ストリーミング配信を期待する「Upon Entry」2023年07月01日 15:06

             カラカス出身の若い二人の監督、ロハスとバスケス

   

    

 

★サンセバスチャン映画祭2023のセクション・オフィシアル発表は、多分7月上旬あたりになると予想しています。というわけで前回のエレナ・トラぺの「Els encantats」に続いて、公開は無理としてミニ映画祭、ストリーミング配信などで観たい映画を幾つかアップする予定です。

 

3月に開催されたマラガ映画祭2023コンペティション部門にノミネートされたアレハンドロ・ロハスフアン・セバスティアン・バスケスの「Upon Entry / La llegada」が、予告通りスペインで公開されました(816日)。マラガFF では、主演のアルベルト・アンマン男優賞(銀のビスナガ)を受賞した作品です。両監督ともベネズエラのカラカス出身ですがバルセロナに在住、本国では映画製作ができない、いわゆる才能流出組です。二人ともHBOHome Box Office有料ケーブルテレビ放送局、本部ニューヨーク)の仕事をしており、ロハスはNetflix にも携わっています。バスケスが撮影監督をしたカルレス・トラスの「El practicante」(20)は、Netflixで『パラメディック~闇の救急救命士』として配信されている。本作はIMDbによると、松竹が配給元にアップされているので、公開もありかと期待して改めて紹介したい。

マラガ映画祭2023での監督キャリア&作品紹介は、コチラ20230314

      

       

   (左から、フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス両監督、

       製作者カルレス・トラス、タリン・ブラック・ナイツFF 2022

    

  

 (フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス、マラガFF フォトコール)

 

 「Upon Entry / La llegada」(仮題「通関 / 到着」)

製作:Zabriskie Films / Basque Films / Sygnatia  協賛ICEC / TV3

監督:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

撮影:フアン・セバスティアン・バスケス

編集:エマヌエーレ・ティツィアーニ

キャスティング:ジェラルド・オムス

美術:セルソ・デ・グラシア

メイクアップ&ヘアー:ロラ・カニャス(ヘアー)、スシ・ロドリゲス(メイク&ヘアー)

プロダクション・マネージメント:セルヒオ・アドリア、カルラ・ビセンテ

視覚効果:Hover Pinilla

製作者:カルレス・トラス(Zabriskie Films)、カルロス・フアレス、ショセ・サパタ、セルヒオ・アドリア、アルバ・ソトラ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・カタルーニャ語・英語、心理的スリラー、74分、公開スペイン2023616

映画祭・受賞歴:第26回タリン・ブラック・ナイツ映画祭2022(エストニア)FIPRESCI賞受賞、コルカタFF 2022ゴールデンベンガル・ロイヤルタイガー賞(インド)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023、マラガFF 2023 銀のビスナガ男優賞(アルベルト・アンマン)、BAFICI 映画祭2023(ブエノスアイレス)コンペティション部門正式出品、DA バルセロナFF、他多数

 

キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル(バレット税関職員)、ラウラ・ゴメス(バスケス税関職員)、ヌリス・ブルー(入国審査官)、デビッド・コムリー(警察官)、ルイス・フェルナンデス・デ・エリベ(ルイス)、コリン・モーガン(警察官)、ジェラルド・オムス(旅客)、他

 

ストーリー:ベネズエラ出身の都市計画家ディエゴ、バルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナ、二人は新しい生活を始めるため公式に承認された移民許可証を持って米国に到着する。彼らの目的は、プロとしてのキャリアを高め、「チャンスの国」であるマイアミで家族を築くことでした。しかし、ニューヨーク空港の入国審査エリアに入ると、彼らは二次検査室に連れていかれ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないか、と税関職員による心理的に不快な尋問を受けることになる。移民プロセスの複雑さ、外国人嫌い、少数の登場人物だけで緊張感あふれるドラマが展開する。アメリカン・ドリームと国家が自国の領土の安全を取り締まる権利が描かれる。

        

         

        (厳しい尋問を受けるディエゴとエレナ、フレームから)

  

 

     最高の演技と絶賛されたアルベルト・アンマンとブルーナ・クシ

   

★監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、既にアップしているマラガ映画祭の紹介記事に譲るとして、二人の主役を演じ、今までで恐らく最高のパフォーマンスと絶賛されている、アルベルト・アンマンとブルーナ・クシのキャリアを紹介したい。上述のようにアンマンはマラガ映画祭で最優秀男優賞を受賞している。ブルーナ・クシは、カルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』で少女の義理の叔母役の好演でゴヤ賞2018新人女優賞を受賞している。

    

      

    (銀のビスナガ男優賞受賞のアルベルト・アンマン、マラガ映画祭2023ガラ)

   

アルベルト・アンマンは、1978年アルゼンチンのコルドバ生れ、俳優、ミュージシャン。父親はジャーナリスト出身の政治家で作家のルイス・アルベルト・アンマンで後に大統領候補にも選ばれている。アルゼンチン軍事独裁政権(197683)を逃れて、一家は彼が生後1ヵ月のときスペインに亡命した。アルゼンチンがフォークランド戦争でイギリスに敗北した1982年に帰国するが、彼は数年後再びスペインに戻って、同じ理由でスペインに亡命してマドリードでアトリエを開き演技指導に当たっていたフアン・カルロス・コラッツァ演技学校で学んでいる。アルゼンチンではコルドバのジョリー・リボワ・シアター学校でも学んでいる。

 

2009年、ダニエル・モンソンの「Celda 211」の囚人に間違われた看守役で電撃デビュー、翌年のゴヤ賞新人賞を受賞した。本作は「スペイン映画祭2009」では『第211号監房』として上映されたが、公開時には何故かオリジナル題とかけ離れた『プリズン211』となり、ファンを呆れさせた。翌2010年、16世紀の劇作家ロペ・デ・ベガのビオピック「Lope」に主演、2011年、キケ・マイジョのSF映画「EVA」(『EVA〈エヴァ〉』)、2012年、ダニエル・カルパルソロの『インベーダー・ミッション』や『ワイルド・ルーザー』(13)、ホルヘ・ドラドのSFミステリー『記憶探偵と鍵のかかった少女』(13)に脇役で出演する。

    

       

         (ルイス・トサールと共演した『プリズン211』から)

 

