コンペティション部門ノミネート7作品*サンセバスチャン映画祭2023 ② ― 2023年07月15日 18:01
セクション・オフィシアルのノミネート7作品発表
★7月7日、第71回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2023セクション・オフィシアル(コンペティション部門)の7作品のノミネート発表がありました。例年16~20作くらいですから3分の1だけ、全体像が分かるまでには少し時間がかかりそうです。7作のなかにスペイン映画は含まれておりません。スペイン語映画としてはアルゼンチンの2作が選ばれています。昨年は最初にスペイン映画4作が発表になりましたが、今年は様子が違うようです。以下に公式サイトの発表順に、製作国、タイトル、監督名、キャスト、ストーリーなどを簡単に列挙しておきます。
◎第71回 SSIFF セクション・オフィシアル◎
1) All Dirt Roads Taste of Salt(米国)英語、97分
*イクスミラ・ベリアク2019
監督:レイブン ・ジャクソン(米、テネシー1990)は、監督、詩人、写真家、製作者。長編デビュー作だが本祭との関係は深く、2018年のネスト部門に短編「Nettles」(仮題「イラクサ」24分、タコマFF審査員賞)が出品されている。ほかノミネート作はイクスミラ・ベリアク・プログラムで掘り下げ完成させている。サンダンスFF2023のUSドラマ・コンペに正式出品された。ミシシッピで暮らす一人の女性の人生がリリックに語られる。
キャスト:チャーリン・マクルーア、ジャヤ・ヘンリー、レジナルド・ヘルムズ・ジュニア、クリス・チョーク、シーラ・アテム、他多数
ストーリー:数十年にわたるミシシッピ州で暮らす黒人女性の人生を探求する物語。私たちを形作った何世代もの人々、場所、そして言葉では言い表せない瞬間への賛歌です。セリフは殆どなく、美しいビジュアル、視覚的なストーリーテリングが監督の才能を際立たせている。
2) Ex-Husbands (米国)英語、コメディ、98分
監督:ノア・プリツカー(米、サンフランシスコ1986)は監督、作家。長編第2作目、2015年「Quitters」でデビュー、本祭参加は初めてとなる。新作は同じ家族ながらさまざまな登場人物たちのセンチメンタルな変転が語られる。主役グリフィン・ダン以下芸達者が共演する。
キャスト:グリフィン・ダン、マイルズ・ハイザー、ジェームズ・ノートン、エイサ・デイビス、ロザンナ・アークエット
ストーリー:ピーターの両親は65年間暮らした後に離婚した。彼の妻は35年後に去り、息子のニックとミッキーはそれぞれ自分の人生を送っている。ピーターがトゥルムに飛んで、ミッキーがお膳立てしたるニックの独身さよならパーティをぶち壊したとき、危機に瀕しているのは自分だけでないことに気づきます。
3) La práctica / The Practice(アルゼンチン=チリ=ポルトガル)
スペイン語、コメディ、90分
監督:マルティン・ライトマンRejtman(アルゼンチン、ブエノスアイレス1961)は監督、脚本家、作家、製作者。セクション・オフィシアルのノミネートは初めてだが、1999年「Silvia Prieto」(メイド・イン・スペイン)、オリソンテス・ラティノス部門に「Los guantes mágicos」(04)、「Dos disparos / Two Shots Fired」(14)、2019年にはネスト部門の審査委員長を務めた。最新ニュースとしては、SSIFF 2020でドキュメンタリー「El repartidor está en camino / Riders」を発表、ヨーロッパ-アメリカラテンの共同製作開発賞Eurimages を受賞した。夫婦の危機にあるエステバン・ビリャルディ扮するヨガ教師が主人公。「ヨガの世界についてのコメディです。ヨガを始めてから20年以上経ち、無意識のうちにこの映画を撮る準備してきた」と監督。
キャスト:エステバン・ビリャルディ(グスタボ)、ミルタ・ブスネリ(バネサ)、マヌエラ・オジャルスン、カミラHirane、ガブリエル・カニャス
ストーリー:グスタボとバネサは離婚したが、協力してプロジェクトを見直さなければならない。二人ともヨガ教師で、グスタボはアルゼンチン人でバネサはチリ人である。バネサは二人で共有していたスタジオに残り、グスタボは家無し子になった。グスタボは溜めこんだストレスによって膝を負傷し、ヨガを諦める。まず最初に大腿四頭筋を鍛え、その後ジムに行く。彼の人生は少しずつ軌道に乗り、再び練習に戻れるようになる。
◎別途に監督キャリア&フィルモグラフィ紹介を予定しています。
4) Lile rouge / Red Island / La isla roja (フランス=ベルギー)仏語、116分
監督:ロバン・カンピヨ(モロッコ、モハメディア1962)は、モロッコ系フランスの監督、脚本家、フィルム編集者。コンペティション部門ノミネートは初めてである。本作はマダガスカルのフランス領植民地を舞台にしている。2004年『奇跡の朝』で監督デビュー、『イースタンボーイズ』(ベネチアFF2013、オリゾンティ部門作品賞受賞)、『BPMビート・パー・ミニット』はカンヌFF2017グランプリ、国際批評家連盟賞、SSIFFのペルラク部門で上映されセバスチャン賞などを受賞した。ローラン・カンテの『南へ向かう女たち』(05)、カンヌFF2008でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』(セザール賞脚色賞)や「Foxfire」(12、『フォックスファイア 少女たちの告白』)の共同脚本家でもある。
