコヴィッチ監督と主役を演じるメイヴ・ジンキングス)
3)「Alemania」アルゼンチン=ドイツ
ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラム2021、スペイン語、ドラマ、87分
監督:マリア・サネッティ(ブエノスアイレス1980)は、監督、脚本家、製作者。2021年、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラムの国際アルテキノ賞を受賞、本作が長編デビュー作。2011年、短編「Ping Pong Master」(12分)を監督、脚本、製作している。監督は姉が患っている精神障害に直面している家族を中心軸に、ドラマを展開させている。


(マリア・サネッティ監督)
キャスト:マイテ・アギラル(ロラ)、ミランダ・デ・ラ・セルナ、マリア・ウセド、ウォルター・ジャコブ
ストーリー:16歳のロラは、ドイツでのセメスターの可能性が出てきたことで、再受験の勉強に取りくむことにした。ロラはドイツに留学したいと思っているが、姉の精神医学的問題に行き詰っている家族は、ロラが断念してくれることを願っている。家族との軋轢に疲労して安定を失っているロラは、自分の考えを推し進めながら、自分自身と彼女を取り巻く状況の両方について、別の視点で見ることができる新しい経験を見つけようとしています。




(左から、パウラ・エルナンデス、カロリナ・マルコヴィッチ、マリア・サネッティ、
ドロレス・フォンシの4 監督)
オリソンテス・ラティノス部門2作発表*サンセバスチャン映画祭2023 ⑤ ― 2023年07月21日 15:22
オリソンテス・ラティノス部門――散発的なノミネート発表

★去る7月14日、製作国にスペインが参加している映画14作が発表になり、うちオリソンテス・ラティノス部門にはスペインとの合作であるアルゼンチン映画2作が含まれていました。例年ですと8月初めに一挙に全作が発表になるのですが、今年は散発的です。とりあえず発表順にアップしておきます。ホライズンズ・ラティノスを今回からオリソンテス・ラティノスとスペイン語読みに変更します。
*オリソンテス・ラティノス部門 ①*
1)Blondi(アルゼンチン=スペイン=米国)2023年、スペイン語、88分
2023年4月、BAFICI(ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭)でプレミアされ、アルゼンチンでは6月1日に公開されています。
監督:ドロレス・フォンシ(ブエノスアイレス1978)は、女優としてたびたびサンセバスチャン映画祭に参加していますが、今回はデビュー作「Blondi」の監督として訪れることになります。監督だけでなく脚本、製作、出演とエネルギーを爆発させています。フォンシの監督デビューには誰も驚かないはずです。10代で母親になった女性とその息子の特殊な関係が描かれ、母親ブロンディをフォンシ自身が演じます。夫君サンティアゴ・ミトレ監督がプロデューサーの一人として参加しています。リタ・コルテセやレオナルド・スバラリアなど、アルゼンチン映画ではお馴染みさんが共演しています。

★本祭との関りは、セクション・オフィシアルにファビアン・ヒエリンスキーの「El aura」(05)、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(15)、クラウディア・リョサのサイコスリラー「Distansia de rescate」(21『悪夢は苛む』Netflix)、オリソンテス・ラティノス部門にはサンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』(15)と『サミット』(17)などに出演しています。当ブログでは以下にキャリア&フィルモグラフィをアップしています。
*『パウリーナ』の紹介記事は、コチラ⇒2015年05月21日
*『サミット』の紹介記事は、コチラ⇒2017年10月25日/同年05月18日
*『しあわせな人生の選択』の紹介記事は、2016年01月09日/コチラ⇒2017年08月04日
*『悪夢は苛む』の紹介記事は、コチラ⇒2021年07月28日/同年11月03日
キャスト:ドロレス・フォンシ(ブロンディ)、カルラ・ペターソン(マルティナ)、リタ・コルテセ(ぺパ)、トト・ロビト(ミルコ)、レオナルド・スバラリア(エドゥアルド)、他多数
ストーリー:ブロンディとミルコは親友同士である。彼らは一緒にいるのが楽しい、同じ音楽を聴き、同じ映画を観て、二人ともマリファナが好きで、リサイタルも一緒に行き、互いの友人も同じ、すべてがパーフェクトである。ただほとんど同年代に見えますが、ブロンディはミルコの母親だということです。

(ミルコ役のトト・ロビトと)

(ぺパ役のリタ・コルテセと)
2)El castillo / The Castle(アルゼンチン=フランス=スペイン)2023年
ドキュメンタリー、スペイン語、78分 WIP Latam & Egeda Platino
監督:マルティン・ベンチモル(ブエノスアイレス1985)は、ドキュメンタリー監督、脚本家、撮影監督。本作はベルリン映画祭2023パノラマ部門観客賞ノミネート、香港FFヤングシネマ部門監督賞を受賞、グアダラハラFFで撮影監督のニコ・ミランダがドキュメンタリー撮影賞を受賞、ほかイスラエルの DocAviv 映画祭、テッサロニキ・ドキュメンタリーFF、カルタヘナFFなどに出品されている。製作者マイラ・ボテロ、共同製作者ハイディ・フライシャー、フリア・パラティアン。


(左から、ニコ・ミランダ、ベンチモル監督、ハイディ・フライシャー、
フリア・パラティアン、ベルリン映画祭2023、2月19日フォトコール)
★2017年、パブロ・アパロと共同監督したドキュメンタリー・ミステリー「El espanto」(65分)は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭の中編ドキュメンタリー賞を受賞しているほか、ラスパルマスFF、ドキュメント・バルセロナTV3賞にノミネートされている。2012年にパブロ・アパロと監督した「La gente del río」は、150人しか住んでいない川沿いのエルネスティナ村が舞台。住民は村を訪れる人々が川を楽しむだけでなく、破壊行為で汚していると訴えます。BAFICI 2013 で上映された。
出演者:フスティナ・オリボ、アレクア・カミノス・オリボ
解説:フスティナは人生のすべてを家政婦として働いてきた。彼女はアルゼンチンのパンパの奥深くに建つ大邸宅を、元の雇用主から生涯にわたる献身が報われて相続しました。条件は唯一つ、決して売ってはならないということだった。


(相続した大邸宅でくつろぐフスティナ・オリボ、アレクサ・カミノス・オリボ)

(マルティン・ベンチモル、ドロレス・フォンシ)
コンペティション部門ノミネート7作品*サンセバスチャン映画祭2023 ② ― 2023年07月15日 18:01
セクション・オフィシアルのノミネート7作品発表

★7月7日、第71回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2023セクション・オフィシアル(コンペティション部門)の7作品のノミネート発表がありました。例年16~20作くらいですから3分の1だけ、全体像が分かるまでには少し時間がかかりそうです。7作のなかにスペイン映画は含まれておりません。スペイン語映画としてはアルゼンチンの2作が選ばれています。昨年は最初にスペイン映画4作が発表になりましたが、今年は様子が違うようです。以下に公式サイトの発表順に、製作国、タイトル、監督名、キャスト、ストーリーなどを簡単に列挙しておきます。
◎第71回 SSIFF セクション・オフィシアル◎
1) All Dirt Roads Taste of Salt(米国)英語、97分
*イクスミラ・ベリアク2019
監督:レイブン ・ジャクソン(米、テネシー1990)は、監督、詩人、写真家、製作者。長編デビュー作だが本祭との関係は深く、2018年のネスト部門に短編「Nettles」(仮題「イラクサ」24分、タコマFF審査員賞)が出品されている。ほかノミネート作はイクスミラ・ベリアク・プログラムで掘り下げ完成させている。サンダンスFF2023のUSドラマ・コンペに正式出品された。ミシシッピで暮らす一人の女性の人生がリリックに語られる。
キャスト:チャーリン・マクルーア、ジャヤ・ヘンリー、レジナルド・ヘルムズ・ジュニア、クリス・チョーク、シーラ・アテム、他多数
ストーリー:数十年にわたるミシシッピ州で暮らす黒人女性の人生を探求する物語。私たちを形作った何世代もの人々、場所、そして言葉では言い表せない瞬間への賛歌です。セリフは殆どなく、美しいビジュアル、視覚的なストーリーテリングが監督の才能を際立たせている。

2) Ex-Husbands (米国)英語、コメディ、98分
監督:ノア・プリツカー(米、サンフランシスコ1986)は監督、作家。長編第2作目、2015年「Quitters」でデビュー、本祭参加は初めてとなる。新作は同じ家族ながらさまざまな登場人物たちのセンチメンタルな変転が語られる。主役グリフィン・ダン以下芸達者が共演する。
キャスト:グリフィン・ダン、マイルズ・ハイザー、ジェームズ・ノートン、エイサ・デイビス、ロザンナ・アークエット
ストーリー:ピーターの両親は65年間暮らした後に離婚した。彼の妻は35年後に去り、息子のニックとミッキーはそれぞれ自分の人生を送っている。ピーターがトゥルムに飛んで、ミッキーがお膳立てしたるニックの独身さよならパーティをぶち壊したとき、危機に瀕しているのは自分だけでないことに気づきます。

3) La práctica / The Practice(アルゼンチン=チリ=ポルトガル)
スペイン語、コメディ、90分
監督:マルティン・ライトマンRejtman(アルゼンチン、ブエノスアイレス1961)は監督、脚本家、作家、製作者。セクション・オフィシアルのノミネートは初めてだが、1999年「Silvia Prieto」(メイド・イン・スペイン)、オリソンテス・ラティノス部門に「Los guantes mágicos」(04)、「Dos disparos / Two Shots Fired」(14)、2019年にはネスト部門の審査委員長を務めた。最新ニュースとしては、SSIFF 2020でドキュメンタリー「El repartidor está en camino / Riders」を発表、ヨーロッパ-アメリカラテンの共同製作開発賞Eurimages を受賞した。夫婦の危機にあるエステバン・ビリャルディ扮するヨガ教師が主人公。「ヨガの世界についてのコメディです。ヨガを始めてから20年以上経ち、無意識のうちにこの映画を撮る準備してきた」と監督。
キャスト:エステバン・ビリャルディ(グスタボ)、ミルタ・ブスネリ(バネサ)、マヌエラ・オジャルスン、カミラHirane、ガブリエル・カニャス
ストーリー:グスタボとバネサは離婚したが、協力してプロジェクトを見直さなければならない。二人ともヨガ教師で、グスタボはアルゼンチン人でバネサはチリ人である。バネサは二人で共有していたスタジオに残り、グスタボは家無し子になった。グスタボは溜めこんだストレスによって膝を負傷し、ヨガを諦める。まず最初に大腿四頭筋を鍛え、その後ジムに行く。彼の人生は少しずつ軌道に乗り、再び練習に戻れるようになる。
◎別途に監督キャリア&フィルモグラフィ紹介を予定しています。