2013年アルゼンチンに戻り、エルナン・ゴルドフリードのスリラー『ある殺人に関するテーゼ』でリカルド・ダリンと共演するなどした。メキシコのルイス・マンドキの「Presencias」(22)、オリヴィエ・マルシャルのアクション・スリラー『オーバードーズ 破滅の入り口』(22、プライム・ビデオ)など。アルゼンチンのマルティン・デ・サルボの「El silencio del cazador」でマラガ映画祭2020銀のビスナガ男優賞パブロ・エチャリと受賞しているほか、サンティアゴ映画祭SANFIC男優賞を受賞した。

 

NetflixTVシリーズ『ナルコス』(151720話)では、カリ・カルテルのボス、パチョ・エレーラを演じる。2019年『ナルコス』でスペイン俳優組合賞を受賞する。ほか『アパッチ』(151712話)、『マーズ 火星移住計画』(161812話)、『ナルコス:メキシコ編13』(18219話)とテレビ出演も多い。2022年ショセ・モライス企画の『ザ・ロンゲスト・ナイト』(6話)もNetflixで配信された。

    

     

     (パチョ・エレーラに扮したアンマン、TVシリーズ『ナルコス』から)

 

ブルーナ・クシ1987年バルセロナ生れ、映画・TV・舞台女優。父親は俳優のエンリク・クシ、バルセロナの演劇学校で学ぶ、その後バルセロナの演劇研究所でアルフレッド・カセス、ロベルト・ロメイの指導を受ける。2010年アルテ・ドラマティコの資格を受ける。アントニオ・ファバと一緒にコメディア・デル・アルテを設立するためイタリアを訪れる。カタルーニャTVシリーズ「Pulseras rojas」(11138話)に出演、主なテレビ出演は、主演「Instinto」(198話)、助演「The Alienist」(205話)、主演「Los herederos de la tierra」(225話)はNetflixで『大地を受け継ぎし者』の邦題で配信されている。アンナ・R・コスタのコメディ「Facil」(225話)にナタリア・デ・モリーナやアンナ・カスティーリョと共演している。

     

    

        (バックは尋問する2人の税関職員、Upon Entryから)

 

2013年、アグスティ・ビリャロンガと出会い、スペイン内戦をテーマにした「Incerta glôra」(Incerta gloria)で映画のキャリアをスタートさせ、ガウディ賞、サンジョルディ賞にノミネートされた。その後、上述したようにカルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』ゴヤ賞2018新人女優賞のほか、ガウディ賞助演女優賞を受賞、フォルケ賞やサンジョルディ賞にもノミネートされた。2019年、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのファンタジー「La reina de los lagartos」に出演、ラファ・デ・ロス・アルコスの短編「Todo el mundo se parece de lejos」(15分)でAguilar de Campoo 短編映画祭2019女優賞、カンス・フェスティバル2020女優賞を受賞した。2004年からガリシア州ポンテペドラの小さな村カンスで開催されるユニークな短編映画祭です。

    

      

            (ゴヤ賞2018新人女優賞の晴れ舞台から)

 

2020年はバイリンガルということも幸いしてテレビや短編も含めて活躍の年になった。リュイス・ダネスのホラー「La vampira de Barcelona」(カタルーニャ語)に出演、ガウディ賞助演女優賞にノミネートされた。他にダビ&アレックス・パストール兄弟の「Hogar」でハビエル・グティエレスと夫婦役を演じている。本作は『その住人たちは』の邦題でNetflix配信された。2021年、ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi」(スペイン語)に主演、弟モイ役を演じたリカルド・ゴメスは一時期パートナーだった。

    

      

     (ディオールの刺繍入りドレスが好評だったガウディ賞2021ガラにて)

 

Upon Entry / La llegada」と同じマラガ映画祭2023のコンペティション部門にノミネートされた、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのコメディSFEl fantástico caso del Golem」、マリオ・エルナンデスのロマンティックコメディ「Tregua (s)」に主演するなど、2023年のマラガには出演作が3作もノミネートされるという女優にとって異例の年でした。各映画とも簡単ですが既に作品紹介をしています。今後の活躍が確約されている女優として見守りたい。

 

ブルーナ・クシ関連記事

『悲しみに、こんにちは』の作品紹介は、コチラ20170222

La vampira de Barcelona」の作品紹介は、コチラ20210324

Tregua (s)」の作品紹介は、コチラ20230312

El fantástico caso del Golem」の作品紹介は、コチラ20230306

La reina de los lagartos」の作品紹介は、コチラ20230306

『その住人たちは』の作品紹介は、コチラ20200331


◎追加情報:邦題未定ですが、2025年9月19日公開がアナウンスされました。

      『入国審査』の邦題で2025年8月1日劇場公開されました。

フェリックス・ビスカレトの新作「Una vida no tan simple」2023年07月11日 17:47

    人間の複雑さについての繊細で知的、辛辣で的確なシリアスコメディ

 

       

               (パパ業は思うほどラクな仕事ではありません)

   

★前回の「Upon Entry / La llegada」と同じ、第26回マラガ映画祭2023でノミネートされたフェリックス・ビスカレトの辛口コメディUna vida no tan simple」がスペインで公開されました。各紙誌の評価は軒並みポジティブです。既に若者とは言えない、かといってシニアとも言えない宙ぶらりんの40代男性の悲哀が語られる。マラガでざっと紹介しましたが、日本の40代でも似たような傾向がみられることや贔屓の監督とキャスト陣ということで改めて紹介します。現代のように不確実性のなかで生きていくには、なりたかった自分になれないのは致し方ないのか、軽率に父親になってしまったことが悪かったのか、何処で間違ってしまったのか。こどもを持ってしまった中産階級カップルの繊細な可笑しさを失わない寓話。

Una vida no tan simple」の作品紹介は、コチラ20230314

 監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20171111

   

     

  (左から、ミキ・エスパルベ、オラヤ・カルデラ、フェリックス・ビスカレト監督、

    アレックス・ガルシア、アナ・ポルボロサ、マラガ映画祭2023フォトコール)

  

 

Una vida no tan simple」(仮題「人生はそれほど容易でない」)

