マルタ・フェルナンデス・ムロに第13回フェロス賞2026栄誉賞2026年01月28日 11:41

     演劇、映画、テレビ女優、作家でもあるマルタ・フェルナンデス・ムロ

 

               

 

★昨年1117日、スペイン映画ジャーナリスト協会(AICE)は、第13回フェロス賞2026栄誉賞に女優のマルタ・フェルナンデス・ムロ授賞を発表しました。「80年代のスペイン映画界の重要な顔であり、コメディ役を超えた深みのある演技者に授与することにした」が授賞理由。若い人たちにはTVシリーズ「Poquita Fe」(シーズン2)のラウル・シマス演じる主人公ホセ・ロマンの母親役でお馴染みですが、受賞者は映画、演劇、TVの女優として、ほぼ40年以上のキャリアの持主、また実業家でもあり、La cabeza a pájaros の著者でもある。

 

1950年マドリード生れ、フランコ政権終焉時には20代の半ばだったことになる。4人姉妹の末っ子、父親は化学者で娘たちが大学に行くことを望んだが、末娘だけは望まなかった。ビートルズの熱烈なファン、ビートルズが来西したときには、マドリードのバラハス空港に出掛けて行った。高校を卒業すると、ヨーロッパで2年間、パリでフランス語、その後ロンドンで英語を学び、秘書や翻訳家として働いていたが、20代半ばに女優になろうと決心、アルゼンチン独裁政権を逃れてスペインに亡命していたマルティン・アドジェミアンの演劇学校に入り演技を学んだ。


★その後ニューヨークに渡り、演劇学校 HBスタジオでドイツ出身の女優でもあった演技教師ウタ・ハーゲンに演技指導を受けている。他にハーゲンの生徒でもあったジュラルディン・ペイジからも教えを受けている。二人ともアメリカで最も尊敬される演技教師としてアメリカ演劇殿堂入りを果たしている。

   

    

            (イバン・スルエタの「Arrebato」から)

   

★映画デビューは、マルタの姉テレサの友人だったリカルド・フランコの「Los restos del naufragio」(77)だった。カンヌ映画祭1978のパルムドールにノミネートされ、監督自身も出演したほかフェルナンド・フェルナン=ゴメスやアンヘラ・モリーナと共演している。続いてフェルナンド・コロモの「¿ Qué hace una chica como tú en un sitio como éste ?」(78)で、人気上昇中のカルメン・マウラやアルゼンチン出身のベテラン俳優エクトル・アルテリオ、キティ・マンベルなどと共演、ハイメ・チャバリ監督がカメオ出演していた話題作。マウラもマンベルも既に女優としてのキャリアがあって、共演は「驚きの連続だった」と後に述懐している。その後、友人イバン・スルエタの「Arrebato」(79)、再びコロモの「La mano negra」(80)や「Estoy en crisis」(82)、スペインの批評家からは酷評されたが、米国では高評価、結果としてスペイン初のオスカー賞(外国語映画賞)を受賞した、ホセ・ルイス・ガルシの「Volver a empezar」(82『黄昏の恋』)に脇役だったが出演、つまりオスカー女優(!)でもある。

      

    

      (オスカー像を手にした受賞者、『欲望の法則』のフレームなど)

 

ペドロ・アルモドバル学校の女生徒の一人である受賞者は、「Laberinto de pasiones」(82、『セクシリア』95年公開)でイマノル・アリアスやセシリア・ロス、アルモドバル映画に初めて起用されたアントニオ・バンデラスなどと共演、フォトグラマス・デ・プラタ助演女優賞にノミネートされた。本作はサンセバスチャン映画祭にノミネートされている。続いて「La ley del deseo」(87、『欲望の法則』)では、エウセビオ・ポンセラ、再びカルメン・マウラ、加えてアントニオ・バンデラスと共演している。本作は東京で開催された「第2回スペイン映画祭1989」で上映された。

 

     

     (アントニオ・バンデラスとマルタ、アルモドバルの『欲望の法則』から)

  

     

     (セシリア・ロス、アルモドバル監督、マルタ、サンセバスチャンFF1982

 

