『ビバ』 パディ・ブレスナック*ラテンビート2016 ④2016年10月02日 13:44

          ラテンビートにアイルランドの監督作品が初登場!

 

★ラテンビートの作品紹介では、製作国は「キューバ、アイルランド」となっておりますが、正確にはアイルランド映画です。キューバの俳優を起用してハバナで撮影、言語もスペイン語とややこしいのですが。本作は「88回アカデミー賞2016外国語映画賞部門」のアイルランド代表作品、プレセレクション9作まで踏ん張りましたが、ノミネーションにはいたりませんでした。キューバは2016年の出品を見送りました。ちなみに2017年はパベル・ジローPavel Giroudの“El acompañante”(“The Companion”)を出品します。かつて“La edad de la peseta”(06)が代表作品に選ばれています。本作は「ラテンビート2007」で『目覚めのとき』の邦題で上映されたことがあります。

 

  

 

『ビバ』“Viva

製作:Treasure Entertainment(アイルランド)/ Irish Film Board(同、資金提供)、協力Radio Telefis Eireann(同)/ Windmill Lana Pictures(同)/ Island Films(イギリス)

監督:パディ・ブレスナック

脚本:マーク・オハロランMark O’Halloran

音楽:スティーブン・レニックス

撮影: Cathal・ワターズ

編集:スティーブン・オコンネル

衣装デザイン:ソフィア・マルケス

プロダクション・デザイン:パキー・スミス

製作者:ベニチオ・デル・トロ(エクゼクティブ)、Rory Gilmartin(同)、キャスリン・ドーレ、レベッカ・O’Flanagan、ロバート・ウォルポール、他

 

データ:アイルランド=キューバ、スペイン語、2015年、100分、撮影地ハバナ、アイルランド、公開アイルランド2016819日、スペイン20167月、フランスなど、キューバは未定

映画祭・受賞歴テルライド映画祭2015、パームスプリングス映画祭2016,以下サンダンス、グアダラハラ、テルアビブ、アトランタ、ブリュッセルなど国際映画祭2016多数。サンタバーバラ映画祭でADL スタンドアップ賞(パディ・ブレスナック)、ダブリン映画祭2016「アイルランド長編部門」観客賞、IFTAアイルランド映画TVアカデミー賞2016撮影賞(Cathal・ワターズ)受賞

 

キャストエクトル・メディナ(ヘスス)、ホルヘ・ペルゴリア(父アンヘル)、ルイス・アルベルト・ガルシア(ママ)、パウラ・アンドレア・アリ・リベラ(ニタ)、トマス・カオ(ネストル)、リビア・バティスタ(ラサラ)、他多数

 

解説 18歳になるヘススはハバナのドラッグ・パフォーマーの一座で働いている。しかし彼のやりたいことはドラッグ・クイーンとして自ら舞台に立つことだ。やがてチャンスがめぐってきて、「ビバ」という芸名で「ママ」の経営するクラブのステージに立つことができるようになった。そんな彼の前に15歳のとき以来会うこともなかった父親が刑務所から出所してくる。元ボクサーの父はホモ嫌い、女装趣味の息子とは水と油でしかない。長い不在から帰還した父と子の葛藤が再燃する。彼らは家族として再出発できるのだろうか。

 

 

(元ボクサーの父役ホルヘ・ペルゴリア、息子を演じるエクトル・メディナ)

 

★ブリュッセル映画祭2016のコンペティション部門にノミネーションされ(受賞は逃したが)、7月にはスペイン公開が実現しました。アイルランドは、EU離脱(ブレグジットBrexit)で世界に激震を走らせ、冷たい視線を浴びせられているグレート・ブリテンの一員ではありませんが、隣国ですから政治的経済的に吉と出るか凶と出るか、今後の予測は難しい。

     