4) Lile rouge / Red Island / La isla roja (フランス=ベルギー)仏語、116分
監督:ロバン・カンピヨ(モロッコ、モハメディア1962)は、モロッコ系フランスの監督、脚本家、フィルム編集者。コンペティション部門ノミネートは初めてである。本作はマダガスカルのフランス領植民地を舞台にしている。2004年『奇跡の朝』で監督デビュー、『イースタンボーイズ』(ベネチアFF2013、オリゾンティ部門作品賞受賞)、『BPMビート・パー・ミニット』はカンヌFF2017グランプリ、国際批評家連盟賞、SSIFFのペルラク部門で上映されセバスチャン賞などを受賞した。ローラン・カンテの『南へ向かう女たち』(05)、カンヌFF2008でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』(セザール賞脚色賞)や「Foxfire」(12、『フォックスファイア 少女たちの告白』)の共同脚本家でもある。
キャスト:ナディア・テレスツィエンキーヴィツ(コレット・ロペス)、キム・グティエレス(ロベール・ロペス)、チャーリー・ヴォゼル(トマス・ロペス)、ソフィー・ギルマン、デビッド・セレロ、他
ストーリー:1970年代初頭のマダガスカルに我々は誘いだされる。フランスが統治していた植民地の一つでは、フランスの軍事基地に駐留する家族たちが植民地主義の最後のあがきを送っていた。トマスは10歳、冒険コミックの怖れを知らないヒロイン〈ファントメット〉の影響を受けた好奇心旺盛な少年である。一方、彼の視線は徐々に世界のもう一つの現実に開かれて始めていた。

5) MMXX (ルーマニア=モルドバ共和国=フランス)ルーマニア語、コメディ、160分
監督:クリスティ・プイウ(ルーマニア、ブカレスト1967)は、監督、脚本家、俳優。カンヌFFやカルロヴィ・ヴァリFFに出品されている。ルーマニア医療の現実を切りとった2作目『ラザレスク氏の最期』(05)、本祭との関りでは2016年ペルラク部門に『シエラネバダ』を出品している。2020年『荘園の貴族たち』は、ベルリンFFに新設されたエンカウンターズ部門に選出され監督賞を受賞した。
キャスト:ビアンカ・ククリチ、ローレンティウ・ボンダレンコ、イゴール・バビアック、オティリア・パナイテ、ドリアン・ボグタ、ドラゴス・ブクル、ロクサナ・オグレンディル、他
ストーリー:若いセラピストのオアナ・フィファーは、患者の質問に少しずつ悶着を起こし始めている。オアナの弟ミハイ・ドゥミトルは誕生日の準備にとらわれ、オアナの夫セプティミウは新型コロナ汚染に怯え、組織犯罪検査官のナルシス・パトラネスクは一人の同僚の死に動揺しています。歴史の岐路に立ち往生している人々の放浪をとらえた瞬間を描いています。

6) Puan (アルゼンチン=イタリア=ドイツ=フランス=ブラジル)スペイン語、107分
*イクスミラ・ベリアク2022
監督:マリア・アルチェ(ブエノスアイレス1983)
ベンハミン・ナイシュタット(ブエノスアイレス、1986)
マリア・アルチェは、SSIFF 2018オリソンテス・ラティノス部門にデビュー作「Familia sumergida / A Famiiy Submerged」がノミネートされ作品賞を受賞しました。一方ベンハミン・ナイシュタットは、同年「Rojo」がセクション・オフィシアルにノミネート、監督賞(銀貝)を受賞しているほか、主役のダリオ・グランディネッティが男優賞(銀貝)、ペドロ・ソテロが撮影賞を受賞するなどした。デビュー作「Historia del miedo / History of Fear」は、2014年オリソンテス・ラティノス部門にが選出されており、両作とも簡単な作品紹介をしています。ベルリンやロカルノ映画祭に参加している。
*「Rojo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月16日
*「Historia del miedo」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2014年02月24日
キャスト:マルセロ・スビオット(マルセロ)、レオナルド・スバラリア(ラファエル)、フリエタ・ジルベルベルグ、アレハンドラ・フレッチェネル、マラ・ベステリ、アンドレア・フリヘリオ
ストーリー:「プアン」として知られるブエノスアイレス大学のユニークな哲学部を舞台にした物語。マルセロはブエノスアイレス大学で哲学を教えています。彼の指導教師のカセリ教授が突然亡くなり、マルセロは空席になった学部長の椅子を引き継ぐことを受け入れます。予想しなかったことは、カリスマ的で魅力的な同僚であるラファエル・スジャーチュクがこの学部長席を奪おうとヨーロッパの大学から戻ってくることでした。二人が学部長職をめぐって闘うはめになり、マルセロの人生もアルゼンチンもカオスになるでしょう。混乱はアルゼンチンのアイデンティティの基本です。

7) Un silence / A Silence (ベルギー=フランス=ルクセンブルク)仏語、100分
監督:ヨハヒム・ラフォセ(ベルギー、イクル1975)は、SSIFF 2015のセクション・オフィシアルに「Les chevaliers blancs / The White Knights」がノミネート、監督賞(銀貝)を受賞している。8年ぶりに本作で戻って来ました。本祭との関りはペルラク部門に「L’economie du couple / After Love」(16)、「Les intranquilles / The Restless」(21)が出品されている。
キャスト:ダニエル・オートゥイユ、エマニュエル・デヴォス、マチュー・ガルー、サロメ・ドゥワエルズ、ラリッサ・フェイバー、デニス・シモネッタ、他
ストーリー:著名な弁護士の妻アストリッドは25年間沈黙したままだった。彼女の子供たちが正義を求め始めたとき、家族の安定に突然亀裂が生じます。


(左から、マリア・アルチェ、ベンハミン・ナイシュタット、
ロビン・カンピヨ、レイブン ジャクソン)

(左から、ヨアヒム・ラフォセ、ノア・プリツカー、
クリスティ・プイウ、マルティン・ライトマン)
リサンドロ・アロンソの新作がカンヌ・プルミェールに*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月19日 15:44
『約束の地』から9年ぶりとなるリサンドロ・アロンソの「Eureka」

★カンヌ・プルミェール部門に追加されたリサンドロ・アロンソの「Eureka」は、アルゼンチン、フランス、ポルトガルなど6ヵ国の合作。アロンソ監督はブエノスアイレス生れ(1975)、監督、脚本家。前作『約束の地』(「Jauja」14)以来、9年ぶりの新作。前作主演のヴィゴ・モーテンセンが新作でも主演、同じくモーテンセンの娘役で映画デビューした、デンマークのヴィールビョーク・マリン・アガーも出演して、同じ父娘に扮している。前作同様娘は失踪するようですが、もちろん続編ではありません。ほかにTVシリーズ『ナルコス:メキシコ編』でお馴染みのメキシコのホセ・マリア・ヤスピク、ポルトガルの監督でもあるベテラン女優マリア・デ・メデイロス、同じく舞台女優、ファドの歌手ルイーザ・クルス、ほかマルチェロ・マストロヤンニを父にカトリーヌ・ドヌーヴを母にもつフランスのキアラ・マストラヤンニなど錚々たるスターが共演している豪華キャストです。
*『約束の地』作品 & 監督キャリア紹介は、

(髪を短くした最近のリサンドロ・アロンソ監督)
「Eureka」
製作:4L(アルゼンチン)、Luxbox(フランス)、Rosa Film(ポルトガル)、
Woo Films(メキシコ)、Komplizen Film(独)、Fortuna Films(オランダ)、
Bord Cadre Films、Slot Machine
監督:リサンドロ・アロンソ
脚本:リサンドロ・アロンソ、マルティン・カーマニョ、ファビアン・カサス
撮影:マウロ・エルセ、ティモ・サルミネン
編集:ゴンサロ・デル・バル
衣装デザイン:ナタリア・セリグソン
メイクアップ:エレナ・バティスタ
特殊効果:フィリペ・ペレイラ
製作者:カリーヌ・ルブラン、マリアンヌ・スロット、(エグゼクティブ)アンディ・クラインマン、アンドレアス・ロアルド、ダン・ウェクスラー、(共同)フィオレッラ・モレッティ、エディ・ザルディ、ほか多数
データ:製作国アルゼンチン=フランス=ポルトガル=メキシコ=オランダ=ドイツ、2023年、スペイン語、ドラマ、ウエスタン、140分、撮影アルメリア、2021年11月11日クランクイン、カンヌ上映5月19日
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2023カンヌ・プルミェール部門正式出品
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン(マーフィー)、ホセ・マリア・ヤスピク、キアラ・マストラヤンニ(マヤ)、ヴィールビョーク・マリン・アガー(マーフィーの娘モリー)、ルイーザ・クルス(修道女)、ラフィ・ピッツ(無法者ランダル)、マリア・デ・メデイロス、サンティアゴ・フマガリ(受付係)、ナタリア・ルイス(娼婦)、ほか
ストーリー:ユーレカはアメリカ大陸のさまざまなところを飛びまわる鳥です。飛行中にタイムトラベルします。ユーレカは先住民が大好きです。運よく彼らの言葉を聞くと、人間になることが如何に難しいかを理解しようとします。1870年、アメリカとメキシコ国境地帯の無法者の町から始まり現在までの時間を、アメリカ、メキシコ、ブラジルのアマゾンのジャングルを縦断しながら、先住民文化の伝統と先祖伝来の知恵を守ることの重要性を探求する。4つのエピソードで構成され、異なる地域が描かれる。マーフィーは無法者ランダルに誘拐された娘を探すため町に到着する。

