第13回ガウディ栄誉賞にカルメ・エリアス2021年03月29日 14:59

              今年のガウディ栄誉賞は3年ぶりに女性シネアストの手に

     

          

     (ビッキー・ペーニャからトロフィーを受け取るカルメ・エリアス)

 

★前回写真だけアップしたガウディ栄誉賞受賞者カルメ・エリアスのご紹介。トロフィーは盟友ビッキー・ペーニャから渡されました。アカデミーの授賞理由は「演劇、映画、テレビにおいて常に卓越した才能を発揮した」とペーニャが紹介した。エリアスは「目には見えない人々、私を支えてくれたエキスパート、ここにいる人いない人、私の演じた登場人物たちをステージに伴ってきた」と挨拶した。「俳優というのは、役作りには時には意識的に、時には無意識に人生から糧を得る」と告白、「彼らの怖れ、勇気、不確実性を乗り越えてキャラクターの立ち位置を見つけねばならない。もし見つからないときにはとんぼ返りをしなければならない」とスピーチした。

   

     

★また誰でも自分の足跡を残していること、そして「人生を暗闇でなく光の道にしようとすれば、登場人物の話に耳を傾けねばならない」と明かし、この栄誉賞を一般の人々に捧げました。19世紀後半にカタルーニャ語で詩を書き続けた詩人で司祭だったハシント・ベルダゲルの詩の一節でスピーチを締めくくる前に、「私たちのような文明社会では不当に収監された人々が自分自身を表現できる自由があるべきと考えている」とも語った。

  

★カルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を志してバルセロナの演劇研究所や、ウィリアム・レイトンがバルセロナで創設した演劇ラボラトリーで演技を学び、その後ニューヨークに渡り、俳優学校リー・ストラスバーグのメソッド演技法を学んだ。舞台演出家レイトンは合衆国カンザス出身だが、ロンドンで演劇を学んだ後、1960年代からはスペインに軸足をおき、マドリードで演劇学校を開設、後にバルセロナに移って演劇ラボラトリーで後進の指導に当たった。卒業生には2014年にガウディ栄誉賞を受賞したフリエタ・セラーノアナ・ベレンナイワ・ニムリなど、後にスペイン演劇や映画の中核を担うアーティストを輩出している。

   

             

         (栄誉賞受賞の知らせを聞いて、カルメ・エリアス)

 

2009年から始まったガウディ賞も13回を迎え、栄誉賞も同時に始まっているから13人目になります。受賞者はバルセロナ派のシネアストから選ばれ、第1回目はバルセロナ生れのハイメ・カミーノ監督(19362015)でした。本邦では『1936年の長い休暇』が映画祭で上映されただけと思います。女性の受賞者はカルメ・エリアス5人目、一人目は昨年11月に鬼籍入りしたモンセラット・カルーリャ2013)、フリエタ・セラーノ2014)、昨年春、癌に倒れたロサ・マリア・サルダ2016)、メルセデス・サンピエトロ2018)、5人の共通項は映画・舞台・TVで活躍した、あるいは現役の女優ということです。

 

★カルメはスペイン語読みカルメンとしてクレジットされることもありますが、現在はカタルーニャ語のカルメが多い。当ブログではベネズエラの監督クラウディア・ピントのデビュー作La distancia más largaがモントリオール映画祭で「グラウベル・ローシャ賞」を受賞した折りに記事をアップしています。エリアスは実年齢の60歳代の女性に扮し、スペインから思い出のいっぱい詰まった生れ故郷、ベネズエラに最期の旅をする物語でした。翌年マラガ映画祭上映、ウエルバ映画祭観客賞受賞作品。もう1作がカルロス・ベルムト『シークレット・ヴォイス』(サンセバスチャン映画祭2018正式出品)で、そこで簡単にキャリア紹介をしています。バルセロナの演劇ラボラトリーの後輩ナイワ・ニムリと共演したメタファー満載のスリラーでした。

La distancia más larga」の紹介記事は、コチラ20130905

『シークレット・ヴォイス』の紹介記事は、コチラ20190313

   

  

 

   

      (祖母役に扮したエリアス、クラウディア・ピントのデビュー作から)

 

      

     (『シークレット・ヴォイス』撮影時のベルムト監督とエリアス)

 

★出演作は1975年にデビューしたTVシリーズを含めると3桁に及びますが、以下に主な作品を列挙しておきます。本邦ではラテンビート2009の目玉、ハビエル・フェセル監督の信仰と幸福、命と死をテーマにした『カミーノ』でしょうか。エリアスは難病に罹った少女カミーノの母親役でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。このゴヤ賞6部門制覇の実話にインスパイアされた作品は、後にオプス・デイ信者の遺族から裁判を起こされるなどした問題作。舞台とTV出演&受賞歴は割愛しますが、舞台女優としてはギリシャ悲劇からスペインの古典、チェーホフ、現代劇と幅広く出演している。

 

      

     

   (カミーノ役のネレア・カマチョと頑迷なオプス・デイ信者の母親役のエリアス)

 

タイトルと監督名、受賞歴の順(ノミネートは除外)

1985年「Stico」監督ハイメ・デ・アルミニャン、ベルリンFF正式出品

1990年「Pont de Varsovia」同ペレ・ポルタベリャ、

    カタルーニャ自治政府の国民映画女優賞受賞

1991年「El rey pasmado」同イマノル・ウリベ

1994年『わが生涯最悪の年』同エミリオ・マルティネス=ラサロ、スペイン映画祭1997上映

1995年『私の秘密の花』同ペドロ・アルモドバル、公開

2000年「Morir (o no)」同ベントゥラ・ポンス、カタルーニャ語

2006年「Los aires dificiles」同ヘラルド・エレーロ、

    マラガ映画祭金のビスナガ賞受賞作品

2008年『カミーノ』同ハビエル・フェセル、ラテンビート映画祭2009上映。

    ゴヤ賞主演女優賞サン・ジョルディ女優賞トゥリア女優賞

    スペイン俳優組合女優賞など受賞

2011年「Planes para mañana」同フアナ・マシアス、

    ムルシア・ウィーク映画祭フランシスコ・ラバル賞受賞

2012年「Tengo ganas de ti」同フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

2013年「La distancia más larga」(ベネズエラとの合作)同クラウディア・ピント

    第2回イベロアメリカ・プラチナ賞2015の初監督作品賞受賞作品

2018年『シークレット・ヴォイス』同カルロス・ベルムト

     

    

          (ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを胸に)

 

★最近ではTVシリーズ出演が多いが、デミ・ムーア、ナスターシャ・キンスキー、ダリル・ハンナ、シガニー・ウィバーなどの声優としても活躍している。次回作はベネズエラのクラウディア・ピントの第2作目Las Consecuenciasに出演、アルゼンチン出身だがスペインで活躍しているエクトル・アルテリオ、フアナ・アコスタ、チリのアルフレッド・カストロなどベテラン演技派と共演している。カナリア諸島のパルマで撮影したサイコ・スリラーということです。今回のガウディ栄誉賞ガラにピントも出席とあったがフォトは検索できなかった。