第6回フェロス賞2019*結果発表 ― 2019年01月23日 12:49
★去る1月19日、第6回フェロス賞の授賞式がビルバオで開催され、受賞者が発表になりました。あいにくの雨で、赤絨毯を踏む出席者に傘をさしかけるスタッフはご苦労さまでした。それでもスマホに一緒に写りたいファンはお目当てが登場するまで待って、気軽に応じるセレブたちと一緒におさまってご満悦でした。予定通り22;00に開幕、会場の席は作品ごとにテーブルを囲みワインを楽しみながらの授賞式でした。ガラはたいてい助演女優賞か助演男優賞から始まるのが定番、今回も最初の受賞者はアンナ・カスティーリョの涙のスピーチで始まりました。彼女はTVシリーズでも受賞、トロフィーを両手に幸せをかみしめておりました。
★都市の文化的多様性をモットーに、初めてマドリードを離れてスペインで最も豊かなバスク州の首都ビルバオのビルバオ・アレナ(ビルバオ・バスケットボールの試合が行われるパビリオン)で開催されましたが、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」がメインの5冠、カルロス・ベルムトの「Quién te cantará」(『シークレット・ヴォイス』)が4冠と2作品に集中、文化の多様性とはなりませんでした。総合司会者はスウェーデン出身の女優イングリッド・ガルシア・ヨンソン、衣装替え5回と、八面六臂の大活躍でした。
(一人で大奮闘の総合司会者イングリッド・ガルシア・ヨンソン)
★マドリードならいざ知らず、北のビルバオとなると候補者でさえ一堂に集めるのは厳しい。今回もフォルケ賞には出席したペネロペ・クルスが欠席、バルバラ・レニーはどちらも欠席でした。下馬評で受賞なしだと参加しないようで、そこがゴヤ賞とは違うようです。受賞が確実視されていたアントニオ・デ・ラ・トーレの姿もありませんでした。フォルケ賞を受賞したばかりのハビエル・フェセルの「Campeones」はコメディ部門の作品賞だけ、主演男優賞候補のハビエル・グティエレスの姿も確認できなかった。彼は前回の受賞者、ハビエル・バルデムも可能性は低かったから納得の欠席だった。
★受賞結果は以下の通りです。
*映画部門ノミネーション*(初出に監督名、★印は当ブログ紹介作品)
◎作品賞(ドラマ)
「Carmen y Lola」『カルメン&ロラ』 監督アランチャ・エチェバリア 4個 ★
「Petra」 監督ハイメ・ロサーレス 5個 ★
「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』 監督カルロス・ベルムト 8個(受賞4個) ★
〇「El reino」 監督ロドリゴ・ソロゴジェン 10個(受賞5個) ★
「Todos lo saben」『エブリバディ・ノウズ』 監督アスガー・ファルハディ 6個 ★
「Viaje al cuarto de una madre」 監督セリア・リコ・クラベリーノ 4個(個) ★
◎作品賞(コメディ)
〇「Campeones」 監督ハビエル・フェセル 4個(受賞1個) ★
「Casi 40」 監督ダビ・トゥルエバ ★
「Mi querida cofradía」 監督マリア・ディアス・デ・ロペ
「Superlópez」 監督ハビエル・ルイス・カルデラ
「Tiempo después」 監督ホセ・ルイス・クエルダ
◎監督賞
アランチャ・エチェバリア「Carmen y Lola」
ハビエル・フェセル「Campeones」
ラモン・サラサール「La enfermedad del domingo」『日曜日の憂鬱』 ★
〇ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」
カルロス・ベルムト「Quién te cantará」
◎主演女優賞
ペネロペ・クルス 「Todos lo saben」
ロラ・ドゥエニャス 「Viaje al cuarto de una madre」 ★
アレクサンドラ・ヒメネス 「Las distancias」★
バルバラ・レニー 「Petra」
〇エバ・リョラチ 「Quién te cantará」
◎主演男優賞
ハビエル・バルデム 「Todos lo saben」
ホセ・コロナド「Tu hijo」 監督ミゲル・アンヘル・ビバス ★
ハビエル・グティエレス「Campeones」
ハビエル・レイ「Sin fin」 監督セサル=ホセ・エステバン・アレンダ ★
〇アントニオ・デ・ラ・トーレ「El reino」
(アントニオ・デ・ラ・トーレ「El reino」から)
*アントニオ・デ・ラ・トーレは欠席、ロドリゴ・ソロゴジェンが代理でトロフィーを受取りました。スピーチは最近流行のスマホで代読、時代も変わりました。
◎助演女優賞
〇アンナ・カスティーリョ「Viaje al cuarto de una madre」
バルバラ・レニー「Todos lo saben」
ナタリア・デ・モリーナ「Quién te cantará」
マリサ・パレデス「Petra」
アナ・ワヘネル「El reino」
◎助演男優賞
ジョアン・ボテイ「Petra」
エドゥアルド・フェルナンデス「Todos lo saben」
イグナシオ・マテオス「Animales sin collar」 監督ホタ・リナレス
ホセ・マリア・ポウ「El reino」
〇ルイス・サエラ「El reino」
◎脚本賞
アランチャ・エチェバリア 「Carmen y Lola」
ハイメ・ロサーレス、ミシェル・ガスタンビデ、クララ・ロケ「Petra」
カルロス・ベルムト「Quién te cantará」
〇ロドリゴ・ソロゴジェン、イサベル・ペニャ「El reino」
セリア・リコ・クラベリーノ「Viaje al cuarto de una madre」