(マーフィー役のヴィゴ・モーテンセン)
★パート1は、前作『約束の地』で父娘になったヴィゴ・モーテンセンとヴィールビョーク・マリン・アガーが、今回も同じ役を演じる。誘拐犯ランダルはイランの監督で俳優としても活躍するラフィ・ピッツが演じる。パート2「パインリッジ」は、サウスダコタ州にある現在の先住民居留地が舞台となっている。4部構成の最後「アマゾニア」はアマゾンのジャングルが舞台となる。先住民ではないUbirajaraウビラジャラは、アマゾンでは非常に脅かされていたので地元の金鉱山の探査に出発する。文字通りゴールドラッシュに苦しむことになる。パート3は目下情報が入手できていません。

(前作『約束の地』のオリジナルポスター)
★アロンソ監督によると「北米の先住民部族と、南米の祖先伝来の伝統を守りたいと願い現代から逃れてきたアマゾンに住む部族を比較したいと思っています。1870年から始まりますが、まったくと言っていいほど現代を描いています。現代の悲劇、自然との断絶感、富の追求によって疎外された世界の過去を描いています」と、シネヨーロッパのインタビューでコメントしている。「私たち全員、特に南米の人々に、私たちが何処でどのように生きるべきか、よりよく生きるためにはどうすれば良いかを考えてほしい」とも語っている。アルゼンチンのパタゴニアを舞台にした『約束の地』で先住民の過酷な運命を描きたかったが、もっと時間をかける必要を感じたようです。そして今回の「Eureka」に繋げることができたわけです。

(キアラ・マストラヤンニ)
★ヴィゴ・モーテンセンのキャリア & フィルモグラフィー紹介は、既に『約束の地』あるいはサンセバスチャン映画祭2020ドノスティア栄誉賞受賞の折にアップしております。ストーリー及びキャストの立ち位置もはっきりせず隔靴掻痒なので、もう少し全体像が見えてから補足します。脚本家のファビアン・カサスは前作でも共同執筆しており、自分は脚本家というより「アロンソ専用の脚本家」だとコメント、確かに2作しか執筆していない。ほか俳優として「ある視点」ノミネートのロドリゴ・モレノの「Los delincuentes」に教師役で出演している。彼とアロンソ監督とモーテンセンの3人はサッカーファン、アルゼンチンのクラブチーム「サンロレンソ・デ・アルマグロ」の熱狂的なおじさんサポーターである。
*ヴィゴ・モーテンセンのキャリア紹介は、コチラ⇒2020年07月08日
*サンセバスチャン映画祭ドノスティア栄誉賞の記事は、コチラ⇒2020年09月26日
★最近カンヌ映画祭が発表したフォトから選んでおきます。




「ある視点」にロドリゴ・モレノの犯罪コメディ*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月11日 15:09
アルゼンチンから自由と冒険を求める犯罪コメディ「Los delincuentes」

★「ある視点」部門にはスペインはノミネートなし、アルゼンチン、チリなどラテンアメリカ諸国が気を吐いている。アルゼンチンのニューシネマの一人ロドリゴ・モレノの長編4作目「Los delincuentes」(アルゼンチン、ブラジル、ルクセンブルク、チリ)は、ブエノスアイレスに支店をおく銀行の従業員2人が勤務先で強盗を計画するというコメディ仕立ての犯罪もの、彼らの運命は如何に。モレノ監督はドキュメンタリーや共同監督作品を含めると10作近くなる。なかで単独監督デビュー作の「El custodio」は、ベルリン映画祭2006でアルフレッド・バウアー賞を受賞、サンセバスチャン映画祭、マイアミ、グアダラハラ、ハバナなど国際映画祭の受賞歴は30以上に上りました。フィルモグラフィー紹介は後述するとして、新作のデータ紹介から始めます。
「Los delincuentes」(英題「The Delinquents」)
製作:(アルゼンチン)Wanka Cine / Rizona Films / Jaque Producciones / Compañia Amateur /(ブラジル)Sancho &Punta /(ルクセンブルク)Les Films Fauves /(チリ)Jirafa films 協賛INCAA
監督・脚本:ロドリゴ・モレノ
撮影:イネス・ドゥアカステージャ、アレホ・マグリオ
編集:カレン・アケルマン、ニコラス・ゴールドバート、ロドリゴ・モレノ
プロダクション・デザイン・美術:ゴンサロ・デルガド、ラウラ・カリギウリCaligiuri
衣装デザイン:フローラ・カリギウリ
音響:ロベルト・エスピノサ
製作者:エセキエル・ボロヴィンスキー(エグゼクティブ)、エセキエル・カパルド(プロダクション・マネジャー)、レナタ・ファルチェト(ヘッド)、フロレンシア・ゴルバクスGorbacz、Eugenia Molina、マティアス・リベラ・バシレ(アシスタント)、(以下ルクセンブルク)Jean-Michel Huet、Yahia Sekkil、Manon Santarelli、Alexis Schmitz
データ:製作国アルゼンチン、ブラジル、ルクセンブルク、チリ、2023年、スペイン語、コメディ、90分、撮影地ブエノスアイレス、コルドバの山地、期間2022年3月末~6月、配給マグノリア・ピクチャーズ・インターナショナル
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2023「ある視点」正式出品、シドニー映画祭(6月)
キャスト:エステバン・ビリャルディ(ロマン)、ハビエル・ソロ(モラン)、マルガリータ・モルフィノ(モランの恋人ノルマ)、ダニエル・エリアス、セシリア・ライネロ(モルナ)、ヘルマン・デ・シルバ、ラウラ・パレデス、ガブリエラ・サイドン(ロマンの妻フロール)、セルヒオ・エルナンデス、他
ストーリー:ロマンとモランは、ブエノスアイレスに小規模な支店をおく銀行の従業員です。二人は自由と冒険を探しています。モランは日ごとに彼らを灰色の人生に陥れるルーチンを振りはらうというそれだけの意図で、同僚と共謀して大胆な計画を実行することにします。彼らが定年まで稼ぐ給料に相当する金額を銀行から前もって頂くことにしました。どういうわけか彼の強盗計画は成功し、自分の運命を同僚ロマンの運命に委ねます。まず全額を彼に預け、その後土地を探すつもりでコルドバに逃れます。旅先で出会った女性ノルマに無分別にも夢中になります。彼女は姉と山地の分譲地販売をしている彼氏と同居している。数日間一緒に過ごし、必ず戻ってくるが、3年間待ってくれと頼みこむ。ノルマにはすべてが馬鹿げているとしか思えない。一方ロマンは銀行で働きつづけていますが、折悪しくお金の不足についての内部調査が始まりました。非常に多額のお金を隠しているロマンは恐怖に襲われます。同僚たちだけでなく妻フローラにも隠さねばなりません。計画を変更したらいいのでしょうか・・・

(混乱する銀行支店、左から3人目ヘルマン・デ・シルバ)


★モレノ監督によると「モランは犯罪を犯して代価を支払うとしても、解放感を得るために危険な計画を考案する。共犯者のロマンも働かずに義務から解放され自由のなかでより良い生活、つまり都会、仕事、家族から離れ、海とか山とかレジャーが楽しめる田舎暮らしを誰にも依存せずに送りたい。しかし夢を達成するには、どうやって生計を立てるかという実存的な障害が立ちはだかる」。じゃあ目標を追求するにはどうしますか、というお話です。モランの計画は刑務所暮らしも想定内なのです。



★監督紹介:ロドリゴ・モレノ、1972年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、製作者、ブエノスアイレスのシネ大学の監督プログラムを卒業、独創的なストーリーテリングを目指すアルゼンチンの若い世代のグループの一人です。1993年短編「Nosotros」(8分)で監督デビュー、ビルバオ・ドキュメンタリー短編映画祭で作品賞を受賞する。2012年制作会社「Compañia Amateur」を設立し、「Reimon」以降を製作している。脚本を執筆したルシア・メンドサの「Diarios de Mendoza」、コロンビアのフアン・セバスティアン・ケブラダの「Días extraños」を製作している。フアン・ビジェガスとMoVi cineを共有している。主なフィルモグラフィーは以下の通り:
1993年「Nosotros」短編(8分)、監督、脚本
1998年「Mala época」監督、脚本、マリアノ・デ・ロサ、ほか4名の共同作品
(マル・デル・プラタ、トリノ、シカゴ、サンセバスチャン、他)
2002年「El descanso」監督、脚本、ウリセス・ロセル、アンドレス・タンボルニーノ、
3名の共同作品(Bafici*、ロンドン、ベネチア、トゥールーズ)
2006年「El custodio」単独長編デビュー作、監督、脚本
(ベルリン、サンセバスチャン、マイアミ、ニューヨーク、グアダラハラ、ハバナ)
2007年「La señal」TV Movie、監督、脚本
2011年「Un mundo misterioso」第2作、監督、脚本
(ベルリン、トロント、サンパウロ、Bafici)
2014年「Reimon」第3作、監督、脚本、製作、72分
(ロッテルダム、ハンブルク、Bafici、サンパウロ、バルでビア)
2017年「Una ciudad de provincia」ドキュメンタリー、監督、脚本、製作、88分、IBAFF
(ロッテルダム、ビエンナーレ、Bafici)
2018年「Our Nighttime Story」ドキュメンタリー、監督、フアン・ビジェガス、
ほか3名の共同作品
2023年「Los delincuentes」第4作、監督、脚本
2014年、ルシア・メンドサの「Diarios de Mendoza」(55分)脚本、製作
2015年、フアン・セバスティアン・ケブラダの「Días extraños」(70分)脚本、製作
*Baficiは、1999年設立されたブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭

(ロドリゴ・モレノ)
★上述したように1993年に短編「Nosotros」でスタートした。オムニバス長編「Mala época」は、4名の共同作品ですが、マル・デル・プラタ映画祭1998で、若い映画製作者の視点で現代を切り取ったことが評価されてFIPRESCI賞とスペシャルメンションを受賞、その他トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭1999で観客賞を受賞、ノミネート多数。共同監督作品「El descanso」は、リェイダ・ラテンアメリカFFでICCI脚本賞を受賞した。

