モニカ・ランダル「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ」*マラガ映画祭2018 ⑤2018年03月30日 17:10

          マカロニウエスタン女優または『カラスの飼育』の叔母さん役が有名?

 

2015年に創設られた「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ」に選ばれたのは、バルセロナ生れのモニカ・ランダル、伊西合作映画のマカロニウエスタン、例えば『五匹の用心棒』66)やテレンス・ヤングの『レッド・サン』71)出演時にモニカ・ランドールとクレジットされたことから、日本では後者のほうが通りがいい。ということでカルロス・サウラの『カラスの飼育』76)公開時も後者が採用されました。ここでは母親を亡くした三姉妹の世話をする叔母役、現在に過去を絡ませる手法を取り入れたサウラがもっとも輝いていた時代の作品かもしれない。

 

      

          (モニカ・ランダル、『カラスの飼育』から)

 

★過去の受賞者は、フリエタ・セラノエミリオ・グティエレス・カバ、昨年のフィオレリャ・ファルトヤノと、いずれも映画・舞台で活躍したベテラン俳優が選ばれている。レトロスペクティブ賞は目下活躍中のシネアストから選ばれる貢献賞だが、こちらは現役引退に近いシネアストから選ばれているようです。モニカ・ランダルもペドロ・オレアのTiempo de tormenta03)を最後に銀幕からは引退していますが、しばらくはTVシリーズ出演、TV司会者、舞台女優としては現役を続けていた。 

   

   

モニカ・ランダル(ランドール)Mónica Randall、本名Aurora Juliá i Sarasa19421118日バルセロナ生れ(75歳)、女優、TV司会者、監督。バルセロナのアルテ・ドラマティコで演技を学ぶ。アレハンドロ・ウジョアの劇団員として、コメディ「Cena de matrimonios」などの舞台に立つ。ほかハシント・ベナベンテの「Los intereses creados」、フアン・ホセ・アロンソ・ミリャンの「El alma se serena」などに出演、その後映画界に移り、30年のブランクを経た2009年、ヤスミナ・レサの「Una comedia española」(演出シルビア・ムント)で舞台に戻ってくる。

 

★映画出演はTVシリーズを含めると100作を超える。上述のマカロニウエスタンの他、未公開だがビデオやテレビ放映を含めると結構あります。例えば『殺しの番号77~』(66TV放映、伊西)、『黄金無頼』(67、伊西)、『Dデイ特攻指令』(68、伊西、ビデオ)、『今のままでいて』(78、伊西米)などが挙げられます。これらは代表作というわけではなく、字幕入りで鑑賞可能というだけのことです。映画デビューはホセ・ディアス・モラレスのLa revoltosa63、その後上記のマカロニウエスタンに出演、特に「007」の監督テレンス・ヤングの『レッド・サン』71、仏伊西)は、アラン・ドロン、チャールズ・ブロンソン、三船敏郎出演の異色マカロニウエスタンだった。モニカ自身は脇役に過ぎなかったが、当時の世界三大スターと共演できた映画だった。 

    

          

        (モニカ・ランダル、三船敏郎、『レッド・サン』から)

 

★マカロニウエスタン・ブームに陰りが見えてきた1968年からスペイン映画出演が増え、ルイス・セサール・アマドリCristina Guzmán68)、ペドロ・ラサガAbuelo Made in Spain69)他、ハイメ・デ・アルミリャンCarola de día, Carola de noche69)、ラファエル・ヒルUn adulterio decente69)など、コスモポリタンで気取った女性のプロトタイプを演じることが多かったが、それはフランコ体制という時代の要請でもあった。Cristina Guzmán」でナショナル・シンジケート・オブ・スペクタクル賞1968助演女優賞を受賞した。

 

★フランコ体制の揺らぎとともにハイメ・デ・アルミリャンのMi querida señolita72)、カルロス・サウラの『カラスの飼育』、アントニオ・ヒメネス=リコRetrato de familia76)、ルイス・ガルシア・ベルランガの「ナシオナル三部作」の第1作目La escopeta nacional78)などに出演する。今ではクラシック映画の名作になっている作品だが、Retrato de familia」でシネマ・ライターズ・サークル賞1976主演女優賞、ナショナル・シンジケート・オブ・スペクタクル賞1976女優賞、「La escopeta nacional」でフォトグラマス・デ・プラタ1978スペイン映画俳優賞を受賞した。

  

  

(主演女優賞を受賞した「Retrato de familia」から)

  

★1987年、ハイメ・デ・アルミリャンの「Mi general」で主役に起用され、フェルナンド・レイ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、エクトル・アルテリオ、ラファエル・アロンソ他、当時の錚々たる男優陣と共演した。本作はモントリオール映画祭1987審査員特別賞を受賞した。1993年、ベルランガの最後の映画となるTodos a la cárcelに出演、先述したように2003年の「Tiempo de tormentaが最後の映画出演となった。

 

  

★その他の受賞歴:1964年からドラマや司会者として出演するようになったテレビでは、1973年のエンターテイメント番組「Mónica a Medianoche」で「TP de Oro」賞のベスト司会者に選ばれたほか、サン・ジョルディ賞2015プロフェショナル・キャリア賞を受賞した。

 

★以上でマラガ映画祭の特別賞紹介はおしまいにして、次回から五月雨式にアナウンスされているコンペティション部門の作品紹介をする予定です。