◎オリジナル音楽賞
ルカス・ビダル「El árbol de la sangre」 監督フリオ・メデム
ニコ・カサル「La enfermedad del domingo」
〇アルベルト・イグレシアス「Quién te cantará」
オリビエル・アルソンOlivier Arson「El reino」
アルベルト・イグレシアス「Yuli」 監督イシアル・ボリャイン ★
(2作品でノミネートされていたトロフィーのコレクター、アルベルト・イグレシアス)
◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トゥルドゥ、ラファ・マルティネス「Campeones」 ペドロ・ヒメネス「Carmen y Lola」
〇ミゲル・アンヘル・トゥルドゥ「Quién te cantará」
ラファ・マルティン「El reino」
アスガー・ファルハディ「Todos lo saben」
*ミゲル・アンヘル・トゥルドゥが登壇しましたが、フォトが未入手です。
◎ポスター賞
バルバラ・マグダレナ「Ana de día」 監督アンドレア・ハウリエタJaurrieta
エレナ・カスティーリョ「Las distancias」
ジョルディ・リン「La enfermedad del domingo」
〇カルロス・ベルムト「Quién te cantará」
ゴンサロ・ルテ「El reino」
*TVシリーズ部門ノミネーション*
◎ドラマ部門
「El día de mañana」(シーズン1) 5個
「Élite」(シーズン1)『エリート』の邦題でNetflix配信中
〇「Fariña」(シーズン1) 3個(受賞3個)Netflix邦題『ホワイトパウダー』で配信
「Gigantes」(シーズン1)監督エンリケ・ウルビス&ホルヘ・ドラド ★
「La peste」(シーズン1)
◎コメディ部門
〇「Arde Madrid」(シーズン1)監督パコ・レオン&アンナ・R・アコスタ 7個(3個) ★
「Paquita Salas」(シーズン2) 4個
「Vergüenza」 (シーズン2) 4個
(アンナ・R・アコスタにキスをするパコ・レオン)
◎主演女優賞
マレナ・アルテリオ「Vergüenza」
〇インマ・クエスタ「Arde Madrid」
アウラ・ガリード「El día de mañana」
ナイワ・ニムリ「Vis a vis」
エバ・ウガルテ「Mira lo que has hecho」
◎主演男優賞
Brays Efe「Paquita Salas」
ハビエル・グティエレス「Vergüenza」
パコ・レオン「Arde Madrid」
オリオル・プラ「El día de mañana」
〇ハビエル・レイ「Fariña」
◎助演女優賞
〇アンナ・カスティーリョ 「Arde Madrid」
ベレン・クエスタ 「Paquita Salas」
ファビアナ・ガルシア「Arde Madrid」
デビ・マサール「Arde Madrid」
リディア・サン・ホセ「Paquita Salas」
(映画部門の助演女優賞のトロフィーと。盆と正月が一緒に来たアンナ・カスティーリョ)
◎助演男優賞
ヘスス・カロサ「El día de mañana」
カラ・エレハルデ「El día de mañana」
〇アントニオ・ドゥラン・<モリス>「Fariña」
ミゲル・レリャン「Vergüenza」
マノロ・ソロ「La peste」
フリアン・ビリャグラン「Arde Madrid」
◎スペシャル・フェロス イサキ・ラクエスタ監督「Entre dos aguas」
◎ドキュメンタリー賞 エリアス・レオン・シミニアニ監督「Apuntes para una pelicula de atracos」
◎栄誉賞 ホセ・ルイス・クエルダ
★ノミネーション発表時には受賞者が未定でしたが、1月15日に監督・脚本家・製作者のホセ・ルイス・クエルダ受賞がアナウンスされました。今回のフェロス賞コメディ部門に「Tiempo después」がノミネートされておりましたが、ハビエル・フェセルの手に渡った。本邦では1987年の『にぎやかな森』や1999年『蝶の舌』が公開されただけでしょうか。40年以上のキャリアを持ちながら寡作ということもあって、賞の数は少ないかもしれない。未公開作品に面白いのがあり、1988年のコメディ「Amanace, que no es poco」はスペイン人が時代を超えてリクエストする作品です。2008年「Los girasoles ciegos」のテーマは『蝶の舌』と同じ内戦もの、アカデミー賞スペイン代表作品に選ばれ、ゴヤ賞脚色賞を受賞している。
★製作者としては、アレハンドロ・アメナバルの才能をいち早く見出し、デビュー作『テシス 次に私が殺される』をプロデュース、続いて『オープン・ユア・アイズ』や『アザーズ』を手掛けています。音楽家でもあるアメナバルは『蝶の舌』の音楽を担当しています。というわけでプレゼンターはアメナバルでした。トロフィー授与の前に代表作のメモランダム上映がありました。会場からはスタンディングオベーションが沸きあがり、どの映画賞でも見られる光景でした。
(アメナバルとホセ・ルイス・クエルダ)
★フェロス賞の選考母体は、スペイン映画ジャーナリスト協会AICE、現会長はマリア・ゲーラ、今回は開催地ビルバオ市、授賞式にはフアン・マリ・アブルト市長の出席もあり、主演男優賞ノミネートのホセ・コロナドと同じテーブルを囲んでいました。恒例のゲーラ会長スピーチはガラ中ほどにありました。
(AICE会長マリア・ゲーラ)
(AICE会長ゲーラ、ビルバオ市長フアン・マリ・アブルト、総合司会者ガルシア・ヨンソン)
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