製作:Lamia Producciones / A Contracorriente Films / Euskal Irrati Telebista

   (EiTB/ Movistar+ 協賛 Gobierno de Navarra

監督・脚本:フェリックス・ビスカレト

音楽:ミケル・サラス

撮影:オルカル・ドゥラン

編集:ビクトリア・ランメルス

美術:エイデル・ルイス

キャスティング:フロレンシア・イネス・ゴンサレス、チャベ・アチャ

衣装デザイン:イラチェ・サンス

製作者:アドルフォ・ブランコ、イケル・ガヌサ、(エグゼクティブ)マヌエル・モンソン、パス・レコロンス、エレナ・タベルナ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地ビルバオ、期間2021年末、公開スペイン20230623

映画祭・受賞歴:第26回マラガ映画祭2023セクション・オフィシアル正式出品

 

キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア、シャビ・バルカルセル

  

ストーリー40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしていますが、何処にいても自分がいるべき場所にいないと感じています。皆は別の場所にいて誰も自分のことなど覚えていないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ良好とはいえません。幼い子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しているイサイアスはいつもへとへとになっている。他の子供の賢明な母親であるソニアとの友情を深めますが、彼女は子供を一人前に育てて大人にするのは、それほど簡単ではないことを彼に教えます。誰もが喧嘩をせず友好的になろうとして、慎重かつ賢明な会話が交わされる、中産階級40代カップルの危機を掘り下げる。

   

         

      (一人ずつ我が子を抱えたイサイアスとアイノア、フレームから)

 

 

     生きることは簡単な仕事ではない、確実なノウハウもありません

 

★かつてモラトリアム世代と言えば、2030代だったものが、現在では40代と期間がどんどん長くなり、世間全体が幼児化してきているように感じます。このままだと子供を大人に教育する世代がいなくなってしまうのではないかと気になりますw。ディテールは未見なので想像の域をでませんが、失意の建築家イサイアスに生命を吹き込むミキ・エスパルベを見ていると、周囲の40代の誰彼の顔を浮かべてしまいます。居場所がないのではなく「ここは自分のいるべき場所ではない」という、居場所のない人からみれば贅沢な悩みなのです。イサイアスにはどうもエネルギーが足りない。

 

★対話劇のようですが、気まずい沈黙が訪れるとき、物語は動き出す。成功と失敗、屈辱、諦めの渦のなかで、建築家は周囲の期待に応えなければならないが、果たしてうまくいくでしょうか。結末がポジティブとネガティブに割れていますが、建築家を演じたミキ・エスパルベの評価はオール・ポジティブです。当ブログにも何回か登場させていますが、以下に日本語字幕入りで見られる作品を中心にラインナップしておきます。また大学教師の妻アイノアに扮したオラヤ・カルデラの演技をほめる記事が散見されました。イサイアスの同僚アレックス・ガルシア扮するニコとどうも微妙な関係らしいが、この手のドラマではよくある話です。離婚率の高さは万国共通、壁は日に日に低くなってきました。アナ・ポルボロサ扮する賢いソニアの造形も、クラスに一人か二人、見かけるタイプです。

 

       

                        (イサイアスとニコ)

 

         

    (ソニアとイサイアス)

 

ミキ・エスパルベ1983年カタルーニャのマンレサ生れ、俳優、脚本家、監督(短編2本)、ポンペウ・ファブラ大学、バルセロナのNancy Tuñóns School で演技を学ぶ。スペイン語とカタルーニャ語の映画に出演している。2016年マルク・クレウエトの「El rei borni」でガウディ賞2017主演男優賞、CEC新人賞にノミネート、2018年舞台をベルリンに移して撮った、エレナ・トラぺの「Les distàncies」で同じく助演男優賞にノミネートされている。フェルナンド・ボネリの短編「[Still] love you」でメディナ映画祭2017男優賞を受賞している。Netflixで配信されている作品も結構あり、字幕入りで鑑賞できる数少ない俳優の一人です。

 主なフィルモグラフィー 

2015Perdiendo el norte」(「Off Course」『夢と希望のベルリン生活』Netflix)助演

   監督ナチョ・G・ベリーリャ

2015Requisitos para ser una persona normal」コメディ、同レティシア・ドレラ、助演

2016El rei borni」監督マルク・クレウエト、主演

2017No sé decir adiós」(『さよならが言えなくて』)監督リノ・エスカレラ、助演

2018Les distàncies」監督エレナ・トラぺ、助演

2019Perdiendo el este」(「Off Course to China」)監督パコ・カバジェロ、主演

2020Malnazidos」(ホラー『マルナシドス~ゾンビの谷』Netflixコロナ禍で2022公開)

   監督ハビエル・ルイス・カルデラ、主演

2021El inocente」(『イノセント』TVシリーズ 6話出演、Netflix)助演

2021Tres」(「Out of Sync」)監督フアンホ・ヒメネス・ペーニャ、

   ガウディ賞助演男優賞ノミネート

2022Un hombre de acción」(『オンブレ・デ・アクシオン 伝説のアナーキスト』

   Netflix)ハビエル・ルイス・カルデラ、助演

2022Smiley」(ラブコメ『スマイリー』TVシリーズ8話)企画ギレム・クルア、主演

2023Una vida no tan simple」割愛

 

     

       (ガウディ賞主演男優賞ノミネートの「El rei borni」から)

 

フェリックス・ビスカレト(パンプローナ1975)は、2007年「Bajo las estrellas」で長編デビューした監督、脚本家、製作者。キャリアは以前の紹介に譲るとして、本作以降の仕事として、目下話題のTVシリーズ「Galgos」(23、全8話)のうち4話を監督します。ベテランのオスカル・マルティネス、パトリシア・ロペス・アルナイス、アドリアナ・オソレス、若手マリア・ペドラサ、マルセル・ボラスなど新旧入り混じっての豪華キャストです。

 

    

    (Galgos」撮影中の監督、アドリアナ・オソレス、マルセル・ボラス

   

   

   (右、パトリシア・ロペス・アルナイス)

     

    

                         (マリア・ペドロサ)

 

コンペティション部門ノミネート7作品*サンセバスチャン映画祭2023 ②2023年07月15日 18:01

        セクション・オフィシアルのノミネート7作品発表   

      


 

77日、第71回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2023セクション・オフィシアル(コンペティション部門)の7作品のノミネート発表がありました。例年1620作くらいですから3分の1だけ、全体像が分かるまでには少し時間がかかりそうです。7作のなかにスペイン映画は含まれておりません。スペイン語映画としてはアルゼンチンの2作が選ばれています。昨年は最初にスペイン映画4作が発表になりましたが、今年は様子が違うようです。以下に公式サイトの発表順に、製作国、タイトル、監督名、キャスト、ストーリーなどを簡単に列挙しておきます。