★ベルリン映画祭でアルフレッド・バウアー賞を受賞して国際的な評価を受けたのは、単独で監督したデビュー作「El custodio」だが、本作は前年のサンダンスFFに出品されラテンアメリカ部門のNHK賞を受賞している。その他ボゴタFFで作品賞、監督賞、サンセバスチャンFFホライズンズ・ラティノ部門でスペシャルメンションを受賞している。


(アルフレッド・バウアー賞のトロフィーを披露する監督)
★5月10日「ある視点」の審査団が発表になりました。審査委員長は俳優、コメディアンのジョン・C・ライリー、ほか俳優パウラ・ベーア、俳優エミリー・ドゥケンヌ、監督デイヴィー・チョウ、監督アリス・ウィノクールの5名です。
追加情報:邦題『ロス・デリンクエンテス』で2024年3月公開されました。
セクション・オフィシアル(コンペ部門)②*マラガ映画祭2023 ⑤ ― 2023年03月06日 17:20
5)El fantástico caso del Golem (仮題「ゴーレムのファンタスティックな出来事」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、SF、95分、公開スペイン6月16日予定、長編3作目。
監督紹介:フアン・ゴンサレス&フェルナンド・マルティネス(バーニン・ペルセベスBurnin' Percebes)、脚本も同じ。フアン・ゴンサレスはESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画・テレビ・演劇の脚本を専攻。フェルナンド(IMDbナンド)・マルティネスは、バルセロナ大学オーディオビジュアル科卒(2015)、Burnin' Percebesは二人のグループ名。2014年から短編、長編を手がけている。
*2020年、本作にも出演しているブルナ・クシとハビエル・ボテットを起用して、スーパー8ミリで撮ったファンタジー「La reina de los lagartos」がその斬新さで周囲を驚かせる。フェロス賞ポスター部門、スペシャル賞にノミネート、第7回リソマRizoma賞を受賞、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭でも上映された。バルセロナのD'A映画祭ほかに参加している。2023年、制作会社Aquí y Allí Films で本作を撮る。現在アニメーション・シリーズ「Meretricius」、長編「Royal Films」が進行中。

(手前フアン・ゴンサレス、後ろフェルナンド・マルティネス)

(フェロス賞ポスター部門ノミネートの「La reina de los lagartos」から)
キャスト:ブライス・エフェ、ブルナ・クシ、ルイス・トサール(トニ)、アンナ・カスティーリョ、ハビエル・ボテット、ロジャー・コマ、ナオ・アルベト、ロベルト・アラモ、ダビ・メネンデス、ティト・バルベルデ
ストーリー:パーティが終わったあと、酔っぱらったダビは友人フアンの目の前でテラスから転落してしまいます。ダビの体は車のボンネットの上にぶつかりばらばらになりました。誰も騒ぎ立てていないようなので、フアンは何が起きたのか調べることにしました。こうして彼は空から降ってくるピアノと矛盾の迷宮に迷い込んでいきます。


6)Els Encantats(西題Los encantados 仮題「魔法にかけられて」)
データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語(字幕上映)、ドラマ、108分、公開スペイン6月2日予定
監督紹介:エレナ・トラぺ、2作目「Las distancias」がマラガ映画祭2018で金のビスナガと監督賞を受賞、翌年のガウディ賞を受賞している。短編数編の後。「Blog」で長編デビュー、サンセバスチャン映画祭2010サバルテギ部門に出品、「ある視点」を受賞、CECの新人監督賞にもノミネートされた。2015年の「Palabras, mapas, secretos y otras cosas」は、イサベル・コイシェについてのドキュメンタリー、新作は長編3作目。脚本はミゲル・イバニェス・モンロイとの共同執筆。以下で監督紹介をしています。
*「Las distancias」の作品、及びキャリア&フィルモグラフィー紹介は、

キャスト:ライア・コスタ(イレネ)、ダニ・ペレス・プラダ、ペップ・クルス、アイナ・クロテット、アイナラ・エレハルデ・ベル、デリア・ブルファウ、マルティ・アタンス
ストーリー:最近離婚したばかりのイレネは、4歳になる娘が父親と数日間過ごすことになり、初めて一人で自身に向き合っている。この新しい現実に適応できず、別荘のあるカタルーニャのピレネー山脈の小さな村に旅をしようと思い立つ。長い間失ったと感じていた安定と落着きを取り戻そうと考えたのだ。しかし、以前は親しい場所だったのに、次第に彼女の人生と同じようにイレネを圧倒し、自分の怖れを克服するには逃亡は役に立たないことを理解するだろう。


(ライア・コスタ、ペップ・クルス、フレームから)
7)Empieza el baile (仮題「ダンスを始める」)
データ:製作国アルゼンチン=スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、99分、撮影地メンドーサ(アルゼンチン)
監督紹介:マリナ・セレセスキー、1969年、ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、女優。本作が長編3作目、アムステルダム映画祭2016「La puerta abierta」で長編デビュー、作品紹介をしています。2019年2作目の「Lo nunca visto」では、カルメン・マチ、ペポン・ニエトが出演している。ドキュメンタリーのほか短編多数。
*「La puerta abierta」の作品紹介は、コチラ⇒2017年01月12日

キャスト:ダリオ・グランディネッティ(カルロス)、メルセデス・モラン(マルガリータ)、ホルヘ・マラレ(ピチュキート)、パストラ・ベガ、アゴスティナ・ポッツイPozzi、ラウタロ・セラ、マルセロ・Xicarts、カロリナ・ソビシュSobisch
ストーリー:カルロスとマルガリータは、当時最も認められた有名なタンゴのカップルでした。今日では、その素晴らしさ、二人が共有した情熱、ステージ、旅、人生は何も残っておりません。カルロスはマドリードに住んでおり、マルガリータは忘却のブエノスアイレスに住んでいる。二人の切っても切れない友人ピチュキートと一緒に、カルロス・ガルデルの街からアンデス山脈の麓へ、彼らの記憶、怖れ、そして何よりも本当の望みを求めて旅立ちます。このクレージーな旅で彼らが避けてきた過去だけでなく、最もピュアな人生に出会えるでしょうか。

(左から、カルロス、マルガリータ、ピチュキート)

8)La desconocida (仮題「見知らぬ人」)
データ:製作国スペイン、2022年、ドラマ、88分、長編映画3作目。
監督紹介:パブロ・マケダ、1985年マドリード生れ、製作者、監督、脚本家。2012年「Manic Pixie Dream Girl」で長編デビュー、マドリード・コンプルテンセ大学UCMの視聴覚コミュニケーションの学位を取得。チェマ・ガルシア・イバラ、マルサル・フォレス、エドゥアルド・カサノバを含む25本以上の製作を手がけている。2020年、ヴェルナー・ヘルツォークと共にドキュメンタリー「Dear Werner(Walking on Cinema)」を撮る。1974年にヘルツォークが師ロッテ・アイスナー危篤の報を受け、彼女の病気平癒を願ってミュンヘンからパリまで歩いた足跡を辿るドキュメンタリー、映画製作の意味を探る旅が語られる。セビーリャ・ヨーロッパ映画祭ニューウェーブ部門でプレミアされた。さらにジネビ、トリノ、トレントなど各映画祭に出品された。RTVEのディアス・デ・シネ賞2021「ビダ・エン・ソンブラ」賞、アルシネ・フェスティバル観客賞を受賞、サンジョルディ賞、フェロス賞、シネマ・ライターズ・サークル賞(ドキュメンタリー部門)にノミネートされた。


(ドキュメンタリー「Dear Werner」のポスター)
キャスト:ライア・マンサナレス(カロリナ)、マノロ・ソロ(レオ)、エバ・リョラチ(エリサ)、ブランカ・パレス(ニナ)、ベガ・セスペデス(アニタ)
ストーリー:カロリナはナイーブで魅力的な若い女性です。彼女はチャットでレオと知り合った。彼は16歳の若者になりすましていた大人の男で、カロリナを騙して市内の閑散とした公園で会うことに成功する。しかしレオがカロリナに会って見ると、彼女が見た目ほどイノセントで無邪気でないのではないかと疑い始める。

(レオとカロリナ、フレームから)

セクション・オフィシアル(コンペ部門)①*マラガ映画祭2023 ④ ― 2023年03月03日 18:26
第26回マラガ映画祭2023ノミネーション長編映画全20作

★コンペティション部門セクション・オフィシアルは全20作、新人発掘の映画祭でもあるのでデビュー作が多いのは当然として、最近はベテラン監督の多さが気になります。すでに既発の国際映画祭(ベルリン、ベネチアなど)でプレミアされたもの、中には受賞作もあるようです。作品数が多いので何回かに分けてアップする予定です。スペイン単独作品が8作と多く、メキシコ、ブラジルは別として、市場が狭く単独では製作できないアルゼンチン、チリ、コロンビアなどのラテンアメリカ諸国は合作です。ブラジルのポルトガル語映画は字幕入り上映、セッションは各3回ずつと例年通りです。
*第26回マラガ映画祭セクション・オフィシアル全20作*
1)20.000 especies de abejas (仮題「2万種のミツバチ」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・バスク語・フランス語、ドラマ、129分、長編デビュー作
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023コンペティション部門でプレミア(2月22日)。ギルデ・ドイツ・フィルムアートシアター賞、バリナー・モルゲンポスト紙読者賞、主演のソフィア・オテロ(9歳)が銀熊主演賞を受賞という快挙、過去の受賞者は故フェルナンド・フェルナン≂ゴメスの2回、2012年にビクトリア・アブリルが『アマンテ』で受賞しているだけである。

(銀熊主演賞のソフィア・オテロ、ベルリンFF授賞式)
監督紹介:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン、1984年バスク自治州アラバ生れ、監督、脚本家、製作者。バスク公立大学視聴覚コミュニケーションの学位を取得、フィルム編集の制作理論、ESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画監督の修士号と映画ビジネスの修士号を取得、マーケティング、配給、国際販売などを学ぶ。2019年制作会社「Sirimiri Films」を設立。
フィルモグラフィー:2012短編「Adri」、2016長編ドキュメンタリー「Voces de papel」(サンセバスチャン映画祭プレミア)、2018短編「Nor nori nork」、2020短編「Polvo somos」、2022短編「Cuerdas」はカンヌ映画祭「批評家週間」に正式出品、受賞歴多数、フォルケ賞短編部門受賞。

(エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督)
キャスト:ソフィア・オテロ(アイトル/ルシア)、パトリシア・ロペス・アルナイス(母親アネ)、アネ・ガバライン(ルーデス)、イツィアル・ラスカノ(リタ)、サラ・コサル(レイレ)、マルチェロ・ルビオ(ゴルカ)、ウナックス・ヘイデンHeyden、他
ストーリー:8歳になる少女ルシアは他人の期待に添わない。母親のアネは夏休みを利用して3人の子供たちと養蜂をしている実家に帰郷します。アネの母親リタ、叔母ルルド、3世代の女性たちが直面する疑いと怖れは、彼女たちの人生を変えてしまうだろう。性同一性を求めているルシアの物語。

(ベルリンFFで絶賛されたルシア役のソフィア・オテロ、フレームから)

2)Bajo terapia (仮題「セラピー中」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、93分、マティアス・デル・フェデリコの同名小説の映画化。
監督紹介:ヘラルド・エレーロ、1953年マドリード生れ、製作者、監督。1987年、制作会社「Tornasol Media」設立、国際的に活躍している大物プロデューサー、手がけた作品はドキュメンタリー、エグゼクティブを含めると150作を超える。うち2009年製作の『瞳の奥の秘密』は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞、アルゼンチンにオスカー像をもたらした。ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」ではゴヤ賞2019の監督賞以下7冠を制した。監督作品としては、実話をベースにした「Heroína」でマラガ映画祭2005の銀のビスナガ監督賞を受賞している。続く2006年には「Los aires dificiles」で金のビスナガ作品賞を受賞した。ほかに『戦火の沈黙、ヒトラーの義勇兵』(11)など。

キャスト:マレナ・アルテリオ、アレクサンドラ・ヒメネス、フェレ・マルティネス、アントニオ・パグド、エバ・ウガルテ、フアン・カルロス・ベリィド
ストーリー:3組の夫婦が珍しいグループ・セラピーのセッションを受けに集まった。心理学者はカップルが一緒に対処しなければならないスローガンを同封した封筒を渡しました。提案されたメカニズムは、誰もが自分の意見を述べ、話し合い、最終的にありのままの自身をさらけ出すことを奨励します。ユーモアを主なツールとして、出会いは予想もしない限界まで複雑になるでしょう。


3)Desperté con un sueño (仮題「夢で目覚めた」)
データ:製作国アルゼンチン=ウルグアイ、2022年、ドラマ、76分、長編3作目
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023ジェネレーションKplus部門でプレミアされた。
監督紹介:パブロ・ソラルス、1969年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、俳優、教師。ブエノスアイレス演劇学校に入学、コロンビア大学シカゴ校で映画を学んだ後帰国、母国でキャリアを積む。脚本家として、カルロス・ソリンの「Historias minimas」、アリエル・ウィノグラードの「Sin hijos」、フアン・タラトゥトなどとタッグを組んでいるほか脚本執筆多数。2011年「Juntos para siempre」で長編デビュー、2017年、名優ミゲル・アンヘラ・ソラを主役に起用した2作目「El último traje」が、『家へ帰ろう』の邦題で劇場公開された。SKIP映画祭上映の折来日している。新作が3作目になる。当ブログで「Sin hijos」の作品紹介をしています。

キャスト:ルーカス・フェロ(フェリペ)、ミレリャ・パスクアル、ロミナ・ペルフォ、マリアナ・スミレビテス、エマ・セナ
ストーリー:フェリペの日常は、湯治場の閑散とした通りを友人たちと自転車に乗ったり、フリースタイルでラップしたり、母親に隠れて演劇のクラスに行ったりして過ごしている。彼の情熱は夢のようなものだが、目覚めると直ぐ内容を書き留めておく。ある映画のオーディションの可能性に直面して、父親が亡くなった8歳のとき以来一度も会ったことのない父方の祖母を頼って首都に脱出する。フェリペは過去の断片をかき集め、自分が何になりたいかを考え始める。


(再会した祖母、フレームから)

4)El castigo(仮題「罰」)
データ:製作国チリ=アルゼンチン、スペイン語、2022年、ドラマ、86分
監督紹介:マティアス・ビセ、1979年サンティアゴ・デ・チリ生れ、監督、製作者、脚本家。2003年にデビュー作「Sábado」を若干23歳で撮った。マンハイム・ハイデルベルク映画祭のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞を受賞した。2005年の2作目「En la cama」がバジャドリード映画祭2005の作品賞金の穂を受賞、『ベッドの中で』の邦題でミニ映画祭で上映された。5作目「La vida de los peces」はベネチア映画祭2010監督週間でプレミアされ、ゴヤ賞2011イベロアメリカ映画部門で受賞、ブニュエル賞ほか受賞歴多数。6作目「La memoria del agua」はウエルバ映画祭2015銀のコロン賞ほかを受賞、『水の記憶』としてNetflixで配信されている。2022年の「Mensajes Privados」はマラガ映画祭にノミネートされ、ニコラス・ポブレテが助演男優賞を受賞した。新作は9作目になる。
*「Mensajes Privados」の紹介記事は、コチラ⇒2022年03月14日

(マティアス・ビセ、マラガ映画祭2022のプレス会見)
キャスト:アントニア・セヘルス(アナ)、ネストル・カンティリャナ(マテオ)、カタリア・サアベドラ、ジャイル・フリ Yair Juri、サンティアゴ・ウルビナ(ルーカス)
ストーリー:アナとマテオは、悪さをしたので罰として数分間放っておいた息子が行方不明になってしまった。必死の捜索は、リアルタイムで森の中や自動車道などで行われる。80分間というもの夫婦は、恐怖、罪悪感、壊れやすい彼らの繋がり、最も厳しい発覚に直面する。アナがどこかで息子が見つからないよう願っているのは、彼が生れてからずっと幸せでなかったからだ。

(息子を探すアナとマテオ)

サンティアゴ・ミトレの『アルゼンチン1985』*プライムビデオ鑑賞記 ― 2022年11月23日 18:05
アカデミー賞2023のアルゼンチン代表作品『アルゼンチン1985』

★アルゼンチン初となるアマゾン・オリジナル作品となったサンティアゴ・ミトレの『アルゼンチン1985』は、10月21日から配信が始まりました。サンセバスチャン映画祭2022の作品紹介で140分が長かったか短かったか試されると書きましたが如何でしたでしょうか。本作のように生存者の証言記録、法廷内の写真などが残っている場合は、ドラマとは言え事実にお化粧直しはできません。その当時、リアルタイムで新聞を読みラジオの特別放送を聞いていた国民のなかには、封印してきた過去の亡霊に直面して眠れなかった人もいたはずです。コロナ禍の中にも拘わらず、公開3週間で約60万人が映画館に足を運んだ。
★実在した重要人物が多いのも本作の特徴です。実在あるいは架空の登場人物紹介を兼ねながら物語を進めたい。なお本作は第95回アカデミー賞国際長編映画賞とゴヤ賞イベロアメリカ映画賞のアルゼンチン代表作品に選ばれ、ホセ・マリア・フォルケ賞のイベロアメリカ映画部門にノミネートされました。
*作品、監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2022年09月06日
データ:『アルゼンチン1985~歴史を変えた裁判~』(原題「Argentina, 1985」)アルゼンチン=米国合作、2022年、スペイン語、歴史・法廷ドラマ、140分、10月21日からプライムビデオ独占配信開始。
映画祭・受賞歴:第79回ベネチア映画祭2022コンペティション部門正式出品、FIPRESCI(国際映画批評家連盟賞)、SIGNIS 佳作(カトリックメディア協会賞)の2冠、第70回サンセバスチャン映画祭ペルラス部門の観客賞受賞、ラ・ロッシュ・シュル・ヨン映画祭(仏)観客賞受賞、他チューリッヒ、ハンブルグ、ロンドン、リオデジャネイロ、ニューポートビーチ、ベルゲン、各国際映画祭で上映された。

