河瀨直美『Vision ビジョン』がノミネート*サンセバスチャン映画祭2018 ② ― 2018年07月16日 14:41
金貝賞を競うセクション・オフィシアルに7作品が発表になった

★第66回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2018(9月21日~29日)のドノスティア賞(栄誉賞)に是枝裕和監督が選ばれたニュースに続いて、今度は河瀨直美の『ビジョン』がコンペティション部門に正式出品が決定した。目下はクレール・ドニ、キム・ジウン、バレリア・サルミエントなどの監督7作品が発表されただけですが、今後数週間のうちに全体像が発表になるようです。

(ロバート・パティンソン、クレール・ドニの「High Life」から)
★河瀨直美(奈良、1969)の最新作『Visionビジョン』は、すでに6月8日に全国ロードショーされております。奈良を舞台にジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩田剛典、夏木マリなどが出演している。シニア層が多い河瀨映画に、岩田剛典が起用されたことで若い女性層を取り込めるか。監督については今更ご紹介するまでもありませんが、SSIFFは2010年に続いて2回目、エントリー作品『玄牝 げんぴん』が国際映画批評家連盟賞Fipresciを受賞していますが、カンヌやベネチアでないので、日本ではあまり報道されませんでした。
★今回の目玉になるかもしれないのが、フランスのクレール・ドニ(パリ、1948)のSF「High Life」(独仏英ポーランド他)、ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、ミア・ゴスが出演している。ドニ監督は、『ショコラ』でデビュー、『美しき仕事』『パリ、18区、夜。』など、SSIFF は初ノミネーション、監督が近未来映画を手掛けるのは珍しい。ビノシュはセビーリャ・ヨーロッパ映画祭2017正式出品のロマンティックでないコメディ「Un sol interior」に続いての出演です。彼女はゴヤ賞2016に、イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」で主演女優賞にノミネートされた折り来西して、関係者やファンの熱烈な歓迎を受けました。コイシェから「クレージーでぶっ飛んだ女優」と称賛されたビノシェ、彼女ほど偏見なく国境を越えて活躍する女優を他に知りません。今回2作品ノミネーションですから来サンセバスチャンを期待していいかもしれない。

(クレール・ドニとジュリエット・ビノシュ、第70回カンヌ映画祭)
★チリのバレリア・サルミエント(バルパライソ、1948)の「Le cahier noir / The Black Book」(仏ポルトガル)、カミロ・カステロ・ブランコの小説「Livro Negro de Padre Dinis」に着想を得て製作された。チリで哲学と映画を学んでいるが、ピノチェトの軍事クーデタ後の1974年にフランスに亡命して、以来フランス語で製作している。前回のノミネーションは約20年前の「Elle」(1995)、SSIFF 初登場は、1984年「ニューディレクターズ部門」にノミネートされた「Notre marriage / Mi boda contigo」(仏ポルトガル)で監督賞を受賞している。

★ベンハミン・ナイシュタット(ブエノスアイレス、1986)の長編3作目「Rojo」、軍事独裁が始まる直前の1970年代のアルゼンチンについて語る。ダリオ・グランディネッティ(『人生スイッチ』『ジュリエッタ』)、アンドレア・フリゲリオ、アルフレッド・カストロ(『ザ・クラブ』『彼方から』)が出演。ナイシュタット監督については、長編第2作「Historia del miedo」(アルゼンチン・ウルグアイ・独仏)が第64回ベルリン映画祭2014のコンペティション部門にノミネートされた折りキャリア紹介をしております*。彼も映画大学卒業後、フランスの「ル・フレノワ国立現代アートスタジオ」の奨学金を得て、2009年から2年間学んでいる。
*ベンハミン・ナイシュタットのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年02月24日

(左から、監督、主役のジョナサン・ダ・ローザ他、ベルリン映画祭2014にて)
★他に韓国のキム・ジウン(ソウル、1964)の「La brigada del lobo」、押井守のアニメ『人狼 JIN-ROH』の韓国版らしい。オーストリアからMarkus Schleinzer(ウィーン、1971)の第2作「Angelo」、デビュー作「Michael」は、カンヌ映画祭2011に正式出品されている。キャスティング・ディレクターとしてのキャリアが長い。
★スイスからはサイモン・ジャケメ(Simon Jaquemet チューリッヒ、1978)の「Der unschuldige / The Innocent」、2014年の「ニューディレクターズ部門」に「Chrieg / War」がノミネートされている。スイスで使用される一種の方言スイスドイツ語映画です。以上ヨーロッパ3作、アジア2作、ラテンアメリカ2作、合計7作です。全体像が分かるまでには数週間かかるようです。字幕はスペイン語と英語入りと思いますが、詳細はいずれアップされます。
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