 ★コロラド州のテルライド映画祭9月開催)は歴史も古く審査員が毎年変わる。2015年にはハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』(グアテマラ)も上映された。アイルランド映画委員会が資金を出して映画振興に力を注いでいるそうで、それが本作のような海外撮影を可能にしたようです。アカデミー賞2016のアイルランド代表作品ですが、公開はIMDbが間違いでなければ20168月でした。 少なくともキューバ人のキャストを起用してハバナでの撮影を許可したのですから、いずれ公開もあるでしょうか。アグスティ・ビリャロンガの『ザ・キング・オブ・ハバナ』(15ラテンビート2015)は、「あまりに脚本が悪すぎ」という理由でキューバから撮影を拒否されたのでした。 

  

★アイルランドは、1949年にイギリス連邦から離脱した共和国、首都はダブリン、公用語は勿論アイルランド語ですが、400年にも及ぶイギリス支配で、国民の多数は英語を使用しています。国家がアイルランド人としてのアイデンティティ教育の一環として学校で学ぶことを義務づけています。しかし学ぶには学ぶが、日常的には英語だそうです。最近EUの公用語に指定されましたが、支配下にあった時代のスウィフトの『ガリヴァー旅行記』、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』も英語で書かれています。パディ・ブレスナック監督もアイルランド語の映画を撮っておりますが、ドラマは英語です。そういう意味では『ビバ』は異色、よくアイルランド代表作品に選ばれたと驚きます。アイルランドのオスカー賞レース参加は2007年から、『ビバ』が3回目、2017年も参加します。

  

 

  監督キャリア&フィルモグラフィー

パディ・ブレスナックPaddy Breathnackは、1964年ダブリン生れ、監督、製作者、脚本家。公開作品は、イギリス映画『シャンプー台のむこうに』01Blow Dry”)1作だけです。『フル・モンティ』のサイモン・ボーフォイが脚本を執筆、アラン・リックマンがカリスマ美容師に扮した。他にDVD化される確率が高いホラー映画2『デス・トリップ』07Shrooms”)、『ホスピス』08Freakdog”)が字幕入りで見ることができます。サンセバスチャン映画祭にブレスナックのデビュー作Ailsa94)が上映された折には、「ダブリンのキェシロフスキ」と話題になったそうです。つづく第2作がスリラー仕立てのアクション・コメディI Went Down97)、本作は同映画祭の新人監督賞、審査員賞を受賞した。クールでバイオレンスもたっぷり、自由奔放、たまらなく可笑しいブラックユーモア溢れた作品に審査員からも批評家からも、勿論観客からも歓迎された。彼の代表作は公開された『シャンプー台のむこうに』より、むしろこちらのほうではないでしょうか。そのほかコメディMan About Dog04)など。先述したように『ビバ』はアカデミー賞2016のアイルランド代表作品になった。

 

    

              (パディ・ブレスナック監督)

 

  主なスタッフ&キャスト紹介

スタッフはアイルランド・サイドで構成され、ダブリン映画祭ではクロージング上映だった。またアイルランド映画TVアカデミー賞では、Cathal・ワターズが撮影賞を受賞、他にスティーブン・オコンネル、パキー・スミス、スティーブン・レニックスなどがノミネートされていた。

 

キャスト陣は、主人公にエクトル・メディナ、その父親に最近アカデミー会員に選ばれたホルヘ・ペルゴリア、ベテラン俳優ルイス・アルベルト・ガルシアと、キャスト陣はキューバで固めています。ホルヘ・ペルゴリアは割愛しますが、エクトル・メディナは『ザ・キング・オブ・ハバナ』でヒロインの隣に住んでいた娼婦役の俳優、ルイス・アルベルト・ガルシアはオムニバス『セブン・デイス・イン・ハバナ』に出演、当ブログでご紹介したマリリン・ソラヤのデビュー作“Vestido de novia”や“Perfecto amor equivocado”他、テレビでも活躍するベテラン、トマス・カオは、ベニト・サンブラノの『ハバナ・ブルース』ほか、フアン・カルロス・タビオの“Cuerno de la abundancia”、最近ペルゴリアが監督した“Fatima”では大役に抜擢されている。パウラ・アンドレア・アリ・リベラ(“Perfecto amor equivocado”)、その他は今作でデビューしたようです。

 

  

      (エクトル・メディナとママ役ルイス・アルベルト・ガルシア、映画から)

 

主なViva関連記事は、コチラ⇒2016711日・2015103

 

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