(ミトレ監督、リカルド・ダリン、ピーター・ランサニ、ベネチア映画祭2022)
あらすじ:1983年10月3日、軍事独裁から政権が民政に移管された。ラウル・アルフォンシは大統領に就任した12月13日に「大統領政令158/83」に署名し、司法手続きが開始された。軍事独裁政権時代(1976~83)の3人の大統領を含む陸海空三軍の軍人9名を「拉致・拷問・殺害の大量虐殺」の罪で起訴した集団裁判、いわゆる「軍事評議会裁判または評議会裁判」(フンタス裁判)が1985年4月22日に始まった。約4か月半後の8月14日までに、延530時間、833人の証人が証言し、結審した12月9日までを物語った法廷ドラマ。この映画は、主任検事フリオ・ストラッセラと副検事ルイス・モレノ・オカンポの実話に触発されて製作されました。
主なキャスト紹介:
リカルド・ダリン(フリオ・ストラッセラ主任検事、1933~2015、享年81歳)
ピーター・ランサニ(ルイス・モレノ・オカンポ副検事、1952~)
アレハンドラ・フレヒナー(ストラッセラ妻シルビア、実名マリサ)
サンティアゴ・アルマス・エステバレナ(ストラッセラ息ハビエル、実名フリアン)
ジーナ・マストロ二コラ(ストラッセラ娘ベロニカ)
ノーマン・ブリスキ(ルソ、ストラッセラの先輩弁護士、架空)
クラウディオ・ダ・パッサノ(ストラッセラの友人〈ソミ〉作家カルロス・ソミリアナ、享年54歳)
ガブリエル・フェルナンデス(ブルッゾ、架空)
パウラ・ランゼンベルク(ストラッセラ付の司法職員スサナ)
ラウラ・パレデス(アドリアナ・カルボ・デ・ラボルデ、最初の証言者、1947~2010、享年63歳)専攻
カルロス・ポルタルッピ(レオン・カルロス・アルスラニアン裁判長)
アレホ・ガルシア・ピントス(判事)
ウォルター・ジェイコブ(判事)
エクトル・ディアス(被告側の主任弁護士バシーレ)
リカルド・セペタ(同上)
ソフィア・ラナロ(コルドバ出身の証人)
ロベルト・マウリ(同上)
◎他に判事、証言者多数
*9名の被告
マルセロ・ポッツィ(ホルヘ・ラファエル・ビデラ陸軍総司令官、期間1976年3月29日~81年3月28日、終身刑及び永久資格剥奪)
エクトル・バルコネ(ロベルト・エドゥアルド・ビオラ陸軍総司令官、期間1981年3月29日~12月11日、禁固17年)
カルロス・Ihler(レオポルド・フォルトナート・ガルティエリ陸軍総司令官、期間1981年12月22日~1982年6月16日、無罪)
ホセロ・ベジャ(エドゥアルド・マセラ提督、ビデラ政権、終身刑)
ホルヘ・バラス(アルマンド・ランブルスキーニ海軍、ビオラ政権、禁固8年)
ホルヘ・グレゴリオ(オルランド・アゴスティ陸軍准将、禁固4年6ヵ月)
セルヒオ・サンチェス(ホルヘ・アナヤ海軍准将、ガルティエリ政権、無罪)
マルセロ・ロペス(バシリオ・ラミ・ドソ空軍司令官、ガルティエリ政権、無罪)
ホルヘ・ルイス・コウト(オマール・グラフィグナGraffigna空軍総司令官、ビオラ政権、無罪)
*若手司法チームのメンバー
マヌエル・カポニ(ルーカス・パラシオス)、ブリアン・シチェルSichel(フェデリコ・コラレス)、アルムデナ・ゴンサレス(ジュディス・ケーニッヒ)、フェリックス・ロドリゲス・サンタマリア(マコ・ソミリアナ、作家ソミの息)、アントニア・ベンゴエチェア(マリア・エウヘニア)、サンティアゴ・ロビト(エドゥアルド)、レイラ・ベチャラ(イサベル)、他
*その他
アドリアン・マンペル(ラウル・アルフォンシン大統領)
フィト・ヤネリ(国土安全保障長官/内務大臣アントニオ・トロッコリ)
ロサナ・ヴェツィニVezzoni(5月広場の母)
アナイ・マルテジャ(同上)
スサナ・パンピン(オカンポ副検事の母ペルラ)
アンドレス・スリタ(オカンポ副検事の伯叔父、大佐)
ギジェルモ・ジャクボウィッツ(ストラッセラの身辺警護官オルミガ)
マルティン・ガジョ(同上ロメロ)
◎海外メディアを含む新聞社、ラジオ・テレビ局の記者、制作者、カメラマン、「5月広場の母たち」のメンバーなど多数
良くも悪くもリカルド・ダリンの独壇場
A: サンティアゴ・ミトレ監督とリカルド・ダリンがタッグを組むのは、『サミット』(17)に続いて2作目です。2011年の単独長編デビュー以来5作しか撮っていない熟慮タイプの監督です。しかしミトレはパブロ・トラペロの『檻の中』(08)、『カランチョ』(10)、『ホワイト・エレファンテ』(12)の共同脚本家としても知られ、『カランチョ』には出演もしている。
B: ダリンは『カランチョ』や『ホワイト・エレファンテ』の主役、二人の接点は早く付き合いは長い。彼は元もとコメディ役者ですから、ストラッセラ検事のような役は打って付けです。
A: ミトレは硬派の監督ですがコメディも撮っています。実際のストラッセラはユーモアに富んだ人柄だったようで、例えば被告席で無罪を信じきって談笑する空軍の将軍たちに怒りを抑えられないフリオは、卑猥な行為で挑発、さらに鼻を摘まむしぐさをして副検事を慌てさせた。このシーンは事実で、エンディングの写真に採用されていたが本物は眼鏡をかけていない。(笑)
B: ざわつく法廷に副検事のルイス・モレノ・オカンポが驚いて「落ち着いてください」と制していた。写真がバッチリ残っていますね。空軍は大量虐殺には関与していなかったのですか。
A: 主に失踪者の秘密の拘置センター間の移動を請け負った。全国に散らばったセンターは340ヵ所もあったという。そのうち遠方からの移送では空軍が担った。運ぶだけでなく纏めて殺害したい場合は睡眠薬で眠らせて生きたまま海中に落とした。全員死亡したからあの時点では証拠収集が難しかったのです。エンディングで採用されたた船のデッキから海へ花束を投げ入れている写真は、彼らを弔っている遺族たちです。
B: 強制収容所は街中の空き地に建てたバラック小屋からパタゴニアまで広範囲に散らばっていた。


(メガネかけていない。鼻を摘まむストラッセラ、写真とフレームから)
A: また偉ぶらないし、礼儀を重んずる人だったようで、被告側弁護士バシーレが傍聴席に座っていた「5月広場の母たち」が被っていた白いスカーフに難癖を付ける。理由は法廷内では「政治的シンボルとなる色や形は禁ずる」という規則を盾にした。
B: 副検事ルイスと連れ立って「ご不満でしょうが、ご理解ください」と丁重にお願いに出向く。裁判の重要性を熟知していた母親たちは受け入れる。
A: このシーンも写真が残っています。あのスカーフは確かに政治的シンボルでした。というのも「行方不明者」になった我が子が赤ん坊のとき実際に使用していたオムツで、1977年のグループ結成時には見ず知らずだった母親たちが知り合うために子供の実名を書いていた。向こうのオムツは真四角の風呂敷タイプです。劇中のスカーフには〈Aparición con Vida de los Desaparecidos Madres de Plaza de Mayo〉と書かれていた。行方不明者たちを生きて返せということですから、鉄面皮の軍人たちとはいえ母親たちの運動が目障りで面白くなかった。


(5月広場の母たちの席に頼みに行くシーン)
B: 本作では母親たちの証言は多くありませんでしたが、彼女たちの粘り強い地道な努力や協力が裁判では大いに役立ちました。それはグループが援護射撃した証言者たちが証明した。
A: 独裁政権時代に母親たちが舐めつくした恐怖と暴力、世間の無関心は想像を超えています。待ちに待った裁判を台無しにしたくなかったから検事の要請を受け入れたのです。母親たちを主役にした名作が沢山製作されていますが、ここでは深入りしません。とにもかくにも本作はリカルド・ダリン映画、彼なくして成功はなかったでしょう。
B: 副検事役のピーター・ランサニは、上記のパブロ・トラペロの『ザ・クラン』に主演、民政直後に誘拐ビジネスを稼業としたプッチオ一家の長男役を演じた。
A: この映画も同時代に「プッチオ誘拐事件」として世間を騒がせた実話に基づいています。現在メキシコTVシリーズで『グレコ家の秘密』としてリメイクされ、Netflixで配信中です。
B: ストラッセラは2015年に鬼籍入りしましたが、モレノ・オカンポは、当時32歳で上流階級に属しており、「ビデラに質問するなどは一族にとって裏切り行為でした」という家庭に育った。しかし家族と仕事を冷静に区別することのできる人でした。
A: 2003年国際刑事裁判所の最初の主任検察官に就任するなど国際的に活躍しています。当時は1980年から司法長官の法務秘書官を務めていたに過ぎず起訴経験ゼロでした。呆れたストラッセラが「敵側から送り込まれたトロイの木馬だ」と揶揄したが、結局この相棒なくして裁判には勝てなかったと脱帽したのでした。今でも弁護士として現役、最近当時を語った ”Cuando el poder perdió el juicio”(仮題「権力が理性を失ったとき」2022刊)を出版した。取材を受けたモレノ・オカンポは、ストラッセラの1日3箱というヘビースモーカーには困ったと語っている。
B: 大量殺戮を信じようとしなかった大多数の国民に、犠牲者に何が起こったかを判断できるよう顔と声を与え、大量殺害などでっち上げと考えていた人々の考えを変えた。
A: その一人が高祖父の時代から軍人家庭に育ち、日曜日にはビデラ将軍と同じ教会にミサに行くという実の母親でした。ビデラはストラッセラの論告求刑のさい聖書を読むなどして国民の目を欺こうとした姑息な男、今なら法廷侮辱罪ものです。
B: 多くのカトリック教会関係者が独裁政権に加担して私腹を肥やしていた。教区司祭だけでなく高位聖職者の多くが見て見ぬふりどころか、権力者たちに阿って追従した。
A: 横道に入りますが、現在では他のカトリック国同様信者の数は減り続けていますが、当時の国民の大多数はカトリック信者でした。多くの信者を抱えていながら中南米からローマ教皇が一人も選出されなかった理由の一つが彼らの独裁政権への加担でした。この事実を掴んでいたバチカンは、危険を察知して選びたくても選べなかったようです。
B: 史上初となるアメリカ大陸出身の現教皇フランシスコは協力者ではなかったが、後に自身の無関心を国民に謝罪していた。予定になかった選出だったと言われていますが、バチカンはイタリア人の新教皇を熱望していた。彼がイタリア系アルゼンチン人だったことが幸いしたとも言われています。
A: アレハンドラ・フレヒナー演ずるストラッセラの妻シルビア(実名マリサ・トバル)は、劇中では夫以上に時代の流れに勇敢で分析力もあった。「何を怖れているの? 裁判が行われること、行われないこと」と詰め寄り、「あなたならできるわよ」とけしかけていた。
B: 夫は「裁判をするかどうかは判事が決めることだ。どうせ認めないよ」と応酬、「怖いのは当たり前だ、家族の命も掛かっている」と。引き受ける本人にしてみれば、笑い者になるか英雄になるか、一か八かの賭けでした。

