ギレルモ・デル・トロに「マラガ-スール」賞*マラガ映画祭2018 ①2018年03月22日 17:41

      アカデミー賞に続いてマラガ—スール賞受賞――今年はデル・トロの年

 

  

★第21回マラガ映画祭2018413日に開幕します。コンペティション部門の正式発表はまだですが、オープニング作品にマテオ・ヒルLas leyes de la termodinámica」というSF映画が決定しております。他にはダビ・トゥルエバエルネスト・ダラナス・セラーノ(キューバ)、アニメーション2D/3Dでは20年のキャリアの持ち主カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴが確定しています。いずれ全作品が発表された時点でアップしたい。

 

★本映画祭の大賞マラガ—スール賞ギレルモ・デル・トロエロイ・デ・ラ・イグレシア賞ロドリゴ・ソロゴジェン監督、リカルド・フランコ賞に衣装デザイナーパコ・デルガドがアナウンスされました。「金の映画」にはペドロ・オレアUn hombre llamado Flor de Otoñoが公開40周年を記念して選ばれています。主役のホセ・サクリスタンが女装に挑戦、サンセバスチャン映画祭1978の男優銀貝賞を受賞した作品です。

 

★まずは、米アカデミー賞作品・監督賞を受賞した(34日)興奮も覚めやらない39日に、マラガ—スール賞受賞の朗報を貰ったギレルモ・デル・トロから始めたい。現在の178センチの巨漢からは、青い目の金髪、ひどく痩せていた子供だったとは想像できないが、中身はシャイで繊細、モンスターの恋人、妖精物語が大好きな少年そのままです。子供のときの夢は「海洋生物学者か作家、イラストレーター」、「海の中の混沌や恐怖に惹かれる」と、かつて語っていたデル・トロ、『シェイプ・オブ・ウォーター』は子供のころの夢と繋がっているのでしょうか。

昨年までの「マラガ賞」が、今回から映画動向に詳しい「Diario Sur」のコラボレーションにより賞名変更になったようです。本賞受賞者は海沿いの遊歩道に等身大の記念碑を立ててもらえる。 

 

     

                 (ギレルモ・デル・トロ)

 

★受賞にとどまらず、マラガ映画祭が出版社Luces de Galiboとコラボして、デル・トロの人生やキャリアに関したアントニオ・トラショラスDel Toro por Del Toroという本を出版する。彼のオピニオン、逸話、意見、年代順ではない自由自在に歩き回る伝記まで網羅したデル・トロ紹介本のようです。デル・トロは長編映画『デビルス・バックボーン』2001)を初めてスペインで撮ったメキシコ監督としてスペインではファンが多い。著者アントニオ・トラショラスは、本作の共同執筆者の一人で旧知の間がら、二人の対談も含まれている由。

 

★アルモドバル兄弟の制作会社エル・デセオが手掛けたホラー・ミステリー『デビルス・バックボーン』は、国際的に非常に高い評価を受けながらも興行的には芳しくなかった。後年『パンズ・ラビリンス』06)がハリウッドで成功した折に「わたしの映画は、いくつかの分野にまたがっているので評価が分かれる。『ヘルボーイ』04)は興行的に成功したが、批評家からは無視された。『デビルス・バックボーン』は批評家からは評価されたが、観客にはそっぽを向かれた。両方が納得してくれたのが、この『パンズ・ラビリンス』だ」と語ることになる。十年以上の歳月を経て、『シェイプ・オブ・ウォーター』で再びハリウッドに戻ってきて、自身が念願の作品賞・監督賞の2冠を手にしたほか、作曲賞・美術賞も受賞した。

   

     

  (オスカー像と抱き合って喜ぶデル・トロ、アルゼンチン出身のアウグスト・コスタンソ筆)

  

★中古車売買業者フェデリコ・デル・トロ・トレスを父に、女優グアダルーペ・ゴメスを母に、1964109日、グアダラハラ、ハリスコに生れる。監督、脚本家、製作者、小説家。厳格なカトリックの家庭で育ち、不可知論者。8歳のとき母親の影響を受け短編を撮る。少年青年期には2日に1冊のスピードで読了した本好き、子供向け古典シリーズから家庭医学百科事典、「芸術の鑑賞法」10巻など、絵画、人体について多くを本から学んだ。「これらの百科事典を読んでいたせいで、早くから心気症ヒポコンドリー患者になってしまった」と昨年のシッチェス映画祭2017で語っていた。1986年ロレンサ・ニュートンと結婚、2017年に離婚したが、できるだけ2人の娘と過ごす時間を大切にしている。

 

      

        (最新作『シェイプ・オブ・ウォーター』をバックにした監督)

 

★グアダラハラ大学の付属校映画製作研究センターで、特に特殊効果を学ぶ。1985年、特殊効果の制作会社ネクロピア Necropia を設立、翌年シリーズHora marcadaで監督デビュー、6話を手掛ける。20歳のときハイメ・ウンベルト・エルモシージャ監督(1942生れ)と出会い、彼から「もし道がなければ、自分で切り開きなさい」という言葉を貰った。さらに「監督からは若いシネアストへの援助の重要性も教えられた。フアン・アントニオ・バヨナのデビュー作『永遠のこどもたち』のエグゼクティブ・プロデューサーを手掛けたのもその教えです」と。エルモシージャ監督はグアダラハラ大学オーディオビジュアル・アート校で後進の教育に当たっている。

 

★現在はロスとトロントのどちらかで暮らしているが国籍はメキシコ、「何故なら私はメキシコ人だからです」。ゴチック風の家には膨大な珍しいモンスターなどのコレクション、書籍、おもちゃ類、コミック類が収蔵されている。『デビルス・バックボーン』の撮影地マドリードにも、約5000冊のお気に入りコミック類と一緒に旅をしたというコミック・オタクです。

  

    *主なフィルモグラフィー*(短編・テレビ・脚本・製作のみは省く)

1993 Cronos 『クロノス』監督・脚本

1997 Mimic 『ミミック』同上

2001 El espinazo del diablo 『デビルス・バックボーン』監督・脚本・製作

2002 Blade II 『ブレイド2』監督

2004 Hellboy 『ヘルボーイ』監督・脚本

2006 El laberinto del fauno 『パンズ・ラビリンス』監督・脚本・製作 

  アカデミー賞撮影・美術・メイクアップ賞の3賞を受賞した作品

2008 Hellboy 2: el ejercito dorado 『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』監督・脚本

2013 Pacific Rim 『パシフィック・リム』監督・脚本・製作

2015 La cumbre escarlata『クリムゾン・ピーク』監督・脚本・製作

2017 La forma del agua『シェイプ・オブ・ウォーター』監督・脚本・製作

  ベネチア映画祭2017金獅子賞、ゴールデン・グローブ賞監督賞、アカデミー賞作品・監督賞他

多数の受賞歴のあるアリエル賞、ゴヤ賞、英国アカデミー賞、他ノミネーションは割愛。