第25回ホセ・マリア・フォルケ賞2020*ノミネーション発表 ― 2019年11月27日 15:35
結果発表の授賞式はマドリードで――2020年1月11日

★去る11月21日(木)来春のスペイン映画賞の先陣を切って、第25回ホセ・マリア・フォルケ賞2020のノミネーション発表がありました。2020年はサラゴサからマドリードに戻ってきます。2019年に製作された映画の中から選ばれ、選考母体はEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)です。マドリードのEGEDA本部でイサベル・ディアス・アジュソ、ジャーナリストのエレナ・サンチェス、俳優監督のサンチャゴ・セグラが出席しました。フォルケ賞は、監督ではなく縁の下の力持ちとして映画産業を支える製作者に光を当てるべく設けられた賞で、唯一監督賞のない映画賞です。
★作品賞には、ラテンビートFF、東京国際映画祭で上映された2作品、ラテンアメリカ映画部門にも2作品がノミネートされています。4作とも米アカデミー賞2020の国際長編映画賞部門の各国代表作品になりました。各カテゴリーのノミネーションは以下の通りです。栄誉賞は目下のところ未発表です。
◎作品賞(長編ドラマ&アニメーション)
Dolor y gloria 監督ペドロ・アルモドバル
La trinchera infinita 監督ジョン・ガラーニョ、アイトル・アレギ、ホセ・マリ・ゴエナガ
Mientras dure la guerra (『戦争のさなかで』)監督アレハンドロ・アメナバル
O que arde (『ファイアー・ウィル・カム』)監督オリベル・ラシェ
◎女優賞
ベレン・クエスタ(La trinchera infinita)
マルタ・ニエト(Madre)監督ロドリゴ・ソロゴイェン
グレタ・フェルナンデス(La hija de un ladlón)監督ベレン・フネス
ピラール・カストロ(Ventajas de viajar en tren)『列車旅行のすすめ』 同アリッツ・モレノ
◎男優賞
アントニオ・バンデラス(Dolor y gloria)
アントニオ・デ・ラ・トーレ(La trinchera infinita)
カラ・エレハルデ(Mientras dure la guerra)『戦争のさなかで』
Enric Auquer(Quien a hierro mata) 監督パコ・プラサ
◎ラテンアメリカ映画賞
La odisea de los gires(アルゼンチン) 監督セバスティアン・ボレンステインBorensztein
Monos(コロンビア)『猿』 監督アレハンドロ・ランデス
Araña(チリ)『蜘蛛』 監督アンドレス・ウッド
La camarista(メキシコ) 監督リラ・アビレス
◎ Cine en Educación y Valores 賞
Abuelos 監督サンティアゴ・レケホ
Vivir dos veces 監督マリア・リポル
Elisa y Marcela 『エリサ&マルセラ』 監督イサベル・コイシェ (Netflix邦題)
Diecisiete 『SEVENTEENセブンティーン』監督ダニエル・サンチェス・アレバロ(Netflix邦題)
★その他、長編ドキュメンタリーと短編映画賞は受賞作品のみアップします。
★当ブログで作品紹介がなかった作品の中で、少し意外感のあるのがパコ・プラサのスリラー仕立ての復讐劇「Quien a hierro mata」で男優賞にノミネートされたEnric Auquerはただ一人主役ではなく、主役はルイス・トサールです。数多ある映画祭とは無関係に8月に公開され人気を博している。

(左から、Enric Auque、プラサ監督、ルイス・トサール、イスマエル・マルティネス)
★ラテンアメリカ映画部門のセバスティアン・ボレンステインの「La odisea de los giles」は、サンセバスチャン映画祭で上映されましたが、映画祭開催前の8月にアルゼンチンでは公開されていました。リカルド・ダリンとチノ・ダリンがドラマでも父子を演じ、これまた観客に受け入れられ、米アカデミー賞国際長編映画賞アルゼンチン代表作品に選ばれています。監督はリカルド・ダリンの魅力を引き出すための映画を撮っている。


(ダリン父子、サンセバスチャン映画祭2019のフォトコール)
★メキシコのリラ・アビレスのデビュー作「La camarista」も同じケースです。タイトルのカマリスタは、ホテルなどの部屋係メイドのことで、ベッドメーキングの他、部屋の整理整頓、掃除をこなすメイドさんです。映画はメキシコシティの高級ホテルの一つで働く若いカマリスタが遭遇する人生模様が描かれる。上記の仕事の他に宿泊客のベビーシッターまで仰せつかるようで、各映画祭で観客賞を受賞している。

(カマリスタを演じるガブリエラ・カルメルがリンネ類に押しつぶされているポスター)
★サンティアゴ・レケホのコメディ「Abuelos」は、3人のお祖父さんが孫子守りでてんてこ舞いするお話、芸達者を揃えて観客を幸せにしてくれる。笑う門には福来る、何かを始めるのに遅すぎることはない精神です。マリア・リポルの「Vivir dos veces」は、アルゼンチンのオスカル・マルティネスとインマ・クエスタを起用したファミリードラマです。

(3人のお祖父さんを配した「Abuelos」のポスター)

(オスカル・マルティネスとインマ・クエスタを配した「Vivir dos veces」のポスター)
★アメナバルの『戦争のさなかで』がバレンシアの映画館で10月初め上映されたとき、5人の極右グループのメンバーが上映をボイコットした廉で、1人ずつ3000ユーロ、合計15,000ユーロの罰金が科されました。カラ・エレハルデが「スペインは83年間、1ミリも前進していない」と嘆息していたことが思い起こされます。
★去る11月26日、アルモドバルの「Dolor y gloria」がタイム誌が選ぶ今年のベストテン第1位に輝いたニュースが飛び込んできました。第2位はマーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』、第3位はクエンティン・タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でした。こうなるとアルモドバル新作は米アカデミー賞国際長編映画賞スペイン代表作品ですからノミネートが期待できそう。フォルケ賞も作品賞・男優賞は決りかなぁ、これは独りごとです。
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