(シルビア役のアレハンドラ・フレヒナー、フレームから)
A: 愛称のハビで呼ばれていた息子ハビエルの本名はフリアン、現在51歳になるフリアン・ストラッセラは弁護士となっている。「母親はフィクションでの映画化に反対しており、ドキュメンタリーに拘っていた」とメディアに語っている。また「ラウル・アルフォンシン大統領が前面に出てこないことに不満を洩らしていた」ということです。
B: ハビエル役のサンティアゴ・アルマス・エステバレナは、現在14歳で10歳の頃から舞台に立っている。スパイを勘づけられた判事から買ってもらったアメ玉をしゃぶりながら父親を援護していた。現在はイケメンもプラスして目下人気上昇中です。
A: 押し付け役ガブリエル・フェルナンデス扮する「ブルッゾ様」は架空の人物、互いにブルッゾ、フリオと呼び合っていましたから、複数の司法官を合成したモデルがいるのかもしれません。期待以上のストラッセラの活躍にビビッて、「まだ軍は蜂起する力をもっている。求刑には気を付けろ」と、遠回しに空軍の求刑をセーブしに現れる。ルイスがトイレまで押し掛けて内容を聞きたがるが、フリオはのらりくらりとかわしていた。
B: アルベルト・ムーチニク法律事務所の看板を掲げていた先輩弁護士らしい「ルソ」も実在しないそうですが。
A: やはり人物造形にはモデルらしき人はいるのでしょうが架空の人物だそうです。ユーモアたっぷりの皮肉やだが、飄々と演じて好印象を残しましたが、少し出過ぎでしたでしょうか。ベテラン俳優ノーマン・ブリスキに敬意を払ったからでしょう。
B: ストラッセラを支える相談役の友人「ソミ」は、実在していました。
A: カルロス・ソミリアナというアルゼンチン60年世代の中心的な作家でアーティスト、クラウディオ・ダ・パッサノが演じた。結審2年後の1987年1月に54歳の若さで惜しくも鬼籍入りしてしまったが、劇中では若い調査員チームの選抜から論告求刑の草案作りにまで参加していた。

(ありし日のカルロス・ソミリアナとフリオ・ストラッセラ)
裁判を決定づけた最初の証人アドリアナ・カルボの証言
B: パウラ・パレデス扮するアドリアナ・カルボは誤認逮捕でした。1977年2月4日自宅で逮捕されたとき、妊娠22週目の身重でした。
A: 裁判は1985年4月22日に開始されましたが、被告側の証人から始まり、検察側は4月29日から、彼女が最初の証人でした。ラプラタ大学で物理学を専攻、その後博士号を取得して同大の物理学教授でした。誤認逮捕の経緯は彼女が所属していたアルゼンチン精神科医連盟と、1968年に設立された都市ゲリラ及びテロ組織のペロニスト軍隊の頭文字が同じFAPでした。その後ブエノスアイレス大学工学部で化学の教鞭をとっていた夫ミゲル・アンヘル・ラボルデも逮捕されています。
B: 検察側の作戦勝ち、よく調査もせず手当たり次第に拉致していた実態が明らかになった。彼女は人権無視、赤裸々な出産の様子なども臆せず証言した。さすがのバシーレ被告側弁護士もショックを受けたのか、裁判長から反対尋問を促されても「ありません」と答えるしかありませんでした。
A: 移送中の車中で目隠しされ後ろ手に手錠をはめられ、どうやって出産したか記憶がとんでいた。4月15日出産だと8ヵ月ぐらいの早産になり、よくぞ生き延びたと涙した人も多かったでしょう。誘拐、拷問、人権無視は、彼女のような身重の女性でもお構いなし、後は推して知るべしでした。
B: 裁判に同行していた女の子ですね。傍聴席にいたから本人も聞いたはずです。
A: 当時ペロニスト軍隊は分裂を繰り返してかなり弱体化しており脅威ではなかったのですが、FAPを根こそぎにしたい権力側は片っ端から逮捕、リーダーたちは拷問を受けて亡くなり、結局主導者が誘拐され拷問のすえに死亡、1979年8月に解体しています。


(収監中の拷問や人権無視の証言をするアドリアナ・カルボ、フレームから)
B: 被告らが実行犯ではないけれども彼らの有罪を国民に印象づけた。誤認逮捕と判明した段階で闇に葬ることもできたから、釈放したことを軍人たちは心から後悔したにちがいない。
A: 証言者アドリアナ・カルボは、出産から1ヵ月後に誤認逮捕と分かって釈放された。釈放後は人権活動家として活躍、行方不明者協会のメンバーの一人、アルゼンチンではよく知られた女性でしたが、2010年亡くなりました。
フンタス裁判の証拠収集に寄与したコナデプの報告書 ”Nunca más”
B: 映画は1984年7月4日、国土安全保障長官アントニオ・トロッコリのテレビ特別放映〈Nunca más 二度と再び〉で幕が開く。このネバー・アゲインは、国家失踪委員会CONADEP*が纏めた報告書 ”Nunca más” から採られている。
A: トロッコリは日本でいうと旧内務省の大臣に当たり、絶大な権力をもつ中央警察官庁の長です。国家失踪委員会の ”Nunca más” は、まだ大統領には届けられていませんでしたが、目にした国民の大多数がショックを受ける内容でした。そこで先回りして、この報告書が「アルゼンチンが破壊工作とテロリズムの嵐に襲われたときのもので、片方からの見解にすぎない」と述べ、返す刀で被害者を批判さえした。
B: 帰宅したストラッセラが「マセラを呼べ!」と怒鳴ってテレビを消し、熱心にテレビを見ていた家族の顰蹙を買う。
A: マセラというのは、ビデラ政権時代の海軍提督エドゥアルド・エミリオ・マセラのこと、大量虐殺の実行犯のリーダー的存在でビデラ大統領よりも憎まれていた。大統領でもなかったのにビデラと同じ「終身刑」を受けた人物でした。
B: また9月18日のストラッセラの論告求刑にもこのフレーズが登場した。彼は「判事の皆さま、二度と再び」と論告を締めくくった。
A: 国家失踪委員会はアルフォンシン大統領が就任後5日めの12月15日に署名した「政令187/83」を指し、軍事政権時代(1970年代から80年代初頭)に発生した人権侵害、特に3万人とも言われる失踪者(行方不明者)の調査を目的とした委員会です。
*CONADEP(La Comisión Nacional sobre Desaparición de Personas)国家失踪委員会:1983年12月15日創設、完成した報告書 ”Nunca más” を大統領に届けた1984年9月20日をもって解散した。わずか280日間の期限付きだったが、340ヵ所の秘密拘置センター(強制収容所)の所在目録、8960人の行方不明者リストなど、釈放者の同意を受けて情報を収集した50,000ページにわたる膨大な報告書。主な委員会メンバーは、委員長エルネスト・サバト(作家、物理学者)、ブエノスアイレス大学元学長、法学者、弁護士、神学者、人権活動家、ジャーナリストなどで構成されていた。委員長サバトは処女作『トンネル』(48)がカミュに絶賛されて一躍国際的な名声を受けた。2作目『英雄たちと墓』(61)など小説は3作しか発表していないが、1984年にスペインのセルバンテス賞を受賞している。

(報告書の表紙、アルフォンシン大統領に報告書を手渡すエルネスト・サバト)
B: この報告書はフンタス裁判の基礎的データとして使用され、駆け出しの若い司法調査官チームが4ヵ月と2週間という短期間に証拠固めの書類を作成できたのも、この報告書のお蔭でした。
A: しかし先述した5月広場の母たちは、この報告書が犯罪の手打ち式になることを警戒して評価していなかった。実際3万人が約9000人だったことを悪用され、3万人はフェイクだと非難されました。
B: 1984年9月25日に軍最高評議会(Consejo Supremo de las Fuerzas Armadas)がサインした通知を検察に送り、10月2日に検察が受理したことをストラッセラがタイプして裁判が始まる。
A: 同年10月25日に傍聴人を入れない、つまり非公開での予備審問があり、9名の被告は当然のごとく無罪を主張したが受け入れられなかった。カルロス・ポルタルッピ演じるレオン・カルロス・アルスラニアン裁判長を含む6人の判事が連邦議会のメンバーなど、日本とは司法制度の違いもあって分かりにくい部分がありますね。実際のアルスラニアンは太めですがポルタルッピほどではなかったし髭を生やしていました。ポルタルッピは人気TVシリーズに出演して認知度があり、冷静で公平な裁判長役でトクをしました。


(左から2人めがアルスラニアン裁判長、フレームから)
B: 反対にソンしたのは、ビデラ将軍を筆頭にした9名の軍人たち、メイクのせいかもしれませんがよく似ていましたが、演りたくなかったかもしれません。
A: 特にビデラの後を受けて軍政2人目の大統領となったロベルト・ビオラ役などね。彼は禁固17年の刑を受け退廷するとき、国旗のほうに顔を向け何か口走った。字幕には「くそったれ」とあった(笑)。多くの記者が侮蔑語「Hijo de puta」と彼が叫ぶのを聞いたから、脚本家の創作ではないようです。


(論告求刑日の9名の被告、右から3人目がビデラ陸軍司令官、フレーム)
B: ビオラが終身刑でなかったのは、期間が短期だったことと、大量虐殺の多くがビデラ時代の5年間に行われていたからですね。マルビナス(フォークランド)戦争を指揮した3人目の大統領レオポルド・ガルティエリが無罪になったのも、一つにはそれがあった。
A: 多くの未訓練の若者が戦死したのは「誘拐、拷問、殺害」とは違うからです。この裁判では無罪でしたが、後に別の裁判で有罪になりました。1990年、フンタス裁判で有罪判決を受けた全員が、次期大統領カルロス・メネムの恩赦で自由の身になりました。終身刑がたったの5年で釈放でした。しかし大統領が変わるたびに別の裁判が起され有罪判決となり、刑務所を出たり入ったりしていた。結局のところ刑務所内で人生を終えた人物は、クリスティナ・デ・キルチネルが大統領だった2010年に「人道に対する罪」で起訴され終身刑を受けたビデラ一人でした。
歴史上初となる軍事政権を裁いた民政の裁判
B: 分かりにくい固有名、ペロニストは分かるとして、マンリケ派とか、ESMAとか、モントネーロス、などの立ち位置が分かりにくかった。
A: ESMAはアルゼンチン海軍技術学校の頭文字で検事側からすると強敵でした。劇中ではESMAに利用されたというリスクの高いビクトル・バステラが検事側の証人として証言したが、当然のごとく被告側弁護士から猛烈な反対尋問を受けた。

(証言するビクトル・バステラ、7月22日)
B: この7月22日の法廷には『伝奇集』で知られた小説家で詩人のホルヘ・ルイス・ボルヘスが傍聴席にいた。作家はあまりの恐ろしさに耐えかねて席を立つ写真が残っている。その後、その傍聴記事をスペインのEFEに寄稿している。