 

              71SSIFF セクション・オフィシアル

 

1) All Dirt Roads Taste of Salt(米国)英語、97

 *イクスミラ・ベリアク2019

監督レイブン ・ジャクソン(米、テネシー1990)は、監督、詩人、写真家、製作者。長編デビュー作だが本祭との関係は深く、2018年のネスト部門に短編「Nettles」(仮題「イラクサ」24分、タコマFF審査員賞)が出品されている。ほかノミネート作はイクスミラ・ベリアク・プログラムで掘り下げ完成させている。サンダンスFF2023USドラマ・コンペに正式出品された。ミシシッピで暮らす一人の女性の人生がリリックに語られる。

キャスト:チャーリン・マクルーア、ジャヤ・ヘンリー、レジナルド・ヘルムズ・ジュニア、クリス・チョーク、シーラ・アテム、他多数

ストーリー:数十年にわたるミシシッピ州で暮らす黒人女性の人生を探求する物語。私たちを形作った何世代もの人々、場所、そして言葉では言い表せない瞬間への賛歌です。セリフは殆どなく、美しいビジュアル、視覚的なストーリーテリングが監督の才能を際立たせている。

   

    

   

2) Ex-Husbands (米国)英語、コメディ、98

監督ノア・プリツカー(米、サンフランシスコ1986)は監督、作家。長編第2作目、2015年「Quitters」でデビュー、本祭参加は初めてとなる。新作は同じ家族ながらさまざまな登場人物たちのセンチメンタルな変転が語られる。主役グリフィン・ダン以下芸達者が共演する。

 

キャスト:グリフィン・ダン、マイルズ・ハイザー、ジェームズ・ノートン、エイサ・デイビス、ロザンナ・アークエット

ストーリー:ピーターの両親は65年間暮らした後に離婚した。彼の妻は35年後に去り、息子のニックとミッキーはそれぞれ自分の人生を送っている。ピーターがトゥルムに飛んで、ミッキーがお膳立てしたるニックの独身さよならパーティをぶち壊したとき、危機に瀕しているのは自分だけでないことに気づきます。

   

      

 

3) La práctica / The Practice(アルゼンチン=チリ=ポルトガル)

  スペイン語、コメディ、90

監督マルティン・ライトマンRejtman(アルゼンチン、ブエノスアイレス1961)は監督、脚本家、作家、製作者。セクション・オフィシアルのノミネートは初めてだが、1999年「Silvia Prieto」(メイド・イン・スペイン)、オリソンテス・ラティノス部門に「Los guantes mágicos」(04)、「Dos disparos / Two Shots Fired」(14)、2019年にはネスト部門の審査委員長を務めた。最新ニュースとしては、SSIFF 2020でドキュメンタリー「El repartidor está en camino / Riders」を発表、ヨーロッパ-アメリカラテンの共同製作開発賞Eurimages を受賞した。夫婦の危機にあるエステバン・ビリャルディ扮するヨガ教師が主人公。「ヨガの世界についてのコメディです。ヨガを始めてから20年以上経ち、無意識のうちにこの映画を撮る準備してきた」と監督。

 

キャスト:エステバン・ビリャルディ(グスタボ)、ミルタ・ブスネリ(バネサ)、マヌエラ・オジャルスン、カミラHirane、ガブリエル・カニャス

ストーリー:グスタボとバネサは離婚したが、協力してプロジェクトを見直さなければならない。二人ともヨガ教師で、グスタボはアルゼンチン人でバネサはチリ人である。バネサは二人で共有していたスタジオに残り、グスタボは家無し子になった。グスタボは溜めこんだストレスによって膝を負傷し、ヨガを諦める。まず最初に大腿四頭筋を鍛え、その後ジムに行く。彼の人生は少しずつ軌道に乗り、再び練習に戻れるようになる。

別途に監督キャリア&フィルモグラフィ紹介を予定しています。

   

      

 

4) Lile rouge / Red Island / La isla roja (フランス=ベルギー)仏語、116

監督ロバン・カンピヨ(モロッコ、モハメディア1962)は、モロッコ系フランスの監督、脚本家、フィルム編集者。コンペティション部門ノミネートは初めてである。本作はマダガスカルのフランス領植民地を舞台にしている。2004年『奇跡の朝』で監督デビュー、『イースタンボーイズ』(ベネチアFF2013、オリゾンティ部門作品賞受賞)、BPMビート・パー・ミニット』はカンヌFF2017グランプリ国際批評家連盟賞SSIFFのペルラク部門で上映されセバスチャン賞などを受賞した。ローラン・カンテの『南へ向かう女たち』(05)、カンヌFF2008でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』(セザール賞脚色賞)や「Foxfire」(12、『フォックスファイア 少女たちの告白』)の共同脚本家でもある。

 

キャスト:ナディア・テレスツィエンキーヴィツ(コレット・ロペス)、キム・グティエレス(ロベール・ロペス)、チャーリー・ヴォゼル(トマス・ロペス)、ソフィー・ギルマン、デビッド・セレロ、他

ストーリー1970年代初頭のマダガスカルに我々は誘いだされる。フランスが統治していた植民地の一つでは、フランスの軍事基地に駐留する家族たちが植民地主義の最後のあがきを送っていた。トマスは10歳、冒険コミックの怖れを知らないヒロイン〈ファントメット〉の影響を受けた好奇心旺盛な少年である。一方、彼の視線は徐々に世界のもう一つの現実に開かれて始めていた。

    

     

 

5) MMXX (ルーマニア=モルドバ共和国=フランス)ルーマニア語、コメディ、160

監督クリスティ・プイウ(ルーマニア、ブカレスト1967)は、監督、脚本家、俳優。カンヌFFやカルロヴィ・ヴァリFFに出品されている。ルーマニア医療の現実を切りとった2作目『ラザレスク氏の最期』(05)、本祭との関りでは2016年ペルラク部門に『シエラネバダ』を出品している。2020年『荘園の貴族たち』は、ベルリンFFに新設されたエンカウンターズ部門に選出され監督賞を受賞した。

 

