ロドリゴ・プリエトの『ペドロ・パラモ』③*監督&スタッフ紹介2024年11月26日 16:09

          『ペドロ・パラモ』で監督デビューしたロドリゴ・プリエト

   

      

      (Deadline のインタビューを受けるプリエト監督、20241124日)

 

ロドリゴ・プリエトといえば、一般的にはマーティン・スコセッシの『沈黙―サイレンス』(16)、『アイリッシュマン』(19)、最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)、アン・リーの『ブロークバック・マウンテン』(05)、ベネチア映画祭2007の金のオゼッラ賞受賞作『ラスト・コーション』、ベン・アフラックの『アルゴ』(12)、グレタ・ガーウィグの『バービー』とアメリカ映画の撮影監督として知られています。上記のデッドラインのインタビューで、『バービー』と『キラーズ~』の撮影の合間を縫って『ペドロ・パラモ』を何回も読み返し推敲したと語りました。

  

      

       (『沈黙―サイレンス』撮影中のマーティン・スコセッシと)

 

★しかしスペイン語映画ファンとしては、もうアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥのデビュー作『アモーレス・ぺロス』に尽きます。2000年、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」で鮮烈デビュー、作品賞を受賞した。第1話に主演したガエル・ガルシア・ベルナルは、メディアのインタビュー攻めに「天地がひっくり返った」と語ったのでした。その後の快進撃は以下のフィルモグラフィーの通りです。2009年、ペドロ・アルモドバルの『抱擁のかけら』でタッグを組み、アルモドバル嫌いからは「どこを褒めたらいいか分からない」と酷評されましたが、プリエトの映像美は高い評価を受け、スペインのシネマ・ライターズ・サークル賞を受賞した。

   

     

 (『BIUTIFULビューティフル』撮影中のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと)

  

キャリア紹介1965年メキシコシティ生れ、撮影監督、映画監督。国籍はメキシコと米国、ロサンゼルス在住。祖父はサンルイス・ポトシ市長、メキシコシティ知事、下院議長を務めた政治家、政治的対立で迫害されテキサスに亡命、後ロサンゼルスに移る。父はニューヨークで航空工学を専攻、結婚後メキシコに戻りロドリゴが誕生した。彼は1975年設立された国立機関の映画養成センターCCCCentro de Capacitación Cinematográfica)で学んでいる。2021年ヴィルチェク財団が選考するヴィルチェク映画賞を受賞、2023年にはモレリア映画祭の審査員を務めている。監督として、2013年、製作国米国の短編「Likeness」(9分、英語)をトライベッカ映画祭に正式出品、2019年には「R&R」(6分、米、英語)を撮っている。『ペドロ・パラモ』で長編監督デビューした。

   

      

  (金のオゼッラ賞を受賞した『ラスト、コーション』撮影中のアン・リーと)

 

フィルモグラフィー(本邦公開作品、短編、TVシリーズ、ミュージックビデオは割愛)

1991El jugador」メキシコ、デビュー作、監督ホアキン・ビスナー

1996Sobrenatural」メキシコ、監督ダニエル・グルーナー、1997アリエル賞初受賞

1996『コロンビアのオイディプス』(「Oedipo alcalde」邦題はキューバFF2009による)

   コロンビア・スペイン合作、監督ホルヘ・アリ・トリアナ

作品紹介記事は、コチラ20140427

1998Un embrujo」メキシコ、監督カルロス・カレラ、

   1999アリエル賞サンセバスチャンFF受賞

2000『アモーレス・ぺロス』メキシコ、監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

   2001アリエル賞、ゴールデン・フロッグ賞受賞

2001『ポワゾン』米国、監督マイケル・クリストファー

20028 Mile』ミュージカル、米国・独、監督カーティス・ハンソン

200225時』米国、監督スパイク・リー

2002『フリーダ』米国・カナダ合作、監督ジュリー・テイモア

2002『彼女の恋から分かること』米国、監督ロドリゴ・ガルシア

 

200321グラム』米国、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

2004『アレキサンダー』米国、監督オリバー・ストーン

2005『ブロークバック・マウンテン』米国、監督アン・リー、アカデミー賞ノミネート

   シカゴFFダラス・フォートワースFFフロリダFF、各映画批評家協会賞受賞

2006『バベル』米国、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、

2007『ラスト、コーション』米国、監督アン・リー、ベネチアFF金のオゼッラ賞受賞

 

2009『抱擁のかけら』スペイン、監督ペドロ・アルモドバル、

   シネマ・ライターズ・サークル賞受賞

2009『消されたヘッドライン』米国、監督ケヴィン・マクドナルド

2010BIUTIFULビューティフル』スペインとの合作、スペイン語、

   監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アリエル賞受賞

2010『ウォール・ストリート』米国、監督オリバー・ストーン

2011『恋人たちのパレード』米国、監督フランシス・ローレンス

 

2012『アルゴ』米国、監督ベン・アフラック

2013『ウルフ・オブ・ウォールストリート』米国、監督マーティン・スコセッシ

2014『ミッション・ワイルド』米国・フランス合作、トミー・リー・ジョーンズ

2014『夏の夜の夢』米国、監督ジュリー・テイモア

2015『沈黙-サイレンス』米国、監督マーティン・スコセッシ、アカデミー賞ノミネート

 

