準備が進むコロナ禍のゴヤ賞授賞式*ゴヤ賞2021 ⑭ ― 2021年03月02日 17:48
綱渡りのセレモニー、テレマティクスとライブの混成

(左からマリアノ・バロッソ、アントニオ・バンデラス、マリア・カサド、プレス会見2月)
★去る2月2日、第35回ゴヤ賞2021授賞式の詳細が少し明らかになりました。出席者はスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ、総合司会者のマラガ出身の俳優アントニオ・バンデラスとバルセロナ出身のジャーナリストマリア・カサドの3氏。カサドは以前にご紹介したように昨年からマラガに転居しています。授賞式は予定通り3月6日、マラガのソーホー・カイシャバンク劇場です。新型コロナのパンデミアの動向のせいで、テレマティクスとライブの混成、生放送は進行役の総合司会者、トロフィーのプレゼンター、ミュージカルでバックを構成するミュージシャンに限られるようです。
★マリアノ・バロッソ会長は「今年公開できた作品を歓迎し、称賛するためのセレモニーを全力を尽くしてやり遂げたい。状況に応じて責任ある安全安心をモットーに行いたい」と決意のほどを語った。今回のノミネーション発表で採用したテレマティクスをガラでも利用する。ゴヤ賞授賞式の長い歴史のなかでも初めての体験になります。赤絨毯に現れるお目当てのシネアストとの自撮りはできませんけれど、各家庭のお茶の間で受賞者が明らかになる瞬間をダイレクトに見ることができる。関係者はすべてPCR検査を済ませており、マスク着用は言うまでもなく、ソーシャルディスタンスを守って、最善の準備をしていることを強調した。
★総合司会者のバンデラスは、「現実が私たちに残した亀裂のなかに巻き込まれていることは分かっていますが、それはすべて怒りと錯覚です。ゴヤ賞の授賞式は疫病から心を回復させるスタートの合図でした。テレマティクスとライブの混成ですが、従来の仕来りを重んじながら、参加している人々の安全を確保しつつ観客に或るメッセージを送り届けられるよう自覚しています」と。ゴヤ賞は映画産業で働く全メンバーの祭典、特にカメラの前面ではなく、ずっと後方にいる人々なしに映画は製作できない。「賞を手にするチャンスのない人々も不可欠なことを示したい。運転手さんやケータリングの事業者の他、多くのファミリーが映画に依存して生活している」とバンデラス。「後ろにいる人々、より後方の人々、観客の存在に感謝しています」とマリア・カサドが挨拶を引き取った。

(メディアの取材を受けるアントニオ・バンデラスとマリア・カサド)
★主なミュージシャンは、マラガのシンガーソングライターのバネサ・マルティン(María Vanesa Martín Mata、1980)バルセロの歌手アイタナ(Aitana Ocaña Morales、1999)とアナウンスされました。ライブ演奏も限られた昨今では、彼女たちの出演が映画ファンのみならず音楽ファンを大いに喜ばせることになるでしょう。今年は見る価値がありそうです。「上品で節度をもった」ガラにしたいと主催者。


今年のゴヤ賞は生誕100年の「ベルランガ年」とコラボする
★スペイン国民から最も愛されたルイス・ガルシア・ベルランガ監督の生誕100周年にあたり(バレンシア1921~マドリード2010)、パンデミアの困難のなかて迎えることになりました。まだ詳細ははっきりしません。ベルランガ映画は残念ながら1本も公開されておりませんので奇異に思われるでしょうが、バレンシアのサッカー・チーム「バレンシアCF」のファンであったことから、89歳で亡くなったときには試合前に黙祷が捧げられたほど愛されていたのでした。葬儀には映画関係者以外の会葬者が押しよせて別れを忍びました。京橋フィルムセンターで開催されたスペイン映画祭1984で『ようこそマーシャルさん』(53)と『カラブッチ』(57)が上映されただけ、昨年のスペインクラシック映画上映会2020では、前者と彼の最高作と称される『死刑執行人』(63)がオンラインで上映されました。

(最晩年のルイス・ガルシア・ベルランガ監督)

(最高作と称される『死刑執行人』のポスター)
★生前ベルランガは、マドリードのセルバンテス協会本部に設置された個人ボックスに或る書類を預けました。生誕100年目となる2021年6月12日まで封印されており、間もなく中身が明らかになります。検閲に苦しんだフランコ時代の具体的な内容の書類が含まれているのではないかと期待されています。もし期待通りならスペイン映画史の空白が埋められるかもしれません。
*『カラブッチ』の紹介記事は、コチラ⇒ 2020年06月03日
*『ようこそマーシャルさん』の紹介記事は、コチラ⇒2020年05月22日
*『死刑執行人』の紹介記事は、コチラ⇒2020年06月09日/06月10日
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