キャスト:ビアンカ・ククリチ、ローレンティウ・ボンダレンコ、イゴール・バビアック、オティリア・パナイテ、ドリアン・ボグタ、ドラゴス・ブクル、ロクサナ・オグレンディル、他

ストーリー:若いセラピストのオアナ・フィファーは、患者の質問に少しずつ悶着を起こし始めている。オアナの弟ミハイ・ドゥミトルは誕生日の準備にとらわれ、オアナの夫セプティミウは新型コロナ汚染に怯え、組織犯罪検査官のナルシス・パトラネスクは一人の同僚の死に動揺しています。歴史の岐路に立ち往生している人々の放浪をとらえた瞬間を描いています。

   

  

 

6) Puan (アルゼンチン=イタリア=ドイツ=フランス=ブラジル)スペイン語、107

 *イクスミラ・ベリアク2022

監督マリア・アルチェ(ブエノスアイレス1983) 

    ベンハミン・ナイシュタット(ブエノスアイレス、1986

マリア・アルチェは、SSIFF 2018オリソンテス・ラティノス部門にデビュー作「Familia sumergida / A Famiiy Submerged」がノミネートされ作品賞を受賞しました。一方ベンハミン・ナイシュタットは、同年「Rojo」がセクション・オフィシアルにノミネート、監督賞(銀貝)を受賞しているほか、主役のダリオ・グランディネッティが男優賞(銀貝)、ペドロ・ソテロが撮影賞を受賞するなどした。デビュー作「Historia del miedo / History of Fear」は、2014年オリソンテス・ラティノス部門にが選出されており、両作とも簡単な作品紹介をしています。ベルリンやロカルノ映画祭に参加している。

Rojo」の作品紹介は、コチラ20180716

Historia del miedo」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ20140224

 

キャスト:マルセロ・スビオット(マルセロ)、レオナルド・スバラリア(ラファエル)、フリエタ・ジルベルベルグ、アレハンドラ・フレッチェネル、マラ・ベステリ、アンドレア・フリヘリオ

ストーリー:「プアン」として知られるブエノスアイレス大学のユニークな哲学部を舞台にした物語。マルセロはブエノスアイレス大学で哲学を教えています。彼の指導教師のカセリ教授が突然亡くなり、マルセロは空席になった学部長の椅子を引き継ぐことを受け入れます。予想しなかったことは、カリスマ的で魅力的な同僚であるラファエル・スジャーチュクがこの学部長席を奪おうとヨーロッパの大学から戻ってくることでした。二人が学部長職をめぐって闘うはめになり、マルセロの人生もアルゼンチンもカオスになるでしょう。混乱はアルゼンチンのアイデンティティの基本です。

    


  

7) Un silence / A Silence (ベルギー=フランス=ルクセンブルク)仏語、100

監督ヨハヒム・ラフォセ(ベルギー、イクル1975)は、SSIFF 2015のセクション・オフィシアルに「Les chevaliers blancs / The White Knights」がノミネート、監督賞(銀貝)を受賞している。8年ぶりに本作で戻って来ました。本祭との関りはペルラク部門に「Leconomie du couple / After Love」(16)、「Les intranquilles / The Restless」(21)が出品されている。

 

キャスト:ダニエル・オートゥイユ、エマニュエル・デヴォス、マチュー・ガルー、サロメ・ドゥワエルズ、ラリッサ・フェイバー、デニス・シモネッタ、他

ストーリー:著名な弁護士の妻アストリッドは25年間沈黙したままだった。彼女の子供たちが正義を求め始めたとき、家族の安定に突然亀裂が生じます。

   


   

     

  

             (左から、マリア・アルチェ、ベンハミン・ナイシュタット、

              ロビン・カンピヨ、レイブン ジャクソン)

   

   

(左から、ヨアヒム・ラフォセ、ノア・プリツカー、

 クリスティ・プイウ、マルティン・ライトマン)


スペイン映画14作ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2023 ③2023年07月17日 16:04

          コンペティション部門にイサベル・コイシェの新作がノミネート

    

         

           (スペイン映画14作が一挙に発表になった)

 

714日マドリード発、スペイン映画アカデミーはスペイン製作の映画を中心に、セクション・オフィシアル(3作)、アウト・オブ・コンペティション(1作)、特別上映(1作)、ニューディレクターズ(1作)、ベロドロモ(2作)、オリソンテス・ラティノス(2作)、サバルテギ-タバカレラ(4作)の各部門合計14作を発表いたしました。今回はセクション・オフィシアルにノミネートされ金貝賞を競う、イサベル・コイシェ、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラの3女性監督の新作をアップします。特別上映枠にフェルナンド・トゥルエバハビエル・マリスカルのコンビがアニメーション映画「They Shot The Piano Player」(Dispararon al pianista)で久々に登場します。いずれご紹介したい。

   

 

        71SSIFF セクション・オフィシアル② ◎

   

8)O Corno / The Rye Horn (スペイン=ポルトガル=ベルギー)長編2作目

  ガリシア語、ポルトガル語、103

 *イクスミラ・ベリアク 2020

監督ハイオネ・カンボルダJaione Camborda(サンセバスティアン1983)は監督、脚本家、アートディレクター。映画はプラハとミュンヘンの映画学校で学んだ。長編デビュー作「Arima」は、セビーリャ・ヨーロッパFF2019「新しい波」セクションの監督賞受賞、ほかヒホン映画祭の受賞を経て、SSIFF 2020メイド・イン・スペインで上映されている。2作目でコンペティション部門に選出されるのは幸運です。本作はガリシア語で金貝賞を目指す最初の作品です。イクスミラ・ベリアクのプロジェクトに参加して完成させた。怖ろしい事件に巻き込まれ、島から逃亡せざるをえなかった女性マリアの人生が描かれる。ガリシアのポンテベドラのアロウサで撮影された。撮影監督は『サマ』など国際的に活躍するルイ・ポカスが手掛けている。

 

キャスト:ジャネット・ノバス(マリア)、シオバンSiobhan・フェルナンデス、カルラ・リバス、ダニエラ・エルナン・マルチャン、マリア・ラド、フリア・ゴメス、ホセ・ナバロ、ヌリア・レステガス、ディエゴ・アニド

  