2016『パッセンジャー』SF、米国、監督モルテン・ティルドゥム

2019『アイリッシュマン』米国、監督マーティン・スコセッシ、アカデミー賞ノミネート

2020『グロリアス 世界を動かした女たち』米国、監督ジュリー・テイモア

2023『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』米国、監督マーティン・スコセッシ、

   アカデミー賞ノミネート、サンディエゴFFサンタ・バルバラFFダブリンFF

   各映画批評家協会賞受賞

2023『バービー』米国、監督グレタ・ガーウィグ、

   ナショナル・ボード・オブ・レビュー、他多数

2024『ペドロ・パラモ』メキシコ、監督、共同撮影ニコ・アギラル

 

★以上、公開作品、受賞作品を中心に列挙しました。映画祭ノミネートがトータル129という驚異的な数には恐れ入ります。ノミネートはオスカー賞4作(スコセッシ3作、アン・リー1作)のみアップしました。イニャリトゥがオスカーを受賞した『バードマン~』と『レヴェナント 蘇えりし者』の撮影監督はエマニュエル・ルベッキでした。プリエトと同世代の彼はオスカー像を3個も貰っています。「賞を貰うために仕事をしているわけではない」ですけど。

 

★脚本を共同執筆したマテオ・ヒル・ロドリゲス Mateo Gilは、1972年カナリア諸島のラス・パルマス生れ、スペインの監督、脚本家、製作者。アレハンドロ・アメナバルのデビュー作『テシス、次に私が殺される』(96)の共同脚本家、助監督としてスタートした。長編デビュー作「Nadie conoce a nadie」(99)が東京国際映画祭2000に『ノーバディ・ノウズ・エニバディ』の邦題で正式出品され、翌年『パズル』で公開された。『アモーレス・ぺロス』が作品賞を受賞した年でした。

  

★2004年のアメナバルの『海を飛ぶ夢』では、監督と脚本を共同執筆、ゴヤ賞オリジナル脚本賞を受賞、さらに本作はアカデミー賞2005の外国語映画賞受賞作品でした。ネットフリックスTVシリーズ『ミダスの手先』(206話)のクリエーター、脚本も執筆している。

(写真下は視聴覚媒体におけるアーティストの福利厚生及びプロモーションを援助する財団AISGE のインタビューを受けたときの最新フォト)

   

      

      (AISGEのインタビューを受けるマテオ・ヒル、2024114日)

 

★かつて「ペドロ・パラモ」を監督する企画があり脚本も執筆した。しかし資金が底をついて実現に至らなかった。舞台となるコマラの町のセットも二つ必要でしたから、ネットフリックスの資金援助がなければ難しかったと思われます。その際の脚本がたたき台になったようですが、監督と脚本家もそれぞれ異なるビジョンがあり、削除したいシーン、追加したいシーンを徹底的に議論したようです。今回は脚本を手掛けているので、脚本に絞ってキャリアを紹介したい。

(短編は割愛しました)

 

1996『テシス、次に私が殺される』監督アレハンドロ・アメナバルとの共同執筆

1997『オープン・ユア・アイズ』同上

1999『パズル』(TIFFタイトル「ノーバディ・ノウズ・エニバディ」)監督、

   脚本はフアン・ボニジャとの共同執筆

2001『バニラ・スカイ』(『オープン・ユア・アイズ』のリメイク版

   監督、脚本キャメロン・クロウ、原案アレハンドロ・アメナバル&マテオ・ヒル

2004『海を飛ぶ夢』監督アメナバル、監督との共同執筆、

   ゴヤ賞2005オリジナル脚本賞受賞

2005El método」アルゼンチン・伊・西、監督マルセロ・ピニェイロ、監督との共同執筆

   ゴヤ賞2006脚色賞受賞、アルゼンチン映画アカデミー賞脚色賞受賞

2009『アレクサンドリア』監督A・アメナバル、監督との共同執筆、

   ゴヤ賞2010オリジナル脚本賞受賞

2016RealiveSF、監督&脚本マテオ・ヒル、ファンタスポルト作品賞&脚本賞受賞

2018『熱力学の法則』監督&脚本マテオ・ヒル、マイアミFF監督賞受賞、Netflix配信

2024『ペドロ・パラモ』監督ロドリゴ・プリエト

  

2011『ブッチ・キャシディ―最後のガンマン―』は監督のみで、脚本はミゲル・バロスが執筆した。トライベッカFFでプレミア、トゥリア賞2012新人監督賞受賞、ゴヤ賞2012監督賞にノミネートされた。

 

El método」の紹介記事は、コチラ20131219

『熱力学の法則』の紹介記事は、コチラ20180402

 

★音楽を手掛けたグスタボ・サンタオラジャ(ブエノスアイレス1951)は、アルゼンチンのミュージシャン、『バベル』と『ブロークバック・マウンテン』でオスカー像をゲットしたほか、オンライン映画テレビ協会賞、ほかラスベガスとサンディエゴ映画批評家協会賞など受賞歴多数。『アモーレス・ぺロス』とBIUTIFULビューティフル』ではアリエル賞、ウォルター・サレスの『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04)とダミアン・シフロンの『人生スイッチ』(14)でアルゼンチン映画批評家協会賞など活躍の舞台は国際的です。

『人生スイッチ』での紹介記事は、コチラ20150119同年0729

  

    

               (グスタボ・サンタオラジャ)

  

★次回はキャスト紹介を予定しています。

  

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2024/11/26/9734865/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。