(詩人ホルヘ・ルイス・ボルヘス、1985年7月22日)
A: 86歳でジュネーブで死去するおよそ1年前です。また寄り道になりますが、アルゼンチンを代表する詩人ボルヘスは、50歳前から視力が衰え始め、当時は失明していた。同年肝臓癌であることが分かり、初冬の11月イタリア旅行を楽しんだの最後に、翌年1月終焉の地と定めていたジュネーブの病院に入院して、故郷のメディアから遠く離れて旅立った。
B: モントネーロスというのは1969年結成されたペロニスト過激派の都市ゲリラ、大統領を誘拐殺害して世界に衝撃を与えた。1973年ペロンが復帰してからもテロ行為を止めなかったので非合法組織にされた。
A: ペロン亡き後、副大統領だった夫人のイサベル・デ・ペロンが世界初となる女性大統領となった。しかし政治経済に無能ぶりを露呈、2年未満で崩壊した。1976年3月24日にビデラが軍事クーデタを起してもアルゼンチン人は誰も驚かなかった。それくらい暴力は日常的だったわけです。ビデラは徹底的にペロニスト軍隊同様モントネーロスを弾圧して壊滅状態にした。
B: トロッコリ国土安全保障長官の見解もデタラメではない部分を含んでいる。目下世界はサッカーのワールドカップで湧いていますが、優勝候補アルゼンチンは多くの血が流された国ですね。
A: 2回の世界大戦には参加しませんでしたが、右も左もごちゃごちゃ入りまじった移民国、ナチスも反ナチスも、反米も親米も分け隔てなく受け入れ、国家破産で世界に迷惑かけても平気の平左衛門の国家でしょうね。
B: 本作は歴史上初となる軍事政権の犯罪を民政が裁いた裁判の記録ですが、泥縄式で結成された若い司法調査員チームの活躍は感動ものでした。
A: この裁判は「自分は絶対正しい」と疑わなかった軍人たちの裁判でもありました。被告側弁護士が「カブスカウト」と冷笑した司法チームは、16冊4000ページの膨大な資料を作成しました。資料が運び込まれるのを目撃して、強気だったバシーレ弁護士も不安に駆られていた。
B: メンバーは法律を学ぶ学生2人、司法省職員8人、国家失踪委員会CONADEPメンバーの弁護士など15名、主に学生で構成されていた。19歳から20代後半までの若者ですね。
A: 劇中でバシーレを「ファシスト的とはあなたみたいな人です」と答えたジュディスは21歳で司法長官から送り込まれている。カルロス・ソミリアナの息子マコは23歳、法学と人類学の学生、父親と同姓同名なので愛称マコで呼ばれていた。後に国家検察庁の「人道に対する犯罪」の法医学人類学チームの先駆者の一人になった。司法関係者でもあった父親もチームの一人として協力していたがメンバーではなかった。ダリンの姪アントニア・ベンゴエチェアもマリア・エウヘニア役で出演している。彼女はトラペロの『ザ・クラン』にピーター・ランサニの妹役で共演している。
B: しかし法廷にはチームと一緒にいましたね。駆けだしとはいえ若い調査チームのトータル833人の証言なしには勝てなかった裁判でした。彼らこそ英雄です。
A: アルフォンシン大統領は求刑前夜に検事を呼び出したり、他にも裏で裁判官と取引しようとしたようですが、6人の裁判官は考慮したくなかった。三権分立が機能したのでした。

(2人の検事を取り囲んだ司法チーム、後列左に作家ソミリアナの姿も)
B: 大統領の出番がチラリだった理由の一つかもしれない。
A: 大統領はブエノスアイレス大学で法学を専攻して弁護士になった経歴の政治家でしたが、ハイスクールは軍学校で学んでおり、同級生には3人目の大統領ガルティエリがいた。なかなか難しい立ち位置にいたわけでした。裁判中止の車爆弾事件や家族への脅迫電話、ストーカー行為など盛り沢山でしたが長くなりました、ここいらでお開きに。
ルクレシア・マルテル短編『ルーム・メイド』*東京国際映画祭2022 ⑤ ― 2022年10月19日 14:48
ラテンアメリカ諸国に巣食う社会格差やDVに焦点を当てた短編

★ルクレシア・マルテルの『ルーム・メイド』は、ワールド・フォーカス部門上映のコロンビア映画『ラ・ハウリア』(監督アンドレス・ラミレス・プリド)と併映される、メキシコ=アルゼンチン合作短編です。マルテル映画は伏線が巧妙に張り巡らされ、処々に潜んでいるメタファーの読み解きが楽しいが、『パシフィクション』のアルベルト・セラ同様、咀嚼と消化に時間がかかり万人向きとは言えない。幸いにも「サルタ三部作」を含む長編4作が、テレビ放映、あるいはラテンビートFFで上映されている。「サルタ三部作」というのは、デビュー作『沼地という名の町』(01)、『ラ・ニーニャ・サンタ』(04)、『頭のない女』(08)の3作を指し、監督の出身地アルゼンチン北部のサルタ州が舞台になっていることから名付けられた。第4作目が約十年ぶりに撮った『サマ』(17)で、アントニオ・ディ・ベネデットの同名小説 ”Zama” の映画化でした。当ブログで作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィー、原作者などを紹介しています。
*『サマ』に関するもろもろの記事は、コチラ⇒2017年10月13日/同年10月20日

(長編デビュー作『沼地という名の町』のポスター)
★ルクレシア・マルテル(サルタ1966)は、1988年短編アニメーション「El 56」でデビュー、翌年母親のフィアンセ殺害を夢想する小さな男の子のきわどい話、牛の放牧に従事する先住民コミュニティのメンバーが不法に土地を所有した人々から土地を奪還しようとする話など10編ほど短編を撮っている。長編は4作と寡作だが、ほかにTVシリーズ、TVムービー・ドキュメンタリー、アンソロジーも手掛けている。

(ルクレシア・マルテル監督)
★今回の『ルーム・メイド』(12分、メキシコとの合作)は、ベネチア映画祭アウト・オブ・コンペティション部門で「Camarera de piso / Maid」としてワールドプレミアされた。本短編はメキシコ国立自治大学 UNAM から委託されフィルモテカを通じて、シンテシス・プログラムの枠組みのなかで製作されている。監督によると「私はコンテンポラリーダンスを視聴覚言語と関連づける方法を見つけるよう提案されていました」と語っている。メキシコとの合作になった経緯は分かったが、コンテンポラリーダンスと本編がどう繋がるのかイメージできない。見れば分かるのか、見ても分からないのかどちらだろう。
『ルーム・メイド』(原題「Camarera de piso / Maid」)
製作:UNAM Hugo Villa Smythe(メキシコ)/ Rei Cinema(アルゼンチン)
監督・脚本:ルクレシア・マルテル
撮影:フェデリコ・ラストラ
編集:イエール・ミシェル・アティアス
プロダクション・デザイン:エドナ・モスティッツァー Mostyszczer
録音:グイド・ベレンブラム、マヌエル・デ・アンドレス
製作者:(メキシコ)フアン・アラヤ、(アルゼンチン)ベンハミン・ドメネク、サンティアゴ・ガレリ、マティアス・ロベダ
データ:製作国メキシコ=アルゼンチン、2022年、ドラマ、短編12分
映画祭・受賞歴:第79回ベネチア映画祭2022アウト・オブ・コンペティション短編部門正式出品、東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映
キャスト:ホルヘリーナ・コントレラス(パトリ)、ダニエル・バレンスエラ(影の声)、アナベリ・アセロ、アリエル・Gigena
解説:ストーリーはTIFF もラテンビートもストーリー紹介文がありません。パトリはメイドになるための研修期間中で、指導者からトレーニングを受けている。しかし研修中にもかかわらず、家族から玄関先に迫ってくる危機についての電話が絶え間なく掛かってくる。電話に出ると当然のことだが上司から叱責されます。どうやらパトリはパートナー(夫?)からの虐待に苦しんでいるようです。彼女はパートナーとの接触や報復から子供を守りたいと考えているようですが・・・。UNAMの提案によるコンテンポラリーダンスは出てこないが、現在の労働圧力、ドメスティック・バイオレンス、階級格差、マッチョの犠牲者である働く母親の居場所のなさを見つめる短編になっているようです。 (文責:管理人)
★スタッフ紹介:フィルム編集のイエール・ミシェル・アティアスは、サンティアゴ・ロサの「Breve historia del planeta verde」(ベルリン映画祭2019)の編集者、撮影監督のフェデリコ・ラストラは、マキシミリアノ・シェーンフェルドの「Jesús López」(サンセバスチャン映画祭2021ホライズンズ・ラティノ部門のオープニング作品)、録音のグイド・ベレンブラム、マヌエル・デ・アンドレスは『サマ』で監督とタッグを組んだメンバーとアルゼンチン・サイドで固めている。
★キャスト紹介:メイド役のホルヘリーナ・コントレラスとアナベリ・アセロは、本作でデビューしたのか本作以外の情報を入手できませんでした。ダニエル・バレンスエラはマルテル監督の『沼地という名の町』に出演しており、ほかパブロ・トラペロのデビュー作「Mundo grúa」(99)、マルセロ・ピニェイロの『逃走のレクイエム』(00)、イスラエル・アドリアン・カエタノのヒット作「Un oso rojo」(02)以下、「Crónica de una fuga」(06)など度々起用されています。主役というより脇役として存在感がある。アリエル・Gigenaは、邦題『コブリック大佐の決断』としてDVD発売された「Kóblic」(16)に出演している。というわけでアルゼンチン映画のようです。

(メイドのホルヘリーナ・コントレラス)
*TIFF プログラミング・ディレクター市山尚三氏の「作品見どころ解説」によると、「びっくりする短編、電話から誰かに脅されている様子がわかり、後半はあっと驚く先が読めない短編」ということでした。
*「Breve historia del planeta verde」の作品紹介は、コチラ⇒2019年02月19日
*「Jesús López」の作品紹介は、コチラ⇒2021年08月30日
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