ストーリー1971年アロウサ島、マリアはエビやカニなどの海産物を採って生計を立てている。また他の女性のお産を手助けするなど、島では献身的な女性として知られた存在でした。しかし予期せぬ出来事により島を脱出しなければならなくなり、生き残りを賭けた危険な旅をすることになる。マリアは自由を求めて、ガリシアとポルトガル間の密航ルートに沿って国境を越えようと決心する。ガリシア語で撮られた映画のノミネート1作目となります。

Arima」の作品紹介は、コチラ20200912

    

     

 

9)El sueño de la sultana / Sultanas Dream(スペイン=ドイツ)SFアニ、85

監督:イサベル・エルゲラ(サンセバスティアン1961)は、視覚アーティスト、製作者、アニメーションの監督。本作は長編アニメーションのデビュー作、1905年、ベンガル出身のイスラム教徒でフェミニストの作家、社会改革者であったロケヤ・ホセインRokeya Hossain18801932)のSF小説、英語で出版された。当時女性が英語を学ぶことは不適切とされていたが、夫の理解を得て学んだ。女性が統治しているユートピア「レディランド」をベースにしている。短編アニメーション「La gallina ciega」がゴヤ賞2007短編アニメーション部門にノミネートされている。他「Kutxa beltza」(16)、「Amore d'inverno」(15)、「Bajo la almohada」(12)、「Ámár」(10)などを撮っている。

 

ストーリー:〈スルタン王妃の夢〉は、1905年インドのベンガル地方で書かれたSF小説にインスパイアされて製作された。女性たちがすべてを統治管理しているフェミニストの理想郷レディランドが舞台。男性は隔離されている。ユートピアでは「男性は強くて頭がいい、女性は弱くて愚か」という固定観念が壊れるというジェンダー逆転が生まれている。

 

      

 

10)Un amor(スペイン)スペイン語、ドラマ、140

監督:イサベル・コイシェ(バルセロナ1960)、セクション・オフィシアル初参加となる本作は、サラ・メサのベストセラー小説 Un amor 2020年刊)の映画化、ライア・コスタが主役ナタリアに扮する。脇を固めるホヴィク・ケウチケリアン、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホなど演技派を揃えている。本祭との関りでいうと、1988年ニューディレクターズ部門に「Demaciado viejo para morir joven」がノミネートされている。またドキュメンタリー「El techo amarillo」がセクション・オフィシアルで特別上映され、RTVE「ある視点」賞、ドゥニア・アジャソ賞スペシャル・メンションを受賞している。翌年のゴヤ賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

 

キャスト:ライア・コスタ(ナット/ナタリア)、ホヴィク・ケウチケリアン(アンドレアス)、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホ、イングリッド・ガルシア≂ヨンソン、フランチェスコ・カリル

 

ストーリー:都会での息苦しい生活を逃れ、30代のナットはスペインの奥地に典型的な小さな村ラ・エスカパに避難所を見つけます。素朴な廃屋でナットは再び人生を立て直そうと決意します。家主は歓迎のしるしとして、飼いならしていない犬を連れてくる。やがて家主との対立や村民の不信感に直面して、隣人アンドレアスの不穏な性的提案を受け入れて、自分自身を驚かせることになる。この奇妙で矛盾をはらんだ出会いから、貪欲で強迫的な情熱が芽生えてくる。ナットは今まで彼女が自分だと思っていた女性は、本当の自分なのだろうか、実存への疑念と性的役割の破壊力を探求する。

本作については、別途作品紹介を予定しています。

 

    

     

   

   (左から、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラ、イサベル・コイシェ)


アウト・オブ・コンペティション2作*サンセバスチャン映画祭2023 ④2023年07月19日 17:19

   ロス・ハビスのTVシリーズと特別上映のトゥルエバ&マリスカルの新作

 

         

          (ロス・ハビスのTVシリーズ「La mesías」から)

 

★コンペ外の2作、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ(マドリード1984)とハビエル・カルボ(ムルシア1991)のスリラー「La mesías」は7話からなるTVシリーズ、アウト・オブ・コンペティションだが2人がセクション・オフィシアルに参加するのは初めてである。舞台演出家でもあるロス・ハビスは『パキータ・サラス』(16)、「Veneno」(20)、「Caldo」(21)などのTVシリーズを成功させている。長編映画デビュー作「La llamada / Hoiy Camp」(17)は、『ホーリー・キャンプ!』の邦題でラテンビートFFで上映されている。出演者は『ブラック・ブレッド』の好演が記憶に残るロジェール・カザマジョール、アンブロッシ監督の実妹でもある『ブランカニエベス』や『ホーリー・キャンプ!』のマカレナ・ガルシア、『海を飛ぶ夢』のロラ・ドゥエニャス、カメレオン女優のカルメン・マチ、ほかアナ・ルハス、アルベルト・プラ、アマイアなど豪華キャストがクレジットされている。

『ホーリー・キャンプ!』の作品&監督紹介は、コチラ20171007

   

      

    (ハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボ)




 

フェルナンド・トゥルエバ(マドリード1955)とハビエル・マリスカル(バレンシア1950)のアニメーション「They Shot the Piano Player」(Dispararon al pianista)もセクション・オフィシアルのコンペ外である特別上映作品です。コンビは音楽アニメーションChico Rita」(10)でタッグを組み、ラテンビート2011で『チコとリタ』として上映された。オスカー賞にノミネートされ、ゴヤ賞2011では長編アニメーション賞を受賞している。マリスカルはバルセロナ・オリンピックのマスコットでも知られているアーティスト。トゥルエバは新作について「この映画は、70年代に軍事クーデタで不当に命を奪われた天才の人生を、15年間にわたって調査したもである」と語っている。

   

      

      (久々にタッグを組んだ「They Shot the Piano Player」から)

    

      

        (フェルナンド・トルゥエバとハビエル・マリスカル)

 

★新作「They Shot the Piano Player」英語、2023

製作:Fernando Trueba Producciones Cinematograficas / Les Films dIci / Lola Films / Gao Shan Pictures

配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス、フランスはSophie Dulac Distribution

製作者:クリスティナ・ウエテ、セルジュ・ラルー、ウンベルト・サンタナ

ナレーション:ジェフ・ゴールドブラム

製作国:スペイン、フランス、オランダ、ペルー、ポルトガル

 

