カンヌ映画祭2014*「ある視点」リサンドロ・アロンソ ― 2014年05月06日 16:50
リサンドロ・アロンソの「Jauja」
★もう1作がアルゼンチンのリサンドロ・アロンソの長編5作目 Jauja です。ロサーレス同様、もうカンヌでは知られた顔ですね。デビュー作 La livertad(2001)がいきなり「ある視点」にエントリー、2作目 Los muertos(2004)と3作目 Fantasma(2006)が「監督週間」に選ばれています。ロサーレスと同じ5戦4勝ですが、まだカンヌでの受賞はありません。しかし第2作目が、カルロヴィー・ヴァリー映画祭05、リマ・ラテンアメリカ映画祭04、トリノ・ヤング・シネマ映画祭04などで受賞しています。1975年ブエノスアイレス生れの38歳、監督、脚本家、製作者。
★ストーリー:デンマーク人の父と娘は、文明の及ばないパタゴニアの砂漠で暮らす人々がいると聞いて、辺境への船旅を決心する。しかし、娘は随行者の一人と恋に落ち遁走してしまう。父親は娘を探しに出掛けるが、ここでは愛と死についての憧れが語られる。
*父親をヴィゴ・モーテンセン、彼については説明不要でしょうが、本作に関係ある部分について。1958年ニューヨークはマンハッタン生れの55歳、父親がデンマーク人、母親は米国人、少年時代はベネズエラ、アルゼンチン、デンマークで育ったのでスペイン語、デンマーク語ができる。デンマークのパスポートを持っている。スペイン語映画に限るとアグスティン・ディアス・ヤネスの『アラトリステ』(2006)が代表作。
*その娘をデンマークの国民的女優ギタ・ナービュが、若い時代を同じデンマークの女優 Viilbjork Malling が演じるようです。ギタ・ナービュは1935年コペンハーゲン生れだから78歳になります。管理人はベント・ハーメルのコメディ『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007)しか見ていない。出演映画145作ですから、結構公開されています。
★まだIMDbも情報が少なくデータが揃っていないが、以下断片記事をまとめてみる。
製作国:アルゼンチン=デンマーク=米国=メキシコ=オランダ=独=仏
製作(共同):4L、Fortuna Films、Kamoli Films、Mantarraya
脚本(共同):リサンドロ・アロンソ、ファビアン・カサス
言語:スペイン語とデンマーク語
ロケ地:アルゼンチンのパタゴニアが80%、ほかデンマークのコペンハーゲンなど
*4L、Fortuna Filmsはアロンソの過去の映画を製作している。Kamoli Films、Mantarrayaは今回が初めてのようです。Mantarrayaはメキシコの製作会社で、カルロス・レイガーダスのデビュー作『ハポン』(2000)以下最新作『闇の後の光』(2012)全4作を手がけている。『闇の後の光』はカンヌで最優秀監督賞を受賞して拍手喝采とブーイングを同時に浴びた。この年のカンヌの審査員を悩ましたのがレイガーダスに監督賞を与えるかどうかでした。好きな人はスキ、嫌いな人はキライとファンもはっきり分かれるカンヌの常連監督。全作が東京国際映画祭で上映され来日もしております。さらに昨年のカンヌで最優秀監督賞を受賞したアマ・エスカランテの『エリ』以下、『サングレ』(2005)、『よそ者』(2008)も製作している実力派、こちらも全3作がカンヌで上映されています。Mantarraya参加はアロンソにとって朗報でした。
★アロンソによると、ヴィゴとの出会いは2006年のトロント映画祭だった。「僕たちは、サッカーのこと、かつてヴィゴが暮らしたことのあるアルゼンチンのことで意気投合した。それ以来、本作の脚本を共同執筆したファビアン・カサスとヴィゴを主人公にした映画を作ろうと考えていた。最初はデンマーク人ではなくイギリス人だった。しかしヴィゴがデンマークのパスポートを持っていることを思い出し書き直したんだ。ロケはパタゴニア、リフエ・カレル国立公園、ラ・パンパ、ラグナ・アスール、リオ・ガジェゴスなど80%がアルゼンチン、残りは父と娘の原点であるコペンハーゲンのLystrue 城で撮った」。「ヴィゴがシナリオを気に入ってくれ出演をオーケーしてくれた。国際的な俳優とMantarrayaが参加してくれたことは、本当に幸運でした。今までの映画作りで素晴らしいサゼスチョンをしてくれた製作者の一人で感謝にたえない」とも語っています。
(リサンドロ・アロンソとヴィゴ・モーテンセン、トロント映画祭2006にて)
★コンペティションの審査委員長ジェーン・カンピオンにも驚きましたが、「ある視点」審査委員長パブロ・トラペロにはもっと驚きました。コンペ以上に面白いのが「ある視点」部門です。コンペは見なれた顔が揃います。いずれ公開されるから最近ではノミネーションさえチェックしないで済みます。面白いのが「ある視点」部門、コンペに残れなかったのでこちらに廻ってきたという時代もありましたが、ベテラン実力者から新人まで、コンペ以上に審査が難しいセクションです。
★パブロ・トラペロ映画もカンヌ向き、長編映画の代表作:
1999 Mundo
grúa 国内映画賞以外の受賞、ヴェネチア映画祭Anicaflash 賞、ロッテルダム映画祭2000タイガー賞、ハバナ映画祭1999特別審査員賞を各受賞、ゴヤ賞2000ノミネートなど多数
2002
El bonaerense (ブエノスアイレス出身者の意味) カンヌ映画祭「ある視点」出品、シカゴ映画祭2002国際映画批評家連盟賞受賞、グアダラハラ映画祭、カルタヘナ映画祭、多数。
2004 Familia rodante コメディ、ロード・ムービー
2006 Nacido
y criado ドラマ
2008 Leonera『檻の中』カンヌ映画祭コンペ正式出品、アリエル賞2009受賞、ハバナ映画祭特別審査員賞受賞、他多数。「ラテンビート2009」上映
2010 Carancho『カランチョ』カンヌ映画祭「ある視点」出品、サンセバスチャン映画祭、「ラテンビート2010」などで上映。(写真:リカルド・ダリンとマルティナ・グスマン)
2012
Elefante blanco『ホワイト・エレファント』カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、「ラテンビート2012」上映
2012 7 días en La Habana 『セブン・デイズ・イン・ハバナ』(7人の監督のオムニバス)カンヌ映画祭2012「ある視点」出品、2012年8月公開
*1971年ブエノスアイレス州サン・フスト生まれ。製作者、監督、脚本家、エディター、俳優と多彩。委員長に選ばれた理由は「ある視点」の常連の他、この多彩な経歴が理由の一つかもしれない。2000年に『檻の中』の主演女優マルティナ・グスマンと結婚、出演した赤ん坊は二人の実子。2002年に第2作El
bonaerense を公開するために製作会社「マタンサ・シネMatanza Cine」をグスマンと設立、自身の『檻の中』、『カランチョ』他を手掛けている。同国人アロンソにとって追い風になるか逆風になるか微妙です。
(トラペロ=グスマン夫婦と成長してしまった息子、
『カランチョ』上映のリマ映画祭にて)
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