キャスト:ナディア・テレスツィエンキーヴィツ(コレット・ロペス)、キム・グティエレス(ロベール・ロペス)、チャーリー・ヴォゼル(トマス・ロペス)、ソフィー・ギルマン、デビッド・セレロ、他
ストーリー:1970年代初頭のマダガスカルに我々は誘いだされる。フランスが統治していた植民地の一つでは、フランスの軍事基地に駐留する家族たちが植民地主義の最後のあがきを送っていた。トマスは10歳、冒険コミックの怖れを知らないヒロイン〈ファントメット〉の影響を受けた好奇心旺盛な少年である。一方、彼の視線は徐々に世界のもう一つの現実に開かれて始めていた。
5) MMXX (ルーマニア=モルドバ共和国=フランス)ルーマニア語、コメディ、160分
監督:クリスティ・プイウ(ルーマニア、ブカレスト1967)は、監督、脚本家、俳優。カンヌFFやカルロヴィ・ヴァリFFに出品されている。ルーマニア医療の現実を切りとった2作目『ラザレスク氏の最期』(05)、本祭との関りでは2016年ペルラク部門に『シエラネバダ』を出品している。2020年『荘園の貴族たち』は、ベルリンFFに新設されたエンカウンターズ部門に選出され監督賞を受賞した。
キャスト:ビアンカ・ククリチ、ローレンティウ・ボンダレンコ、イゴール・バビアック、オティリア・パナイテ、ドリアン・ボグタ、ドラゴス・ブクル、ロクサナ・オグレンディル、他
ストーリー:若いセラピストのオアナ・フィファーは、患者の質問に少しずつ悶着を起こし始めている。オアナの弟ミハイ・ドゥミトルは誕生日の準備にとらわれ、オアナの夫セプティミウは新型コロナ汚染に怯え、組織犯罪検査官のナルシス・パトラネスクは一人の同僚の死に動揺しています。歴史の岐路に立ち往生している人々の放浪をとらえた瞬間を描いています。
6) Puan (アルゼンチン=イタリア=ドイツ=フランス=ブラジル)スペイン語、107分
*イクスミラ・ベリアク2022
監督:マリア・アルチェ(ブエノスアイレス1983)
ベンハミン・ナイシュタット(ブエノスアイレス、1986)
マリア・アルチェは、SSIFF 2018オリソンテス・ラティノス部門にデビュー作「Familia sumergida / A Famiiy Submerged」がノミネートされ作品賞を受賞しました。一方ベンハミン・ナイシュタットは、同年「Rojo」がセクション・オフィシアルにノミネート、監督賞(銀貝)を受賞しているほか、主役のダリオ・グランディネッティが男優賞(銀貝)、ペドロ・ソテロが撮影賞を受賞するなどした。デビュー作「Historia del miedo / History of Fear」は、2014年オリソンテス・ラティノス部門にが選出されており、両作とも簡単な作品紹介をしています。ベルリンやロカルノ映画祭に参加している。
*「Rojo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月16日
*「Historia del miedo」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2014年02月24日
キャスト:マルセロ・スビオット(マルセロ)、レオナルド・スバラリア(ラファエル)、フリエタ・ジルベルベルグ、アレハンドラ・フレッチェネル、マラ・ベステリ、アンドレア・フリヘリオ
ストーリー:「プアン」として知られるブエノスアイレス大学のユニークな哲学部を舞台にした物語。マルセロはブエノスアイレス大学で哲学を教えています。彼の指導教師のカセリ教授が突然亡くなり、マルセロは空席になった学部長の椅子を引き継ぐことを受け入れます。予想しなかったことは、カリスマ的で魅力的な同僚であるラファエル・スジャーチュクがこの学部長席を奪おうとヨーロッパの大学から戻ってくることでした。二人が学部長職をめぐって闘うはめになり、マルセロの人生もアルゼンチンもカオスになるでしょう。混乱はアルゼンチンのアイデンティティの基本です。
7) Un silence / A Silence (ベルギー=フランス=ルクセンブルク)仏語、100分
監督:ヨハヒム・ラフォセ(ベルギー、イクル1975)は、SSIFF 2015のセクション・オフィシアルに「Les chevaliers blancs / The White Knights」がノミネート、監督賞(銀貝)を受賞している。8年ぶりに本作で戻って来ました。本祭との関りはペルラク部門に「L’economie du couple / After Love」(16)、「Les intranquilles / The Restless」(21)が出品されている。
キャスト:ダニエル・オートゥイユ、エマニュエル・デヴォス、マチュー・ガルー、サロメ・ドゥワエルズ、ラリッサ・フェイバー、デニス・シモネッタ、他
ストーリー:著名な弁護士の妻アストリッドは25年間沈黙したままだった。彼女の子供たちが正義を求め始めたとき、家族の安定に突然亀裂が生じます。
(左から、マリア・アルチェ、ベンハミン・ナイシュタット、
ロビン・カンピヨ、レイブン ジャクソン)
(左から、ヨアヒム・ラフォセ、ノア・プリツカー、
クリスティ・プイウ、マルティン・ライトマン)
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