解説:ブラジルのミュージシャン、ボサノバの音楽運動を推進した天才ピアニスト、テノリオ・ジュニオール(リオデジャネイロ1941~ブエノスアイレス1976、享年34歳)の謎の失踪の背後にある真実を追求しようと旅に出るニューヨークの音楽ジャーナリストの物語。ラテンアメリカ諸国が軍事政権に飲み込まれる直前の6070年代を背景に、歴史の転換点にあるラテアメリカの創造的自由がはじける束の間の時間をとらえている。1976年、トキーニョとヴィニシウス・デ・モラエスと一緒にブラジルからアルゼンチンに演奏に出掛けたきり姿を消したフランシスコ・テノリオ・ジュニオールの失踪事件にインスパイアされている。

   

      

  (フランシスコ・テノリオ・ジュニオール)

 

出演者:ナレーターは俳優でミュージシャンのジェフ・ゴールドブラム(ピッツバーグ1952)、他ブラジルのミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、パウロ・モウラ、トキーニョ、ヴィニシウス・デ・モラエス、ジョアン・ドナート(2023717日没)、ビル・エヴァンス(米国、1980年没)、ベボ・バルデス(キューバ、2013年没)、など。

 

        

             (左ジェフ・ゴールドブラム)

 

            


   


オリソンテス・ラティノス部門2作発表*サンセバスチャン映画祭2023 ⑤2023年07月21日 15:22

          オリソンテス・ラティノス部門――散発的なノミネート発表

    

       

 

★去る714日、製作国にスペインが参加している映画14作が発表になり、うちオリソンテス・ラティノス部門にはスペインとの合作であるアルゼンチン映画2作が含まれていました。例年ですと8月初めに一挙に全作が発表になるのですが、今年は散発的です。とりあえず発表順にアップしておきます。ホライズンズ・ラティノスを今回からオリソンテス・ラティノスとスペイン語読みに変更します。

 

          オリソンテス・ラティノス部門

 

1)Blondi(アルゼンチン=スペイン=米国)2023年、スペイン語、88

 20234月、BAFICI(ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭)でプレミアされ、アルゼンチンでは61日に公開されています。

監督ドロレス・フォンシ(ブエノスアイレス1978)は、女優としてたびたびサンセバスチャン映画祭に参加していますが、今回はデビュー作「Blondi」の監督として訪れることになります。監督だけでなく脚本、製作、出演とエネルギーを爆発させています。フォンシの監督デビューには誰も驚かないはずです。10代で母親になった女性とその息子の特殊な関係が描かれ、母親ブロンディをフォンシ自身が演じます。夫君サンティアゴ・ミトレ監督がプロデューサーの一人として参加しています。リタ・コルテセやレオナルド・スバラリアなど、アルゼンチン映画ではお馴染みさんが共演しています。

    

       

★本祭との関りは、セクション・オフィシアルにファビアン・ヒエリンスキーの「El aura」(05)、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(15)、クラウディア・リョサのサイコスリラー「Distansia de rescate」(21『悪夢は苛む』Netflix)、オリソンテス・ラティノス部門にはサンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』(15)と『サミット』(17)などに出演しています。当ブログでは以下にキャリア&フィルモグラフィをアップしています。

『パウリーナ』の紹介記事は、コチラ20150521

『サミット』の紹介記事は、コチラ20171025同年0518

『しあわせな人生の選択』の紹介記事は、2016年01月09日コチラ20170804

『悪夢は苛む』の紹介記事は、コチラ20210728同年1103

 

キャスト:ドロレス・フォンシ(ブロンディ)、カルラ・ペターソン(マルティナ)、リタ・コルテセ(ぺパ)、トト・ロビト(ミルコ)、レオナルド・スバラリア(エドゥアルド)、他多数

ストーリー:ブロンディとミルコは親友同士である。彼らは一緒にいるのが楽しい、同じ音楽を聴き、同じ映画を観て、二人ともマリファナが好きで、リサイタルも一緒に行き、互いの友人も同じ、すべてがパーフェクトである。ただほとんど同年代に見えますが、ブロンディはミルコの母親だということです。

 

  

                   (ミルコ役のトト・ロビトと)


   

                             (ぺパ役のリタ・コルテセと)


 

2)El castillo / The Castle(アルゼンチン=フランス=スペイン)2023

 ドキュメンタリー、スペイン語、78分  WIP Latam & Egeda Platino

監督マルティン・ベンチモル(ブエノスアイレス1985)は、ドキュメンタリー監督、脚本家、撮影監督。本作はベルリン映画祭2023パノラマ部門観客賞ノミネート、香港FFヤングシネマ部門監督賞を受賞、グアダラハラFFで撮影監督のニコ・ミランダがドキュメンタリー撮影賞を受賞、ほかイスラエルの DocAviv 映画祭、テッサロニキ・ドキュメンタリーFF、カルタヘナFFなどに出品されている。製作者マイラ・ボテロ、共同製作者ハイディ・フライシャー、フリア・パラティアン。

    

    

 

  

     (左から、ニコ・ミランダ、ベンチモル監督、ハイディ・フライシャー、

    フリア・パラティアン、ベルリン映画祭2023219日フォトコール)  

 

2017年、パブロ・アパロと共同監督したドキュメンタリー・ミステリー「El espanto」(65分)は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭の中編ドキュメンタリー賞を受賞しているほか、ラスパルマスFF、ドキュメント・バルセロナTV3賞にノミネートされている。2012年にパブロ・アパロと監督した「La gente del río」は、150人しか住んでいない川沿いのエルネスティナ村が舞台。住民は村を訪れる人々が川を楽しむだけでなく、破壊行為で汚していると訴えます。BAFICI 2013 で上映された。

 

出演者:フスティナ・オリボ、アレクア・カミノス・オリボ

解説:フスティナは人生のすべてを家政婦として働いてきた。彼女はアルゼンチンのパンパの奥深くに建つ大邸宅を、元の雇用主から生涯にわたる献身が報われて相続しました。条件は唯一つ、決して売ってはならないということだった。

 

        

       

  (相続した大邸宅でくつろぐフスティナ・オリボ、アレクサ・カミノス・オリボ

   

    

         (マルティン・ベンチモル、ドロレス・フォンシ)


ベロドロモにシリーズ2作がプレミア*サンセバスチャン映画祭2023 ⑥2023年07月24日 16:34

      アーティストC. Tanganaの創作プロセスを探求する4年間の旅

 

        

 