★検閲も廃止された80年代のスペイン映画界は、政府の助成もあり良作が量産された時代でしたが、なかでも文芸路線にシフトしたことが当たった。ノーベル賞作家カミロ・ホセ・セラの同名小説 La colmena をマリオ・カムスが映画化(82『蜂の巣』)、1985年ヘスス・フェルナンデス・サントスの同名小説 Extramuros をミゲル・ピカソが映画化した折にも起用されている。脇役が多いなかで、ラモン・J・センデルの短編をベースにアルフレッド・カステリョンが映画化した「Las gallinas de Cervantes」(88)では、少々風変わりだったというセルバンテスの妻カタリーナに扮した。妻の変容振りに苦悩するセルバンテスの友人としてエル・グレコも登場する風刺劇。本作は日本スペイン協会50周年を記念したミニ映画祭2008で『カタリーナ』の邦題で上映されている。

 

      

     (カタリーナ役のマルタとセルバンテス役のミゲル・アンヘル・レリャン)

 

★1990年代には、いずれもコメディだがヘラルド・ベラの「Una mujer bajo la lluvia」(92)、スペインで最も愛された監督と言われる、ルイス・ガルシア・ベルランガの「Todos a la cárcel」(93)、ペドロ・コスタが50年代初めに起きた実話に着想をえて製作した犯罪ドラマ「El crimen del cine Oriente」(97)に出演している。またエルビラ・リンドの大ベストセラー小説『めがねっこマノリート』を映画化した、ミゲル・アルバラデホの「Manolito Gafotas」(99)では、マノリートの隣人役、本作は100万人以上が映画館に足を運んで、興行収入に大いに寄与した。脚本には作家も共同執筆者として参加している。

    

  

  (マリア・アスケリノ、マルタ・フェルナンデス・ムロ、『みんなのしあわせ』から

    

2000年に製作されたアレックス・デ・ラ・イグレシアの「La comunidad」は、大ヒットしたダークコメディ。『みんなのしあわせ』の邦題で公開され、デ・ラ・イグレシアの人気も急上昇した。主演のカルメン・マウラがゴヤ賞以下、スペイン映画賞を軒並み制覇したヒット作。トンネル崩落事故を生き延びた人々のその後が語られるぺポン・モンテロの「Los del túnel」(17)、若いときからの友人でもあるエミリオ・マルティネス=ラサロの政治コメディ「Un hipster en la España  vacía」にパコ・レオン、ベルタ・バスケス、マカレナ・ガルシアなど若手俳優と共演した。ダニエル・ガスコンの同名小説をベースにした笑劇。クーロ・ベラスケスのコメディ「Cuerpo escombro」(24)ではダニ・ロビラと共演している。

      

  

 (左から、マルタ、ロセル・ビラホサナ、ヌリア・メンシア、Los del túnel

 

★最近はTVシリーズ出演が多く、上記したように「Poquita Fe」(15話)では主人公ホセ・ロマンの母親役で出演、クリエーターはぺポン・モンテロ&フアン・マイダガン。アラセリ・アレバレス・デ・ソトマヨール他の「Sin gluten」(258話)に特別出演している。

      

     

         (ホセ・ロマン役のラウル・シマスと、「Poquita Fe」から)

 

★バルセロナの演劇界を牽引している舞台女優で演出家のヌリア・エスペルト(1935~)や故アドルフォ・マルシラック(マルシヤック、2002年没)など著名な演劇人と舞台に立っている。エドワード・オールビーの『ヴァージニア・ウルフなんか怖くない』や、チェーホフの『カモメ』などに出演している。映画やテレビの出演料を演劇に注ぎ込んでいるようです。

 

2009年、初の短編集 Niñas malas を出版、2年後に “Azogadas”、そして小説 “La cabeza a pájaros” を出版、フェルナンデス・ムロ家 150年間にわたるサガが語られている。1867年、貧しい農民だった母方の曾祖父がマドリードに到着したところから始まっている。当時の庶民の日常生活や風景、勿論スペイン内戦、戦後の経済優先主義、進歩的な社会的自由の到来などが親密な家族史とともに語られている。評論家の評価も高く話題作となっている。

 

     

             (小説 La cabeza a pájaros の表紙

 

★既にフェロス賞2026のガラは終わっています。栄誉賞のトロフィを手にしていますが、受賞スピーチなどは次回アップするとして、今回はフォトのみです。モニカ・ランドル、ビクトリア・アブリル、フリア&エミリオ・グティエレス・カバ、ベロニカ・フォルケ、ホセ・サクリスタンなど著名な受賞者リストの仲間入りをしました。

    

    

      (第13回フェロス賞2026栄誉賞受賞のマルタ・フェルナンデス・ムロ、124日)


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