★賞には絡まないベロドロモ部門は、約3000人の観客が収容できる競輪場を会場にしています。例年人気のエンターテインメントが上映されます。今年は3部構成のシリーズ「Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition」(135分)とTVミニシリーズのホラー「El otro lado / The Other Side」(6話)の2作がプレミアされるようです。前者の監督は、サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレスの3監督、後者はハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロの2監督です。

 

 

1)Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition(スペイン)

  ドキュメンタリー・ドラマ、スペイン語、135

監督:サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレス

サントス・バカナの本名はアルバロ・サントス(マドリード1991)、バレンシアの地中海に面したリゾート地ベニドルムのプレイモン・バカナから採られた。ミュージック・ビデオの監督、編集者、俳優、制作会社「Little Spain L.A. リトル・スペイン・ロサンゼルス」設立者の一人、ロヘリオ・ゴンサレス監督を通じて、2016年ラテングラミー賞の開催中だったラスベガスで初めてアーティストのC. TanganaC. タンガナ)に出会った。

    

    

                  

   (サントス・バカナ)

 

アーティストC. タンガナの本名はアントン・アルバレス・アルファロ(マドリード1990)、ラッパー兼ソングライター、愛称〈Puchoプーチョ〉で知られている。サントス・バカナはプーチョのミュージック・ビデオを制作している。2018年のミュージック・ビデオ「C. Tangana & Nino de Elche: Un Veneno」以来、34分のビデオを10本ほど撮っおり、うち代表作として「C. Tangana Alizzz: Para Repartir」(19)、「C. TanganaDemasiadas Mujeres」(20)などがある。

 

        

        (C. タンガナ)

 

        

                 (「C. TanganaDemasiadas Mujeres」から)

 

ロヘリオ・ゴンサレス(マドリード1991)は監督、編集者。バカナとラスベガス空港で出会い、数時間後にはC. タンガナの部屋を訪れたという二人は互いに兄弟と思っている。ロスでサントス・バカナを主役にした短編ドキュメンタリー「Santos」(219分)を監督している。またC. タンガナが監督したミュージック・ビデオ「C. Tangana feat. Nathy Peluso: Ateo」(21)のフィルム編集を手掛けている。

    

     

    (「Santos」のポスター)

   

    

     (サントス・バカナ、ロヘリオ・ゴンサレス、C. タンガナの3人組)

 

クリスティナ・トレナス(マドリード1987)は監督、脚本家、製作者、撮影監督。サントス・バカナの協力者の一人。製作者としてC. タンガナのミュージック・ビデオ全作を手掛けている。長編「From 7 to Eleven」(17)ほか、短編多数、2021年、マリア・ルビオとC. タンガナのミュージック・ビデオを監督している。フアン・ピンサスの「New York Shadow」の撮影監督として、ゴヤ賞2014にノミネートされ、撮影監督賞ノミネート最初の女性として話題になった。

 

解説:「El Madrileño」のレコードの成功を受け、C. タンガナはキャリアのなかで最も野心的なツアーを企画し、ライブのやり方に革命を起こすという挑戦に向き合っている。アーティストを4年以上も追いつづける旅、キューバでのアルバム制作以来、ショーの概念化、対立するビジネス、リハーサル、気づまりな会話、仲間内での賞賛、目まぐるしくスペインとラテンアメリカ全土を渡り歩くコンサートまで、彼の創作プロセスを探求する。3部構成で掘り下げる。

 

      

 

 

2)El otro lado / The Other Side (スペイン)TVミニシリーズ(6話、各30分)、コメディ・ホラー、Movister

監督ハビエル・ルイス・カルデラ(バルセロナ近郊ビラデカンス1976)、アルベルト・デ・トロ(バルセロナ1972

企画ベルト・ロメロ(バルセロナ近郊カルドナ1974

脚本(共同):ラファエル・バルセロ、エンリク・パルド、ベルト・ロメロ

音楽:ハビエル・ロデロ

撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン

編集:オリオル・ペレス・アルカラス

  

     

                         (中央がベルト・ロメロ)

   

キャスト:ベルト・ロメロ(ナチョ・ニエト)、アンドレウ・ブエナフエンテ(エストラーダ博士)、エバ・ウガルテ、マリア・ボット、ナチョ・ビガロンド、マリア・パスクアル、アルベルト・ガルシア、ウーゴ・モレニーリャ、他

ストーリー:ジャーナリストのナチョ・ニエトは超常現象のスペシャリストである。公私ともに最悪の状態に陥っている。自殺が未遂に終わった後、ナチョは20年以上前に亡くなった、謎の神話的伝道者であり、彼の助言者でもあったエストラーダ博士の幽霊をともなって息を吹き返す。

   

      

 

MovisterTVシリーズの新企画である本作は、俳優、コメディアン、脚本家として活躍しているベルト・ロメロが企画し、ハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロが共同で監督します。ロメロはハビエル・ルイス・カルデラのコメディ「Tres bodas de más」に出演してゴヤ賞2014新人男優賞にノミネート、同監督のSPY TIMEスパイ・タイム』にも出演しています。人気TVシリーズ、コメディ「Mira lo que has hecho」(20182025分、全18話)の成功以来、久しぶりに主役で戻ってきて、今回初めてホラーのジャンルに挑戦します。シリーズでロメロのパートナー役を演じ数々の受賞歴のあるエバ・ウガルテが共演しています。

『SPY TIME スパイ・タイム』の作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィーの紹介をしています。コチラ⇒2016年02月02日

      

        

 (エバ・ウガルテとベルト・ロメロを配した「Mira lo que has hecho」のポスター)

 

他にエストラーダ博士役に、ゴヤ賞ガラの総合司会を夫人のシルビア・アブリルと2年連続(20192020)で成功させた、コメディアンのアンドレウ・ブエナフエンテが扮します。両人はホセ・ルイス・クエルダの遺作となってしまったSFコメディ「Tiempo después」(18)の共演や、お茶の間の人気トークショー「Nadie sabe nada」(202223)で二人揃って舌戦を繰り広げています。

         

         

                  (「Nadie sabe nada」のブエナフエンテとロメロ)

 

新作は映画データバンクIMDbでは「エピソード8」となっていますが、本祭のメイン紹介記事や各紙誌によって「6話」を採用しています。ベロドロモ部門で何話上映されるかもアップされていません。